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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
第3部 エウロペサーガ
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第四十四話「帝国の秘密」

俺達はまた雪原へ出た。

雷属性の草食獣麒麟を狩るのはそこまで難しい事とは言えない。

問題は出会えるかだが、雪が降っているとは言え、見晴らしの良いこの場所では麒麟を見つけるのに然程時間は掛からなかった。

天は俺達に味方した。

マイア救出を掲げる中、早期発見は必須事項だったのである。

相棒ギルガメッシュに跨り体長一メートルの麒麟を追いかけ回し、レダスのいる方向へと誘導させた。

電気による攻撃は厄介だが、逃げるばかりで一向に攻撃してこない。

そこにレダスの矢。

三本畳みかけるように放たれ、対象はうめき声を上げ絶命した。


「呆気ない任務だったな〜」


「運良く発見出来たのが良かったね」


「さあ、帰ろうぜ〜」


と八人で回れ右して帰ろうとした、その時だった。

何処からともなく矢が放たれ、ギルガメッシュに命中した。


「アレだ!盗賊団だ、よくも相棒を」


「マーク、まさか闘う気!?」


「当たりめーだ。ギルガメッシュは俺の相棒だぞ」


矢一つでギルガメッシュの体にどれだけのダメージが入ったかは分からない。

だけど相棒に対し失礼極まりない事に変わりはない。


「行くぞ皆!盗賊団に目にモノを見せてやる」


「ホント、無鉄砲だよね……」


先程までナミが受け答えしていたが、今度はアスカが被りを振っている。

確かにマイアの件は一刻を争うかもしんねぇ。

だけど俺はギルガメッシュの相棒として、売られた喧嘩は買わなきゃなんねーんだよ。

三人の盗賊は背後にあったダンジョンへと姿を消していった。


「深追いは危険だぞ」


とレイさん。

確かにそうだった。

だが金に困っている今、盗賊から金品を奪い返すのは理にかなっている。

俺はレイさんの忠告を無視し、再び走り出した。

続くギルガメッシュとレダス。


「やれやれ……」


とレイさんとアスカは顔を見合わせていたが、結局付いてきた。

ダンジョンの入口は左右に篝火が灯してあり、ある意味不気味さを醸し出していたが、怖くはなかった。

俺は黒騎士をサシで倒した男だ。

アスカには生き霊の力と言った。

確かに違いねぇ、けどな。

自分を信じれなくなったら終わりなんだよ。


ギルガメッシュ、お前の武器となる麒麟の角、近いうちに装備できるように馬用の兜としてレイさんに作って貰うからな。

さあ、皆俺に続けーっと石造りの階段を降りていく。

階段の下では三人の男が待ち構えていた。


(…………桜花を…………試せ)


アーケオス!

やっと話しかけてくれたか。

ずっと黙ってるから心配したよ。

桜花は地属性下級剣技で扱うのはそれほど難しい訳では無いが、悪くない威力を誇る。

この大剣「スネーク」なら三人同時に葬れるだろう。


(よしきた!)


俺はアーケオスに言われるがまま桜花の発動を試みた。

クルクルと放たれる花びらと共に回転して斬っていく。

数ある下級剣技の中でも指折りの華麗さを誇るそれは、盗賊団をあの世へ送る事すら容易かった。

そして目の前には木製のエレベーターが設置されているのだった。


「乗ってみよう!」


「怖いもの無しだね」


「何だよナミ!この先が気にならねぇのか?」


俺は皆が乗ったのを確認し、エレベーターのレバーを押した。


ゴゴゴゴゴ……ガシャン!


地下二階に着いた。

ん?神聖な雰囲気の場所だなー。

奥で祀られてるのは女神か?


「これは女神ミルナの石像だ」


「誰それ?」


「昔パラレルワールドを創ったグレンの妻さ」


ハウルは「グレンウォンド」を大事そうに握りしめながら言った。


「何でそんな事知ってるんだ?」


「この世界には石版とは別に歴史書が各地に遺されてる。それを読んだからかな」


(此処は……ヨーロッパ)


ん?ミルナが俺たちの心に話しかけてるのか?


(リアルワールドを創造主の力が乗っ取ったの。まるで此処がパラレルワールドであるみたいに)


「何!?」


「儂らの記憶まで創造主によって塗り替えられたという事か?」


(アスカさん……貴方は美しい心をお持ちです。聖ミルナに祈ってみて。少しばかり力を貸しましょう)


「な、来てよかっただろ?」


「結果論そうだね……」


と頷くナミを他所にアスカが祈ると、白いオーラが彼女を覆った。

期待したほどの金品は無かったが、とんでもない情報を手に入れた。

さあ、麒麟討伐の報酬を得て、船に乗らないと。

俺達が引き返そうとした、その時だった。

右奥の扉が開いて巨大な蜘蛛が姿を現したのである。


「逃げろ!」


俺達は元来た道を引き返し始めた。

一目散にエレベーターに乗るが、巨大蜘蛛に追いつかれてしまう。

空のアルマゲドン、海のヒュドラ、そして陸のアンドロメダと三大クリーチャーの一角を担う存在である。

昔から俺はクリーチャーについては詳しい。

もっと歴史も勉強しとくべきだった。

陸のアンドロメダ、別名魔女である。


ハウルが炎属性上級魔法「ヘルフレイム」を放つ構えを見せた。

そうしている間にも俺やレダスは懸命に戦っていた。

大剣でガードしながら敵を引きつける。

その隙にレダスがダガーを振りかざす。

今の俺たちが闘うべき相手じゃねー!

エレベーター到着と同時にハウルの「グレンウォンド」からマグマが放たれる。

さっきはアスカの前で謙遜したけど、やっぱりハウルは天才だ。

高温のマグマは如何に魔女だろうと大ダメージ必至だ。

怯んだ隙に猛スピードで階段を駆け上がり、俺達は地上に出たのだった。


「助かった〜!早くジルカスに戻ろ?」


汗だくのナミちゃんの笑顔は輝いて見えた。


ーー


〜ディオラ砂漠北東部の遺跡にて〜


ハイは自分が何者か気付いていた。

嘗てソラと呼ばれた、最上級剣技ハヤブサ二十人斬りで世界を救った男である。

アクゼはドイツ、ガゼはスイスに位置する。  

全ては創造主である父の仕業だった。

しかし人々の記憶まで書き変えるとは父は本当に神なのか?という疑念すら芽生え始めていた。

偽物の神ーー誰かがそう言っていた。

闇に手を染めたから本当にその通りかもしれない。 

それでもハイ(ソラ)は父を心から憎めずにいた。


今行っているキャンディスの探索も帝国の為である。

ソラと呼ばれていた頃旅を共にした仲で、その力はお墨付きだ。

ハイはキャンディスの遺体があるとされるディオラ砂漠の遺跡を突き止めたわけだが、内心マーク達を応援していないわけでもなかった。

その辺のことは父達にも筒抜けで、肝心な任務は滅多に任せてもらえない。


ハヤブサ斬りかーー。

ハイは静かにため息をついた。

マークに教えたのはハヤブサ三人斬りに分類される技で、十人斬り、二十斬りとランクが上がっていく。

つまり基礎さえ学べば、後は自分で鍛えるしか無いのだった。

あの時、世界樹の前で教えられて本当に良かった。

今頃来る強敵を前に、大いに大剣を振るっているに違いない。


ハイは昔剣と盾を装備していた。

それは時と共に「お父様」と同じ大剣へと移り変わり、鎧も動きやすいものへと変わっていった。


(此処か)


遂に遺体が安置されている空間に辿り着いた。

棺桶をよっこらしょと背負い、遺跡を跡にする。

棺桶には持ち運び用の鎖が付いていたのだ。

何も問題はない、と思われた矢先だった。

体長六メートルのゴーレムがゴゴゴ……と音を立て動き出したのである。

一種の罠だったのだ。

煉瓦で覆われた高い防御力を誇るクリーチャー。


「此処の守り神はお前か」


と大剣「アナコンダ」に手をかける。

本来ゴーレムはケルベロスと並ぶ闘技場などで見受けられる。

だがハイは一撃で仕留めるつもりだった。

元英雄として、失敗は許されない。


下級剣技「魔導斬り」を放った。

ある程度魔力を必要とするマイアが得意な技だ。

紫色のオーラを放ちながら、大剣はゴーレムの腹深くに突き刺さった。

本来なら「究極剣技」と呼ばれる中級剣技を見舞ってもいいはずだった。

だがハイは自分の力を信じていた。

レベル差、或いは経験値の差は下級剣技をも凶器に変える。

ゴーレムは「グォォォ……」と声を上げ仰け反った。

呆気ないバトルだった。

四天王随一の実力者は自分だ、と見ていた。

流石に黒騎士五十人を同時に相手したら勝てないし、ヨシお兄さんは今アルマクルスを預かってる。

弟スギの研究している「全てを超えし者」も一筋縄じゃいかないだろう。

全て無線から得た情報だった。

ハイは基本一人、単独行動が多い。


日が差す地上へ出た。

ハイはモドリ玉を持ち歩かない。

彼なりのこだわりだった。

此処からならアクゼよりガゼの方が近い。

ゆっくり移動すればいい、棺桶重いし。


「マイアが捕らえられ、アクゼに連行されたようです」


無線から声が聞こえてきた。

マークの父アーロンは殺され、マイアの父はアメリカへ追放となり、彼らの妹ミオナは行方不明。

まさに悲劇の一族と言えた。

そしてとうとうマイアまで……。

創造主は人の心を失ったのか?

如何に自分とて帝国の支配には抵抗できん。

「お父様」は甞ての人間味を無くしてしまっているのだった。


ーー


俺達がアクゼ行きの船に乗って丸一日が経とうとしていた。

手先が器用なレイさんの活躍で既にギルガメッシュの武器は完成しており、俺は座禅の休憩がてら看板に出た。

潮風が気持ちいい。

見ればアスカが先に来ていた。

一般人はチラホラ看板に見受けられたが、俺達の仲間は二人だけだった。

アスカは昨日のダンジョンでの祈り効果で中級白魔法「ヒーリングノヴァ」 が使うようになったらしい。

クールな彼女が珍しく素で喜んでいた。


「にしてもマーク、最近また昔みたいに急ぎ過ぎたぞ」


「わるいわるい、アスカを護るって誓ったんだけどな」


「…………へぇ」


ナミちゃんは三大クリーチャーの一角、ヒュドラの娘だ。

正直今も尚自分より強い。

護るならアスカをだった。


「絶対俺が守る。消えちゃったらなんて言わないで」


誰も見ていないのを見計らってアスカちゃんにハグをした。

正直幼馴染だから不自然と思ってたんだけど、ダブルデートで手を繋いで以来俺の方が吹っ切れた。


(いつまでもガキだと思うなよレイさん)


俺はギュッとアスカの体温を感じ取り離れた。

案外アスカちゃんはピュアでややボーっとしている。

俺以外の男とハグしたのも片手で数えるほどだろう。

ってそんな事言うべきじゃないか。

船は揺れ水しぶきが僅かに頬にかかった。


「見ておったぞ。ナミに内緒で派手に抱擁を交わすではないか」


わーアイシャさん、見られてたか……。


「ノクブ草原ではナミとハグしたんスよ。だからこれで同数……かな?」


「フン……まあ黙っておいてやるがな」


アイシャさん怖え〜。

ハグぐらいするだろ普通。

アイシャに入れ替わる形で相棒ギルガメッシュとレイさんが出てきた。

武器である角付き馬用兜を身につけ、何とも嬉しそうだ。

これで雷技の威力や安定感はグンと増すだろう。

スギには雷技が有効説が出ているので頼もしい限りだ。


「座禅の効果は如何かな?」


「まだ何とも言えねぇ。なんか昔の事思い出すんだ。両親がいなくて淋しかった事とか」


「そうか……辛かったら儂を思い出せよ」


「ハハッ、何だよソレ」


レイさんもようやくガキガキ言わなくなってきた。

歳のせいかな?

と、とにかくもうガキは卒業するんだ。

さっきのハグも自分なりのケジメみたいな物だったりもするんだ。

よーし座禅再開するーーってうわ!

船底に戻ろうとしたらバッタリナミにぶつかった。

この娘勘が鋭いからハグした事すぐ気付くんじゃねぇか?


「座禅の効果は直ぐには出ないよ。頑張ろうね!」


眩しすぎる笑顔だ。

頼む俺を叱りつけてくれ。


「海好きなんだぁ」


「え?」


「小さい頃ずっと西の海にいたの。ひとりぼっちで淋しかったんだぁ」


俺と同じ孤独……やっぱりこの娘とは運命かも……。


「今は俺達がいるだろ?」


とギルガメッシュ。

この白馬、時偶イケメンな事を言う。

しかも狙って言ってないのが凄いところだった。

船底から看板までは坂道となっていて馬の姿でも行き来が可能であったのだった。


俺は座禅を再開した。

心を無にする。

そして精神を研ぎ澄ますんだ。

気がつけば背中の辺りがムズムズし始めている事に気付いた。

そしてーー。


ファサァァッと白い羽が俺の背中から飛び出した。

ほら、やっぱり俺もうガキじゃなかったんだ。

嬉しさのあまり飛び跳ねそうになった。

早速船の周りを飛んでみよう。

ナミ達ビックリするかなぁ!

この日、創造主一族の(せがれ)として俺は背中に翼を生やせるようになった。

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