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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
第3部 エウロペサーガ
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第五十二話「対ウロボロス」

「スカイ……ピア……?」


「うむ。『ゲートを潜ってきた者たちにとってはにわかに信じられないだろうが、此処は空に浮かぶ島スカイピア』と酒場の者は言っておった」


どおりで若干空気が薄いわけだ。

レイさんとの会話で此処が想像世界(パラレルワールド)の北の大陸上空の孤島だと言うことが分かった。

だが集合時間になってもハウルとギルガメッシュが姿を現さない。

どうやら街の闘技場の方で揉め事を起こしたらしい。


「行ってみよう」


「よりによってあの二人と騒動を起こすとは。現実世界(リアルワールド)十指に入る実力者ぞ」


スカイピアには闘技場が……?

一体どれだけ大きな空に浮かぶ孤島だと言うんだ。


「皆俺の傍から離れるな」


ギルガメッシュとハウルなら自分の身は自分で護るだろうが全員がそうはいかない。

スノウの実力は未だ不明だし、スカイピアが未知の領域である以上レイたちは騒動の中俺の近くから離れるべきではなかった。

向かった先では「闘技場」の景品である『神秘の秘薬』を巡って三人で出場する所を二人で充分だと言ったそうだ。

神秘の秘薬……幻影を復活させられる希少価値の高い秘薬だが使えば父さんに会える。


「俺も出場するよ。ならいいだろ?」


俺の言葉に掲示板前の衆は静まり返った。


「近接無しで闘うのは危ねーだろ?」


「済まない。安い挑発に乗った」


俺とハウルが小声で話していると闘技場へと通された。


「マーク、気をつけてね」


とナミ。

俺の実力を熟知して尚、心配の言葉を掛けてくれる。

元はと言えばハウル達がふっかけた闘いだが神秘の秘薬は俺が使えば念願のアーロンに会えるのだ。

父に会うまで長い道のりだった。

まあ今はそんな事より目の前の闘いに集中しよう。

油断は禁物だ。


「挑戦者は異世界からの訪問者チーム『ハウル』!どのような戦いぶりを見せてくれるのでありましょうか!」


司会の声が聞こえる。

裏道を通り鎖で覆われた闘技場へと歩を進める。

敵は人かそれともクリーチャーか?

どっちでもいい……。

三人誰も欠ける事なくこの戦いに勝ってみせる。


ゲートが開き、中へ通された。

客からはブーイング。

騒動なんか起こすからこうなる……ん?

敵の大きさは十メートルを超えていた。

あの影はボストロール?

予想は的中した。


「援護頼むぜ二人共!」


「任せとけ」


俺が動くよりも早くギルガメッシュ・ヨアーネは銃をぶっ放した。

通常弾レベル3は今時時代遅れな気もするが、目に当たった。

怯まずにはいられないのがボストロールである。

普通のトロールの倍以上の大きさのそれは片手に丸太の棍棒を手にしていたが、動きは鈍そうだった。

すかさず俺が対象の右足に切り込む。

下級剣技「閃光」だったが、一瞬で前方に移動し横に薙ぎ払う形で披露したそれは、剣に憑依したキャンディスのおかげで威力が底上げされていた。

おまけに大剣はアナコンダである。

そして首元にはアルマクルス。

ボストロールはバランスを崩した。


そこへハウルが中級炎属性魔法「インフェルノ」を容赦なく放った。

ハウルの魔法攻撃力も相まってあたかも上級魔法のような威力を発揮したそれはボストロールを焼き焦がした。

我々は実力の三割も見せずにボストロールに勝利した。

大衆も我々の事を見直したようで拍手や指笛がチラホラ聞こえた。


さあ、父アーロンの復活を……!

手に入れた粉の入った袋を逆さまにし念じた。

自分よりも更に短髪の黒髪ドレッド。

他ならぬアーロン・ボナパルトで間違いなかった。


「全く実の息子に世話になるとはよぉ……デカくなったなマーク」


一見ぶっきらぼうだがそんな事はどうでも良かった。

父と抱擁を交わす。

そして先程レダスが手にした情報でこの世界の闇の主の存在が明らかになった。

ウロボロスーー。

現実世界(リアルワールド)に度々侵入しては大迷惑を与えている主である。

実力はアルマゲドン以上で俺達による総力戦が考えられた。


ーー


そもそも想像世界(パラレルワールド)はレナの仮死時に消えたとの噂だった。

しかしこうもしつこく存在し続けている。 

だがウロボロスさえ倒せれば取り敢えず現実世界(リアルワールド)は安泰だった。

だがレダスによるとウロボロスはどうも一筋縄ではいかないらしい。


「アルマゲドン亜種に乗り込みましょう。アイシャさんは武器を装備していないので此処に残りますか?」


とレダス。

それなら高齢のレイさんも残るべきだった。

さあ、今度こそ最終決戦だった。

ウロボロスさえ倒せば現実世界(リアルワールド)は俺達人間の手によって支配される。

帝国との闘いは熾烈だった。

ゼウスとの闘いも勝てたのは運が味方した。

そして最後の敵ウロボロスである。

思えば自分も強くなったものだ。

此方の戦力を再確認しよう。

先ず前衛に俺と同じく大剣使いマイア、キズカ、そして時を操るセンジュ族のアシュラや双剣使いミオナ、そして忍者アーロンといった者たち並ぶ。

後衛にギルガメッシュとハウル、そしてヒュドラに変身できるナミや弓使いレダスが続く。

そして白魔導士アスカと召喚士スノウである。

錚々たるメンツだった。

ウロボロスが仮にゼウスより強かったとしても勝機はある。

さっきのボストロールは呆気なかったが、今度は十一人掛かりでも気を抜けないのは確かだ。

だが自分達を信じるしかない。

平和を実現させるんだ……!


俺達は金色のアルマゲドンに乗り込んだ。

ウロボロスの巣はなんとスカイピアの西部にあると言う。

恐るべし広さを誇る孤島である。

スカイピアが何故浮かんでいるかは説明がつかない。

魔力にしては規模が大き過ぎる。

ウロボロスの巣の前に立っていたのはあの男だった。


「ネロ!」


そう、褐色肌の蜘蛛女である魔女の息子にあたる人物である。

頭にはターバンを巻いており、どうやらウロボロスと手を組んだらしかった。

現実世界(リアルワールド)の明暗を分ける闘いが始まろうとしている。

ネロは無言でウロボロスを手招きして奥から呼び出し、俺はその姿に絶句した。

五本の首のカオスを連想させる竜。

鱗の色は黒と銀色だった。


「バケモノだ……!」


後方でギルガメッシュの声が聞こえた。

敵の体長は十七から十八メートルほど。

さっきの大型のボストロールよりも一回りも二回りも大きい。

殺気もデカ過ぎて測定不能だ。

俺は大剣アナコンダに手を携えた。


ギルガメッシュ・ヨアーネの放つ迅雷弾レベル3は敵に僅かなダメージを与えた。

迅雷弾レベル3であの程度の怯み具合。

ったく冗談キツいぜ……。

銃声と共に闘いの火蓋は切って落とされた。


「ミオナ叔母さんたちは下がって!」


言うより早くキズカが牙の餌食になった。

スカーロイの親戚で一見冷たい印象の彼女だったが、何処か優しさが滲み出ていた。

キズカの死。

それは俺達の闘志を奮い立たせた。

俺と従兄弟マイアのクロス斬り。

アナコンダとコブラ二つの大剣は光と闇の力を帯び敵の腹に直撃するが、掠り傷一つ付かない。


「なんだマーク、そんなもんか?」


背後にいた父アーロンが小型ナイフを投げ出した。

その威力は目を見張るものがあり、胸の辺りに突き刺さった刹那ウロボロスは若干よろめいた。

そしてミオナが、ナオミ張りの剣技「虹」を放つ。

最上級剣技「虹」を持ってしても敵を倒すには程遠い。虹色の空間が敵に侵食していったが、ケロッとしている。

ウロボロス……これまでの敵とは格が違う。

ギルガメッシュの迅雷弾も底をつき、アーロンの投げられる武器も限られていた。


ーー


ウロボロスの口から放たれる青白いビーム砲。

それはスノウの召喚した金色のアルマゲドンに直撃した。

為す術もなく倒れる巨竜。

サイズはウロボロスよりもデカかったが、力の差は歴然だった。

光になってスノウの指輪に吸い込まれるアルマゲドン。

だがヒュドラに変身したナミが、此処に来て新技を披露した。

「ポイズンパニッシャー」。

猛毒の紫色のビームの事で、七つの首それぞれから発射される。

猛毒を頭から被った相手は、苦しそうな咆哮を放った。

これで長時間此方が生き残れば勝利になる。


「ナミ、人間に戻れー!」


ヒュドラの状態だと敵のビームのいい的だった。

敵に毒を浴びせた以上、彼女は役目を果たしたと言える。

その時だった。

スノウの周りに白い魔法陣。

放たれたのは裏魔法だった。


「裏・ブリザード!」


真・ブリザードを軽く凌駕するそれは、ウロボロスの一つの首を氷漬けにした。

吹雪の光線裏・ブリザード。

俺はスノウの実力を再び見直した。

仲間との連携。

一人ひとりはウロボロスに遠く敵わなくとも、力を合わせれば互角に戦える。

そして、キズカの敵を討つ時!

俺はマイアとミオナの前に立ち、大剣アナコンダで護りを固めた。

大切な家族ーー絶対に護りきる!


「ウロボロス、『ダークフレア』だ」


此処に来てネロが初めて声を上げた。

ダークフレア?

聞いたことのない技名だった。

下級炎属性魔法フレアのダークバージョンとでも言うのか。

だがわざわざネロが指示を出した以上、先程の青白いビーム以上の威力を想定せねばならない。

赤みを帯びた黒炎。

俺達十人への全体技だった。

物凄い威力に皆、膝をついていた。


これがウロボロスの力……!

毒が回りきるより先に全滅の可能性もある……!


(やるじゃねぇか……腕が焼けるようだ)


幸い後方のナミ達は俺に比べてダメージが少ない。

マイアとミオナもまた然りだった。

アスカが決死の覚悟で「アルティメット・ヒーリングノヴァ」を放つ。

味方全体を大きく回復させるそれは一日一回の発動が限度だった。


(ありがとよアスカ……!)


俺は再び立ち上がった。

気づかないうちにアシュラが敵にスロウ魔法を掛けていた。

それでダークフレアの後敵は追撃に移れなかったわけだ。


「皆の力を俺に預けてくれ……!」


敵に時魔法スロウが掛かっている今しかない。

追撃に移られる前に敵の首を一つ斬り落とす。

ギルガメッシュ達は手を翳していた。

それが淡い光になって大剣アナコンダへと吸い込まれていく。


(頑張って……!)


キャンディスの声。

俺は死に物狂いで敵に突進していった。


「裏・ハヤブサ二十人斬り」


味方の援護あってこその技だった。

敵の首を一本二本と斬り落としていく。

自分でも何処からこんな力が湧いてきたのか戸惑うくらいだった。

いや分かっている。

これはギルガメッシュ達の俺を想っての力だ。

ナミやアスカやキャンディスの愛に近い強烈な力だ。

気づいた時俺はウロボロスを倒していた。


ーー現れる紫色の裂け目ーー


ウロボロスを倒した事により、俺はナミと二人っきりでココナツ村の海岸に立っていた。

不思議だ……村が帝国の攻撃に遭う前の姿だ。

おまけにナミは二年前のファッションをしている。

鏡を見た時、逆に俺は三十歳の顔をしていた。

ココナツ村……懐かしいな。

アスカ達が何処に行ったのかは定かでは無いが、俺は今この瞬間何をすべきか途方に暮れていた。

ここでナミと暮らすか……?

長い闘いの十年にピリオドが打たれる事になる。


「ナミ……!」


俺達は口付けを交わした。


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