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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
番外編 
37/62

第三十二話「光るアルマクルス」

次の日の朝、俺はフライパンを叩く音で目が覚めた。


「起きろ〜。ああもうこのお兄さん全然起きない。それにライデン家の倅って本当?超無防備なんですけど」


起こしたのはスカーロイの親戚キズカという女の子だった。

同じ虹色の髪をしており、チリチリウェーブは何処か色気がある。

俺はふわぁと欠伸をし上体を起こした。

キズカは丁度キャンディスとパトラの中間くらいの年齢で何処かぶっきらぼうだった。

それでも料理を振る舞ってくれたのは意外且つ嬉しく、出来栄えは完璧ではないものの温かみが感じられて良かった。

昨日のシチューの残りと乱雑に切られたパンだったが俺は心からお礼を言った。

フンって態度だ。

パトラとは対照的でツンデレって訳でもないらしい。

まあいい。

キャンディスとパトラの二人に好かれただけでも奇跡なのだ。

もっともっと強くなって彼女二人……って考えが飛躍し過ぎか。

そう言えばあのレナ神も一時期は彼女三人居たってキャンディスが言ってたな。

俺が生きてた想像世界(パラレルワールド)の二千年前の世界での出来事だから大して気にしてない。

それにキャンディスは妹分になったんだよな?


「美味いよ」


スープを啜りながらキズカの目を見て言った。

黄金の鎧に手を通し、二階から一階へと降った。

スカーロイ達は準備万端だった。

というより俺の起きるのが遅かっただけか。

流石にパトラと一緒のベッドで寝るという事にはならなかったが満面の笑顔で彼女は迎えてくる。

キズカとは此処で別れる事になるのか。

確かに棘のある娘だったけどもう一生会えないかもな。


俺はスカーロイにキズカの戦闘面について問いただした。

どうやらゼオという名の黒騎士に十年仕えていたらしく剣の腕は相当なものだと言う。

ん?ゼオ?

何処かで聞いたことがあるな。


「ゼオはムドーの弟だ。地底四天王は今やバラバラの道を行き、半数以上が更生している。これから世界最高の鍛冶屋ジンに会いに行くのも良いだろう」


スカーロイにキズカにキャンディス。

本当に強者が仲間になってくれた。

いやキズカはまだ一緒に行くと決めたわけじゃないか。

それにパトラは白魔道士。

無くてはならない存在なのだ。


「キズカ!降りてきてくれないか?」


サングラスをクイッと上げ、スカーロイは言った。

俺が彼女を複数得ようとするような奴とバレたのか。

いや……でも……その……つまり……ああもう。

確かに恋愛未経験者がいきなり二人はあり得ないけど俺にだって百獣の王の血が流れているんだ。

降りてきたキズカは腕を組み、此方を睨んできた。


「何?」


何でヨアーネ家の者はそう簡単には仲間に加わらないんだ〜。

俺は彼女の表情で全てを察した。

だけどよ。

大剣使いなんだろ?

ヘタしたら俺より強い?可能性もあるわけだし、嫌だからこそか。

弱い奴の下には付きたくないよな?


「あ、その首飾りアルマクルスじゃない?」


「え、ああ……」


「凄い、ゼオ師匠が唯一恐れた代物だわ。それを持ち歩いてるなんてアンタ何者?」


「ソラ神から譲り受けたんだ。何故か死んでもそのまま俺にくっついていて。上手く使いこなせてる自信はねーけど」


鎧の隙間から見えるアルマクルスを見るキズカの目は輝いていた。

若干化粧に頼っているがキズカもやはり美人だった。


あの時太陽の盾はソラを選び、アルマクルスは俺を選んだ。

意外や意外だったが取り敢えずアルマクルスは肌見放さず管理してる。

それにーー。

アルマクルスに選ばれたという事実はキズカの心を突き動かした。

愛とか恋とかではない。

ただ将来強くなる金の卵として見込まれたのだ。


「ちょっと、シヴァに近づき過ぎだって」


とパトラが割って入る。

キャンディスは何も言ってこなかったが内心どう思っているか分からない。

レイヴンだけは退屈そうに伸びをしている。


「アンタシヴァの彼女なの?どうぞお構いなく。アタシ自分より弱い男に興味ないの」


このタイプの娘は脳筋屈強男が好きとは限らない、と俺の目には映った。

それはさて置きキズカハッキリ言うなぁ……。

まあ取り敢えずはパーティに加わるって事で良いんだよなぁ?

よしじゃあジンって人の所をへ行ってみようぜ。

イマイチテンションが上がらなかったが、なにはともあれジンは此処レイピアにいるドワーフらしかった。

この漢字表記の魔導槍を更にパワーアップさせる事ができるかもしれない。

太陽の盾に代わる、左手の防具も必要だ。

何なら腰に差す予備の片手剣があってもいい。


男三人、女三人の六人編成のパーティは偶然にもバランスの取れた形をしていた。

前衛は俺とレイヴン、キズカが務め、後衛はスカーロイ、キャンディス、パトラが引き受ける。

銃だの槍だの召喚だのが上手く分散された理想的な編成と言えた。

これなら八神といつかぶつかり合ってもそこそこ闘えそうだ。

それに奴らだってチームワークが完璧とは限らない。

その時、俺の脳裏にレナが城から追い出される所が映し出された。

その事をスカーロイ達に告げる。


かぶりを振るスカーロイは「お前には占いの才能があるかもしれんな」と言った。

信じてくれるのか。

どうやらマンティコアの妻は凄腕の占い師で、それが理由で直ぐに占いと勘づいたようだった。

つまり敵は一人。

ソラ神達と無理に戦う必要はない。

大通りを歩いていくと懐かしい顔に遭遇した。


アシュラ・ヴェラスケス。


八神の一人でどうやら戦いに来たわけではなさそうだ。

だが油断は禁物。

槍を構えながら要件は何だ、と馬を引いた彼に聞いてみる。


「ソラ神を始め神々の多くは君達との和平を望んでるっス」


「やはり、レナはもういないのか?」


とスカーロイ。

ああもう此方に占い師がいるって知られちゃうじゃないか。

まあいい和平を望んでるなら敵にはならないかもだ。

俺は二人の会話を素直に聞くことにした。


「そうっスよ。アンガス・クロウ、どうか赤髪のシヴァとスカーロイを説得してくれっス」


「その必要はないわ」


なんとパトラが会話に躍り出た。


「誰だって平和は望むもの。復讐なんて虚しいだけよ。私はただシヴァと時を重ねたいの」


キャンディスもコクリと頷き、レイヴンはかぶりを振った。


「アルマクルスはなんの為にアンタを選んだと思う?戦う為よ。今や伝説となった神秘の秘薬を手にして本当の楽園、現実世界(リアルワールド)に生還できる可能性を秘めてるってお告げじゃないの?」


とキズカ。

確かにさっきまで戦う気満々だった。

だがこのままではパーティの存続すら危ういかもしれない。


「時をくれ。アシュラ、明日にでも答えは出す」


俺はアシュラとは顔見知りだった。

レナ以外の神への殺意は薄れ始めていた。

だがせっかく集まった良き集団を解散させるのももったいない気はする。

まあパトラはいつまでも着いてきそうだが。

一体俺の何処を気に入ったのかしらねー。

二年後三年後に良い漢になっていたとしても今はやや陰キャ寄りだぞ。

いや自分で自分を卑下するのはよそう。

と、に、か、く!

明日までまだ時間はある。

俺はさっき行こうとしていたジンの武器屋に一人足を踏み入れた。

しまった金が無い。

やっぱりスカーロイと来るんだった。

置いてある武器、防具は豪華絢爛なものばかりである。

ジンは大きめのドワーフだった。

想像世界(パラレルワールド)では地下世界にいたと明るく話してくれた。

とびきり悪人っぽい匂いはしない。

ゼオと言いジンと言い根は優しいのかもしれない。

その時俺は確かに復讐を虚しいものだと分析していたのだった。

俺の目を見たジンが微笑む。


「お前さんにはコレをやろう。太陽の盾と対を成す三日月の盾じゃ。代金は受け取らないで結構じゃよ」


いいのか……?

あの太陽の盾は相当値が張るはずだった。

それと同等の防具をタダでくれると言うのか。


「なんの為に戦うか己に問いなさい」


「……………………」


その時スカーロイとキズカが入ってきた。

明日まで時間がある、それまでキズカにレイピアを案内してもらえとの事だった。

キズカと二人っきりかー。

嫌じゃないんだけどなー。

スカーロイは迅雷弾と呼ばれるものを買い付けていた。

まあ……キズカちゃん案内頼むよ。

レイピアだって観光名所だよなぁ。

終末の時代の北方諸国は腐っていたに等しい。


「其処の坂を下った所に水車があるわよ」


「へぇ~」


俺が興味深げで坂の下を見たその時だった。

雷と共に現れた、黒き鎧のレナ・ボナパルト。

しまったスカーロイやパトラ達がいない!

レナはあっという間に真・究極剣技「桜竜の舞」でキズカの脇腹を抉った。

技までのスピードが速すぎる。

これが神々の力。

痛々しそうな眼でこちらを見るキズカが目に入った時、俺の中の何かが吹っ切れた。

まるでバケモノでも乗り移ったかのような、感覚ーー。


うおぉぉぉお!


獣の雄叫びに近かった。

接近し、奴の太刀とぶつかり合う。

衝撃波は風となり辺りを覆い尽くす。

すかさず三日月の盾をぶつけ、敵の体勢を崩す。

再び咆哮のような声を上げる。

今の俺はマンティコアだ。

そう言い聞かせて充分だった。

左手を翳し、手首にはめたソアクーラの首輪によるビームを吐き出す(盾は腕に括り付ける作りになっている)。

それにしても不自然だった。

ソアクーラの首輪までもが死んだ俺を選んだのである。

一体俺は何者なのか。

それはまだ占い師の卵である俺も知らない。


なにはともあれレナは一時的に追い払った。

ソアクーラの橙色の光線(ビーム)は確かなダメージを与えたはずで、翼をはためかせ飛んでゆく。


「そんな、神々に勝ったからって調子に乗らないでよね」


キズカに手を差し出し立ち上がらせる。

早くパトラに診てもらわないと。


「まあ、頼もしかったけど……」


今の俺は半分自分の力、半分他人の力で戦っていた。

そしてアルマクルスが青白く光っている事に気づいたのはそれから暫く経ってからだった。

魔導槍はともかく、伝説の防具を身に纏い、ソアクーラの首輪を装備し、アルマクルスまで所持した自分を誇れるのか。

だがこの時キズカの瞳は確かに俺を捉えていた。

まるで遥か未来を見通すかのようにーー。


パトラ達と再会する。

回復を手短に済ませ、俺はアルマクルスを見つめていた。

これが……力をくれたのか?

傍にいるレイヴンの刺青が、一際異様に見えるのだった。





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