第四十五話「未来都市アクゼ」
着いたーー未来都市アクゼ。
その名の通り高層ビルが建ち並んでおり、エアバイクと呼ばれる乗り物が空を行き来していた。
俺達八人に気づいたのか、或いは来る事を知っていたのか白衣姿のスギが中央から歩み寄ってきた。
そしてその背後には体長三点五メートルの半透明なカマキリのような機械。
ウィーンガシャン、ウィーンガシャンと近づいてくる。
「全てを超えし者」と見て間違いなさそうだった。
小型の監視カメラで俺等を追い回していたのか?
まあ、今はそんな事はどうだっていい……それよりも。
(全てを超えし者の肩に乗ってるのはマイアじゃないか……?)
スギの力によって操られているようだった。
ただメカだけでなくマイアまで連れてくるとは、奴らは明らか俺達を警戒している。
黒騎士の数が減っていたからだろうか。
無論俺が斬り殺したのだが、スギの口から放たれた言葉は慎重そのものだった。
「ガゼにいるヨシ兄さんがアルマゲドンに乗って此方に向かっている。道中でハイ兄さんも拾ってくるようだ。お前らに勝ち目はない!」
確かに絶望的だった。
ヨシとハイが来るまでにコイツらは倒しておきたい。
情報を思わず漏らしたのはドジだったな。
「レイさん、マーク。スギとは俺にやらせろ」
顔に傷を付けられた因縁のハウルが一歩前に出る。
ならばマイアとは俺が。
大丈夫だ、トドメを刺したりはしない。
万が一負けたら俺はそこまでの男だったって事だ。
救い主「メシア」 ーー確証は無いけど、その真髄を見せる時だ。
残る六人で「全てを超えし者」の相手をする。
機械に対しては雷攻撃のギルガメッシュが戦況を左右するだろう。
アスカのヒーリングノヴァも大いに役立つはずだ。
俺はここぞとばかりに「英雄の詩」を演奏した。
結構いい音を奏でれた。
齎される効果は……どうやら防御アップか?
黄色いバリアのような物が薄っすら俺達を覆っている。
俺はマイアと向かい合った。
お互い翼を生やし急接近。
「コブラ」と「スネーク」がぶつかり合う。
火花を散らすかの如く、二度三度ぶつけ合った。
因みにマイアの羽は漆黒である。
闘いの開始の合図と共に、都会の住人たちは我々にスペースを開けていった。
いや、正確にはスギ達が来た時点で、皆ある程度道を開けていた。
俺達の大剣同士のぶつかり合いを見て、いよいよこの闘いがただの喧嘩じゃないと感じ取っている様子だ。
中には「アレ、レジスタンスよ!」と言っている者もいる。
レジスタンスは八人誰も欠けることなく絆を深めここまで来た。
マイア……お前を失う訳にはいかない!
彼からクロス斬りを学んだ頃はまだひよっ子だった。
(だが今はアーケオスさんの生き霊がいる!)
相手の大剣を叩き落とした。
そうしている間にもギルガメッシュは上級雷魔法ボルテックスで天から雷を振り落としていたし、ハウルも同じ技を使っていた。
ただアイシャ、レダス、レイ辺りは活躍の場面が少なそうだ。
もしかしたら敵への組み合わせの人選、大失敗だったかも……。
俺が思わずハウルに何か言おうとした、その時だった。
グレンウォンドを振り翳したハウルが二度目のボルテックスでスギを倒したのだ。
我に返るは当然マイアである。
結果オーライ。
ヨシ達が駆けつける前に何としてでもこのメカを葬る。
だがハウルは二度の大技で消耗していた。
アスカのヒーリングノヴァでは完治できない、頭の疲れのようなモノだった。
だったら俺が。
ハヤブサ斬りの限界に挑戦するしかない。
連続斬りを目にも留まらぬ速さで畳みかける、それしかない。
それにしてもボルテックスを放つ相棒はカッコよかった。
前足を高々と上げるポーズは本当にサマになる。
(マイア、見ててください)
駆け出す。
敵は腕が四本あるようで、それぞれビームサーベルを携えていた。
単体としての力なら確実にあの黒騎士を超えるだろう。
だからーー俺はハイの孫として己の限界に挑戦する!
ハヤブサ十人斬り。
上級剣技に分類される技に、俺はこの時挑戦した。
斬って、斬って、斬りまくる。
敵から火花が散ろうと、休むことなく切り刻む。
そしてすれ違った頃、全てを超えし者から爆発音が鳴り響いた。
研究を急ぎ過ぎたな。
この程度のメカなら俺とギルガメッシュで超えられる。
問題はーー。
アルマゲドンが到着した。
そしてその背中に乗っているのは棺桶を背負ったハイだけではなかった。
ーー
背中に乗っていたのは創造主だった。
ハウルかレイさんからか忘れたが創造主の姿形は若干耳にしていた。
金髪で短めのドレッドヘアー、そして背中には阿魏斗と呼ばれる大剣。
意外にも若い姿をしていた。
これが……この世界の黒幕か。
「新薬のおかげで何とかまた闘えるようになった。帝国は決して滅びはせんぞ」
レナ・ボナパルト。
左右にハイとヨシを従え、俺達と向かい合った。
マイアも入れて九対三で数的には有利だが、敵のスペックが圧倒的過ぎる。
「僕は『お父様』からアルマクルスをお借りした。今は無きガクの分まで魔術で闘う」
とヨシ。
ようし相棒、マイア。
俺達三人で相手しようぜ。
何度も約束したんだ、ギルガメッシュを元に戻すって。
だがヨシの相手をする事はアルマゲドンも相手するって事。
全滅する可能性も高いと言えた。
グララギャァァァン!
銀の鱗を持つアルマゲドンの咆哮。
そしてアルマクルスとは一体何なのか。
俺が身構えた時、ヨシの掌からマグマが発射された。
呪文詠唱が幾らなんでも早すぎる……!
放ったのは上級魔法「ヘルフレイム」だぞ……?
これが恐るべきアルマクルスの力……!
どうやら首に下げてるネックレスの事を言ってるようなのだが、今はマグマを受けたマイアが心配だ。
「相棒、乗れ」
言われるがままギルガメッシュに飛び乗った。
(…………究極剣技を放ち…………怯んだところでアルマクルスを奪うしか…………勝機はない)
アーケオスが言っているのは究極剣技、つまり地の桜花と風の迅竜を組み合わせた「桜竜の舞」を見舞うというものだった。
本来なら使うまでに何度も鍛錬を重ねる技だが、ぶっつけ本番中級剣技ならばと賭けるしかない。
うおおおぉぉ!
白馬に乗ってヨシとその背後のアルマゲドンに突っ込んでゆく。
アルマゲドンの口から火の玉。
ギルガメッシュの雷で迎え撃つ。
炎と雷は互いのプライドを賭けてぶつかり合い、灰となった。
既にギルガメッシュも限界のはずだ。
でも止まらない、そしてーー。
「桜竜の舞!!!」
「スネーク」の剣先から放たれる花びらと竜。
ピンクと青白さを兼ね備えた優雅とも言える大技はヨシの身体を貫いた。
怯ませるには十分な威力だ。
すかさず首に下げている十字のネックレスを奪い取る。
(何だ?物凄い力が湧いてくる……!).
間髪を入れずにクロス斬りを見舞った。
マイアから習った技……。
アルマクルスで威力が底上げされた下級剣技はヨシをあの世に葬った。
遂にギルガメッシュが人間の姿に……。
やったぁ彼なら百人力だ。
フードをすっぽり被った銀髪の男だった。
アルマゲドンも主人を失い大人しくしている。
マイアの火傷も気になるが……先ずはナミ達を援護しないと。
対ハイ戦で活躍したのは意外な男だった。
アイシャの拳もレダスの矢も通用しない中、レイさんが先程の「全てを超えし者」の足をもぎ取り、エネルギー砲として活用したのである。
器用かつ腕力のあるレイさんならではの秘策だったが、これが意外にも功を奏し、ハイを半ば追い詰めていた。
「爺ちゃん、こんな闘いもう辞めよ。帝国の為に闘って何になる?」
俺はやや甘えた口調で言った。
家族ーーもうこれ以上失いたくない。
「俺達と一緒に帝国を終わらせよ?」
ハイの動きが止まった。
彼の本当の名はソラ。
レイさんもエネルギー砲による攻撃を止め、束の間の沈黙が流れた。
「おのれどいつもこいつも役に立たんやつらだ」
レナが息子ヨシの死を前にとんでもない事を言った、その時だった。
長い黒髪の女性が我々の助っ人に駆けつけたのである。
双剣使いのようで、眼はサファイアの如く綺麗だった。
「私の名はナオミ・ブラスト。この浄化石をレナに使う機会を長年伺っていた」
「浄化石?」
「レナの身体を乗っ取った『邪心』を暴き出す道具さ」
「や、やめろ!俺が俺じゃなくなる!」
ナオミは問答無用でクリスタルのような石を使い、レナの身体から直径三十メートルの巨大な黒い球体を暴き出した。
最後の闘いが始まるーー。
ーー
マイアの火傷はアスカのヒーリングノヴァで完治した。
ナオミとソラを含む十一人で巨大な「邪心」に挑む。
その時、爺ちゃんの背負っていた棺桶の生き霊が、大剣アナコンダに憑依した。
今このメンバーで一番強いのは恐らくソラだ。
だけど俺達マークとギルガメッシュコンビも甘く見られちゃ困るぜ。
ナオミって人も、何だかメチャ強そうだ。
ナミちゃんはここぞとばかりにヒュドラに変身した。
アルマゲドンの背中にも、運動神経抜群のレダスが飛び乗っている。
勝たなきゃいけないんだ……。
この国の運命を俺達は背負っている。
曾祖父を恐らくは操っていたであろう「邪心」。
皆で倒すんだ!
アイシャが拳を振り上げた。
初めて見た闘技場の頃から彼女の拳は強かった。
そしてマイアも中級剣技「暗黒魔導斬り」を放つ。
剣技と魔術の両方に秀でていないと、基本放てない技で、黒紫色のオーラを発しながら大剣は球体に傷を入れた。
レイさんのエネルギー砲。
アルマゲドンの炎とレダスの麻痺矢。
そしてヒュドラの噛み付く猛毒が対象を襲った。
レイさんのここにきての大活躍は素直に嬉しかった。
爆発した「全てを超えし者」の脚部をもぎ取ったらしいのだが、発射されるエネルギーは青白い光線となって確実に敵に染みていった。
そして空の覇者アルマゲドンの炎と海の覇者ヒュドラの猛毒。
それに比べるとレダスの麻痺矢は若干見劣りがするが、彼がアルマゲドンの背中に飛び乗り操ったのは大きい。
だが相手もやられてばかりではない。
ブーーンと音を立てて我々を飲み込んでいく。
気付いた時、俺達十一人は真っ暗闇の世界にいた。
孤独ーー暗闇がそう感じさせるのだった。
いや俺達には仲間がいる。
アスカを守り抜くって言った。
ナミにもちゃんと好きだと伝えなきゃ。
ハイやマイアにももっと甘えたい。
俺はこれからも生きるんだ!
暗闇の中を泳いでいくと敵の核らしき物を見つけた。
気づけばナオミさんが最上級剣技「虹」をそれに向けて放っている。
空間を侵食する虹色の光……。
気づけばソラもギルガメッシュも傍にいた。
ソラ爺ちゃんの最上級剣技「ハヤブサ二十人斬り」ーー速すぎる大技は核に対し確実にダメージを与えていった。
(やっぱ元祖は違うなぁ)
だがナオミとソラはそれらの技でかなり消耗していた。
「ギルガメッシュ、最後のお願いだ。剣にボルテックスを付与してくれ。俺が中級剣技を試す」
その名も純白魔導斬り。
マイアの暗黒技と対になる剣技だった。
ギルガメッシュのサポート有りきの発動だったが、アルマクルスで威力は底上げされるはずだ。
白く輝く「スネーク」の剣先。
俺達の想いは邪心に負けない!
レナに続いて俺を操ろうと試みたのか。
黒い手のような物が俺の行く手を遮ったが、俺は怯まなかった。
(切り裂けぇぇえ!)
ブンッと聖なる攻撃を敵に浴びせる。
俺達は敵の核を破壊することに成功した。
広がっていた黒い空間は消え失せ、レナは意識を取り戻したのだった。
メシアかぁ……やっぱりまだ大袈裟な気もするや。
それに新しい帝国に賭けてみようって。
国民を支配と言うよりは護る政治。
今のレナならそれが可能だった。
何故か訪れた突然の心変わり。
レナに「邪心」が纏わりついてた、と知ってからの思考回路だった。
「ナミ、アスカ好きです、付き合って下さい!」
遂に言った。
長い戦いに終焉の兆しが差し、この時が訪れたのだ。
「三人目はどうするの?」
「え?」
「アイシャさんも待ってるよ」
未来都市アクゼでの戦いを終え、意を決したように告白した俺だったが、とんでもない結末が待ち受けていた。
アイシャはプンッと横を向いていたが、若干赤面しているようだった。
これで若い時のレナと一緒か。
ナミ、アスカ、アイシャ。
それぞれ違う良いところがあり、皆どこか優しかった。
聞けばナオミは自分の曾祖母でアルマクルスの作り主だと言う。
「似合うからそのまま持っていてはどうだ?」
だそうだ。
三人の彼女と共にココナツ村の再興も兼ねて、これから西で暮らすかな。
そう、俺は王になる事を辞退した。
そういう選択もあるさ。
帝国はレナ達に任せてみたいんだ。
旅に出て色々あったけど、仲間と成長できて本当に良かった。
新しい生活へ。
ギルガメッシュとは時々会っていいだろう。




