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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
後日談
61/62

第五十四話「集う仲間」

次の朝、俺はフカフカのベッドで目を覚ました。

そうだスカイピアに来てたんだっけ……。

漁師の息子としての生活長かったからなぁ。

此処はシルバーバードの本部……ってアレ、アスカ!?


俺は一昨晩夢の中で現れた少女がベッドの脇の椅子に座っているのに心底驚いた。

六畳くらいの寝室で、傍にはちゃんと大剣アナコンダが立て掛けてあった。


俺はアスカにどう話しかけたらいいか一瞬躊躇した。

まだ半分寝ぼけてたし、夢の内容も今や殆ど忘れかけていた。

それでも白のカーディガンに黒のミニスカの少女の容姿は、今だ鮮明に脳裏に焼き付いていたのである。


「おはよ」


少女の言葉に、俺は一瞬ピクンと肩を震わせた。

落ち着け……彼女は寝ている俺を見守っていただけだ。

え、まさか早朝からずっと?

もう十時だぞ。


「おはよう」


俺は片手を上げて返事した。

やはりアスカも本来の俺を知っているのだな。

まあいい……こうなったら意地でも記憶を戻す。

目指すはアルカディアだ。

俺はベッドからスルリと飛び起き、グーンと伸びをした。


「そう言えば大佐が呼んでたわよ。話があるって」


「大佐?」


「イカロス中尉の上司よ。とっても強いの」


「せっかくだから防具もなんとかしてもらいたいな〜。流石にこのままじゃ強敵にワンパンされるぞ」


俺は壁に立て掛けてある大剣に手を伸ばし、それを背中に背負った。

アスカに付いて行く事にする。


「なぁ、アスカ」


「何?」


俺が名前を知っていたのを不思議に思っただろうが、アスカは怯まず応答した。


「君はシルバーバードに勤めているのか?」


「まあね。白魔法の潜在能力を解放したくて、今は組織に厄介になってる感じ」


「そうか……!」


アスカに続いて部屋を出る。

廊下を歩いていると桃色髪の中性的な顔立ちの男性が腕を組んで立っていた。


「イナズマ大佐、おはようございます」


「うむ、おはよう。そっちはソラだったか?」


「ええ、防具を欲しがってるようでして……」


男は近未来的な鎧に身を包んでいた。

イナズマ大佐……この人がイカロスの上司か?

鳥人達に比べて小柄だが確かにオーラはある。


「デーモン達を追い払ったと聞く。君にはカオスワールドでの戦い方の極意を伝授すべきだと思ってね」


「え?」


「詳しい話は建物の外でしよう。この話を聞けば鬼に金棒とまではいかなくともそれなりに戦えるだろう。ハッハッハ」


「防具は?」


俺は勇気を振り絞って言ってみた。

ジーーッと見つめてくるイナズマ大佐。

まさか本名じゃないよな?

ニックネームかなんかのはずだ。

それより……。

俺は大佐の圧力に負けず見つめ返した。


「良いだろう。その肝っ玉に免じて好きな防具を一式やろう。だが私のレクチャーが先だ。来い!」


俺は大佐と共に建物の外に出た。

此処から零社のビルまでどのくらいの距離だろう。

死ぬほど遠いってわけでもなさそうだ。

でも……!

防具まで貰っちゃったらいよいよシルバーバードの一員みたいだな……。

と、とにかく!

今は戦いの極意を学ばないと。


「この世界の剣技と魔術はアーツと一括りにされている。だがこのカオスワールドではアーツには色が存在する」


さっそくレクチャーが始まった。

建物の外は雑草の若干生い茂る岩の上だったが、やはりスカイピアは若干空気が薄い。

おっと大切な話だ、集中しないと。


「赤色のアーツ『フレア』と白のアーツ『クロス斬り』を組み合わせて桃色のアーツ『桜花』が生み出されるようにアーツは合成が可能だ。時偶組み合わせ次第で強力な合成アーツが生み出されたりするから、それは発見次第きっちり暗記しておくんだな」


なるほど……。


「さあ、私にクロス斬りを放ってこい!」


「あの……俺まだ剣技使えなくて」


場が凍りついたのは冗談ではなかった。


ーー


あの後三時間にも及ぶ訓練の末俺はクロス斬りを覚えた。

またシルバーバード下級兵の防具にも身を包みいよいよ任務を受ける事となった。

ある女性の探索。

下級兵の防具は紺色である程度近代的な作りにはなっていたが、それよりも任務の内容だった。

ーー凄腕占い師赤髪のイザベルを探せーー

キャンディスがポツリと漏らしていた先を見通せる女の人である。


この任務はアスカと二人で行う事となった。

土地勘があるのはアスカだろうと大佐は言っていたが、この任務はあの「電虫集め」とは比較にならない気の遠くなるような任務にすらなり得る。


俺達は樹海を歩いていた。

全くスカイピアはなんて広さなんだ。

カオスワールド、つまり時空の歪みで本来より広くなっているに違いない。

アーツの配合はカオスワールドの成り立ちに通じるものがあるはずだと大佐は言っていた。

この白のアーツ「クロス斬り」をいつかは最強アーツに昇華させてやんよ。


暫く進むと、俺は不気味な雰囲気を感じ始めていた。

敵の気配。

背中の大剣アナコンダに手を掛け、構える。

アスカを護れるのは自分だけだった。

敵は二匹のオーク。

ゴブリンよりも一回り大きく、質素な防具を身に着けていた。

そして手には片手剣ーー。

敵が一匹ではなく二匹なのが問題だった。

大剣は隙がデカ過ぎる。

クロス斬りを使い一匹を確実に葬るか……?

でももしもう一匹がアスカに攻撃したとしたら。

俺達は十秒ほどお互い武器を構え睨み合っていた。


「私、自分の可能性、信じてみる!」


とアスカは両手を合わせた。

浮かび上がったのは緑色のアーツ「蘇生化」。

初歩的な回復アーツだが「クロス斬り」と連携に賭けてみるべきだった。

連携技「シャイニング」ーー。

一瞬暗くなったのを見ると連携アーツは中々の性能を帯びるようだ。

現れた緑色の線状の光。

そして二匹をザンッ、ザンッと斬り刻む。

俺達は連携の末勝利した。

アスカがいなかったらどうなっていたか分からない。


「この先に村があるんだよな?」


「うん。取り敢えずそこで情報を集めましょ」


俺はアスカが夢に出てゴーレムから助けてくれたことや、今朝起きるまで見守ってくれていた事から彼女に好印象を抱いていた。

キャンディス……絶対また会えるさ。

俺はオークの死骸のポケットから銅貨を六枚盗み出し、アスカの言う道を再び歩き出すのだった。



俺達は樹海を通り抜け、草原に出た。

村まで目と鼻の先だそうだ。

その時だった。


「ソラ?ソラじゃないか?てっきり死んだのかと!」


スカーロイだった。

カラフルヘアーのウォリアーは俺の服装に若干驚いたが、構わず抱きしめてくれた。


「紹介するよ。白魔導師アスカ。こっちは銃使いスカーロイさ」


「はじめまして」


アスカは軽く頭を下げて言った。

スカーロイは知ってるんだけどなこの娘……と言うような表情を見せたが「よろしく!」と言ってみせた。

いやーこれは嬉しい再会だった。

彼も村に用があるらしい。


「あの村では最近ゴーレムが出没するらしいんだ。その討伐任務ってわけさ」


「ゴーレム……!」


アスカもいるし夢と酷似していた。

だが違う点はスカーロイがいるという事。

おまけに今はアナコンダがある。


「三人で力を合わせれば勝てるさ」


俺の言葉に「おっ?」と言うんじゃねえかと言わんばかりの表情を見せたスカーロイだったが最後は「そうだな」と笑ってみせた。

ゴーレムもアーツを使ってくるのか……?

オークとはレベルそのものが違うだろうが、俺はシルバーバードの下級兵であると同時に零社のウォリアーだった。


「行こう。アスカも戦えるな?」


「う、うん……」


スカイピアにも慣れてきた。

またヤングデーモンやオークに勝利した事は僅かだが確かな自信となった。

スカーロイのアーツに「クロス斬り」を組み合わせれば或いは大技になってくれるはずだ。

俺達はゴーレムの待つとされる村の方へ緩やかな下り坂を降っていった。


勝てるのか。

いや、俺は一度死んだ身だ。

あの時キャンディスに助けてもらってなかったら俺は地上に頭をぶつけて死んでたに違いない。

それに男として大型クリーチャーに挑む事はゾクゾクしないわけでもない。


「アレか?」


俺が指差す方向に夢で見た煉瓦造のクリーチャーはいた。

体長約六メートル。

大剣で切れるほど甘くはないだろう。

「クロス斬り」しか使えない俺は早くもスカーロイとの連携を図っていた。

だが彼はアーツの合成を知らないのか一人で銃をぶっ放している。


先に打ち合わせしておくべきだった。

だがもう遅い。

ゴーレムの拳はあと一メートル横にズレていたらアスカをペシャンコにしていた所だった。

相変わらず凄い迫力。

俺は堪らずアスカの元へと駆け寄った。


「迅雷弾!」


しまった。

青緑色のアーツ迅雷弾を連携せずに撃ってしまった。

迅雷弾は敵の頭部に命中し、大ダメージ必至だったが、敵はかろうじて耐えている。


「スカーロイ、アーツの連携だ。通常弾でいいクロス斬りと混ぜるぞ」


「そんなもんが出来るなら先に言ってくれ」


(確かにそうだよな……」


俺は倒れかかっているアスカを見つめた。

もう一回シャイニングを放てるか。

あの時は運良くアスカの「蘇生化」が作用した。

もう一度……。


「おい、通常弾との連携に賭けるぞ」


スカーロイだった。

銃を撃ちながらも此方とのコミュニケーションを図っている。


「そうこなくっちゃな!」


俺は白のクロス斬りとこれまた白の通常弾を混ぜ合わせる形でアーツ「ブーメラン」を生み出した。

シャイニングには程遠い威力の可能性が高かったが、取り敢えず合成成功だ。

先程迅雷弾を喰らって足元がふらついていたゴーレムは、ブーメランと呼ばれる風技が頭部を抉る形で命中し、勝負アリとなった。


零社のウォリアーも知らなかったアーツの合成……!

俺は信頼できると判断したスカーロイに全てを告げるのだった。


ーー


俺達はゴーレムによって半壊された村で、イザベルについての手がかりを掴めなかった。

村人全員が避難済みだったからである。

ただ呆然としていた、その時だった。


「ちょっと、誰か止めて〜!」


聞き覚えのある声。

金髪三つ編みのキャンディスの前を、白と黒の物体が坂を転がってくる。


「うおっ、何だコイツ!」


物体はスカーロイに直撃した。

よく見れば物体はパンダだ。


「今朝仲間に迎え入れたの。パンダの『テレサ』よ」


テレサはやや大きめのパンダだったが戦闘力は未知数だった。

それよりも。

キャンディスとの再会は喜ばしい事だったし、彼女ならイザベルの居場所を知っているかもしれない。

キャンディスはテレサパンダを指輪に戻し、我々と向き直った。

やっぱり可愛い。

そして何より、強い。

テレサやグリフォンの召喚の他に黒魔法が使えるそうだった。

俺は単刀直入にイザベルについて尋ねることにした。


「知ってるけど……彼女が『シルバーバード』に肩入れするとは思えない。でも一応案内する事はできるわ」


「頼むよデーモンたちについて占ってもらいたいんだ」


俺の返答に対し少女は頷き、グリフォンを繰り出した。


「乗って。四人までなら何とか乗れる」


「頼もしいぜホント」


そういう俺自身もこの新しい環境に適応し始めていた。

取り敢えずキャンディスが味方にいれば連携アーツは真価を発揮する事になるかもしれない。


「仲間同士の絆次第で連携アーツは強化されるわ」


「へぇ……!」


キャンディスはアーツについて詳しいようだ。

それも占い師イザベルからの入れ知恵なのだろうか。

何にせよ此処からイザベルの家までそう遠くはないらしい。


「見えてきたわよ!」


イザベルの家はこの世界では一般的な木の家だった。

近くに集落があるようで、そこの村人とは交流していそうだ。

グリフォンは翼をはためかせながら家の前に降り立った。

ドアが開き、中からはハッとするような美女が。


「分かっていましたわ。貴方がたが来ることは」


赤髪の美女はグリフォンの姿に臆することなく言った。

日も落ちかけていた頃、俺達はイザベルの家に上がった。

中には良い香りのする蝋燭が灯されており、質素ながらも中々オシャレな内装だった。

皆の為にお茶を淹れるイザベル。

夜間に入った沸騰した水を、ティーバッグの付いたコップにツツツーと注いでいく。


テーブル席についた俺は、彼女なら何故我々が此処に来たか勘づいてるだろうと察していた。

何せ凄腕占い師である。

そしてこの美貌なら集落の男たちにも人気があるだろう。

上品そうに見えるし俺ソラは恋心を奪われなかったが、一生賭けて護ると誓う男が現れても何ら不自然ではなかった。


「ありがとう」


熱々の紅茶の注がれたコップを手に取り、俺はフーッと息を吐いた。

イザベルもスカーロイと同じ二十歳前後か?

何にせよ占い師がパーティーに加わるのは願ったり叶ったりだ。

俺が「あの……」と口を開く前に、イザベルは「私はこの村で生涯を終えます」と言った。


「アルカディアが迷信?いえ、そんな事はありませんわ。私は時空の歪みが直るまで此処に居ます」


ほらね……と言うような表情で、キャンディスがこちらを見てきた。

なるほど……その意志は固そうだ。

だけど!


「ならせめてデーモンを束ねる奴について教えてくれ」


「デーモン……」


イザベルが台にやかんを置き、席に座り俺を見てきた。


「サイと名乗る仮面の男ですわ。歳は二十そこそこ……今の私と然程変わりません。『空賊』と言えばよろしいのかしら?」


なるほど空賊のサイか。

彼の居場所について問いただそうとした時「ソラ、前のめりになり過ぎ」と占い師に咎められた。

とにかく今夜はこの家に厄介になる事になりそうだ。

イザベルには迷惑な話だろうがな……。


「占いには気力を消費するの。特に二十代前半なら尚更よ。お分かりかしら?」


サイについて応答するのは早かったが、やはり連続での占いはキツいのか。


「分かった。急なお出迎えに感謝する」


とスカーロイが遮って言った。

歳下の俺が率先して聞くのが嫌だったのか?

そう言えばこのパーティーのリーダーを決めてない。

まあそんなもの後からゆっくり決めればいい。

それともスカーロイ……イザベルの美貌を前に漢らしいとこ見せたかったのか?


「この男は誠実よ、ソラ。安心して」


俺の心を読んだのかイザベルがニコッと言った。



翌朝俺は外の機械音で目を覚ました。


「飛空艇……!」


とスカーロイ。

外に出てみるとその通りだった。

暫くして中から現れたのは黒の巻き髪の少女だった。

パラディンを連想させる装備、つまり魔導剣士ーー。

バサッと地面に降り立ち、コツコツと足音を響かせながら此方に近づいてくる。


何だろこの感じ……。

胸がキュンとするようなこの感覚。

一目惚れってやつか?

確かに年齢の割に強そうだし、美貌も確かなものだ。

でも……キャンディスやアスカに情が移りかけてないと言えば嘘になる。

魔導剣士はスカーロイと顔見知りのようだった。


「ナギサ。こんな所までお出迎えか?」


「そうよ。遂にアルカディアへのパーティーメンバーが出揃ったと細川さんは言ってたわ」


「すると我々五人って事か?」


「いいえ。飛空艇に白馬のギルガメッシュを乗せてる。細川さんが連れて行けって」


占い師イザベルを連れて行けないのは心底残念だが、この娘、ナギサっていうんだー。

何処かピンと来るものがあった。

スカーロイの知り合いって事は零社なの?


俺がやや熱い視線を贈っている事はキャンディス達にはお見通しか。

でもスゲーよな、このカオスワールドで三人の少女全員が同い年くらいなんだもん。

俺が考え事をしながら頭の後ろで手を組んでいると、イザベルが「さよならみたいですわね」と眩しそうに目の上に手を置いて言った。

ナギサ、そしてギルガメッシューー。

アルカディアに向かうメンツは出揃ったというわけか。

飛空艇に乗り込むと中には喋る白馬がいた。


「アルカディアの装置を押せば俺の姿も元通りだ」


何処かぶっきらぼうそうな第一印象だが、悪い奴には見えなかった。


「先ずは目指すは大都市ラーカイよ。カオスワールドになってからより一層発展しちゃったけど、きっと手がかりが掴める」


「よーし楽しみになってきた!」


ナギサちゃんと行動を共にするのが楽しみって意味じゃないですよ天才キャンディス様、癒しのアスカ様。

と、とにかく飛空艇で出発だ。

べ、別にキャンディスやアスカが俺を恋愛的に好いてるとは限らねーだろ?

でも何だろこの感覚……。

二人をほっとけないこの感じ。

ナギサの運転で六人を乗せた飛空艇は浮かび上がり、北へ一直線に飛んでいった。

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