『悪いことは言わないから、今すぐ引き返せ』って言われたら素直に言うことを聞いて引き返しますか? ~実行されなかった禁忌は物語を面白くするのか?~
こんにちは。こんばんは。
ディナーにたらこクリームパスタを食べた水産加工食品のたらこですよ。
今回は長文タイトルに挑戦しました。
タイトルを適当につけてエッセイを書く挑戦です。
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はい、タイトル。
映画とかだとよくあるシチュエーションですよね。
ホラー映画の序盤。
主人公たちにむかって意味深に忠告をするモブ。
この先へ行ったら一体なにが起こるのか。見ている人は不安に思うことでしょう。
この後、主人公たちは忠告を無視して先へ進むわけですが、こういったセリフがあるだけでハラハラドキドキしますね。
いわゆるカリギュラ効果というやつで「やるな」「みるな」「きくな」と言われると、むしろ逆に興味を駆り立てられてしまうという心理です。
ちなみに『カリギュラ』は映画のタイトルで、過激すぎて公開が一部禁止されてしまい、逆に興味を煽ってしまったことに由来します。
人は禁止されると、かえって興味を惹かれてしまい、その先に何があるのか確かめたくなってしまうものなのです。
だから……あえて引き返してみたらどうなるのか、ちょっと考えてみました。
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怪しい館へと向かう主人公たち。
その前に一人の老人が立ちはだかる。
「お前たち、悪いことは言わない。この先はとても危険だ。今すぐに引き返せ」
「はい、分かりました」
「そうか、言っても分からな……え?」
「僕たちは帰りますね、ありがとうございます」
「おっ、おう……」
こうして主人公たちは館へ立ち寄ることなく、自分たちの家へ帰っていきました。
めでたし、めでたし。
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いや、だからなんだよ。
お話が始まらないじゃないか。
そうなんですねー。
引き返したままだとお話にならないんです。
でもこの後、やっぱり気になって一人で行く、なんて展開になったら、それはそれで面白そう。
んで、ちょっと疑問に思ったんですけど。
忠告を無視して強行突破するのと、そもそも忠告されないのとでは、どっちが物語に対する期待値が上がりますかね?
これから危険な場所へ行こうって言う時に「引き返せ」なんて言うキャラクターが現れても、見ている方からしたら「行くに決まってんだろ」って思うんですけど。
でも、忠告すらされずにそのまま目的地へ向かってしまったら、なんか物足りない気もするのですよね。
やっぱりハラハラドキドキには、誰かが「やってはいけない」と戒めるシーンが必要なのかなぁ。
あってもなくても、その後の展開は変わらないと思うのですが。
◇
やってはいけない。
そう言われた主人公が最後までやらなかったら。
どうなったんだろうってモヤモヤしませんか?
例えば開けてはいけない箱や扉。
口にしてはいけない果実。
行ってはいけない儀式。
などなど。
作中で登場した禁忌を主人公が犯すことなく終わりを迎えたら「いや、なんでやらねぇんだよ」ってなるかもしれません。
チェーホフの銃という言葉があります。
簡単に言うと「物語の中(特に冒頭)で銃を登場させたら、ちゃんと物語の中で使わないといかんよ」と言うことで、「使う予定もない物を登場させるな」と解釈することもできます。
物語の中で登場人物が禁忌となる行為が提示された場合、それは必ず実施されるべきなのかもしれません。
でないと、観客の期待に背くことになりますからね。
行ってはいけないと言われた館があったら、そりゃ行くだろうし。
開けては行けない扉があったら絶対に開きますよね。
読んではいけない本も、会ってはいけない人物も、食べてはいけない果物も。
しかり。
禁忌をそのまま放置して終わったらどうなるんだろう?
そんなことを考えたこともありますが、逆の立場――つまりは読者、視聴者――だったら絶対にモヤモヤすると思うんですよね。
どうしてやらなかったの?
やったらどうなってたのって。
◇
ある意味、モヤモヤは物語に対する期待なのかもしれません。
そのモヤモヤが解消されてしまった途端に、作品に対する興味を失うこともあります。
例えば、ずっと謎だったモンスターの姿があまりにショボかったら、見ている人は恐怖心を失ってしまうとか。
えらく仰々しく引っ張った割には大したオチではなく、エンディングを見た後で作品に興味を無くすとか。
色々なパターンが考えられますよね。
モヤモヤがモヤモヤのまま終わってしまうのも、実はアリなんじゃないか。
そんな風に思ったりもします。
◇
物語のキーとなる謎の存在。
最後まで正体が分からないまま終わる展開は珍しくないです。
具体的にどの作品とは言えないのですが、謎を謎のまま残して終わると言うのも、ある意味では正解なかもしれません。
ずっと昔に、タイトルの意味を説明しないで終わらせた作品があります。
その作品を複数の人に見てもらったのですが、タイトルの意味をどう解釈するかで議論になっていました。
そのやりとりを見て、とても嬉しく思ったのですが……解釈の違いから起こる議論と言うのは、作者が全て書ききってしまうと起こらないんですよね。
最後まで明かされなかった謎が存在しているからこそ、解釈の違いが生まれたのかなと。
作触れた人によって解釈が異なる作品がたらこは好きです。
読んだ後に世界観が広がりますし、物語がまだ続いている気がするんですよね。
◇
物語の中で提示された謎や禁忌。
それらが触れられることなく物語が終わったら。
いったい読者は何を感じるのでしょう。
物語は作者が終わらせれば、そこで終わりです。
続きはありません。
しかし……もし、謎と言う種が残されていたら。
読者の中で新しい物語が芽生えるかもしれませんね。