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ALMA CRUZ  作者: Rozeo
第2部 ヒストリアイリュージョン
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第二十三話「ハヤブサ斬り」

ーー遡る事六時間ーー

俺、ソラ・ブラストはテルミナ城跡を攻略しようと励んでいた。

食べ物の確保すらままならない終末の時代では、城にこそ何か手がかりがあると考えたのだ。

頂上にあるはずの鐘を鳴らせばアイシアやスカーロイへの目印になる。

俺のプラズマブレスは渦を通った時に故障してしまっているのだ。


それにしてもソアクーラが一緒だったのはせめてもの救いだった。

癒やしというか、精神的支えになる。

何よりペットである彼が自分を必要としているはずだった。


暗くコケだらけの道を進み大広間に出た頃、この城の主が分かった。

ボストロール。

トロール達の親玉で身長は八メートルに達する。


(ありゃスカーロイ達の助けが必要だな)


と気づかれないように梯子を登る。

棍棒を持った太ったゴブリンのような体躯。

一人で相手するにはリスクがある。


梯子を登り終わると亡霊の戦士のような骸骨兵に出くわした。

相手の攻撃を魔導盾で受け流し、凱鬼を突き刺した。

光るアルマクルスーー威力はお墨付きだ。

骸骨兵は力尽き、俺は鐘のある場所に辿り着いた。

鳴らす。


ゴーン……ゴーン……


気づいたのは味方だけじゃないだろう。

頭の悪そうなボストロールはさて置き、あのディバイン・ドロイドが気づかないとは思えない。

ハッ、知ったことか。

俺たちはディバイン・ドロイドに用があってここへ来たんだ。


「おいソラ、そんなところで何してる?」


見れば下の階にスカーロイがいた。

廃墟と化しているので下まで見える。

因みにそのさらに下は大広間だった。

プラズマブレスが無かったらなんて不便なんだろう。

俺はスカーロイに左を見るよう指さした。


ボストロール。

棍棒で声を上げたスカーロイに殴りかかる。

駄目だこんなところで彼を死なせちゃ駄目だ。

俺は魔導盾を構えて虹髪のスカーロイの前に立ち塞がった。

衝撃。正直半端ない。


イッテー。でもスカーロイを守る事には成功した。

今だ、銃をぶっ放せ。

言われなくてもそのつもりなのが伝説の戦士(ウォリアー)スカーロイ・ヨアーネだった。

通常弾レベル2を二発、三発と連射する。

頭にヒットしたようで、かなり手応えがありそうだった。

だがこれが返って怒りの火種となり、ボストロールは俺たち二人を左手で摘み上げた。

マズイ、やられる!

その時だった。


蝶々の羽……手には斬牙とビームサーベル。

まさか……母さん……?

島亀フレゼルに喰われたはずじゃあ?

一瞬時が止まった気がした。

そして双剣使いによるクロス斬り。

ボストロールの首を斬り落とした。

その後彼女はもと来た壊れた天井の外れから消えていった。


「ナオミ・ブラストか?」


流石のスカーロイも存じ上げていた。


「さっきはありがとうな、ソラ。どっちがリーダーに相応しいか判断を遅らせることにした。どうやらお前も俺とおんなじらしいからな」


スカーロイは俺のリーダーへの意欲を見抜いていた。

中々のライバルとなりそうだ。

だが「おう!」と返事してみる。

火を囲んでの暫しの休憩となった。

交代で見張ることにしている。 


眠りの夢の中で、俺は母さんと公園で遊んでいた。

小さい頃の自分だった。

目が覚めた時、周りにはアイシアやレナ、キャンディスにアシュラといった者達が集っていた。

此処テルミナ城跡にフィーネ以外の仲間が揃う形になった。

それにしてもレナ、表舞台から消えたはずじゃ……?

まあ今は細かい事は詮索しないとしよう。

俺とスカーロイはディバイン・ドロイドの融合体「全てを超えし者」について告げられた。

開いた口が塞がらないとは正にこの事だ。

因みにキャンディスはボストロールを召喚獣にするつもりは無いと言う。

もしかして見た目の問題か?

まあ、それはさて置き。


「『全てを超えし者』の力は恐らく我々をも優に超えている。心してかかるぞ」


俺とスカーロイは顔を見合わせた。

レナ程のリーダーはいないんじゃ……と言った具合である。


「お前、アルマクルスを持っているのか?」


「あ、うん……ロンダルギアで見つけたんだ」


「大事にしろよ」


母さんが作った木製の首飾り。

これまで幾度となくレナを助け、勝利に導いてきた御守り。

グレンが皆を復活させてもアルマクルスの所有者は自分のままだった。

母なるナオミは自分を選んだってことか?


「そう言えばさっき……うわっ!」


突風と共に大型ドロイドが現れた。

着陸して見てみると身長三点五メートルはある。

恐らくこれが……全てを超えし者……!

カマキリのような形だったが、その力は想像を絶するはずだ。


「細川博士とんでもない物を造ってくれたっスねぇ!」


相手が四本の腕のうちの三本でビームサーベルを構える。

色はムラサメのグレー、ハルカゼの半透明、シュンギクの紺が混ざっており、ビームサーベルはピンクだった(この世界のビームサーベルは一般的にピンクである)。

それよりも……残る一つの腕が掴んでいるのは……!


「フィーネ!」


アイシアの声が城跡に響き渡る。

フィーネ・シルバーウィンドはグッタリしていた。

ああ見えてもアイシアの祖先……想うところはあるはずだ。

それに……もう仲間と受けいれたはずだ。

アイシアの声でフィーネはどうやら目を覚ました。

自分を助けに来たことにひどく驚いた様子だ。


ディバイン・ドロイドはタイムワープが使える。

俺が以前はるか昔に時空を越えて移動したムラサメを零社が倒しに行かせたのもそういう事か。

細川という男は味方かもしれない……だがそれよりも……今は目の前のコイツを何とかしないと。


スカーロイがとっておきの迅雷弾を放った。

風と雷とをミックスさせた弾丸だ。 

流石に弾かれる事はなく、当たった所がビリビリと音を立てる。

相手の左肩のあたりだ。其処を狙えば有利に戦える。

だがスカーロイは迅雷弾を合計三発しか持っていなく、一つは魔女に使った為、残り一弾という計算だ。

大切に残しておいた方が良い。


俺はここぞとばかりに新技ハヤブサ斬りで斬りかかった。

「ハヤブサ三人斬り」に相当する連撃は疾風の如き速さだったが、相手の三本のビームサーベルに阻まれた。

手に衝撃が伝わる。

肩を負傷していてこれか……流石は全てを超えし者と言ったところ。

スカーロイが肩目掛けてトリガーを引いたのはハッキリ言って正解だった。

頭や胸は硬いパーツで守られている。

ナオミがもう一度来てくれればいいのに。

いや今頼るべきは……レナだ!


黒の戦士。

噂では若き女王アルフを操られていたとは言え斬った男だ。

だが戦いでは非情さは武器になる。

彼の太刀「阿魏斗」が鈍く光った。

「真・豪炎乱舞」ーー炎と光の魔導剣士特有の技だ。


燃え盛る炎を撒き散らしながら斬ってかかる。

その時何者かが橙色の光線で追撃した。


(ソアクーラ……お前……!)


鳥人達に貰った数珠のおかげか。

だが問題はその威力……小さな体からは想像もつかないような攻撃を、この猫は繰り出している。

レナとソアクーラの攻撃で相手は右脚を負傷した。


ここぞとばかりにアイシアがボルテックス・アロー、アシュラが流星群を肩口に当てる。

相手も「ぐぉぉおぉ!やるじゃねぇかクズ共ォ!」といった具合である。

六人と一匹による連携。

それがこの戦術的優位を可能にしている。

だが。

全てを超えし者はフィーネの腰を握りつぶした。


「フィーネ!」


血を吐きながらも此方を見るフィーネ。

せっかくこんな所まで助けに来たってのに……死んじまうなんて許さねぇぞ!

フィーネは言葉を口にした。


「アンドロメダ様に救われるまで、アタイはハモンの奴隷だった。自分にとってアンドロメダ様は絶対だった。君たちのような者たちがいると……もっと早く知っておけば……」


そこでフィーネが力尽きた。

グレンのテレパシーが俺達に語りかける。


(儂の娘を遥々助けに来たことで、サバイバルを放棄した事を免じよう。ソラ・ブラスト。アイシアのことを頼んだぞ)


グレンが敵にいた場合数々の不幸が訪れる。

それも無くなった今、俺はもう一度アイシアの方を見た。

レナにとってのナオミが彼女。

俺は絶対に……彼女を死なせはしない!

俺が再びハヤブサ斬りを見舞おうとした、その時だった。


「エネルギーフィールド!」


敵の、エネルギーを放出する全体技である。

近くにいたレナは大ダメージ必至か。

俺は魔導盾を持っていた為、かなり威力は軽減された。

遠くにいたアイシア、アシュラ、スカーロイ達も無事だ。


「父さん!」


思わず駆け寄っていた。

敵のビームサーベルがすぐ傍まで来ている。

目の前に立ち塞がりあの技を放つべく構える。

ハヤブサ斬り。

だが只のハヤブサ斬りと違う。

己の身体能力を限界まで使用したその名も「ハヤブサ十人斬り」ー。

右脚に連撃、その後左肩に連撃、トドメに脇腹に切り込みを入れた。

すれ違い、大広間の奥へと移動していた頃、全てを超えし者は立ち上がる術を無くしていた。

俺が……あのディバイン・ドロイドの融合体を倒したのだ。


「キャンディス。全てを超えし者がフレゼル以上の力を持っていたかは怪しいところだが、召喚獣にどうだ?」


あのクソ親父は叔母にどれだけ負担になる事を強いているんだ?

それに……俺への御礼は無しかよ。

一瞬目があったレナは小さく「ありがとう」と言った。

とうとうフィーネを助ける事は出来なかったが、俺とレナ、俺とスカーロイは友情を新たなレベルへと昇華させた。

全ては必然ーー誰かの言葉だった。


ピヤァァァア!


キャンディスが回復要員であるフェニックス亜種を召喚する。

回復させるのはレナだけではない、アイシアのアルマゲドンもそうだ。

アルマゲドン亜種に乗った六人はタイムマシーンのあるスノウランドの方角へと飛んでいくのだった。


グレンとの敵対を打ち消した南北の大陸はお祭り騒ぎだった。

何より機械兵(ドロイド)のコンピューターの修理の目処が立ち、各地に彼らを配備させることが決定したのだ。

俺やレナ、スカーロイといった者たちは想像世界(パラレルワールド)の平穏を実現させたと言えた。


「母さんを見た?」


レナが興味深いと言わんばかりの反応を示す。

蝶々の羽を持った双剣使いの女性。

髪型もナオミそっくりだった。


「今は詳しい事は分からない。だがその時が来たら、終末の時代だろうと迎えに行くつもりだ」


レナの言葉に俺は大きく頷いた。

父さんとの関係性は改善の方向に大きく乗りだした。

機械兵(ドロイド)のコンピューターが治った頃、ゼラートではパレードが行われた。

褐色肌の鳥人たちも観に来ている。

センジュ族もチラホラ見受けられる。


「エルフ族……これから増えるんじゃない?」


アイシアは明るい女性だった。

だがこの感じ……メリアという女性の意思か?

今はそんな事はまあいい。

俺はアイシアと未来を歩いていく。

エルフのクォーターである俺は姿形こそ普通の人間だったが、誇り高きエルフの血が流れている。

時が来たら……現実世界(リアルワールド)に足を踏み入れるのも悪くないかもしれない。

俺は快晴の空を大きく仰いだ。

父さんと母さんが付けてくれたこの「ソラ」って名前。

鳥人イカロスの技「ハヤブサ斬り」を憶えた今なら誇らしく思える。


アシュラ、キャンディス、レナ、スカーロイ、そしてアイシア。

掛け替えない仲間達に出会えた俺は、一緒にパレードを見物するのだった。


「勇者レナに感謝を!勇者ソラに感謝を!」


皆口々に告げる。


「おい、俺はぁ?」


スカーロイもいつも調子である。

認められてるさ。

俺はソアクーラを高く抱き上げ彼への祝福を促した。

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