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10/27 水と油

■■OCTOBER 27 SUNDAY 16:08

■■LOGIN



 さーて、やること済ませて、ようやくログインできた。


 さてと、渚の事だ、休みだからってバイトを入れてるだろ。また喫茶店にでも顔を出してみるかな。



■■OCTOBER 27 SUNDAY 16:10

■■CONTACT TO カフェテラス



(白滝)誰かいるかーい。


(サン)ういーす。>白滝


(白滝)サンか。何だか久し振りって感じがするな。それで、他に誰がいるんだ?


(サン)弁慶とカレイ。>白滝


(弁慶)オッス。>元気か白滝


(カレイ)よし、一人増えたことだし、ゆっくりコーヒーでも啜りながら話し合おうじゃないか。>なぁ、みんな


(弁慶)こいつ、コーヒーを飲みながらやってるんだぜ。>この贅沢が、カレイ


(サン)俺も結構その口だな。パソコンと向かい合ってる時って、何か食べてるか飲んでるな。


(カレイ)だろ? 白滝はどうなんだ?


(白滝)俺もそうだな、食べ物は余りないけど、よく飲物は飲むな。


(弁慶)今でもあるのか?>白滝


(白滝)さすがに今はないよ。だけど、空のリポビタンDならあるな。>弁慶


(サン)おまえ、そんなに筋肉疲労や食欲不振なのか?>飯をちゃんと取れ! 白滝


(白滝)そう言われると、またまた言いたくなるな。他には、養命酒なんてあるぞ。


(カレイ)白滝って、本当に栄養剤に頼ってるな。>そのうち死ぬぞ、白滝


(白滝)いくら何でも、毎日は飲んでないよ。たまたまリポビタンDがあっただけだし、養命酒も余り飲んでないよ。>誤解せんでくれ、みんな


(弁慶)仕舞いには赤マムシとか、ユンケルとかタウリンとか登場したりしてな。>おまえは変だよ、白滝君


(白滝)変人扱いするなよ。>弁慶


(サン)なんだか、白滝のせいで変な方向に話が進んじゃったな。


(白滝)俺のせいで悪かったな。>サン


(カレイ)ところで、午前は暇だったからカラオケに行ってきたよ。


(弁慶)俺も昨晩たくさん人を引き連れて、行ってきたぞ。>カレイ


(カレイ)やっぱり、歌うならアムロだよな。>弁慶


(弁慶)いや、谷村由美だよ。あのキュートな顔が、カー、たまらん! おまえらはどうなんだ?>サンに白滝


(白滝)俺は余り歌わないな。


(弁慶)いかんぞ、歌わんじゃ。社会人になってから、会社仲間に誘われた時に歌わんようじゃ、つきあい悪いと言われるぞ。


(白滝)正直言うと、周りになくてさ、カラオケボックス。


(カレイ)サンはどうなんだ?


(サン)良くつるんでる奴らと行くことあるな。その一人はド下手だけどさ。


(白滝)俺の方は今日、知的に美術を見に行ったんだ。


(カレイ)へぇ、君にそんな趣味があったなんてな。>白滝


(白滝)悪かったな。>カレイ


(サン)何を見に行ったんだ?>白滝


(白滝)星野富弘。


(弁慶)知らんな。


(カレイ)俺も知らん。誰だい?


(白滝)いかんな、君たち。俺、この人には割と興味があってさ、これで見るのは二度目なんだ。


(サン)二度も見に行くほどか。


(白滝)その人、肩から下が麻痺しちゃって、筆を口に加えて絵や詩を書くんだ。


(丹下)何の話をしてるんだ?>みんな


(カレイ)また増えたな。


(弁慶)白滝の知的度を聞かされてるんだ。>丹下


(丹下)どれどれ、何処まで知的だか聞いてやろう。>始めなさい、白滝君


(白滝)それじゃ、やってやろうじゃないの。>何だか偉そうだぞ、丹下


(サン)まぁまぁ、気にしない。


(白滝)確か一年前のゴールデンウィークに一度だけ行ったんだけど、星野富弘って水彩画と一緒に詩を書いていて、それが結構感動する物ばかりなんだ。


(丹下)例えば?>白滝


(白滝)そうだな、覚え立ての奴は、『神様がたった一度だけこの腕を動かしてくださるのなら、母の肩をもんでやりたい』とか。こいつには感動したよ。>分かるかい、みんな


(弁慶)分からんでもないな。


(サン)そうだな。


(カレイ)同感。


(丹下)君って結構ロマンチシズムなんだね。>白滝


(白滝)君ね、ロマンチシズムって意味分かって使ってる?>丹下


(丹下)うぬぼれてるかい? 君は。君がどのくらいの知識があるか知らないけど、自分は君より知識は豊富だと思ってるよ。>馬鹿にしちゃ困るよ、白滝君


(白滝)おい、言って良いことと悪いことがあるぞ。君が学者じゃない限り、俺と君の知識レベルはほぼ同格だよ。周りにいる弁慶やサンやカレイもね。>丹下君、分かるかい


(丹下)君は星野富弘を通して自分の知識を見せようとしているが、それはある程度の域を越えることはできないんだよ。それが学者でもソクラテスでもね。要するに、我々人間は一つのことでそれ以上の知識は手に入れることができないのだよ。自分の知的なところを見せるのには、もっと広い知識と概念が必要なんだよ。>君には難しすぎたかな、白滝君


 こいつの言動、なんか腹立つな。


(弁慶)あー、俺、降りるわ。>じゃあな、みんな


(カレイ)そうだな。俺もそろそろ接続時間が気になり始めたし。>元気でな、みんな


(サン)ちょっと待てよ。二人とも程々にしておけよ。じゃあな。


 結局残ったのは俺と丹下の二人か。


(白滝)君は俺に何が言いたいわけ。


(丹下)自分の好きな物、一つだけを集中するんじゃなくて、もっと別な事にも手を出せって事だよ。


(白滝)君こそ、今までの会話ではパソコンの事しか話してないじゃないか。>どうなんだい、丹下君


(丹下)趣味の一環だね。自分は多くの事について学んできたつもりだからね。


(白滝)所詮、君は巣箱に戻ってくる小鳥だね。


(丹下)どういう意味だい?


(白滝)小鳥が巣箱から飛び出して、色んな果実をひとつまみしても、結局は戻ってくるところは同じ巣箱って事だよ。君はパソコンを中心に物事を考えて、何千キロと離れたパソコンとは無関係な生物学知識、芸術学的知識、地理的知識などに手を出して、ある程度拾い漁ればパソコンに戻ってくるって事だよ。>そんな知識は雑学ってもんだよ、丹下君


(丹下)君って結構ムカつく男だな。君にとって知識のあるなしがそんなに大事なことなのかい? 自分は知識があってもなくても関係ないね。要は、その知識を何処に活用するかだよ。自分の必要な知識だけを齧り取ればいい。君の場合は臨機に応変できてないんじゃないか? 例えば、切りだった崖に拳銃を持った男に追い詰められたら、君だったらどうする?


(白滝)なんだよ、いきなり。


(丹下)どうするんだい?>質問してるんだぞ、白滝


(白滝)時の運に任せて立ち向かう。


(丹下)そうだから臨機に応変できないんだよ。結局はそうなる前の処置が必要なんだよ。用意周到って言葉があるだろ? そのためにも、自分だけが必要な知識じゃダメなんだよ。


 その文章を読んで、何だかムッとした。


(白滝)君って地球外生命体って信じるかい?


(丹下)君は心理学でも専攻してるのかい? 自分は割と信じる方だね。この星にだけ人がいるなんておかしいからね。太陽系惑星だったら地球だけかもしれないけど、太陽系外惑星に、生命体が生活できる星があってもかまわないと思うね。


(白滝)そこのところだけは意見が一致したね。俺もその口だな。


(丹下)何が言いたいのかな?


(白滝)水と油だと思っていたけど、そうでもなかったってことだよ。これ以上話すと、マジで喧嘩になるからな。俺はそろそろ切るよ。それじゃあね。


(丹下)はいはい。またな。



■■SHUT DOWN



 本気でケンカになると思ってあんな終わり方したけど、ほんと、腹立つな。


 あー、それにしても何だあの態度は。さっさと切って良かったよ。しかも、あいつと無駄話してたら接続時間が四八分にもなってるし。もう、最悪って感じだな。


 とにかく、この気持ちが冷めるまで、一旦落ちるぞ。



 このときの俺は自分自身の些細な心の動きに気付かず、ただ丹下に対して腹立たしく思っているだけだった。


 落ち着いて丹下とのこのやり取りを読み返してみると、丹下の理論が心の隅に突き刺さっていることに気づいた。


 だが、それに気づいたのはほんの少し先の事だった。


星野富弘、詩人で画家。2020年にNHK全国学校音楽コンクール高等学校の部課題曲「明日へ続く道」「もう一度」を作詞する。大して重要なことじゃないけど、筆者的に重要。


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