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10/25 メモリ128MBとみかかからのラブレター

■■OCTOBER 25 FRIDAY 20:45

■■LOGIN



 さーてと、さっそく始めるか。


 今日は渚から連絡が入ってないな。昨日はいつ帰ってくるか言ってなかったし。時間潰しに喫茶店にでも顔を出すか。



■■OCTOBER 25 FRIDAY 20:47

■■CONTACT TO カフェテラス



(白滝)こんばんはー。


 …………。


 誰もいない?


 …………。


 やっぱりいないのか? これって、結構虚しいんだよな。


(丹下)ようやくやって来たか。さっきから暇だったよ。


(白滝)なんだ、丹下か。


(丹下)なんだで悪かったね。随分と前にここに来てたんだぞ。


(白滝)どのくらい前?


(丹下)大体三〇分ぐらいかな。


(白滝)三〇分もか。


 通話代掛かるのに、誰もいない喫茶店にいるなんて。


(丹下)それまで、別の事して待ってたんだ。


 むっ。かなり打ち込み速度が速いな。


(丹下)聞いてるかい?


(白滝)聞いてる聞いてる。


(丹下)誰も来てないと、やっぱり暇なんだよね。これが本当の喫茶店だったら、音楽も流れてこない閑古鳥が鳴いた寂れた喫茶店だよ。


(白滝)この時間に誰もいないって言うのも珍しいよな。


(丹下)ほんとだよ。


(白滝)誰も来なくて暇で暇で仕方がなかったって訳だ。


(丹下)そう。一昨日は弁慶が爆発したでしょ、だから昨日は喫茶店に行くのやめたんだ。昨日は相当暇だったから、今日はそれを解消しようと思って早く来たのに、誰もいないんだもん。参っちゃうよ。


(白滝)俺も同じだな。弁慶の『呪い殺す』が目に焼き付いててさ、昨日は来るのをやめにしたんだ。弁慶には本当に参っちゃうよな。


(丹下)それより、今日は衝動買いしちゃったよ。


(白滝)衝動買い?


(丹下)そう。メモリーを一気に一二八メガ増設しちゃったんだよ。


(白滝)げっ、結構掛かったでしょ。コストが。


(丹下)勿論、一〇万以上は掛かったよ。あーあ、来年になればメモリーがもっと安くなると思うのに、ちょっと早まっちゃったかな。


(白滝)目の前にあったからつい買っちゃったと。


(丹下)そう。日頃のバイト代がパソコン関連で溶けていくよ。でも、そのおかげで随分と速くなったよ。


(白滝)俺も最近、衝動買いしちゃったんだ。


(丹下)やっぱり、やるだろ?


(白滝)メモリーを買い足そうと思ったのに、前に目を付けていたソフトがあったから、つい買っちゃったんだ。中古で買うつもりだったんだけどさ、発売日の一日前にカウンターに置いてあったから、ついね。


(丹下)結局は似たもの同士だね。


(白滝)でも、今日いろいろと中古に出したら約九千円は儲けたよ。いやぁ、ちょっと得したかなって感じかな?


(丹下)さすがにメモリーのコスト一〇万のロストを埋めるには、パソコン本体を売らない限り無理か。


(白滝)さすがにね。


(モズク)こんばんは。


(白滝)久し振りだね。>モズク


(モズク)久し振り~。大体五日振りかな? ところで、他に誰かいるの?


(白滝)俺と丹下。


(モズク)こんばんは~、元気だった?>丹下


(丹下)モズクって、歩いている時スキップしてない? そんな感じがする。


(モズク)実を言うと、僕はスキップができないのだ。


 マジかよ。


(白滝)そう言えば、前にテレビでスキップができない人を見たな。あれってやっぱり本当なのか?


(丹下)世界の人口の一割ができないんじゃないの?>白滝


(モズク)それなら安心だね。今日も元気に話し合おうじゃないか。>なぁ、諸君


(白滝)本当にいつもスキップしてるって感じだな。


(丹下)接続時間がもう四〇分になるな。


 丹下は俺が来る前からいたからな。


(モズク)えっ、丹下、もう帰っちゃうの?


(丹下)君が来る前に白滝と話し込んじゃったからね。


(白滝)近頃、長電話ばかりしてるからな。みかかがちょっと心配だな。


 みかか、とはいわゆるネットスラングで、電話料金のことだ。かな入力モードでNTTと打ち込むと「みかか」と入力されるからだ。


(モズク)ねぇ、みんなは一ヶ月、どのくらいを目処に会話してるの?


(丹下)家は余り気にしてないね。話したいだけ話す。


(白滝)家はまぁ、せいぜい四千円だな。


(モズク)それって、僕もそうなんだけど、結構掛かるよね。


(白滝)モズクと丹下はどこに住んでいるか知らないけど、田舎に住んでいる俺は市街地にアクセスポイントがあるから、想像以上に料金掛かるんだよ。


(丹下)田舎にいると、そういうところで不満があるよな。


(モズク)白滝に比べれば、まだ僕はマシな方なんだなぁ。


(白滝)そういうことだ。


(丹下)それじゃあね、落ちるよ。>無駄遣いするなよ、みんな


(モズク)やっぱり、もう帰っちゃうの?>丹下


 丹下から返事がない。


(白滝)丹下はもう落ちたみたいだね。俺もそろそろ落ちるよ。>それじゃあね、モズク


(モズク)うぇぇん。一人にしないでよー。>無慈悲な白滝



■■SHUT DOWN



 結構な時間、チャットしてたみたいだな。


 それにしても、あの丹下は何であんなに速くキーボードを打てるんだ? ふだんチャットの合間に追加で文章を打ち込んでいるんだけど、それが間に合わないぐらい丹下の打ち込み速度が速い。


 事情聴取を受けている横で会話内容を打ち込む、あの仕事でもしてるんじゃないか?



 薄暗い小さな部屋で、机に向かい合わせで座っている俺とモズク。


「洗いざらい話してもらうぞ」


「すみません。先月はなんか、チャットが楽しくて楽しくて……」


「どうなった?」


「みかかからのラブレターには十万という数字が書かれてました」


「NTTからの請求書か……」


 その会話を部屋の角で丹下がノートパソコンに黙々と打ち込んでいた。



 そんなことを想像したら、思わずクスッとしてしまった。


 まぁ、追加文章はログ記録後にすればいいだけのことだよな。


 さーてと、時間も時間だし、今日は渚から連絡も来ないからこの辺にしておくか。


 それじゃ、またね


『メモリー128MBが10万!?』『みかかからのラブレター、俺も貰った』と思った方はブックマークや下の☆☆☆☆☆を★★★★★にお願いします。

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