表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ALMA CRUZ  作者: Rozeo
番外編 
38/62

第三十三話「ヒュドラ再び!」

此処は終末の世界の北方諸国のイカロス村……!?

目の前にいるのは死んだはずの親父じゃないか。


「カッカッカッ。槍の腕もまだまだだな」


そうだ、俺はこうやって親父に揶揄われてきたんだ。

木の槍で突き刺そうとするが、かわされ地面に叩き伏せられる。

俺は幼少期の姿だった。

どうしても勝てない壁……ああイライラさせやがる!


その時俺はスカーロイの家で目を覚ました。

昨日のレナとの戦いの後、アシュラへの回答を思案すべく彼の家に戻った俺達は会議の果てこういう結論に至った。

このアナザーワールドを南西と北東に分ける。

南西を人間の領地とし、北東をソラに治めてもらう。

この意見に至ったのは殆ど俺の影響だった。

キャンディスを初め皆和平を呑む意向で賛成だったのだ。

俺は違った。

レナの息子のソラを信用できない。

イカロスと交わした最後の言葉が脳裏に木霊したのだ。


「でも北東の国とは同盟を組むんでしょう?」


「当分の間はそうなるだろうな」


「そんなのソラが認めるとは思えないわ」


とパトラやキズカと言葉を交わす。

朝食を手短に済ませ、アシュラの待つ宿へと向かった。

今朝知ったんだがスカーロイはタランチュラの能力者らしい。

アルマクルス無しでは、俺は到底彼に太刀打ちできないだろう。

あのレナを追い払えたのも運が良かったのかもしれない。

いずれにせよまだまだ鍛え甲斐があるのがマンティコア譲りの魔導槍ってわけだ。


俺はマンティコアと薔薇の美女イザベルについて詳しい事を尋ねた。

二人の絆は凄まじく立派な人格者達だったという。

そう言えばイカロスも人格者だった。

アナザーワールドを旅すれば二人に会えるかもしれない。

その時には魔導槍を強化して更に強力な槍使いになっていたいものだ。


街を歩いていると不意に黄金の鎧から声がした。

あのレナの阿魏斗と言う名の太刀初め、武器や防具に生き霊が憑いていることがあるのはこの世界ではやや有名な話だが、まさか自分の鎧がそうだとは思いもよらなかった。


(俺の名はアーロン。ソラ神と対立するのか?)


(まだ戦をするときめたわけじゃない)


(ハッハッハ。この勝負見届けさせてもらうぜ)


声は消えた。

アーロン?どっかで聞いたような名だ。

いや気のせいか。

何にせよ、これからアシュラに会わなければならない。


「本当に良いのね?」


とキズカが念を押してくる。

頷きアシュラの居る宿の戸を開いた。

単刀直入に出した結論を告げる。

驚きを隠せなかったアシュラだが、これから彼はメッセンジャーとして神々の城に帰らなければならない。


「さて……」


俺は宿屋の受付前のギャラリー的な場所で皆の顔色を伺った。

皆、戦う覚悟は出来ている。

何よりレナを倒せばあの現実世界(リアルワールド)への扉も開くかもしれないのだ。


(アルマクルス……当分の間、力を貸してくれ)


今は傭兵とさほど変わらないような集団だが、此処レイピアを拠点に発言力を強めていくつもりだ。

先ずはレイピアの主に話をつけるとしよう。


主は見晴らしのいい赤色の屋根の家にいるらしく、二人の門番が立ち塞がった。

正直赤髪のシヴァの名はまだそこまで浸透していない。

それよりもキャンディスやスカーロイの名の方が此処では有力だった。


「キャンディス・ミカエラとスカーロイ・ヨアーネが大事な話があって来たと伝えてくれ」


とスカーロイが落ち着いた表情で言った。

彼らは想像世界(パラレルワールド)においては勇者といっても差し支えない歴戦の強者である。

俺やパトラも早く名を上げねぇと……!


「暫し待たれよ」


と門番の一人が中へ伝言を告げる。

電話すら浸透していないのがアナザーワールドなのだ。


「あのさ……」


俺が黄金の鎧についてスカーロイに尋ねようとした、その時だった。

中に入る許可が下ったのである。

果たしてアーロンは何者なのか。

物知りなスカーロイなら知っている可能性がある。

まあいい、今はレイピアの主との話が先だ。


内部には獅子、蛇、山羊の融合体であるマンティコアの置物があった。

四足歩行のソレは俺の興味を大いに誘った。

置物の横にある椅子に腰掛けた主が口を開いた。


「伝説の召喚士と銃使いが何の用かな?まさかアナザーワールドの縮図に飽きたというのでは無かろうな?」


「まあ、そんなもんですね……レイピアはこれから人間の人間の為の政治の拠点とさせていただきたいのです」


スカーロイには似合わない敬語だった。

彼の経歴は恐らくレイピアの主のそれを遥かに凌ぐ。


「レナ・ボナパルト神は長きに渡ってアナザーワールドの平和を保ってきた。風の噂で今はソラ神が受け継いだようだが、それを崩すというのか?」


「この世界を南西と北東に分断します。どっちの政治が良いかは民が決める」


ここに来て俺が口を挟んだ。

誰だお前は?と言わんばかりの視線を向けられたが、引き下がらない。

そこまで言うなら、と主はある案を提示した。


「西の海に潜む七本首のヒュドラを倒してくれたらレイピアはそなたらの下に就こう。逆にヒュドラを倒せん六人とあらば神々と戦うのは無理だな」


「「良いでしょう」」


俺とスカーロイは同時に言った。

嘗てレナ・ボナパルトに敗れ、アナザーワールドに来た体長十五メートルの化け物。

その子孫が西の海に居るようなのだ。

俺達にはスカーロイの迅雷弾があり、キャンディスの「全てを超えし者」という奥の手がある。

俺達は早速西の海に向けて旅立った。


「あの、さ……」


「ん?」


「ずっと言わなきゃって思ってて……なんていうか男の人の生まれ変わりって知られちゃマズイかななんて……」


パトラが目を伏せて言う。

確か初めてテレパシーをくれた時パトラは意味深なメッセージを送ってきた。


「私、シヴァのお父さんの生まれ変わりなの。過去の記憶も鮮明に覚えてて……」


「親父の……生まれ変わり……」


「やっぱり変だよね。私だって女の子として見てもらいたいよ?でも隠してちゃ、シヴァが前に進めないもん。お父さんに揶揄われてた過去を私と一緒に乗り越えよ?私頑張る」


そういう事だったのか……。

別に恋愛対象から外れたりはしないけど……この世は不思議だなぁ。


「さあもうすぐヒュドラが見えてくる。私にその力を示して。お父さんとの因縁にけじめをつけて」


波が高くなっていた。

現れる七本首の化け物。

シャアァァと声を上げるそれはコカトリスとは異質のオーラを秘めていた。

スカーロイが銃弾を撃ち始める。

キャンディスの周りにも魔法陣が浮かびあがり始める。

レイヴンは召喚士達の前に立ち塞がり、キズカも剣を構えて戦闘体勢だ。


レイピアからヒュドラまであっという間だった。

アナザーワールドの地形は想像世界(パラレルワールド)とは異なる。

何にせよ俺は此処で漢になる!

光りだすアルマクルス。

スカーロイたちが驚くのを他所に、前方に躍り出ていく。


三日月の盾で一つの首の噛みつくのを防ぐ。

何か特別なオーラのような物をこの盾は持っているようで、大柄な蛇の攻撃から見事に俺を護った。

流石ジンが作った、太陽の盾と対を成すだけある。

だが俺はレナと違って飛べない。

仕方なく、ソアクーラの首輪によるビームで戦う。


スカーロイが一つ目の迅雷弾をぶっ放した。

今後の事も考えて、出来れば一つに留めておきたいと道中彼は語っていた。


「タイラント・ノヴァ!」


パトラが俺に補助魔法「鬼人化」の上位互換とされる技を俺にかけた。

ただでさえアルマクルスに強化されている上にエンチャントまで!

いける、ヒュドラと戦える!


迅雷弾を受けた一つの首が戦闘不能となった。

あと六つ。

パトラ……俺に力をぉぉ!

近づいてきた首に魔導槍を突き刺す。

自分でも信じられないような力は、二つ目の首をあの世に葬った。

レナは独りだった。

俺には仲間がいる。

キャンディス、俺を召喚獣の背中に乗せてくれ!


機械の体で出来た「全てを超えし者」は波打ち際に姿を現した。

キズカと俺がその背中に乗り込む。

レイヴンもキャンディスを此処までよく護っていた。

後は俺とキズカ、そしてキャンディスの契約獣に任せろ。

体長三点五メートルの半透明な機械に乗り込んだ俺達はみるみるうちに敵に接近していく。


「キズカ、無理すんなよ」


「え?」


「傍にいる女の子を死なせちゃ、ライデン家の恥だ」


全てを超えし者の四本のビームサーベルは三つ目の首を落とすには充分過ぎた。


「キズカ、そこで待ってろ!」


四つめの首に飛び乗った。

自分でも制御不能のアドレナリン。

異世界者の齎す単語は此処二千年間で数知れずと言ったところか。

俺はマンティコアの血を引く男だぁぁ!

アルマクルスは青白く光り、俺の脳天への一撃は四つ目をあの世に葬った。

ヒュドラ……わりぃな戦いは非情なんだ。

若干冷静さを取り戻した俺だったが、同時に海に投げ込まれた。


「シヴァ!」


キズカが俺を助けに海に飛び込んだのは予想外の事だった。

普通なら機械に乗ったまま接近するはずだ。

彼女も気が動転していたのだろう。

或いは……。


俺達が泳いで陸に帰る頃、戦闘は終了していた。

流石は「全ては超えし者」と言ったところか。

重い防具を身に纏いながらの泳ぎはアルマクルスとタイラント・ノヴァ無しでは到底成し得なかったわけだが、なにはともあれこれでレイピアは俺達の管理下となる。

流石のキズカも息が揚がっていた。


「強いじゃないシヴァ・ライデン」


「ありがとう」


パトラが大慌てで近づいてくる。

キャンディスも心配そうな顔をしている。

こうして俺はモテ期確実の道を歩み始めるのだった。


「黄金の鎧のアーロン?」


帰り道スカーロイが驚きの声を上げた。

聞けばソラとアイシアの息子だという。

だが彼ら両親とは険悪な仲だったそうだ。


「そうかそれが理由でアルマクルスは俺の手に……」


「そうかもしれんな」


海辺からレイピアまでは目と鼻の先だった。

さて、これからが重要である。

アシュラはメッセンジャーとしてソラ達の下へと戻った。

ソラが納得しなければ最悪戦争へと突入する。

だがレイピアで名乗りを上げたシヴァやキャンディス、スカーロイという名前は北西の人民にも影響があるに違いない。

俺達はレイピアの主の家のフカフカのベッドで横になるのだった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ