お守り
ーー人に向けて引き金を引いてしまったーー
拳銃とは無縁の生活が長かったせいだろうか、簡単に人を傷つけてしまえる武器を使い、その圧と重みに耐えられず紾は、そのすぐ後気を失ってしまった
朦朧とする意識のなか、小さい頃の夢を見る。それは、幼心ながらに覚えている父と母との大切な約束…
幼い紾
「俺、将来優しくてカッコ良くって強いロボットになるんだ!」
ロボットアニメに憧れた子供の、よくある夢だった。人間がロボットになれる訳ないのに、この頃は純粋になれるんだと信じていた
そんな子供に、両親は馬鹿にするでも呆れるでもなく、いつだって笑って応援してくれるんだ
父
「はは、ならお父さんはメカニックにならないとな」
幼い紾
「なんで?」
父
「紾ロボットが壊れたら、直す人間が必要だろ?だからメカニックだ」
幼い紾
「えぇー、紾ロボットは無敵だから壊れないんだよ」
そういって、不満そうに頬を膨らませる俺の背中を、母が優しく抱きしめた
母
「いくら強いロボットでも、充電しなきゃ動けないでしょ?だからお母さんが充電してあげる」
幼い紾
「恥ずかしいよ…でも、まぁいいや」
背中から伝わる温もりが好きで、いつだって母に甘えてしまう
父
「メカニックお父さんは!なぁ、メカニックお父さんも居るんだぞ!」
そんな俺に、今度は父が頬を膨らませて不満そうにする
幼い紾
「分かったよ、メカニックも居るよ。でもさ直すとこないよ」
父
「あるじゃないか!お父さんはここを治すぞ!」
父は自分の心臓に手を当てた
幼い紾
「なんで心臓?」
父
「ロボットも人間もココが一番弱点なんだ。ココが揺らぐと直ぐに充電も切れる。そうしたら戦えないだろ?」
幼すぎて、父の言ってる意味が理解できてなかった俺は、充電が切れて戦えない=弱いと思った
幼い紾
「えー、ヤダよ。どうしたら強くなれるの?」
母
「簡単よ。こうやって目を閉じて誰かと手を繋ぐの、ドクドクって音が聞こえるでしょ?」
母が分かりやすいように、俺の手を握りながら自分の心臓へと当てた。微かに心臓の音が聞こえる
幼い紾
「うん、聞こえるよ」
父
「あとは簡単だ、お父さんやお母さん以外でその相手を見つける事だ!」
幼い紾
「えー、意味分かんない」
父は豪快に笑いながら、俺の心臓を指で何回か叩きながら言うんだ
父
「逆にココが苦しいと叫んでいる人を見つけたら、紾が手を繋いでやるんだぞ!」
幼い紾
「紾じゃなくて、紾ロボットだってば!よく分かんないけど、手繋ぐんだよね、分かった!」
よく分からない会話に飽きてしまったんだろう、俺は話の大半も理解しないまま、手を繋げば良いんだと思って、純粋にうなづいた
父
「流石、優しくてカッコ良くて強いロボットだな」
頭を鷲掴みにして、思いっきり揺らす父の撫で方は、痛いしグラグラするし苦手だった…でも必ずその後に母が父を叱りながら、優しく抱きしめてくれるのを知ってるから、わざと嫌だって言わなかったんだ
幼い紾
「わかった、約束するよ」
ーーー ーーー ーーー ーーー
気絶する前とは違い、夢のおかげか安らかな気持ちのまま、紾はそっと目を覚ました
意識を失う前の事が鮮明に頭の中で蘇る。無意識に片手を動かし天井へとかざし、ため息をつきながら見つめた
蔡茌 紾
(引き金を引いたのは、こっちの手じゃない)
薄れゆく記憶の中、黎ヰが「誰も傷つけてないから、安心して寝ときな」と言ってくれていた気がする
その言葉が、本当かどうかは分からないけど…だとしても昔の夢を見たせいだろうか、引き金を引いてしまった手は困ってる人の手を握れるのだろうかと、考えてしまう
どうしようもない罪悪感に苛まれながら、紾は恐る恐るもう片方の手をそっと動かした
すると硬い何かが指に当たった。何かを握っていたのだと知ると、その正体を確かめるように指を滑らせた
蔡茌 紾
「いたっ!」
指先に鋭い痛みがはしり思わず声を上げてしまう。バッと飛び起きてみると、そこにあったのはハサミだった
蔡茌 紾
「なんで俺は…ハサミを握って…るんだ?」
一瞬、黎ヰの顔が思い浮かぶ……
奇妙に思いながらも身体を起こし、ベッドの脇へと移動した時だった
蔡茌 紾
「?!!!」
人の気配がして勢いよく顔を向けると、暗がりの中でニタリと笑う人物と目が合った
芥 昱津
「お、おは…よう」
その人物が誰なのか理解する前に、驚きと言い知れぬ不気味さに紾は、気づくと叫び声をあげていた
ー
ーー
ーーー
蔡茌 紾
「うわぁぁぁぁ?!」
異常調査部の解剖部屋の奥から、紾の叫び声が聞こえ、彼が目覚めるまで待っていた二人は、扉の方を見た
黎ヰ
「起きたな」
冷静に言う黎ヰとは対照的に、皐月は何事かと慌てて立ち上がった
皐月 周
「蔡茌さんの身に、なにかあったんじゃ!」
黎ヰ
「芥に驚いただけだって」
特に気にするでもなく机に足を上げ、だらしなく椅子に座っている黎ヰを、皐月は睨んだ
皐月 周
「人を見ただけで叫ぶ訳ないでしょう!なにかあったに違いありません、見てきます」
言うが早いか、解剖部屋の前へと来た皐月は、不用意に扉が開いた事で、驚いて足を止めてしまう
芥 昱津
「め、ぐるくん…起きたよ…」
皐月 周
「うわっ?!」
突然、ぬるりと芥が飛び出してきて、思わず皐月が小さく叫んだ。それを聞いて黎ヰは、ニヤリと笑う
黎ヰ
「クックック、叫んだなぁ〜」
無性に腹が立ったが、相手にしても仕方ないので皐月はそっぽを向く
皐月 周
「そんな事よりも、今は蔡茌さんの方が心配です」
蔡茌 紾
「…驚かして、すまない」
少しふらつきながら、解剖部屋から紾が出てくる
皐月 周
「もう起きて大丈夫なんですか」
蔡茌 紾
「あぁ。それよりも、あの後どうなったか教えてくれ」
皐月に支えられながら紾は、気持ち程度にある、来客用の椅子へと腰掛けた
黎ヰ
(身体から力が抜けてるってトコか、まぁ無理もないよなぁ)
彼が異常調査部へと来てから、まだ一ヶ月ぐらしいか経っていない。不慣れな事務作業に残酷な殺人事件の調査…それに加え、異常調査部と言うだけで恨まれる現状…
これだけでも、紾の精神はかなり疲弊していた筈なのに、今回の隅田との銃撃により心身共に限界を超えている
そんな状態でも、事件のことが気になるのだろう。紾はゆっくりと口を開いた
蔡茌 紾
「……教えてくれ、俺が撃ってしまった一課長は…どうなったんだ…」
紾の事だ、必ず聞かれると分かっていた質問に黎ヰは、隅田の状況について話す
黎ヰ
「胸部、右手首、両足の腿が強打撲。指と鼻に数カ所の骨折。あぁ、そうそう倒れた弾みで、肋骨も数本ひびが入ってるって、そうなった原因の全部は俺だけど♪」
何故か得意げに笑う黎ヰに対し、皐月はすかさず口を挟んだ
皐月 周
「自慢げに言う事じゃないでしょう!!」
一喝した後、皐月は慌てて紾へと向き直る
皐月 周
「蔡茌さん安心して下さい、弾丸は壁にあったのを鑑識が見つけています。隅田さんにも、撃たれた痕はありませんでした」
蔡茌 紾
「そうか、良かった…と言って良いのか分からないけど、安心したよ」
話を聞いて、少し肩の力が抜けていく紾を横目に黎ヰは心の中で呟いた
黎ヰ
(めちゃくちゃ、狙いは良かったけどなぁ〜)
紾の放った弾丸は、真っ直ぐに隅田を捉えていて、黎ヰが咄嗟に突き飛ばさなければ、確実に当たっていただろう
それを言ってしまうのは酷な気がした黎ヰは、自分だけが知っている事実を、胸の内に留めておく事に決める
蔡茌 紾
「人質になっていた医師や看護師、患者に怪我は…」
皐月 周
「隅田さんが撃とうとした女性も含めて、全員無事です」
それを聞いて再び胸を撫で下ろす。しばらくの沈黙の後、紾は立ち上がると同時に頭を下げた
蔡茌 紾
「本当にすまなかった。二人には沢山迷惑をかけたどころか、危険に晒した…本当にすまない」
反省し深く頭を下げ続ける紾に、皐月は慌てて首を振った
皐月 周
「頭を上げて下さい、元はと言えば巻き込んだのは僕の方です。それに、蔡茌さんは人質を守ろうとしたんですから、警察とはいえ誰にでもできる事じゃありません。立派な行動です」
一生懸命にフォローをしてくれる皐月だったが、あの時の自身が冷静に判断していなかった事は、紾が一番よく分かっていた
隅田に銃口を向けられ、撃たれてしまうかもしれない恐怖の中、自分よりも人質を守ろうと咄嗟に構えた…
だが、それは隅田に指摘された通り、何の牽制にもならず焦りだけが残った
黎ヰの額に銃口が当てられたのを見て、背筋が凍り頭が真っ白になっていった…そして、気がつけば紾は引き金を引いていた
蔡茌 紾
(もし、誰かに当たってしまっていたらと思うと…)
まだ鮮明な記憶に、紾の鼓動は自然と早まった
黎ヰ
「正直、紾ちゃんが隅田の気を引きつけてくれなかったら、俺だって隙をつくのは難しかった。それに…」
黎ヰも紾と同じように、立ち上がると頭を下げた
黎ヰ
「現場の判断ミスは俺の方だ。状況把握が出来てなかった、撃たせて悪かった」
黎ヰに頭を下げられるとは思わず、紾は慌てて訂正する為に顔を上げた
蔡茌 紾
「いや、撃ったのは俺でーー」
黎ヰ
「ようやく、顔上げたなぁ♪」
蔡茌 紾
「え…」
先程の言葉とは裏腹に、黎ヰの表情は悪戯な笑みを浮かべていた
皐月 周
「最初からそれが目的だったんですか、信じられません」
二人のやり取りを見ていた皐月は、黎ヰの謝罪自体が嘘だと思ったらしく、責めるように見たが、黎ヰはそれを軽く受け流す
黎ヰ
「ククククク…さて、どうだろうなぁ〜」
茶化す黎ヰに対しての苛立ちから、皐月は顔をだんだんと赤くしていく
皐月 周
「こんな時に、ふざけてる場合ですか!この際だから言っておきますが、風十君の件だって納得した訳じゃありませんからね」
皐月の言葉で紾は、はっとして思い出す
もし、隅田の立てこもり事件がなければ、紾は再び穢佇に取り調べをするつもりだったのだ。心配にならない訳がなかった
蔡茌 紾
「そう言えば、彼はどうなったんだ?」
取り調べを交代した黎ヰへと聞いたつもりだったが、紾の疑問に答えたのは、怒っている皐月だった
皐月 周
「送検されました」
蔡茌 紾
「え?!」
皐月 周
「しかも、何一つ聞き出さずにです」
怒りが収まらない皐月は、黎ヰへと詰め寄る
皐月 周
「それじゃ取り調べをした、意味がないじゃないですか!!」
黎ヰ
「"意味がなかった"と思うのは、あくまでも皐月周目線での話だろぉ」
皐月 周
「いい加減な事言わないで下さい。僕は貴方に風十君を任せたんです!それを、何も聞き出さないまま送検させただなんて、貴方は最初から風十君の事なんてどうでも良かったんだ…ただ、隅田さんの嫌がらせの為だけにやったんでしょう!」
取り調べを見ていない皐月からすれば、この意見は最もだと黎ヰは思った
黎ヰ
(隅田との事を全部認めたって言ったところで、送検がなくなる訳じゃないし、今までしてきた事が消える訳でもない…どんな理由であれ、穢佇達のしてきた事を客観的に見れば黒だ)
隅田と手を組み、わざと現行犯逮捕できるように仕掛けていた。それは立派な犯罪行為
送検された穢佇達のその後の判断は、警察ではなく弁護士へと託される。なら、後は弁護士に任せるべきだろう
黎ヰ
(今の穢佇なら、何一つ誤魔化さず話すだろうしな)
そもそも暴行罪で取り調べているのだから、共犯の事を自供しましたと言っても、弁護士によっては下手に庇っていると思われ、逆にマイナスな印象を与えてしまう可能性もある
だから黎ヰは、取り調べ室の一件を言わず、暴行罪については深く反省してるので和解した。とだけ報告したのだった
黎ヰ
「起こった出来事を無かった事には出来ねぇし、するつもりもない。過ち自体を否定しちまうのは、その時の穢佇風十の存在を殺しちまってるのと、同等だって思わねぇ?」
皐月 周
「何の話ですか」
突然の問いかけに、皐月は意味が分からないと言うように顔を歪ませた
それを隣で聞いていた紾は、ふと6年前の彼らを思い出していた
高田と永谷の二人は、罪を認めても償うチャンスを親に奪われたーーそれは、罪を犯した自分の存在を消されたのと、同じようなものだったのかもしれない
『あの子達は、ちゃんと罪を認めてたのに…やり直すチャンスを奪われて、しかも…精神が不安定だからって、遠くに引っ越させて……本来なら私達、警察が捕まえてあげなきゃいけなかったのに…』
涙ながらに言っていた杉野千の言葉が、紾の頭をよぎる
蔡茌 紾
(杉野千は最初から気づいてたのかもしれない。罪を犯した相手に警察である俺が出来るのは、逮捕する事で償うチャンスを与える事だ)
犯罪者だから捕まえるのではなく、罪を償えるように捕まえる。やる事は変わらなくても、この二つの意味は全然違う
黎ヰ
「事実をどう受け止めるか。犯人も警察も、肝心なのは逮捕したその後じゃねーの」
皐月 周
「それじゃ遅いんです。家庭裁判所へ送られてしまえば、僕たちは何も出来ません!だからこそ、あの取り調べは風十君の目を覚まさせる、最後のチャンスだったんです」
黎ヰ
「最後かどうかを決めるのは、穢佇本人じゃね?」
皐月 周
「それはっ、」
不覚にも黎ヰの言葉が心に突き刺さり、皐月は言葉を詰まらせた
黎ヰ
「考え自体は、間違ってねーと思うぜ?穢佇をなんとかしてやりたいって、思ってる奴の言葉だしな」
だからこそ、取り調べで何も聞き出さなかった黎ヰに対して、皐月は怒りを抑えきれなかったのだろう
黎ヰ
「そこで聞いておきたいんだが、本当に穢佇風十本人の事だけを考えてたって、自信をもって言えるか?」
皐月 周&蔡茌 紾
「?!」
黎ヰの問いかけに、皐月だけではなく話を聞いていた紾も、目を見開いて押し黙ってしまう
二人ともが、知らず知らずに穢佇と誰かを重ねてしまっていたからだ
蔡茌 紾
「そうだった、彼は…穢佇君はあの時の二人じゃないんだよな」
育った環境も犯した罪も何もかも違う。なのに同じ高校生というだけで、無意識に自分の中で決めつけていたのかもしれない
蔡茌 紾
「取り調べの目的が、穢佇君の説得じゃなくなってたのか。彼の為だと言って、俺は…過去の二人を見ていただけだ」
皐月 周
「取り調べの…目的…僕は…」
さっきまでの勢いを無くした皐月は、一瞬目の前に居るはずのない隅田の幻覚を見た
穢佇の抱えていたものが重く、皐月は調査をしていくにつれ同情していた。でも、その背後には隅田との関係がチラついていた
皐月 周
「…僕は、ずっと隅田さんとの関係ばかりを追ってしまっていた」
幻覚を振り払うように、皐月は頭を左右へと振った
皐月 周
「悔しいですが、貴方の言う通りなのかもしれません」
黎ヰ
「じゃなきゃ、わざわざ穢佇に隅田との共犯関係を認めさせようなんて考え、思い浮かばないよなぁ〜」
皐月 周
「……」
妙に癇に触る言い回しだなと思いながらも、自身に非があるので皐月は押し黙る
その様子を楽しそうに見ながら、黎ヰは話を続けた
黎ヰ
「穢佇はちゃんと、自分のした事を理解してるし受け止めた。ならもう、警察の出る幕はないだろぉ」
蔡茌 紾
「黎ヰが、彼と向き合って話してくれたんだな」
黎ヰ
「さぁ、どうだろうね〜。遊んだに近いけどなぁ」
素直に答えない黎ヰだったが、紾には彼が目の前の人間を、ちゃんと見ることが出来る優しい人間なのだと分かっていた
蔡茌 紾
「そうだ、何故か手に握ってあったんだけど、これ黎ヰの…だよな」
先程握っていたハサミをポケットから取り出すと、確認するかのように黎ヰへと渡す
黎ヰ
「ん?あぁ」
自然な流れでハサミを受け取る中、皐月はその光景を見て何度か瞬きを繰り返した
皐月 周
「手に握ってあったって、どう言う事なんですか」
蔡茌 紾
「俺もよく分からないんだ」
困った顔で言う紾に、ずっと黙っていた芥がゆっくりと片手を挙げた
芥 昱津
「ぼ、く…知ってるよ。黎ヰ君が、寝かせる前に…握らしてたの…見た」
理由は分からないが、なんとなく察していた紾はやっぱりかと、なんとも言えない表情をする中、皐月が信じられないと言うように口を開けた
皐月 周
「何を考えてるんですか、刃物を握らすなんて。一歩間違えば怪我をしていたかもしれないんですよ」
蔡茌 紾
「少し切ったけど、黎ヰなりに心配してくれた気がするんだ。だから、ありがとう」
軽く血が付いている指を見て、黎ヰは一般的にハサミというものが、どういうものかに気付く
黎ヰ
「いや、怪我さして悪かった」
蔡茌 紾
「黎ヰ?」
表情は見えなかったが、声音が少し震えていた気がした紾は、思わず名前を呼んだが、彼にしては珍しく返事が返ってこなかった
芥 昱津
「絆創膏…あげ、る…」
蔡茌 紾
「?!」
不意に芥が背後から現れ、紾は分かりやすく驚いた
皐月 周
「その前に消毒です」
蔡茌 紾
「いや、そこまで大袈裟にしなくても…」
皐月 周
「救急箱はどこですか」
皐月が部屋を見渡していると、芥が救急箱を渡そうと持ってくる
芥 昱津
「お、重たい」
が、思った以上に重かった救急箱に芥が耐えきれず、そのまま地面へと手を離したせいで、皐月の足元へと落下してしまう
皐月 周
「いたっ!!」
予想だにしなかった痛みに、皐月が声を上げた。落ちた拍子に救急箱の中身が飛び出る
蔡茌 紾
「工具?」
飛び出たのは、薬や消毒液ではなくペンチや金づちといった工具ばかりだった
芥 昱津
「通り、で…重い、訳だ…ね。ふふふふふ」
皐月 周
「笑ってる場合ですか!」
慌ただしく騒ぐ中、黎ヰは物思いにふけるように、窓の外を眺めていた
黎ヰ
(うっかりしてた。そういやハサミは刃物で、下手すりゃ凶器にもなるんだった)
つい数時間前も、隅田を行動不能にする為に使ってはいたが、黎ヰは自分とってハサミが特別なもの過ぎて、すっかり一般的なハサミの在り方を、忘れてしまっていた事に後悔した
黎ヰ
(紾ちゃんの心が休まるようにって思ったが、悪い事したな)
手慣れたように、ハサミをクルクルと回して遊びながら、黎ヰは大事そうに撫でた
黎ヰ
(まぁ、でも…俺にとっては、大事なお守りみたいなもんなんだよな〜)
彼がとても穏やかな表情で、小さく微笑みながらハサミを見ている事に、紾達は気づかなかった
〜皐月 周プロフィール〜
性別/男 年齢/26歳 誕生日/4月10日 血液型/A型
好きな食べ物/ポワレ 嫌いな食べ物/おかゆ
好きな飲み物/ミントティー お気に入りスポット/船上
経歴/実家がフランス料理店を営んでおり、その影響で料理専門学校を卒業している。その後、夢であった警察官を目指し少年課へと配属された。
性格/育ちが良く、礼儀正しいので誰にでも好かれる。夢中になると我を忘れ突き進んでしまうので、たまに上司に怒られる事も…




