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たらこのエッセイ集

『悪いことは言わないから、今すぐ引き返せ』って言われたら素直に言うことを聞いて引き返しますか? ~実行されなかった禁忌は物語を面白くするのか?~

 こんにちは。こんばんは。

 ディナーにたらこクリームパスタを食べた水産加工食品のたらこですよ。


 今回は長文タイトルに挑戦しました。

 タイトルを適当につけてエッセイを書く挑戦です。



 ◇



 はい、タイトル。

 映画とかだとよくあるシチュエーションですよね。


 ホラー映画の序盤。

 主人公たちにむかって意味深に忠告をするモブ。


 この先へ行ったら一体なにが起こるのか。見ている人は不安に思うことでしょう。

 この後、主人公たちは忠告を無視して先へ進むわけですが、こういったセリフがあるだけでハラハラドキドキしますね。


 いわゆるカリギュラ効果というやつで「やるな」「みるな」「きくな」と言われると、むしろ逆に興味を駆り立てられてしまうという心理です。

 ちなみに『カリギュラ』は映画のタイトルで、過激すぎて公開が一部禁止されてしまい、逆に興味を煽ってしまったことに由来します。


 人は禁止されると、かえって興味を惹かれてしまい、その先に何があるのか確かめたくなってしまうものなのです。

 だから……あえて引き返してみたらどうなるのか、ちょっと考えてみました。



 ―


 ――


 ――――


 怪しい館へと向かう主人公たち。

 その前に一人の老人が立ちはだかる。


「お前たち、悪いことは言わない。この先はとても危険だ。今すぐに引き返せ」

「はい、分かりました」

「そうか、言っても分からな……え?」

「僕たちは帰りますね、ありがとうございます」

「おっ、おう……」


 こうして主人公たちは館へ立ち寄ることなく、自分たちの家へ帰っていきました。

 めでたし、めでたし。


 ――――


 ――


 ―



 いや、だからなんだよ。

 お話が始まらないじゃないか。


 そうなんですねー。

 引き返したままだとお話にならないんです。


 でもこの後、やっぱり気になって一人で行く、なんて展開になったら、それはそれで面白そう。


 んで、ちょっと疑問に思ったんですけど。

 忠告を無視して強行突破するのと、そもそも忠告されないのとでは、どっちが物語に対する期待値が上がりますかね?


 これから危険な場所へ行こうって言う時に「引き返せ」なんて言うキャラクターが現れても、見ている方からしたら「行くに決まってんだろ」って思うんですけど。

 でも、忠告すらされずにそのまま目的地へ向かってしまったら、なんか物足りない気もするのですよね。


 やっぱりハラハラドキドキには、誰かが「やってはいけない」と戒めるシーンが必要なのかなぁ。

 あってもなくても、その後の展開は変わらないと思うのですが。



 ◇



 やってはいけない。

 そう言われた主人公が最後までやらなかったら。


 どうなったんだろうってモヤモヤしませんか?


 例えば開けてはいけない箱や扉。

 口にしてはいけない果実。

 行ってはいけない儀式。

 などなど。


 作中で登場した禁忌を主人公が犯すことなく終わりを迎えたら「いや、なんでやらねぇんだよ」ってなるかもしれません。


 チェーホフの銃という言葉があります。

 簡単に言うと「物語の中(特に冒頭)で銃を登場させたら、ちゃんと物語の中で使わないといかんよ」と言うことで、「使う予定もない物を登場させるな」と解釈することもできます。


 物語の中で登場人物が禁忌となる行為が提示された場合、それは必ず実施されるべきなのかもしれません。

 でないと、観客の期待に背くことになりますからね。


 行ってはいけないと言われた館があったら、そりゃ行くだろうし。

 開けては行けない扉があったら絶対に開きますよね。

 読んではいけない本も、会ってはいけない人物も、食べてはいけない果物も。

 しかり。


 禁忌をそのまま放置して終わったらどうなるんだろう?

 そんなことを考えたこともありますが、逆の立場――つまりは読者、視聴者――だったら絶対にモヤモヤすると思うんですよね。


 どうしてやらなかったの?

 やったらどうなってたのって。



 ◇



 ある意味、モヤモヤは物語に対する期待なのかもしれません。

 そのモヤモヤが解消されてしまった途端に、作品に対する興味を失うこともあります。


 例えば、ずっと謎だったモンスターの姿があまりにショボかったら、見ている人は恐怖心を失ってしまうとか。

 えらく仰々しく引っ張った割には大したオチではなく、エンディングを見た後で作品に興味を無くすとか。

 色々なパターンが考えられますよね。


 モヤモヤがモヤモヤのまま終わってしまうのも、実はアリなんじゃないか。

 そんな風に思ったりもします。



 ◇



 物語のキーとなる謎の存在。

 最後まで正体が分からないまま終わる展開は珍しくないです。


 具体的にどの作品とは言えないのですが、謎を謎のまま残して終わると言うのも、ある意味では正解なかもしれません。


 ずっと昔に、タイトルの意味を説明しないで終わらせた作品があります。

 その作品を複数の人に見てもらったのですが、タイトルの意味をどう解釈するかで議論になっていました。


 そのやりとりを見て、とても嬉しく思ったのですが……解釈の違いから起こる議論と言うのは、作者が全て書ききってしまうと起こらないんですよね。

 最後まで明かされなかった謎が存在しているからこそ、解釈の違いが生まれたのかなと。


 作触れた人によって解釈が異なる作品がたらこは好きです。

 読んだ後に世界観が広がりますし、物語がまだ続いている気がするんですよね。



 ◇



 物語の中で提示された謎や禁忌。

 それらが触れられることなく物語が終わったら。

 いったい読者は何を感じるのでしょう。


 物語は作者が終わらせれば、そこで終わりです。

 続きはありません。


 しかし……もし、謎と言う種が残されていたら。

 読者の中で新しい物語が芽生えるかもしれませんね。

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― 新着の感想 ―
[良い点] あー、そうですよね~。 やっちゃいけないのスルーするなら、ストーリーにそれ出さなくていいですもんね。 ( *´艸`)
[一言] そういうものを専門に扱う道具屋があってもいいかもですね 『絶対に開けてはいけない宝箱』とかをその道具屋に持っていくのです それで、開けたいという客に売るのです もし有益なものが出れば。持ち…
[良い点] 面白いところに注目されてますね。いろいろ考えさせられました。 [一言] ホラー好きから言わせていただくと、実は「引き返せ」「うん、引き返すよ~」はあまり珍しくありません。引き返した後、いろ…
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