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第2章

 第二章


 Tactical Armared Lodar

 汎用人型機動兵器。通称TAL。

 文化圏を宇宙へと拡げた人類が開発した兵器である。

 人類が外敵にさらされ、21世紀初頭程まで文明を後退させた後も、彼らは人類の決戦兵器となりえた。


 居間のテレビからニュースが流れていた。

 熱したフライパンには、刻んだソーセージとピーマンが焼かれる。

 香ばしい匂いが部屋中に薫る。

 茹でたパスタが投入され、続けてトマトソース、軽く和えられる。

 パスタが、どんどん赤く染まっていく。ナポリタンという料理らしいが、詳しくは知らない。幼少の頃から作ってきたレパートリーの一つだ。

 ヤマトは、それを丼に移し、テーブルに持って行く。

 キッチンに戻り、火が消えているの確認し、箸を持ってテーブルに戻ってきた。

 一人、テーブルにつく。

 何もない部屋だった。

 整理されているというより、物がないのだ。生活感がまるで無いのだ。

 丼を掲げ、食べ始めたヤマトは、テレビを見た。

「先日、隣国ノーロキアが、予定になかった軍事演習を行った模様です。

 専門家によると、ドゥームシティの発掘権をめぐり、争っている本国へのアピールと……」

 また、きな臭いニュースがやっていたが、すぐにテレビを消してしまった。

 興味がわかないからだ。

――――いや、違うか。

 気になる事があって身に入らないのだ。

 ヤマトは、溜息をつく。

 気になる事、そう今日の昼の事を思いだしていた。

 あの後、ヤマトはすぐに帰宅を許された。

 学校まで送ってもらい、すっかり放課後だったため、そのまま帰宅した。

 ヤマトは、考えをめぐらした。

 考える時間が与えられてもな……。

 『父親』、その単語は知ってはいる。

 だが、実感がない。

 どういうモノなのか、分からない。

――――忘れた? 

 違う、そもそも、そんなモノに接した記憶がないのだ。

 父親の記憶は一つだけ。

 はじめての孤児院の記憶。

 応接室から出て行く、父親の背中。

 顔も覚えていない。

 振りむきもしなかったから。

 ただそれだけの記憶。

 諸手続きのため、名前は知っているが、それだけの人。

 孤児院で別れて以来、その後連絡もなく、行方も知らない。

 だから、その名が出た時は戸惑った。

「父親か……」

 行方不明扱いだという事すら今日、初めて知った。

 自分には「いない」とし、心の中で整理され扱った。

 孤児院を出て、自立と呼べるか知らないが、自分の人生を

一人で決め、歩んできた。

 ふと、疑問に思う。

 彼は、その間、何をしていたのだろうか。


 数日後、ヤマトは大きめの荷物を持ち、山道を歩いていた。

 まわりは見渡す限り草原で、ヤマトは牧場に迷いこんだか思うくらいだった。

 土が表われた道は、雑草が芽を出していた。

 カンパニー〈ヴァルハラ〉へと続く道だ。

 目的地は、大きな木の下にある建物である。

 木できた柵に囲まれた建物だった。

 個人宅にしては、中庭が広い。

 窓には、花の形に切りとられた色様々な紙が張られていた。

 幼稚園か、ここは?

 そんな所感がした。

 見ると窓から、小さい子供がこちらを覗いている。

 何なのだ? ほんと傭兵会社なのか?

 そんな事を考えていると、急に呼びとめられた。

「よ!」

 テルアキが、門の手前で片手をあげていた。

「お前の案内役を押しつけられた」

「だったら嬉しそうな顔しろよ」

「男のエスコートで、うれしいわけないだろ」

 今日から、[ワルキューレ]を見つけた場所へ向かう事になっていた。

 それは、父親の手掛りを追う事でもあった。

 探してどうする?

 そんな想いもある。だが、動かなくては、状況は掴めないのだ。

 ヤマトが、小屋の方へ向かおうとする。

「そっちじゃない。こっちだ」

 呼び止めたテルアキは、幼稚園のような建物の奥を指さし、そちらの方へ向かう。

「ああ」

 ヤマトは、テルアキの跡を追う。

「あの建物は?」

「ああ、イーシュ社長がやってる孤児院」

「え?」

 テルアキは、そのまま孤児院であるという建物の裏手まで来ると、別の建物をさした。

「副業で傭兵会社もやってるのさ。どっちが副業か、知らないけどな。

 で、こっちがその会社」

 テルアキが指さした建物は、廃棄された学校を連想させた。

 ヤマトは、あまりのボロさに唖然とした。

「ここは、ハンガーな。ボロいだろ」

「……ああ」

 ヤマトの様子を見たテルアキは、どこか楽しげであった。

「でも、中は結構、スゲェんだぜ。来いよ」


 テルアキに連れてこられたのは、とあるシャッターの前だった。

「ちょい待ってな」

 テルアキが、何か端末をいじる。

 すると、シャッターが開き始める。冷たい空気が溢れ出す。

 シャッターが開ききった所で、中に何がいたのか分かった。

 人の数倍ある金属の人型がうずくまっていた。

 七頭身の体に長い手足と、戦闘兵器だというのにどこか女性を連想させる機体である。

 ヤマトは、こいつをどこかで見たと、そして思い出した。

 昨日の会議室での立体映像だ。

「こいつ……[ワルキューレ]か」

「そう、見たいかなって、思って」

 ヤマトは見上げる。

「こいつが……」

 喉が渇くのを感じた。

 突然、大きな音が鳴る。密閉された空間に空気が流れこむ音だ。

 次いで、[ワルキューレ]の背中のハッチが開く。

 誰か、乗っていたのか?

 ハッチから出てきたのは、女性だった。

 テルアキが、気易く女性に声をかける。

「お疲れ、調整終わった?」

「テルアキ君、いたんだ。終ったよ」

 その女性は、そこでテルアキの他に、もう一人いる事に気がついた。

「あっ……」

 ヤマトと、自然と目が合う。

 ヤマトは、そこで初めて女性がサヤカである事に気がついた。

「よっ」

 仕方なく、ヤマトは挨拶するが、サヤカが返したのは冷たい返事だった。

「……来たんだ」

「ああ」

「お前らな……」

 二人の様子を見たテルアキは、呆れた。

「まあ、いいや、フジムラ。俺、これから社長のトコに行くんだけど、お前も来いって」

「えっ、うん。分かった」


 ヤマトは、テルアキに連れられ、社屋に入った。

 もの珍しそうに当たりを見わたす。木造の建築物は珍しいのだ。

「大きな会社だと思ってたか?」

 テルアキが、勘違いなのか、そんな事を聞いてきた。

「いいや。単に木造の建築物てのが珍しくてな」

「建物は昔の小学校を改築したみたいだぜ」

「そうなのか。まあ、思っていたよりも小さい会社だと、思ったのも事実だけどな」

 後で黙ってついてきていたサヤカが、この言葉に噛みついてきた。

「でも、私達、三姉妹がやっている会社なの。バカにしないで」

「バカにしたわけじゃない……」

「どうだか」

「はいはい、着いたぜ。失礼します」

 そう言って、テルアキが開けた部屋には「職員室」と掲げた木の札に「事務室」

と修正されている部屋だった。

 部屋の外まで、子ども達の騒がしい声がする。

 戸を開けると中は、こじんまりとした部屋だった。複数の机が並んでおり、二つ程の島を作っている。机は十数戸あるのに、机にすわっていたのは二人だけであった。

 一人は、離れた机にイーシュである。膝に赤毛の5,6歳であろう女の子を乗せ、手には絵本を持っており、彼女の周りには二人の子供が戯れていた。

「あらっ、いらっしゃい」

 こちらに気づき声をかけてきたイーシュに、ヤマトは軽く会釈を返した。

「ごめんね、ちょっと待ってね」

 そう言うとイーシュは、少し離れた席に座っていた少女に話しかけた。

「ミネルちゃん、冷たい物もってきてくれる?」

 そう言われた少女は、机から無言で立ちあがった。

 金髪をツインテールに纏めた少女だった。年は12、13歳くらいだろうか。フランス人形のような少女だと感じた、力強い生命力を感じないのだ。どこか無機質な印象を与える。

 無言で立ちあがった少女は、ヤマトの前を通り部屋を出て行く、挨拶もなかった。

「……」

 ヤマトは会釈しかけ、いたたまれなくなり鼻の頭を掻いた。

 イーシュは、そんなヤマトに気にも止めずに、今度は周りにいた子供達によびかけた。

「はいはい、みんなは、お仕事始めるから出て行こうね」

「えー」

 子供達が不満を口に出す。

「お仕事始めなきゃいけないから、ね」

 子供達は未だ不満顔だったものの、おとなしくイーシュの下から離れていく。

「ごめんね、終ったらね」

「うん、じゃあね」

 さびしそうに部屋を去っていく子供達、これを見たテルアキも、部屋を出て行った。

「じゃあ、俺も行きますね」

「え、飲み物くらい飲んでいったら」

「いえ、仕事あるんで。おやっさんに怒鳴られちまう」

「そう、ごめんなさいね、スズキ君」

「いいですって、じゃ」

 テルアキが社長室を出て行った。

 ヤマトは、取り残された気がした。

「コスギ君。そこに座って」

「どうも」

 イーシュはソファーを勧められ、ヤマトはそこに腰を掛けた。

 イーシュも、その向かいに座った。

 すると部屋の扉が再度、開き、先ほど出ていった少女が部屋に入ってきた。

 お盆を持っており、その上にコップが五つ置いてある。

 少女は、ヤマトの前にそのコップ一つをそっと置くとポソリと呟いた。

「……アイスコーヒー」

「えっ?」

 ヤマトは一瞬、戸惑ってしまう。

「どうも」

 ミネルは、机にコップを全て置くと、イーシュの横に座った。

「麦茶の方が良かった?」

「いえ、おかまいなく」

「出すだけ、もったないわよ」

 サヤカが憮然とした文句を言った後、顔を凍りつかせた。

「えっ」

 置かれたコップは5つ。イーシュ、ミネルの前と、その向かいのヤマトの前。ヤマトの両隣に二つ。サヤカが席に付こうとし、戸惑う、並べた張本人に抗議をした。

「ちょっと、ミネル?」

 そう呼ばれたミネルは、無表情のまま、サヤカを見た。

「自意識過剰」

「なっ、ミネル?!」

「もう、サヤカちゃん、座りなさい」

「もう!」

 物静かながら、どこか威厳のあるイーシュの一声に、サヤカはまるで断腸の思いでヤマトの隣に座った。

「ふん」

「もう、ごめんなさいね、コスギ君」

 妹に非礼に詫びを入れたイーシュは、そのまま言葉を続けた。

「ようこそ、カンパニー『ヴァルハラ』へ」


 イーシュは、話もそこそこに本題に入った。今までの経緯をヤマトに説明をしだしたのだ。

「[ワルキューレ]を発見した場所は、ここ」

 イーシュは、テーブルの上のディスプレイに表示された地図を指さした。

 その場所は、今いるこの街から、およそ300km程離れた場所であった。

 次いで、指したポイントの周りをクルリと輪を描く。

「ここらへんはドゥームシティという都市があった場所。10年前に放棄されて無人となった都市よ。この下には大戦時代の遺跡があるんだけど。そこを探索しててね」

 大戦時代。

 今からおよそ300年前から200年前を指す時代である。

 人類がこの星「フォース」に辿りついてから、100年後、人類は種の生存をかけた戦争に突入した。この戦いは200年間にも及び、これを大戦と呼んだ。

 大戦結果は、人類の敗北。この星の移住民は、都市単位で籠城を行い。何とか生き延びた。だが、その影響は大きく、人類はやっと地球で言う21世紀とよばれた頃まで、文明を復興させた。

 この頃の遺跡の事をいっているのだ。

 変に思ったヤマトは、疑問をそのまま口にする。

「発掘自体はあらかた済んでいる地域でしょ。しかも、発掘の権利の事で隣国のノーロキアと

 もめてている地帯ですよね。よく発掘する気になりましたね」

「……」

 三姉妹は、沈黙してしまう。

 人類は、文明を復興させるのに、単独で行った訳ではない。過去の遺物から有益な物を拾い上げ流用したのだ。殆どの科学技術はブラックボックス化し、いじるにいじれなくなっていたのだが、壊れた物でも、その中に眠るレアメタルは、貴重な資源になったのだ。

 三人姉妹は観念したかのように長女を見た。その長女が口を割った。

「……実は、偶然発見したわけじゃないの。父が三カ月前に送ってきた手紙の中に、この場所

 について触れてたの」

「その場所に、あのTAL[ワルキューレ]があったと」

「そう。で、見つけて、軍に持っていけば、おかしな事になるじゃない」

 サヤカが突然、文句を言いだす。

「あのTALは、父さんの機体なの。私は見てるんだから」

 イーシュは、困った顔でサヤカを見た。

 いい加減、言われの無い敵意に、呆れたヤマトが、言葉を返した。

「だからな、そんな事を言われても、俺にだってどうしようもないんだよ」

「何よ!」

 正論で返したヤマトに、サヤカは何か言いたげな顔をするが、矛先を引っ込めた。

「父は、それを最後に連絡が途絶えたの。私達は父を探している」

 静かに、そして力強くイーシュが語る。

「だから何でも良い、父の手掛かりが欲しいのよ。ヤマト君、あなたのお父さんは?」

 イーシュが切り出した話題に、ヤマトは素直に事実を述べた。

「知りません」

「知らないってことはないでしょ?」

 再度、噛みつくようにサヤカが口を挟んできた。

「軍基地でも言ったろ……。十数年、会ってないし、連絡先も知らない。だいたい今、生きて

 るのか、死んでるのかも知らない」

「……」

「直接、会ったとしても分からないよ。顔すら覚えてないからな」

 何か、言いたげなサヤカだったが、そのまま口を閉ざしてしまった。

「でも、行方不明という扱いだったみたいですね。俺の所に知らせが来たって事は」

「……お父さんの足取りが掴めたらいいわね」

 静かにイーシュがつぶやいた。

「どうでしょう。ここまで行ったら、知らない人と一緒ですから」

「……」

「だから、実際の所、迷惑してるんですよ。本当に父の物なのかも、分からないので」

「……あれは、あの機体は、父さんの!」

「だから、それをこれから調べに行くんだろ。だいたい、それだって昔に見せて貰ったってだ

 けだろ。同機種の機体かもしれないだろ」

「そんな事ない、あれは父さんの!」

 立ち上がり、サヤカは抗議を示すが、イーシュがこれを諭した。

「サヤカ、落ち着きなさい」

「……」

 不服なのは、表情でありありと分かったが、サヤカは矛先を納め、ソファに座り直す。

「コスギ君もさっき言ってたけど。これから、それを調べに行くのよ」

 そこまで言ったイーシュは、立ち上がった。

「来て。」

「えっ、はい」

「我が社が誇るものを見せてあげる」

 大人っぽい印象だったイーシュが、子どもっぽく笑ったのだった。


 イーシュに連れてこられたのは、体育館だった。正確には体育館ではない。過去、体育館として使われ、今では、業務用の資材や備品などが所狭しと置かれた。聞くと孤児院の備品も置かれているらしく、子ども用の玩具なども置かれていた。

「そっちじゃなくて、こっち」

 両開きの扉に手をかけると、力強く引く。

「ハンガーとしてつかってるんだけど」

 そこには、すぐ壁にぶつかった。

 金属の壁だ。

 建物の壁と金属の壁の間は、人ひとりがやっと通れるかどうかの隙間しか開いてない。

「何だ、これ」

 いや、違う。

 でかい何かが、あるのだ。

 近くのある階段を上りながら、イーシュは説明をしてくれる。

「どう、これが〈ヴァルハラ〉が誇る、陸上揚陸艦[デュアルホーン]よ」

 得意満面な顔をした三姉妹がそこにいた。

 言われて気づいた。金属の壁、それは艦の外壁なのだ。

 そこに大きな船が、鎮座していた。

 双胴船と言われる形態をした船であった。大きめの艦二つを横に連結させている。

「大きめ揚陸艇二隻を連結させてあって、ホバーで移動するのよ」

 その外見に大きな特徴があった。甲板から大きく飛び出した二つの突起物。

「だから、二本の角か」

「そう、大型マニュピュレーターと」

 ひとつは、大規模な土木現場で使われているマニピュレータだった、もう一つは、まっすぐに延びた金属の筒状の物が、かいま見えた。ヤマトには、それが何かはすぐに分かった。

「リニアガンか、あれ」

「! そう、よく分かったわね」

「……これでも、軍事学校の学生だからな。他にも……」

 近接防御火器システムなのだろうか、ガドリング機関砲が一機見える。

「だいぶ、物騒だな。民間の会社だろ」

「街を出たら、危険だらけだもの。同業者は、みなこんなものよ」

 隣にいたサヤカが事無げに言い返してきた。

「ふーん」

 考えてみれば街を離れれば、未開の地が続く。そこを進むのであれば、これくらい必要なのだろう。

「隣国のノーロキアとの、関係も芳しくないしね」

「そんなもんか」

 前方を歩くイーシュが振り返った。

「入って」


 扉が滑る音がした。十五平米程の部屋であった。座席はそれぞれ、壁にむいていた。

「ここがブリッジ。というか、まあそう呼んでるだけの運転室だけど」

「へー。でも、結構広いじゃないか」

「よう、イーシュ。サヤカちゃん」

「ジェリドさん」

 そこに伊達男とも言うべき、金髪碧眼の男がいた。背も高く、細い見た目の割に、筋肉がしっかりとついている。

「君が、ヤマト・コスギ君か」

「はい」

「俺は、シンヤ・ジェリド・クロキだ。このヴァルハラの唯一のTALのパイロットだ、よろ

 しくな」

 差し出された手に、ヤマトはおずおずと応える。どうも握手というのは慣れない。

「ついでに言うと、俺が軍部から出向した人間だ」

「はあ」

 どうでも良いと思っていたヤマトの返事は、どこか気が抜けていた。

「少し、ここにいて。もう少しで出発だから」

 そう言って、三姉妹はそれぞれ席について、作業を始めた。

「落ち着かないか、ラッキーボーイ」

 そう呼んできたジェリドに、ヤマトは少し不愉快になった。

「はい。何で、ラッキーボーイなんですか?」

「すまん、すまん。だが、幸運だろ。いきなり、数億分の財産が降って湧いたんだ。宝クジに

 当たるよりも、よっぽどの幸運だ」

「……」

 どう返していいやら、ヤマトには分からなった。

「挨拶はそれくらいで良いかしら。ヤマト君は、そこに座って」

「はい」

「もう、すぐ出るから」

 ヤマトが席につくと、ミネルが呟いた。

「イーシュ姉、……発進準備OK」

「そう。じゃあ、出発しましょうか。ミネルちゃん、宜しく」

「うん」

 そう言って、ミネルは艦内放送のスイッチを入れた。

 それを見た、イーシュはマイクヘッドを装着した。

「[デュアルホーン]、発進!」

 イーシュの鶴の一声で[デュアルホーン]は動きだした。

 ヤマトは、少しだけ高揚感を感じるのだった。


 カンパニー〈ヴァルハラ〉から少し離れた場所に人の姿があった。

 [デュアルホーン]が格納庫から出て行く姿を、見つめていた。

 カンパニーを一望できる丘から、双眼鏡で覗いていたのだ。

 [デュアルホーン]が出て行くのを確認すると、男は通信機を取り出し何かつぶやくと、去っていた。


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