表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異常調査部〜院内発砲事件〜【2】  作者: 月ノ羽ルナ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/24

お守り

ーー人に向けて引き金を引いてしまったーー


拳銃とは無縁の生活が長かったせいだろうか、簡単に人を傷つけてしまえる武器を使い、その圧と重みに耐えられずめぐるは、そのすぐ後気を失ってしまった


朦朧もうろうとする意識のなか、小さい頃の夢を見る。それは、幼心ながらに覚えている父と母との大切な約束…


幼いめぐる

「俺、将来優しくてカッコ良くって強いロボットになるんだ!」


ロボットアニメに憧れた子供の、よくある夢だった。人間がロボットになれる訳ないのに、この頃は純粋になれるんだと信じていた


そんな子供に、両親は馬鹿にするでも呆れるでもなく、いつだって笑って応援してくれるんだ


「はは、ならお父さんはメカニックにならないとな」


幼いめぐる

「なんで?」


「紾ロボットが壊れたら、直す人間が必要だろ?だからメカニックだ」


幼いめぐる

「えぇー、紾ロボットは無敵だから壊れないんだよ」


そういって、不満そうに頬を膨らませる俺の背中を、母が優しく抱きしめた


「いくら強いロボットでも、充電しなきゃ動けないでしょ?だからお母さんが充電してあげる」


幼いめぐる

「恥ずかしいよ…でも、まぁいいや」


背中から伝わる温もりが好きで、いつだって母に甘えてしまう


「メカニックお父さんは!なぁ、メカニックお父さんも居るんだぞ!」


そんな俺に、今度は父が頬を膨らませて不満そうにする


幼いめぐる

「分かったよ、メカニックも居るよ。でもさ直すとこないよ」


「あるじゃないか!お父さんはここを治すぞ!」


父は自分の心臓に手を当てた


幼いめぐる

「なんで心臓?」


「ロボットも人間もココが一番弱点なんだ。ココが揺らぐと直ぐに充電も切れる。そうしたら戦えないだろ?」


幼すぎて、父の言ってる意味が理解できてなかった俺は、充電が切れて戦えない=弱いと思った


幼いめぐる

「えー、ヤダよ。どうしたら強くなれるの?」


「簡単よ。こうやって目を閉じて誰かと手を繋ぐの、ドクドクって音が聞こえるでしょ?」


母が分かりやすいように、俺の手を握りながら自分の心臓へと当てた。微かに心臓の音が聞こえる


幼いめぐる

「うん、聞こえるよ」


「あとは簡単だ、お父さんやお母さん以外でその相手を見つける事だ!」


幼いめぐる

「えー、意味分かんない」


父は豪快に笑いながら、俺の心臓を指で何回か叩きながら言うんだ


「逆にココが苦しいと叫んでいる人を見つけたら、紾が手を繋いでやるんだぞ!」


幼いめぐる

「紾じゃなくて、紾ロボットだってば!よく分かんないけど、手繋ぐんだよね、分かった!」


よく分からない会話に飽きてしまったんだろう、俺は話の大半も理解しないまま、手を繋げば良いんだと思って、純粋にうなづいた


「流石、優しくてカッコ良くて強いロボットだな」


頭を鷲掴みにして、思いっきり揺らす父の撫で方は、痛いしグラグラするし苦手だった…でも必ずその後に母が父を叱りながら、優しく抱きしめてくれるのを知ってるから、わざと嫌だって言わなかったんだ


幼いめぐる

「わかった、約束するよ」



ーーー ーーー ーーー ーーー




気絶する前とは違い、夢のおかげか安らかな気持ちのまま、めぐるはそっと目を覚ました


意識を失う前の事が鮮明に頭の中で蘇る。無意識に片手を動かし天井へとかざし、ため息をつきながら見つめた


蔡茌さいし めぐる

(引き金を引いたのは、こっちの手じゃない)


薄れゆく記憶の中、黎ヰ(くろい)が「誰も傷つけてないから、安心して寝ときな」と言ってくれていた気がする


その言葉が、本当かどうかは分からないけど…だとしても昔の夢を見たせいだろうか、引き金を引いてしまった手は困ってる人の手を握れるのだろうかと、考えてしまう


どうしようもない罪悪感に苛まれながら、めぐるは恐る恐るもう片方の手をそっと動かした


すると硬い何かが指に当たった。何かを握っていたのだと知ると、その正体を確かめるように指を滑らせた


蔡茌さいし めぐる

「いたっ!」


指先に鋭い痛みがはしり思わず声を上げてしまう。バッと飛び起きてみると、そこにあったのはハサミだった


蔡茌さいし めぐる

「なんで俺は…ハサミを握って…るんだ?」


一瞬、黎ヰ(くろい)の顔が思い浮かぶ……


奇妙に思いながらも身体を起こし、ベッドの脇へと移動した時だった


蔡茌さいし めぐる

「?!!!」


人の気配がして勢いよく顔を向けると、暗がりの中でニタリと笑う人物と目が合った


あくた 昱津いくつ

「お、おは…よう」


その人物が誰なのか理解する前に、驚きと言い知れぬ不気味さにめぐるは、気づくと叫び声をあげていた




ーー


ーーー


蔡茌さいし めぐる

「うわぁぁぁぁ?!」


異常調査部の解剖部屋の奥から、めぐるの叫び声が聞こえ、彼が目覚めるまで待っていた二人は、扉の方を見た


黎ヰ(くろい)

「起きたな」


冷静に言う黎ヰ(くろい)とは対照的に、皐月さつきは何事かと慌てて立ち上がった


皐月さつき しゅう

「蔡茌さんの身に、なにかあったんじゃ!」


黎ヰ(くろい)

「芥に驚いただけだって」


特に気にするでもなく机に足を上げ、だらしなく椅子に座っている黎ヰ(くろい)を、皐月さつきは睨んだ


皐月さつき しゅう

「人を見ただけで叫ぶ訳ないでしょう!なにかあったに違いありません、見てきます」


言うが早いか、解剖部屋の前へと来た皐月さつきは、不用意に扉が開いた事で、驚いて足を止めてしまう


あくた 昱津いくつ

「め、ぐるくん…起きたよ…」


皐月さつき しゅう

「うわっ?!」


突然、ぬるりとあくたが飛び出してきて、思わず皐月さつきが小さく叫んだ。それを聞いて黎ヰ(くろい)は、ニヤリと笑う


黎ヰ(くろい)

「クックック、叫んだなぁ〜」


無性に腹が立ったが、相手にしても仕方ないので皐月さつきはそっぽを向く


皐月さつき しゅう

「そんな事よりも、今は蔡茌さんの方が心配です」


蔡茌さいし めぐる

「…驚かして、すまない」


少しふらつきながら、解剖部屋からめぐるが出てくる


皐月さつき しゅう

「もう起きて大丈夫なんですか」


蔡茌さいし めぐる

「あぁ。それよりも、あの後どうなったか教えてくれ」


皐月さつきに支えられながらめぐるは、気持ち程度にある、来客用の椅子へと腰掛けた


黎ヰ(くろい)

(身体から力が抜けてるってトコか、まぁ無理もないよなぁ)


彼が異常調査部へと来てから、まだ一ヶ月ぐらしいか経っていない。不慣れな事務作業に残酷な殺人事件の調査…それに加え、異常調査部と言うだけで恨まれる現状…


これだけでも、めぐるの精神はかなり疲弊していた筈なのに、今回の隅田すみだとの銃撃により心身共に限界を超えている


そんな状態でも、事件のことが気になるのだろう。めぐるはゆっくりと口を開いた


蔡茌さいし めぐる

「……教えてくれ、俺が撃ってしまった一課長は…どうなったんだ…」


めぐるの事だ、必ず聞かれると分かっていた質問に黎ヰ(くろい)は、隅田すみだの状況について話す


黎ヰ(くろい)

「胸部、右手首、両足の腿が強打撲。指と鼻に数カ所の骨折。あぁ、そうそう倒れた弾みで、肋骨も数本ひびが入ってるって、そうなった原因の全部は俺だけど♪」


何故か得意げに笑う黎ヰ(くろい)に対し、皐月さつきはすかさず口を挟んだ


皐月さつき しゅう

「自慢げに言う事じゃないでしょう!!」


一喝した後、皐月さつきは慌ててめぐるへと向き直る


皐月さつき しゅう

「蔡茌さん安心して下さい、弾丸は壁にあったのを鑑識が見つけています。隅田さんにも、撃たれた痕はありませんでした」


蔡茌さいし めぐる

「そうか、良かった…と言って良いのか分からないけど、安心したよ」


話を聞いて、少し肩の力が抜けていくめぐるを横目に黎ヰ(くろい)は心の中で呟いた


黎ヰ(くろい)

(めちゃくちゃ、狙いは良かったけどなぁ〜)


めぐるの放った弾丸は、真っ直ぐに隅田すみだを捉えていて、黎ヰ(くろい)が咄嗟に突き飛ばさなければ、確実に当たっていただろう


それを言ってしまうのは酷な気がした黎ヰ(くろい)は、自分だけが知っている事実を、胸の内に留めておく事に決める


蔡茌さいし めぐる

「人質になっていた医師や看護師、患者に怪我は…」


皐月さつき しゅう

「隅田さんが撃とうとした女性も含めて、全員無事です」


それを聞いて再び胸を撫で下ろす。しばらくの沈黙の後、めぐるは立ち上がると同時に頭を下げた


蔡茌さいし めぐる

「本当にすまなかった。二人には沢山迷惑をかけたどころか、危険に晒した…本当にすまない」


反省し深く頭を下げ続けるめぐるに、皐月さつきは慌てて首を振った


皐月さつき しゅう

「頭を上げて下さい、元はと言えば巻き込んだのは僕の方です。それに、蔡茌さんは人質を守ろうとしたんですから、警察とはいえ誰にでもできる事じゃありません。立派な行動です」


一生懸命にフォローをしてくれる皐月さつきだったが、あの時の自身が冷静に判断していなかった事は、めぐるが一番よく分かっていた


隅田すみだに銃口を向けられ、撃たれてしまうかもしれない恐怖の中、自分よりも人質を守ろうと咄嗟に構えた…


だが、それは隅田すみだに指摘された通り、何の牽制にもならず焦りだけが残った


黎ヰ(くろい)の額に銃口が当てられたのを見て、背筋が凍り頭が真っ白になっていった…そして、気がつけばめぐるは引き金を引いていた


蔡茌さいし めぐる

(もし、誰かに当たってしまっていたらと思うと…)


まだ鮮明な記憶に、めぐるの鼓動は自然と早まった


黎ヰ(くろい)

「正直、紾ちゃんが隅田の気を引きつけてくれなかったら、俺だって隙をつくのは難しかった。それに…」


黎ヰ(くろい)めぐると同じように、立ち上がると頭を下げた


黎ヰ(くろい)

「現場の判断ミスは俺の方だ。状況把握が出来てなかった、撃たせて悪かった」


黎ヰ(くろい)に頭を下げられるとは思わず、めぐるは慌てて訂正する為に顔を上げた


蔡茌さいし めぐる

「いや、撃ったのは俺でーー」


黎ヰ(くろい)

「ようやく、顔上げたなぁ♪」


蔡茌さいし めぐる

「え…」


先程の言葉とは裏腹に、黎ヰ(くろい)の表情は悪戯な笑みを浮かべていた


皐月さつき しゅう

「最初からそれが目的だったんですか、信じられません」


二人のやり取りを見ていた皐月さつきは、黎ヰ(くろい)の謝罪自体が嘘だと思ったらしく、責めるように見たが、黎ヰ(くろい)はそれを軽く受け流す


黎ヰ(くろい)

「ククククク…さて、どうだろうなぁ〜」


茶化す黎ヰ(くろい)に対しての苛立ちから、皐月さつきは顔をだんだんと赤くしていく


皐月さつき しゅう

「こんな時に、ふざけてる場合ですか!この際だから言っておきますが、風十君の件だって納得した訳じゃありませんからね」


皐月さつきの言葉でめぐるは、はっとして思い出す


もし、隅田すみだの立てこもり事件がなければ、めぐるは再び穢佇えだちに取り調べをするつもりだったのだ。心配にならない訳がなかった


蔡茌さいし めぐる

「そう言えば、彼はどうなったんだ?」


取り調べを交代した黎ヰ(くろい)へと聞いたつもりだったが、めぐるの疑問に答えたのは、怒っている皐月さつきだった


皐月さつき しゅう

「送検されました」


蔡茌さいし めぐる

「え?!」


皐月さつき しゅう

「しかも、何一つ聞き出さずにです」


怒りが収まらない皐月さつきは、黎ヰ(くろい)へと詰め寄る


皐月さつき しゅう

「それじゃ取り調べをした、意味がないじゃないですか!!」


黎ヰ(くろい)

「"意味がなかった"と思うのは、あくまでも皐月周目線での話だろぉ」


皐月さつき しゅう

「いい加減な事言わないで下さい。僕は貴方に風十君を任せたんです!それを、何も聞き出さないまま送検させただなんて、貴方は最初から風十君の事なんてどうでも良かったんだ…ただ、隅田さんの嫌がらせの為だけにやったんでしょう!」


取り調べを見ていない皐月さつきからすれば、この意見は最もだと黎ヰ(くろい)は思った


黎ヰ(くろい)

(隅田との事を全部認めたって言ったところで、送検がなくなる訳じゃないし、今までしてきた事が消える訳でもない…どんな理由であれ、穢佇達のしてきた事を客観的に見れば黒だ)


隅田すみだと手を組み、わざと現行犯逮捕できるように仕掛けていた。それは立派な犯罪行為


送検された穢佇えだち達のその後の判断は、警察ではなく弁護士へと託される。なら、後は弁護士に任せるべきだろう


黎ヰ(くろい)

(今の穢佇なら、何一つ誤魔化さず話すだろうしな)


そもそも暴行罪で取り調べているのだから、共犯の事を自供しましたと言っても、弁護士によっては下手に庇っていると思われ、逆にマイナスな印象を与えてしまう可能性もある


だから黎ヰ(くろい)は、取り調べ室の一件を言わず、暴行罪については深く反省してるので和解した。とだけ報告したのだった


黎ヰ(くろい)

「起こった出来事を無かった事には出来ねぇし、するつもりもない。過ち自体を否定しちまうのは、その時の穢佇風十の存在を殺しちまってるのと、同等だって思わねぇ?」


皐月さつき しゅう

「何の話ですか」


突然の問いかけに、皐月さつきは意味が分からないと言うように顔を歪ませた


それを隣で聞いていためぐるは、ふと6年前の彼らを思い出していた


高田たかだ永谷ながたにの二人は、罪を認めても償うチャンスを親に奪われたーーそれは、罪を犯した自分の存在を消されたのと、同じようなものだったのかもしれない


『あの子達は、ちゃんと罪を認めてたのに…やり直すチャンスを奪われて、しかも…精神が不安定だからって、遠くに引っ越させて……本来なら私達、警察が捕まえてあげなきゃいけなかったのに…』


涙ながらに言っていた杉野千すぎのせの言葉が、めぐるの頭をよぎる


蔡茌さいし めぐる

(杉野千は最初から気づいてたのかもしれない。罪を犯した相手に警察である俺が出来るのは、逮捕する事で償うチャンスを与える事だ)


犯罪者だから捕まえるのではなく、罪を償えるように捕まえる。やる事は変わらなくても、この二つの意味は全然違う


黎ヰ(くろい)

「事実をどう受け止めるか。犯人(えだち)警察(おれたち)も、肝心なのは逮捕したその後じゃねーの」


皐月さつき しゅう

「それじゃ遅いんです。家庭裁判所へ送られてしまえば、僕たちは何も出来ません!だからこそ、あの取り調べは風十君の目を覚まさせる、最後のチャンスだったんです」


黎ヰ(くろい)

「最後かどうかを決めるのは、穢佇本人じゃね?」


皐月さつき しゅう

「それはっ、」


不覚にも黎ヰ(くろい)の言葉が心に突き刺さり、皐月さつきは言葉を詰まらせた


黎ヰ(くろい)

「考え自体は、間違ってねーと思うぜ?穢佇をなんとかしてやりたいって、思ってる奴の言葉だしな」


だからこそ、取り調べで何も聞き出さなかった黎ヰ(くろい)に対して、皐月さつきは怒りを抑えきれなかったのだろう


黎ヰ(くろい)

「そこで聞いておきたいんだが、本当に穢佇風十本人の事だけを考えてたって、自信をもって言えるか?」


皐月さつき しゅう&蔡茌さいし めぐる

「?!」


黎ヰ(くろい)の問いかけに、皐月さつきだけではなく話を聞いていためぐるも、目を見開いて押し黙ってしまう


二人ともが、知らず知らずに穢佇えだちと誰かを重ねてしまっていたからだ


蔡茌さいし めぐる

「そうだった、彼は…穢佇君はあの時の二人じゃないんだよな」


育った環境も犯した罪も何もかも違う。なのに同じ高校生というだけで、無意識に自分の中で決めつけていたのかもしれない


蔡茌さいし めぐる

「取り調べの目的が、穢佇君の説得じゃなくなってたのか。彼の為だと言って、俺は…過去の二人を見ていただけだ」


皐月さつき しゅう

「取り調べの…目的…僕は…」


さっきまでの勢いを無くした皐月さつきは、一瞬目の前に居るはずのない隅田すみだの幻覚を見た


穢佇えだちの抱えていたものが重く、皐月さつきは調査をしていくにつれ同情していた。でも、その背後には隅田すみだとの関係がチラついていた


皐月さつき しゅう

「…僕は、ずっと隅田さんとの関係ばかりを追ってしまっていた」


幻覚を振り払うように、皐月さつきは頭を左右へと振った


皐月さつき しゅう

「悔しいですが、貴方の言う通りなのかもしれません」


黎ヰ(くろい)

「じゃなきゃ、わざわざ穢佇に隅田との共犯関係を認めさせようなんて考え、思い浮かばないよなぁ〜」


皐月さつき しゅう

「……」


妙に癇に触る言い回しだなと思いながらも、自身に非があるので皐月さつきは押し黙る


その様子を楽しそうに見ながら、黎ヰ(くろい)は話を続けた


黎ヰ(くろい)

「穢佇はちゃんと、自分のした事を理解してるし受け止めた。ならもう、警察(おれたち)の出る幕はないだろぉ」


蔡茌さいし めぐる

「黎ヰが、彼と向き合って話してくれたんだな」

 

黎ヰ(くろい)

「さぁ、どうだろうね〜。遊んだに近いけどなぁ」


素直に答えない黎ヰ(くろい)だったが、めぐるには彼が目の前の人間を、ちゃんと見ることが出来る優しい人間なのだと分かっていた


蔡茌さいし めぐる

「そうだ、何故か手に握ってあったんだけど、これ黎ヰの…だよな」


先程握っていたハサミをポケットから取り出すと、確認するかのように黎ヰ(くろい)へと渡す


黎ヰ(くろい)

「ん?あぁ」


自然な流れでハサミを受け取る中、皐月さつきはその光景を見て何度か瞬きを繰り返した


皐月さつき しゅう

「手に握ってあったって、どう言う事なんですか」


蔡茌さいし めぐる

「俺もよく分からないんだ」


困った顔で言うめぐるに、ずっと黙っていたあくたがゆっくりと片手を挙げた


あくた 昱津いくつ

「ぼ、く…知ってるよ。黎ヰ君が、寝かせる前に…握らしてたの…見た」


理由は分からないが、なんとなく察していためぐるはやっぱりかと、なんとも言えない表情をする中、皐月さつきが信じられないと言うように口を開けた


皐月さつき しゅう

「何を考えてるんですか、刃物を握らすなんて。一歩間違えば怪我をしていたかもしれないんですよ」


蔡茌さいし めぐる

「少し切ったけど、黎ヰなりに心配してくれた気がするんだ。だから、ありがとう」


軽く血が付いている指を見て、黎ヰ(くろい)は一般的にハサミというものが、どういうものかに気付く


黎ヰ(くろい)

「いや、怪我さして悪かった」


蔡茌さいし めぐる

「黎ヰ?」


表情は見えなかったが、声音が少し震えていた気がしためぐるは、思わず名前を呼んだが、彼にしては珍しく返事が返ってこなかった


あくた 昱津いくつ

「絆創膏…あげ、る…」


蔡茌さいし めぐる

「?!」


不意にあくたが背後から現れ、めぐるは分かりやすく驚いた


皐月さつき しゅう

「その前に消毒です」


蔡茌さいし めぐる

「いや、そこまで大袈裟にしなくても…」


皐月さつき しゅう

「救急箱はどこですか」


皐月さつきが部屋を見渡していると、あくたが救急箱を渡そうと持ってくる


あくた 昱津いくつ

「お、重たい」


が、思った以上に重かった救急箱にあくたが耐えきれず、そのまま地面へと手を離したせいで、皐月さつきの足元へと落下してしまう


皐月さつき しゅう

「いたっ!!」


予想だにしなかった痛みに、皐月さつきが声を上げた。落ちた拍子に救急箱の中身が飛び出る


蔡茌さいし めぐる

「工具?」


飛び出たのは、薬や消毒液ではなくペンチや金づちといった工具ばかりだった


あくた 昱津いくつ

「通り、で…重い、訳だ…ね。ふふふふふ」


皐月さつき しゅう

「笑ってる場合ですか!」


慌ただしく騒ぐ中、黎ヰ(くろい)は物思いにふけるように、窓の外を眺めていた


黎ヰ(くろい)

(うっかりしてた。そういやハサミは刃物で、下手すりゃ凶器にもなるんだった)


つい数時間前も、隅田すみだを行動不能にする為に使ってはいたが、黎ヰ(くろい)は自分とってハサミが特別なもの過ぎて、すっかり一般的なハサミの在り方を、忘れてしまっていた事に後悔した


黎ヰ(くろい)

(紾ちゃんの心が休まるようにって思ったが、悪い事したな)


手慣れたように、ハサミをクルクルと回して遊びながら、黎ヰ(くろい)は大事そうに撫でた


黎ヰ(くろい)

(まぁ、でも…俺にとっては、大事なお守りみたいなもんなんだよな〜)


彼がとても穏やかな表情で、小さく微笑みながらハサミを見ている事に、めぐる達は気づかなかった

皐月さつき しゅうプロフィール〜


性別/男 年齢/26歳  誕生日/4月10日  血液型/A型

好きな食べ物/ポワレ  嫌いな食べ物/おかゆ

好きな飲み物/ミントティー  お気に入りスポット/船上


経歴/実家がフランス料理店を営んでおり、その影響で料理専門学校を卒業している。その後、夢であった警察官を目指し少年課へと配属された。


性格/育ちが良く、礼儀正しいので誰にでも好かれる。夢中になると我を忘れ突き進んでしまうので、たまに上司に怒られる事も…

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ