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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
後日談
60/62

第五十三話「冒険の始まり」

あれ……?

何処だ此処……。

なんか図書館みたいだなぁ。

この世界の歴史でも書かれてたりするのかなぁ。


俺の名はソラ・ファエンガ。

漁を手伝う十七歳だ。

トレードマークは長く伸びたブレイズヘアー。


この脇に本棚がたくさん並べてある螺旋階段を登ればいいのか……?

俺は所々ある蝋燭の火を頼りに階段を上りだす。


床は綺麗に掃除されてるようだ。

そして天井は高い。

見ればぼんやり光を放つ丸い電球が天井には吊るされてある。

どおりで蝋燭だけにしては明るかったはずだ。

でも少し不気味なのには変わりない。

俺は本のタイトルを横目で追いながら、また本に指をツツツーと添えながら螺旋階段を上っていった。


「貴方の運命……そう、上に行くんだ?」


背後に初めて目にする女の子が立っていた。

茶髪ショートカット。

白のカーディガンに黒のミニスカだった。


因みに俺は漁師の子で、ボロボロの肌色の布の服上下と見窄らしい格好をしている。


「君は……?」


俺は思わず声を掛けた。


「貴方に慕う者。若過ぎる癒しの魔導師よ」


若過ぎるって……俺と同年齢くらいじゃないか?

俺は階段の先を示す上の階の方を見上げた。


「この先には何があるの?」


「王への帰還。それを成し遂げる為の道筋があるの」


「王への……帰還……?」


「やっぱり記憶を失くしているようね。いいわ、私が奥の魔法陣まで付いて行ってあげる」


「君は魔法が使えるの?」


「どうだか。貴方の剣技とどっこいどっこいじゃない?」


俺は何故この図書館のような場所にいるのか分からなかった。

また俺は剣技が使えない。

当たり前だ漁の手伝いばっかだからな。

取り敢えずこの娘は上まで付いて行ってくれるらしい。


二人で階段を上っていくと広々とした空間に出た。

奥には巨大なエルフの耳をした女性の絵。


「貴方のお母様よ」


「え?」


俺の母はファエンガ夫人だ。


「一気に飲み込まなくていい。一つ一つ、探り当てていきましょ」


「君の名前は?」


「アスカ。今はこの世界にいるの。貴方と巡り合うのも運命じゃない?」


アスカが喋り終わった刹那、天井の壁が割れ、上から巨大なゴーレムが降ってきた。

床にヒビが入る程の衝撃。

またその威圧感で俺は額に汗が浮かびそうだった。


「何だよアレ……!?」


ゴーレムは煉瓦で覆われた二足歩行のバケモノだった。


「今の私達じゃ勝てない。左の部屋に逃げて!」


アスカに言われるがまま俺は左へ駆け出した。

確かに言われてみれば広間の左側には小さなドアがある。

俺はドアを開け、アスカが入ったのを見届けてからドアを閉めた。


「あれゴーレムだろ?何でこんな所に……」


部屋に移ったのも束の間、目の前には水色の魔法陣が浮かび上がっていた。

小さな部屋だったが、これがアスカが目指してた場所か?

俺は床に描かれた魔法陣に飛び乗った。

身体がふわりと浮かんでいくような感覚。

そして目の前は真っ白になった。


ーー


気づけば俺は草の上に寝っ転がっていた。

アスカの姿は見つからない。

夢だったのだ。

だが不思議なのはいつものファエンガ家のベッドの上じゃないという事。

傍には一本の木が伸びており、俺は此処がどこかさっぱりだった。


(まだ夢を見てるんじゃないか……?)


俺が自分の頬をつねったその時だった。


「やっとお目覚めか?敢えて敬語は使わないよ、ソラ様」


見れば虹色の髪をした青年が立っていた。

何やら物騒な銃のような物を背負っている。


「俺の名はスカーロイ・ヨアーネ。ウォリアーだ」


ウォリアーってあの零社の?

俺は立ち上がりパッパッとズボンに付いた土をはらった。


「丁度此処は丘の上にあたる……来てみな!」


言われるがまま行ってみると此処が雲の上に浮かぶ孤島だと言うことが分かった。

木々が綺麗に生い茂り、奥には滝のようなものまで見受けられた。

そして、虹。

此処はーー。


「スカイピアだ。少し北に歩けば零社のビルがある。空間が捻れっちまったからな」


「何で俺の名を?」


「嘗ては義兄弟……ってこれは話をややこしくする。風の噂でソラは記憶を失くしてると聞いたもんでね」


「…………」


「零社のビルに来てみるだろ?」


俺はコクリと頷いた。

派手な髪色のスカーロイは二十歳くらいに見えた。

零社のウォリアーという言葉にワクワクしないわけでもない。


「スカイピアから落っこちると死んじゃうんだろ?」


「ま、そうだな。でもそんなの年に二人くらいだ。おっと俺の傍から離れるな。ここらはクリーチャーで溢れてる」


前方を歩いていくスカーロイの背中は何処か頼もしかった。

彼の導きによって俺もウォリアーに!?

武器はやっぱり剣がいい。

漁の合間にちょっと自主練してたんだ。


原っぱを歩いていると奥にビルのような物が見えてきた。

スカイピア……とんでもない広さなのかも。

でも空間が捻れたって言ってたよな……?

アレってどういう……。


「ねぇ、スカーロイ」


俺が丘を裏道から降り、いよいよビルへの直線道に差し掛かったスカーロイの背中に声をかけたその時だった。


「しっ、下がってろ」


とスカーロイ。

背中から銃を取り出し、直ぐにでも撃てる体勢を取る。


ゴブリン、それも三匹。

木々の陰からノソノソと姿を現したのである。

スカーロイは迷うことなく銃をぶっ放し、一匹をあの世に送った。

ギャーー!と頭を撃ち抜かれたゴブリンの姿はまだ若い俺にとって若干ショッキングだったのは言うまでもない。


「これ以上の殺戮は見たくねぇ。てめーら去りやがれ!」


銃を構えるウォリアーに対し、攻撃を躊躇していたゴブリン達だったがやがて去っていった。


「さあ、ビルまであと少しだ。ついて来れるな、ソラ!」


スカーロイの言葉に俺は「おう!」と元気よく声を上げた。



零社のビルに着いた。

聞けば三十階建てだそうで、どうやってこのスカイピアでこのような建物を造れたのか。

今の俺にはさっぱりだった。

青っぽいガラスのウィンドーが映えるこのビルは雲の上にあるだけあって、幻想的とも言えた。

一階エントランスに入るまでは専用のカードが必要だそうで、俺はスカーロイにくっついて入り口の門の前に躍り出た。


『ピーーッピコピコ』


スカーロイのボタン操作によって俺はゲストとして認められたようだ。

赤外線?って言うのかな。

俺はスカーロイのカードが無ければレーザーの餌食にでもなっていたのかというような、特殊な入り口を通過した。


『ウォリアースカーロイ・ヨアーネと確認。その他ゲスト一名を通します』


エントランスは広々としていて昨日まで漁をしていた俺は、一瞬まだ夢の中なんじゃないかと思うほどだった。

スカイピア。

夢の中でアスカは、メタスという地上の小国のアラナミ村という漁村から上空に来ることは運命だと言っていた。

ただの夢だが内容は八割方頭に入っている。

そして何処か意味深だと思わざるを得なかった。


エレベーターに乗った。

これから最上階に向かうらしい。

本当にウォリアーになれるのか?

両親ファエンガ夫妻に会えない寂しさもあるけど、充実した日々が送れそうな予感は確かにしている。

半透明な窓から外を眺める俺達を運ぶ、円柱のエレベーター。

スカーロイとは仲良くできそうな感覚が既にしていた。


「ようこそ。ソラ・ボナパルトくん」


待っていたのは細川と名乗る年寄りだった。

顔面皺だらけで、白衣を着ていたが、どこか賢そうな男性だった。

それよりもーー。


「ボナパルト?」


「さよう。ああそうだった、君は記憶を失くしてたんじゃったな」


と自身の顔を押さえた細川は、やや腰を曲げながら最上階のオフィスをゆっくりと徘徊していた。

片手には木の杖。

歩きながらの方が脳が働くとでも?


「君たち零社の目的は?」


「ククク……話が早いのう。君たちウォリアーの最終目的はこのスカイピアの何処かにあるとされる時空の歪みを正す装置を見つけることじゃ」


「時空の歪みって?」


「正せば君の記憶も元に戻るだろう。人は装置の在り処を『アルカディア』とも呼ぶ」


「アルカディア……」


俺はこうもあっさり自分がウォリアーと呼ばれる事になるとは予想だにしなかった。

時空の歪みっていうのはまだよく分からないけど、俺って記憶を失くす前はスゲーやつだったのかなぁ。


細川は壁に立てかけてある大剣にゆっくりと手を伸ばし、それを刃が下を向いた状態で俺に手渡した。


「大剣アナコンダ。残念ながらキャンディスは憑いとらん。だがもしかしたら彼女もこの世界の何処かに息を潜めとるかもしれんのう」


「ありがとう」


俺は刃に蛇の絵柄が入った大剣を大事に受け取った。

スカーロイがニヤリと微笑んだ気がした。


「さあ、大剣を操れるかのミッションじゃ。これからスカーロイと共に迅雷弾の元となる電虫を探してもらう。よいな?」


「分かんない事だらけだけど、よっしゃー任せててー!」


俺は親指を立てて言った。


ーー


スカーロイと草むらに群がる電虫を捕ったその帰り道、事件は起こった。

そもそも、簡単な任務だった。

敵という敵は草食獣ばかりだったし、運良くゴブリンとも鉢合わせしなかった。

見渡せば零社のビルも視界に入る距離だったし、大剣アナコンダを試すまでもなかったのである。

その時だった。


「う、うわぁぁぁぁ!」


俺が足を踏み外し、雲の方へ真っ逆さまに転落してしまったのである。


「お、おい!」


スカーロイが手を伸ばすが届かない。

橋のような場所で注意はしていたはずだが、まさか下を覗いた瞬間橋の一部が崩れるなんて。


「スカーーローーイ!」


俺は雲の間をすり抜けていった。

こんな所で死ぬのか?

俺が思わず目を閉じた次の瞬間、何者かが自分の下敷きになったのだった。


「アナタ、ソラでしょ。私ずっと貴方を待ってた。キャンディス・ミカエラって言います。ヨロシク〜」


「え?」


生きてる!

自分は体長五メートル弱の空飛ぶクリーチャーとその召喚士らしき少女に助けられたのだ。


「キャンディス……」


「あらご存知?いやそんなわけ無いよね〜イザベルの予言が外れるなんて今やあり得ない!」


キャンディスと俺を乗せたクリーチャーは灰色の鳥の上半身と黒い犬の下半身を持つグリフォンだった。

雲の間を駆け抜け、再びスカイピア上空へと舞い上がっていく。


「スカーロイの所に戻らないと」


「そんなの後で良いじゃん。私の家においでよ。て言っても若干質素だけど」


思春期の俺が若干ドキッとしたのは嘘ではない。


「何よ、貴方がソラだから特別よ。ト・ク・ベ・ツ。それとも質素なら嫌なんて言うんじゃないでしょうね〜」


キャンディス明るい子だな……。

金髪三つ編みで歳はアスカと同じ十六くらいか?

凄い魔力のオーラを感じるんだけど気のせいかな。

と、とにかく助けてもらったんだし行ってみよう!


俺達はスカイピアの滝の上空を通り過ぎていった。

大きな虹の下を潜り抜け、体長十メートル超えのクリーチャーの群れに遭遇したのだった。


「あれがギガマンモス!私のグリフォン以上に強いんだから!」


「へぇ~!」


絶景だった。

水浴びをしているものから岩場を闊歩するものまでマンモス十数頭の行進だ。


「君は魔法が使えるの?」


「そうよ。出そうと思えばゲートだって出せる。あ〜なんて言えばいいかな〜。つまりめちゃめちゃ凄いってこと!」


「ふ〜ん」


俺達を乗せたグリフォンは草原をも越え、やがて高い位置にある洞窟の前で翼をはためかせ立ち止まった。


「ご苦労さま」


キャンディスがグリフォンを彼女の指輪に戻す。


「スッゲー召喚士って初めて見たよ」


「ありがと。お菓子いる?」


少女はチョコチップクッキーを差し出した。

洞窟にはタンスやドレッサーらが配置されていた。

焚き火の前で座り込み、キャンディスと一緒にクッキーを食べる。


「助けてくれてありがとう」


「なんだそんな事。照れくさいじゃん、やめてよ」


「俺って記憶を失くしてるの?」


俺は今朝から不思議に思っていた事を聞いた。

そう、夢の中でもアスカが言っていたこの事。


「う〜ん正確には若かりし頃に記憶が戻ってて、本来の自分じゃないみたいな感じかな。私も分かんない」


「そっか……」


「でも落ち込む事ないよ、楽しくいこ」


「うん……」


キャンディスと話しているとちょっと気が晴れた。

自分だけ皆と違う感覚、ちょっと嫌だったんだぁ。


「でも、スカイピア良い所だね」


「まあね……」


その時キャンディスが若干うつむき加減だった事を、俺はなんとか見逃さなかった。


夜。


「それってもしかして大剣アナコンダじゃない!?」


とキャンディスがやや嬉しそうな声を上げた時だった。

けたたましく鳴り響く騒音。

キャンディスは一時期大剣アナコンダに取り憑いていたとの話だが、このやかましい音は何だ。

すぐさま焚き火を氷魔法フリーズで消すキャンディス。

居場所を知られてはマズいという事か?


前方に拡がる草原に現れた二十を越えるヤングデーモンの群れ。

その先頭を行くのが紫色のグレートデーモンだった。

デーモンは基本的にゴブリンと同じ二足歩行なのだが、より凶悪で悍ましい姿をしていた。


「奴らは夜になると現れる……。スカイピアの治安を乱す集団よ」


「…………!」


ヤングデーモンの中には角笛を吹く者や松明を掲げる者らがいた。

幾らキャンディスと言えど、多勢に無勢という事なのか。


「本気で闘えば勝てないことはない。でも私あの姿が苦手でね」


「村が焼かれたりはしないのか?」


「それを防ぐのが『シルバーバード』の役割」


「シルバー……バード?」


「ほら、もうすぐ来るはずよ」


見れば翼を生やした鳥人達が、身長一点九メートルのイカロスを先頭に奥の岩場の方から現れたのである。

シルバーバードとは組織の名か。

そしてイカロスの事なら十七歳の俺でも知っている。

だが鳥人たちの人数は四名、やや不利な対面か。


戦闘は始まった。

デーモン達は逃げるどころか真正面からイカロス達に突っ込んでいった。

そして注目すべきはグレートデーモンとイカロスの頭同士の戦い。

鳥人イカロスが、敵のパンチを喰らって尻餅をついた。


「イカロス!」


俺は坂をザザザーッと下っていき、大剣アナコンダを振り翳しながら戦場を突っ込んでいった。


「ちょっと、ソラ!」


とキャンディスが声を上げたのは言うまでもない。

正義の心を持つ誠実なイカロスを殺させてたまるかよ。


俺はザンッ、ザンッと左右のヤングデーモンを斬り裂いていった。

気味の悪い形相で睨んでくるが、俺の目指すはグレートデーモンの首のみ。

イカロスがトドメを刺される前に、俺は彼の前に立ち塞がった。

体長二メートルの紫色の悪魔を睨見つける。

その時相手が口を開いた。


「大剣アナコンダ……!おまけにその髪型は……!」


恐怖が無かったと言えば嘘になる。

でもイカロスのピンチを前にアドレナリンが放出されていた。


「皆、退け、退け!」


俺は暴走するデーモン達を追い払ってみせた。

やはり本来の俺はとんでもない存在でまかり通っていたのかも。

そして大剣アナコンダ……!

性能は一撃でヤングデーモンを薙ぎ倒すほど。

気づけば背後のイカロスが立ち上がっていた。


「少年、私は君に命を助けられた。是非シルバーバード本部に」


(え、キャンディス……).


俺は断りにくい雰囲気に押し負け、イカロスに抱えられて組織の本部へと向かう事となった。

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