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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
第3部 エウロペサーガ
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第四十二話「束の間の安息」

ガゼの城のベッドで少し昼寝をした後、ナミとアスカとお出かけする事になった。

つまり……これは……二対一のダブルデート!?

旅での俺の態度が好印象だったようで、よく分からないがナミの提案らしい。

ジン、マイアの支配下となったガゼの町は思いのほか活気づいていた。

だがいつ北から軍が攻めてくるか分からない。

ガクが死に際に言っていた「全てを超えし者」もやや気になる。


城の外に出るとナミ達が待っていた。

それにしてもフカフカのベッドで寝るのは至福だなぁ。

アイシャさんの屋敷も取り壊されてはいなかったようで、俺はご機嫌で二人に手を振った。

だが人生初のダブルデートは緊張しないわけがなかった。

俺がここにいて良いのか、って感じだ。

俺達は手も繋がないまま喫茶店に寄るのだった。

ナミが言った。


「……未来の王メシア緊張気味?」


初めて会った時からナミは俺に期待し、信じてくれていた。

その時ふとナミが寂しそうな顔をしたのを、俺は見逃さなかった。

だが表情の真意を解せぬまま、俺達は食べ物を注文した。

悪くない雰囲気の店だ。

椅子の座り心地は良いし、流石は第二の首都といったところか。

って何話すんだよ、頼む話しやすい話題を振ってくれ〜。

二対一の体勢がここまで緊張を促すとは、自分としても予想外だった。

レイさんの言う通り、俺はまだガキなんだろうか。

やや赤面しつつ、俺は運ばれたパスタを食べ始めた。


チューッとジュースを飲むナミは、思いのほかセクシーだった。

眼差しも落ち着いている。

アスカはしきりに窓の外を見ているが、女子の心情は謎だらけといった具合か。


「おーこんな所にいたのか」


奥のテーブルのレイ、アイシャと鉢合わせした。


(何なんだよ、ジジイは酒場にでも行っとけ)


イジられるのを覚悟した俺だったが、レイさんは「平和はイイのぉ」と言っただけだった。

そうか、ナミはアーケオスさんが死んでショックを受けた俺を励まそうとしたのか。

そうとは知らず浮かれていた自分が恥ずかしい。

ようやく食べる速度も増してきて、落ち着きも出てきた。


「はい、あーん」


やっぱ落ち着かねえ今のナシ!

ナミがジュースに乗ったアイスを食べさせようとしてきた。

俺はココナツ村でずっと恋愛とは無縁だったの。

いきなりコレは思春期の心臓に悪い。


「おー、元気にやっとるのぉ。(わし)とアイシャはこれから手に入れた一隻の飛空艇について見てくる。マークあんまり女子たちを困らせるなよ」


いつも通り、レイさんは俺の味方にはなってくれない。

でもこの人のおかげで人としての大きくなれたって部分はあるんだよな。

俺は一つ息を吐き、ナミのアイスを受け取った。

冷たくて美味しい。


「女の子二人とご飯なんて天国なんだよ?」


「あ、ああ……」


俺はパスタを食べ終え、沈黙を保つアスカへの話題を懸命に探していた。

駄目だ今日の俺は空回りしかしてない。

レイさんの言う通り伸び代だらけってやつか。

くっそマジタブルデート緊張する。

そもそもアスカもナミも顔が可愛すぎんだよ、だから緊張するんだぞ。

俺がテンパっているとアスカのスプーンが伸びてきた。

アスカからのはい、あーんってやつだ。

ようやく俺を恋愛対象と認めたか。

ごめん今の言葉嘘ですー。


ナミのチョコアイスに対し、アスカはバニラアイスだった。

うめー、女子に食べさせてもらうアイスクリームはこれほどまでに美味いのか。

天国ってマジだな、でもナミなんでそんな言い方したんだろう。

まあ深く考える事じゃないか。


それに俺はアーケオスさんの死から立ち直りつつあった。

この後彼についての詩を書こう。

名付けて「英雄の詩」!

まあでも今は……女子たちとの時間を満喫しよう。


「行こ!」


表へ出た俺達は手を繋いでいた。

他者からの視線が気にならないと言えば嘘になるけれど、それ以上に繋ぐ手が温かい。

歩いているとマイアと鉢合わせした。


「ある程度予想してたけど、こりゃ本物だね。お幸せに」


「あ、うん……。あ……」


上手く言葉に出来ねー!

俺本当にメシアなのか?

仮にそうだとしてもそう呼ばれるようになるのは四十歳かなんかじゃないのか?

うおー、心臓がドキドキするー。

アスカも若干赤面しているように思えた。

ナミちゃんはへっちゃらって感じだ。

俺は思わず手を離し二人と向かい合った。


「今日のデートはあんまり上手くいったとはいえねぇ。でも俺、成長すっから。きっとイイ漢になって二人と釣り合ってみせる!」


口にした事に嘘はなかった。

「じゃ、今日は解散かな」とナミ。

幸せな時間は長く続いて欲しかったが、やはり集中力が持たない。

ある意味コカトリス戦より疲れる。

夕方頃解散となり、俺は一人ため息をつくのだった。


ーー


〜未来都市アクゼのある高いビルにて〜


ヨシは深い溜息をついた。

ネオン光るここアクゼまで、弟ガクの訃報が流れてきたからである。

すぐさま「お父様」に報告しに来たわけだが、クローン軍団は今にでも出動すべきだろう。

ヨシは青紫色の髪をしており、服装はガクによく似たスタイリッシュなモノだった。

未来を切り拓くのは我々神の子だ。

ハイは相変わらず単独行動が目立つが、スギの研究は大いに役立っている。

ヨシは管で繋がれた金髪の「お父様」に話しかけた。

黒騎士のクローン軍団の生成、スギの研究による「全てを超えし者」の開発、そして例のあの子の行方についてだった。


「レイやアイシャが率いたちっぽけな軍団か。アイシャめ薬の実験台になった事にまだ気付いていないか」


「お父様」の声は低く落ち着いていた。

嘗て彼と共に名を馳せた大剣は部屋に飾ってある。

だがこの歳では二度と扱う事はないだろう。

奇跡でも起きない限り……。


「クローン軍団の指揮はお前が取れ。ハイは宛にならん」


コードネームももとを辿れば「お父様」が付けたものだった。

クローンの剣の腕は全盛期のハイの八割位の力量に相当する。

また「全てを超えし者」も単体では黒騎士を超えるとされていた。

まだ研究中。

スギ次第ではとんでもないバケモノに変貌するかもしれない。


「あの子さえいればガゼの奪還は容易いだろう」


「お父様」はこの歳になっても考えはハッキリしていた。

この世界の創造主、絶対なる神。

そう名乗る以上は今も尚頭脳明晰でなければならない。

アクゼの高層ビルは見晴らしが良く、ヨシは此処からの景色を気に入っていた。


あの子。

「お父様」と同じ金髪で、天才の名を欲しいままにした女性。

今のレイやアイシャも彼女に比べれば赤子同然なのだが、彼女はもうこの世にはいないとも噂されている。

ヨシはあの子の探索をハイに依頼してはどうか、と提案した。


「悪くない案だ」


「お父様」と結ばれたお母様は人徳者だった。

やはりもう会えないのだろうか。

スギやガクと共に悪の道を行こうとも、彼女の存在だけはある意味特殊だった。


「ヨシ様、スギ様がおいでです」


「通せ」


スギは胸を押さえながら苦しそうにしていた。

例の八人組は絶対に滅ぼす、だそうだ。


「ガクの仇必ず取ろう」


長男ヨシは三男スギの肩にポンッと手を置いた。

随分長い距離を飛んできたのだろう。

もしかして研究所から?

あそこでは筋力アップの薬の研究などがされていて、全てを超えし者の研究は別の場所みたいだ。

よくは知らんがとにかくスギは研究に明け暮れている。


「お前のお母さんが作ってくれた御守りだ。これがあれば万に一つも負ける事は無いだろう」


「お父様」から木製の十字の御守りを手渡され、長男としてクローンを率いて立派に闘います、と言った。

クローン軍団と言っても実質は五十人位で、一つの大っきな飛空艇なら一度に移動できた。

五十人でも恐ろしい戦力だ、とヨシは睨んでいた。

そして「お父様」は過去に黒騎士と闘った事があるらしい。

敵だったものを利用し、また一つ強くなる。

「お父様」の背中を見てきたヨシは、大事そうに御守りを首に掛けた。

不思議と力が漲ってくる。


「スギ、お前次第で『全てを超えし者』はこの俺を超える。楽しみだ」


一礼し、スギと共にエレベーターに乗った。

これからクローン軍団の最終調整に入る。

それさえ済めば後は南に攻めるだけである。


「胸の痛み、大丈夫か?」


と弟を想って言った。

三男スギにこれ程の傷を負わすとは……。

やはりクローン五十人全員出動でいい。

黒騎士には大剣の他に銃も装備させている。

そしてこの御守り……負けるはずがなかった。


「僕が八人を滅ぼすか、スギの研究が完成するか。どっちが早いかな?」


間違いなく自分の方が早いだろう、とヨシは思った。

エレベーターから降り、縦二列に並び敬礼する黒騎士達の間を通っていく。


「君達クローンは辛い訓練を耐え抜いてきた。その真の力を解放する時が近づいている」


ヨシは、黒騎士達の放つオーラに押され気味のスギと共に中央に躍り出た。


「勝てるよね?敵は十人前後だそうだけど」


オーーッ!と黒騎士軍団は声を上げるのだった。


ーー


夜。

さっきのデートの失敗から立ち直った俺は、ガゼの町を散歩していた。

もうちょっと漢らしくなれねぇもんかね〜。

でもさでもさ、女の子慣れしてさ、二対一でも全く緊張感がないのもなんか嫌じゃない?

ハハッ、誰に向かって話してんだろ俺。

とにかく、こうなったら両方に行くぞ。

そう決めた!

ナミちゃんとアスカ、二人ともに彼女になってもらう!

来る告白のときに備えて剣の素振りでもしとくか〜?


俺は歩道を歩きながら脳内で一人で喋っていた。

闘技場の入口を素通りし、やがて噴水広場に辿り着いた。

あーあ、俺の父さん死んじゃったんだよな?

レイさんが隠してたのも今なら何となく頷ける。

アーロンの息子となれば帝国の殺しの対象になっちゃうかもしれないって事でしょ?

父アーロン……どんな顔だったんだろう。

そして母さんには一刻も早く会わなきゃ。

飛空艇は?レイさんが操縦できる?

俺がボソボソ言ってると、ベンチに優雅に座っているアイシャさんと鉢合わせした。


「マーク、ソナタハイの孫だったのじゃな?あまり大きな声でこの事は言えんが……これからの活躍、期待しているぞ」


「ありがと。ヘヘッ」


「アイシャと言う名は何処の女王から取って付けたと聞く。ソナタも自分の名前に誇りを持ち、生きていけたらよいな?」


名前の由来を教えてくれるとは、ちょっと打ち解けてきたか。

最初は毒舌なんかなーって思ってたけど結構常識人だし、案外これはこれで優しいのかもしれない。


「アイシャ。北から防御について話がある。此方へ……」


とすっかり味方サイドに付いたジンに言われるがまま、アイシャさんはどこかに行ってしまった。

(結構美人だよなぁ!)

三人目はキツイよ、今の俺の度量に合ってない。

それに……二人にもまだ告白はしてないんだ。

告白って二人同時に向かってするのかぁ?

イマイチ実感が沸かねぇな。


ふと広場を見渡すとハウルとレダスが話し合っていた。

この二人は敵に操られた際に力が底上げされて、アイシャさんの怪力に匹敵する戦闘力を身につけた感じだ。

特にハウルには未知の将来性があり、どこか不気味とすら思えた。

どうやらどっちが先に「勇者」と呼ばれるかの競争だそうだ。

俺も俺も、ハヤブサ斬りの威力舐めんじゃねーぜ、と話に飛び込む。

若干歳ははなれていても良き競争相手と言える。


「よし……それなら三人で誰が一番最初に勇者と呼ばれるかだ」


「同時だったら引き分けね?」


「臨むところです」


俺たち三人は手を差し出し、重ね合わせた。

思えば闘技場で捕まった三人だった。


「ん?ギルガメッシュ!」


「俺は長い間お前を乗っけてない。今日は特別サービスで俺自ら城まで乗せてってやるよ」


「さすが相棒!」


「…………早まるな」


白馬ギルガメッシュに乗るのは快適だった。

旅でも一瞬乗りたいと思ったのは事実なんだが、女の子が歩くのに自分だけ乗るのは気が引けたんだ。

それにしてもギルガメッシュ、一瞬考える素振りを見せたよな?

ガゼの町は所々電灯があり、酒場などはまだ営業していた。

カッポカッポと歩くにつれ、城の門が見えてきた。


「なぁ」


「ん?」


「絶対いつか元の姿に戻してやるからな」


末っ子ガクは十人がかりで何とか倒せた。

だが長男は恐らくもっと強い。

一族の名にかけて戦わなければならない相手だろう。

ところでハイ一族はどういう所を恐れられたんだろう。

剣術?だけじゃない気もするけど。

城に着いた俺はアーケオスさんを想った「英雄の詩」 の作詩に励む事になった。

一人部屋に戻り羽根ペンを動かす、その時だった。


「この光は……!?」


緑色の神秘的な光が、部屋の隅に立てかけてあった大剣スネークに吸い込まれていった。


(まさか……アーケオスの生き霊?)


生き霊が武器や防具に纏わりつくのは珍しい話じゃない。

それにしてもアーケオスさん、俺を選んでくれたのか。

話しかけても返事は無かったが、明らかスネークの重量感と言うか、触った時の感触?は違っていた。


(にしてもアーケオス、返事しねーか?)


詩を書くタイミングで取り憑いたんだ、彼で間違いない。

さては強くなって認めないと口を利かないパターンだな?

それならやっぱり素振りすべし!

いややっぱ辞めとこう、明日外でしたらいい。

さて、英雄の詩……どういう効果を齎す詩になるのか。

一度書き出すと手は止まらなかった。

今日は四天王ガクを倒した日。

そして失敗だったけど、タブルデートをした日。

間違いなくココナツ村にいた頃より充実してる。

気がつくと俺は机に突っ伏したまま、深い眠りに落ちているのだった。


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