第五十一話「親しき者達」
翌朝飛空艇に乗った俺とアスカはスペイン東部にある町「ヴィヴィド」へ向かった。
何やらハーピークイーンが悪さをしているようだが、ナミも連れてきた方が良かっただろうか。
まあいいさ、無理に彼女まで戦わせる事ない。
アスカもこの腕で護る。
スピードを上げた飛空艇は巨竜アルマゲドン以上の速さだった。
又もや脳裏にアシュラの声。
(相手はムドーの仮面を被ってる。つまり変身したキアラスが相手っス。君達以外にもギルガメッシュに声をかけてるっスよ)
(ギルガメッシュは腰痛持ちでは?)
(呪いの林檎のおかげで良くなったみたいっス)
「そうか……!」
俺は思わず声を上げた。
ギルガメッシュには特別な思い入れがある。
そしてどうやらアイシャはまだ無事のようだ。
相手はムドーの仮面を着けたキアラス。
やはりギルガメッシュを呼んでおいたのは正解か。
ヴィヴィドの町の隅に飛空艇を止めさせた。
ゼウスとの戦いでの功績は飛空艇を自由に運転させることすら可能にさせる。
それはともかく、ハーピーは「ハーピーの子守唄」を使うようだ。
眠らされては一巻の終わりだった。
そこへアイシャと共にアシュラが現れた。
そしてその背後にはギルガメッシュ!
俺達は再会を喜ばずにはいられなかった。
そこへカラフルな髪色をした二人組が現れた。
背中に背負っているのは恐らく銃。
もしや……。
「スカーロイとキズカだ。バケモノ退治に来た」
やっぱり!
こうも早く邂逅を果たすとはな。
キズカの方はチリチリヘアーに大剣を装備している。
そしてソラの義兄弟とされるスカーロイはサングラスを掛けていた。
このパーティーで鍵を握るのはアルマクルスを装備した自分だ、と直感で思った。
もはやスカーロイでさえもオーラだけで言えば自分の下をいく。
こんな所まで登り詰めてしまったのか。
アルマクルスの効果は絶大だが、このネックレスは近接武器を装備した者にのみ、真価を発揮する。
つまり魔法を使うギルガメッシュや銃使いのスカーロイには不向きな装飾品なのだ。
そう考えれば四天王ヨシは強力だった。
呪文詠唱は短くなっただろうが俺の剣技みたいに威力は底上げされない。
そしてスカーロイの持つであろう迅雷弾レベル2の威力は恐らくヨシの魔法すら凌ぐ。
「メシア」か。
此処に居るアスカやアイシャの為にもキアラスは倒しておかねばならない。
仮面の主ムドーは想像世界随一の力を発揮したとされる者だ。
彼の仮面を装備したキアラスがアルマクルスを装備した俺以上の力を持っていたとしても何ら不思議ではない。
ゼウスがボスとすれば変身後のキアラスは裏ボスであるとさえ言えた。
「キズカ、白魔導士のアスカを護っててくれ」
とギルガメッシュとスカーロイを左右に付ける。
変身後のキアラスは巨大だった。
軽く十メートルはある。
青黒いゴーレムに似た体躯のバケモノの頭部に、ハーピーが張り付いているのだ。
「アイツをこの世界に野放しにしておくのは危険だ。行くぜ、ギルガメッシュ、スカーロイ!」
「「おう!」」
ヴィヴィドの町で闘いの火蓋は切って落とされた。
ーー
だが忘れてはならないのはアシュラは時魔法を使える事だった。
「クイック・ノヴァ」を俺達三人にかける。
これで俺達の動きは倍くらい速くなったはずだ。
そうだアシュラ、あとはキズカの後ろに隠れとけ。
俺がいよいよ戦闘モードだぞ、と己の大剣に語りかけた、その時だった。
キアラスの触手。
それがスカーロイの片足を掴み、地面に叩きつけたのである。
「ギルガメッシュ、俺はもうもたない。禁術を使え!」
ギルガメッシュの噂はスカーロイの元まで届いていたのか。
もう一度コンクリートの地面に叩きつけられる前に、ギルガメッシュは秘密の禁術を使った。
ー吸収ー
一回限りの魔法だったが、相手との融合を果たす効果を持つ。
やはりギルガメッシュは天才だ。
十年間の間にそんなモノまで扱えるようになっていたなんて。
髪色は銀髪のままだったが、サングラスを付けた男がそこに居た。
手には銃。
名をギルガメッシュ・ヨアーネと呼ぶ。
「ギルガメッシュと呼べばいい、それより俺が扱うのは迅雷弾レベル3だ。最強タッグの力、見せてやろうぜ」
「おう!」
どうやらギルガメッシュの雷魔法がスカーロイの迅雷弾のレベルを底上げしたようだ。
本当にギルガメッシュ・ヨアーネと俺マーク・ボナパルトが力を合わせればーー怖いもの知らずだ。
ギルガメッシュが迅雷弾レベル3をぶっ放す中、俺は一気に距離を詰めていった。
普通の迅雷弾でも中々の威力なのに、スゲェ、こりゃスゲェぞ。
敵が明らかに怯む中、俺は大剣アナコンダをハーピー本体に向けて振り下ろした。
翼で宙を舞い、仮面を着けたキアラスの身体を両断する。
俺達のコンビネーションで変身キアラスは崩れ落ちた。
もはやアスカの白魔法すら必要としない短期決戦だったが、俺達二人こそ全盛期のソラを超える可能性を秘めた限られた者たちだった。
それはそうとアイシャが無事で良かった。
やっぱりアシュラは信頼できる男だったのだ。
飛空艇に乗り込む。
アスカ、アシュラ、キズカ。
バケモノ級に強いわけではないが、どこか温かい者たちだった。
融合したギルガメッシュと、アルマクルスを装備した俺が強過ぎるだけだ。
アシュラは昔は強かったとの噂だが、まあそれでも全盛期のソラには及ばないだろう。
俺達は首都アクゼに向かう事にした。
ゼウス死後、久々にレイさんに会える事が決定したからだ。
話の内容は無線でやり取りしている飛空艇の操縦士からだった。
「アスカ、これからもずっとずっとよろしくな」
俺達を乗せた飛空艇は物凄いスピードでアクゼに向けて爆進していた。
マーク・ボナパルトとギルガメッシュ・ヨアーネ。
本当にこの世界の歴史を代表する存在にのし上がれるかもしれない。
現にアルマクルス無しでも「アナコンダ」があればある程度は強気に戦える。
ギルガメッシュの方も禁術と銃の組み合わせは斬新かつ強力だった。
とにかく今はレイさんに会いに行く事だ。
アクゼにはマイアも居ると言う。
増えてきた仲間たちが集うのはやはり嬉しかった。
「ハウルは元気なのか?」
そうだ彼を忘れてはならない。
何せ四人目のゲート解放者だからな。
とにかくキアラス討伐成功の意も込めて宴会だ。
この七年間で曇っていた心も、いつからか晴れ渡り始めていた。
ーー
未来都市アクゼに到着した。
すかさずレイさんのマンションへ。
ナミも列車に乗って来るそうだ。
十三階のレイさんの部屋には既にハウル、レダス、マイアといった錚々たるメンツが揃っていた。
そしてミオナ叔母さんまで!
俺はミオナとの再会を喜んだ。
ソラの子供は三人おり、その末っ子がミオナである。
レイさんが口を開いた。
「風の噂ではネロ・ランドールの開けたゲートから邪悪な力が漏れ出しているそうじゃ。ナミが到着次第、皆でハウルのゲートから想像世界へ行くぞ」
此処に来て元々センジュ族のアシュラはいよいよ本領発揮か。
ナミを入れて十二人。
ソラには留守を任せる形となる。
それにしてもレイさんのマンションの一室は立派なものだった。
鉄道を敷いた報酬で得たのだろう。
「シヴァとパトラはガゼに残る事になったか」
それを聞いて顔色を変えたのはキズカとミオナだった。
何かしら思う所があったのだろうか。
「まあそれでも十二人揃うことになったんじゃ。今は再会を喜び、次なる敵に備えよう」
と俺とレイさんは握手を交わした。
筋力は歳のせいで若干衰えたかに見えたが、元気そうで何よりだ。
そこへ南から来たナミが到着した。
さあ、ハウル。
今こそゲートを開く時。
部屋の天井に届くほどの紫色のゲート。
想像世界行きで間違いない。
潜るとそこは雪原世界だった。
「待っていたわ。アタシの名はスノウ。貴方達の十三枚目のカードよ」
腰まで伸びた白髮が特徴的な女性が、目の前に立っていた。
スノウ?十三人目?
俺はいきなりの出来事にやや困惑していた。
この女性はゲートが此処で開く事を知っていたのか?
さては占いが使えるな。
だとしたら頼もしい限りだ。
「アタシ召喚士。アルマゲドン亜種を出せる」
アルマゲドンの亜種と言えば金色の竜だった。
戦闘でもかなり使えそうだ。
「スノウ、この世界の邪悪について知らないか?」
「貴方なんじゃないの?恋多き男は困るわぁ」
「え?」
ミオナは叔母だし、キズカはさっき会ったばっかりだ。
何言ってるんだこの人は。
因みにミオナはナオミ譲りの黒髪にツインテールで、双剣使いである。
「はぁ……どうしたらいいの?蟒蛇と契約を結んだメシアがこんなに頼りないなんて」
スノウちゃんちょっと変わってるな。
ポエムでも詠みそうな感じだ。
俺も久しく詩は書いてないな。
まあいい召喚士なら当然力になるだろう。
闘いで特に役に立ちそうなのは俺以外だとギルガメッシュ、ハウル、アシュラ、そしてスノウと言った具合だった。
アルマゲドン亜種を出せるのなら他にも幾つか技を備えていそうだからだ。
だがスノウの実力は俺の予想を超えていた。
「この雪は……ね?アタシが降らせたの」
バケモノだった。
この娘……パトラ以来の逸材か?
と、とにかく、敵について情報を集めないと。
俺達はスノウが召喚した巨竜に跨った。
十三人だからスペースギリギリだ。
ナミがじーっと見てくる。
「私も役に立つよ」
「ああ、そうだな」
ヒュドラの猛毒は解毒剤か白魔法を施さない限り、相手を死に至らしめる。
無論、強力だった。
「スノウ」
「何?」
「ホントに敵について知らないか?宛もなく行くのは危険だぞ」
「馬鹿じゃないんだよなぁアタシ。これから向かうのは大都市ラーカイ。貴方達の探してる『敵』について知ってる者はいるでしょうよ」
大都市ラーカイ。
聞いたことのない町だった。
想像世界は変わった、それがアシュラの見解だった。
何にせよこの十三人で邪悪に挑む事になる。
シヴァ、そして特にパトラが居ないのは痛いが、俺達なら何とかなりそうな気がする。
「ほら見えてきた……!あれが大都市ラーカイよ」
金竜を警戒している者も多そうだが、矢などは放ってこなかった。
なんて言うかゼンマイ仕掛けな町だ。
未来都市アクゼは疎かガゼの町にも見劣りがする。
聞けば雪を齎す女スノウは此処の長と顔見知りだそうだった。
「よし先ずは手分けして情報を集めよう。二時間後にあちらに見える酒場に集合じゃ」
レイさんのリーダーシップは健在だ。
俺はミオナ叔母さんとのチームで町を歩く事となった。
ミオナが言った。
「お父さんに会いたいんだって?」
「うん、喩え幻影でもだ」
「可能性はゼロじゃないな……」
「ああ」
と俺とミオナは互いに笑顔見せた。
ミオナもナオミ譲りの白き心の持ち主だった。
おまけに剣の腕も、あのキズカより上と見ている。
「食いな。腹が減っているだろう?」
俺は買ってもらった唐揚げ串を受け取った。
此処は冷えるな……ってスノウの仕業か。
何故か涙がツーっと流れ出ていた。
(美味い……美味しい……!)
ミオナが頭にポンッと手を置く。
家族が齎す温かみだった。




