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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
番外編 
36/62

第三十一話「謎の少女パトラ登場」

俺は逃げている。

体長二十五メートルの島亀の赤ちゃんから。

海からは遠く離れた草原だったが、現に島亀の赤ん坊は追いかけてくる。

変に攻撃して親を怒らせては命はない。

俺達三人はただ宛もなく一目散に走っているのだった。


ミンフィアは森と草原に挟まれた集落。

この草原を越えると南西部の首都レイピアに辿り着く事になる。


「何処までも追いかけてくるね」


「ホント冗談じゃないわよ!」


「ん?何だ!?」


「そのまま右へ来て……岩の陰に隠れてやり過ごして」


あの時の声だ。

二日前、ミンフィアで聞いた女の声だった。

又もやテレパシーで自分に語りかけている。


「誰なんだ、君は!」


突然声を上げた俺に対しキャンディスらは首を傾げる。

だが今は声の主を信用するしかねえ。

現に右方向に岩のような物は実際存在する。


「こっちだ!」


俺は二人を導くように右へ曲がった。

島亀の赤ん坊は知能はそれほど高くない。

岩の陰に隠れるという手段は確かに有効と言えた。


「テレパシーかしら?」


とキャンディス。

流石この世界に千年以上の滞在歴があるだけある。

ありとあらゆる能力と魔法はこの世界の創造主によって生み出されたのは言うまでもないが、意思を持つ人型として、能力の一つである「テレパシー」への理解は、この世界を生き抜く術として外せないものだったのである。


ギャァ?


岩陰に消えた俺達を探す素振りを見せる赤ん坊。

息を殺し、通り過ぎるのを待つ。

そして視界に入らないように身体を小さく折り曲げる。

岩の下に半ば入り込むようにして、俺達はなんとか島亀をやり過ごした。

そこへあの声の主が。

草原の草を掻き分けるようにして現れたのは十七、八歳の娘だった。

茶髪ショートカット。

緑の目。

踊り子のような衣装はレイピアの物か。


フフッと笑みを浮かべた少女は岩場の陰から現れた俺達の前でこう告げた。


「私の名前はパトラ。ずっと貴方を待ってたんだから!」


あの声と一緒だ。

それに結構可愛い。

キャンディスも可愛らしいが外の世界にはそれだけ美女も存在する。

ってキャンディスに失礼か。

この少女との出会いが俺を葛藤の渦に巻き込むことになる。

歳は十以上離れていたが関係ねえ。

この歳の娘は恐ろしい。


俺達は軽く自己紹介を済ませ、彼女が泊まっているテントに案内してもらう事になった。

どうやら踊り子ではないようだが、チラチラ此方を見てくる。

そう言えばミンフィアでも意味深な事言ってたなー。

何言ったか忘れたけど。

セクシーな踊り子の衣装は一種の魔術にも分類されそうだがなにはともあれ俺達はこの娘の力を後にこれでもかというほど思い知る事になる。


「どうかした?」


とキャンディス。

あ、いや……一瞬未来が見えた気がするんだ。

葛藤って文字が脳裏に……。

上手く返答出来ぬまま、俺達はテントにたどり着いた。

中にいたのは虹色髪にサングラス。

スカーロイ・ヨアーネだった。

俺も話では聞いた事がある。

どうやらレイピアから外に出て迷子になったパトラを偶然発見した所だったという。

それにしても流石はスカーロイ、中々のオーラだ。


「伝説の銃使いで戦士(ウォリアー)としても名高い。俺達の仲間になってくれないか?」


「キャンディスのお嬢ちゃんは中々の強者だが、お前はどうなんだ?殺気で判断した限りではバケモノという感じはしないが」


それに対しては返す言葉が無かった。


「まあこれから俺はパトラちゃんを家に帰すつもりだ。それまで一緒に居よう」


その時パトラが俺の腕を掴んできた。


「私はこの人と一緒に行くー!」


顔色を変えたのはキャンディスだった。

これまで俺を恋の対象と見た事はほぼほぼ無かっただろう。

それがここに来て若きライバルの登場である。

何か引っかかるものがあるに違いない。


そしてパトラには懐かしさに似たものを感じていた。

一緒に居ればまた意味深な事を口に出すだろう。

その時はじっくり耳を傾け、誠心誠意答えるしかない。


俺は終末の世界出身で恋愛からは遠い人生を歩んできた。

キャンディスに思い入れが無いと言えば嘘になるが、この娘の存在に困惑している自分がいるのも確かなのである。

それに未来が見えた、アレは何だったんだろう?

だが今はレイピアに足を運ぶしかない。

八神と戦うにあたって、スカーロイの助力は必要不可欠かもしれない。

レイピアでなんとかアピール出来れば……!

俺達五人は荷物を乗せたラクダと共に草原を歩く。


「パトラはテレパシーが使えるから神族なのか?」


「違うと思う。この前アイシアって名の女神に会って奪っちゃったんだー」


相手の力を奪う能力……!

にわかに信じ難い話だが、現にパトラはテレパシーを使えている。

それに……。


「俺達何処かで会ったっけ?」


「ううん、初めてだよ」


とパトラは嬉しそうにスキップした。

たんぽぽを摘み満面の笑みで此方を見る。


「これから宜しくねシヴァ」


先程挨拶を済ませた俺達だったが、この娘なら俺の名前を知っていても不思議ではなかった。

何にせよパトラの出現で俺は退屈な日常から少なくとも暫くは離れる事になる。

そうこうしてる間にもレイピアに着いた。

鉄と木で出来た門を潜れば、そこは人口が集中するエリアだった。

スカーロイが口を開いた。


「じゃあ俺はここで失礼しようかな。じゃあなキャンディスたち」


「待ってくれ。俺はまだアンタを諦めきれねぇ」


かぶりを振るスカーロイに対しレイヴンがこう言い放った。


「確かレイピアには闘技場がある。そこで僕達が成果を出せば認めてくれないか?」


闘技場。

俺はゴクリと唾を飲んだ。

力は拮抗しているとはいえ、レイヴンは歴戦の猛者。

闘技場への参戦にも抵抗無しか。

死ぬ可能性も多分にあるに違いない。

それでもレナと戦って勝つには良い経験だった。

真っ直ぐスカーロイの方を見つめる。


「分かったよ。だが俺はレイヴンよりシヴァの活躍を見たい。参加者はシヴァ、キャンディス、パトラでどうだ?」


「え、私?」


「女を守る時こそ、シヴァの本性が出る気がする」


パトラとキャンディスがチームか。

やってやろうじゃねーか。

レイヴンが自身の盾を差し出す。


「左手何も無いよりは良いでしょ?」


「ありがとう……何としてでも二人を護らねーと」


キャンディスは黒魔法も使える召喚士だがパトラに関しては一切データがない。

最悪テレパシー以外何も出来ないということも考えられた。


「大丈夫。私結構役に立つよ」


とウィンクするパトラ。

面白くなさそうなのは金髪のキャンディスだ。

ここに来て非モテの俺にモテ期が到来しようとしている。

自信は特に無く、ちょっと純粋なのが取り柄なだけで大して目立たない。

そんな自分を変えるという意味でも闘技場への参加は有益だった。

受け付けを済ませ、待機室のソファに座る。

相手はヒトか、バケモノか。

どちらにせよ返り血を浴びるくらいでは済まないだろう。

俺は前衛として二人の盾になる。


ソファで手を組んで考え事をしているとキャンディスの反応が確かに今までとは違っていた。

目が合うと伏せてくる。

彼女本来の大人しさをここに来て発揮か。

何にせよ男として二人の死は絶対に避けなければならない。

俺はーー戦って勝つ。


闘技場へのゲートを潜った。

向かいのゲートから現れたのはゴブリンより一周り大きなオークだった。

三対三。

スカーロイが観客席で腕を組んで見つめる。


それにしてもレイヴンが盾を貸してくれたのは大きかった。

これならキャンディスの詠唱が完了するまで時を稼げる。

ああ、駄目だまたキャンディスを充てにしている。

それに彼女は昨年、合成獣(キメラ)との契約を解いたばかりだ。

つまり召喚するならフェニックスか全てを超えし者。

後者の呪文詠唱時間はとてつもなく長い。


オークはそれぞれ槍を持っていた。

槍対槍のぶつかり合い。

俺は三匹全てのオークを自身の手で倒すつもりだった。

相手の槍。

なんとか盾で防いだ。

だがその間に三匹に囲まれてしまった。

三方向から槍。

俺の身体に突き刺さる。

観客にどよめきが上がった。

魔導槍を装備していた俺が真っ先にやられるのは流石に想定外か。

その時だった。


「ヒーリング・ノヴァ!」


パトラの声が闘技場に響く。

ヒーリング・ノヴァは回復魔法「蘇生化」の上位互換とされる技で体力を完全回復させる上級魔法である。

俺の傷はみるみる癒え、立ち上がった俺はオークを一匹葬った。

だが残る二匹の考えることは愚かではなかった。

攻撃の対象をキャンディスとパトラに変えたのである。

キャンディスとパトラ。

どっちを守るか。

恋心を示してくれてるのはパトラだ。

ああもう何言ってるんだキャンディスとの二年間の絆はどうした!

ああもう俺は両方助ける。

槍を一匹の背中に投げ、もう一匹には左手を突き出した。

俺の秘密兵器「ソアクーラの首輪」だ。

橙色の光線を一匹のオークを焼き尽くすには充分だった。

俺達は闘技場で勝利した。


「……ごめんね。ホントはフェニックスの召喚間に合ってたんだけど」


「いやこれでスカーロイも俺達を認めてくれたはずだ」


ポンとキャンディスの肩に手を置く。

そして俺達はレイピアにあるスカーロイの家に招待されたのだった。


「シヴァ、アンタの苗字に興味がある」


「ライデン」


俺は本当の事を言った。

それを聞き顔を見合わせたのはレイヴンたちだ。

闘技場の戦利品としてマジカルロッドを手に入れ、それはパトラにあげた(キャンディスはグレンウォンドという杖を既に装備済みである)。

だがそれよりもシヴァ・ライデンの名は一同を驚かせた。


「お前の祖先は獣人マンティコアだ」


「獣人……マンティコア?」


「獅子の頭部を持った半神さ。強いぞ?」


俺の祖先が……獅子で半神……!

驚くべき事だった。

この名に恥じないように生きていかないと。


「今日はありがと。頼もしかったよシヴァ」


とパトラ。

キャンディスもコクリと頷く。

ようしパトラとキャンディスどちらと付き合うか決めたわけじゃねーがこうなったら意地でも強い男になってやる。

自信をつけて這い上がりライデン家のエースとしてアナザーワールドで名を轟かせるんだ。

現実世界(リアルワールド)への興味もないわけではなかった。

また先を見通す力もいつか仲間たちには話さなければならない。

こうしてスカーロイは俺を認め、五人で彼の家に一泊する事になるのだった。

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