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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

記憶の彼女

作者: 巫


「外傷はほとんどありませんし、明日には退院していいですよ。」

僕は目が覚めて、医者らしき人物にそう言われた。

何故入院しているのか、僕は覚えていなかった。頭に包帯を巻いていることから、きっと頭でもぶつけたのだろう。

僕は昔から背が高く、頭をよくぶつける。

そう思いながら僕は後頭部の包帯を外す。

やっぱり傷はほとんどなく、痛みもほとんど引いていた。


手荷物をまとめていると、医者が部屋に入ってきた

「痛み止めを処方しておきますね」

そう言って封筒をテーブルに置き

「ああ、もしかしたら数日の記憶が曖昧になってるかもしれませんが、気にしないでください。脳震盪の影響だと思います。

もし治らないようならまた来てください」

そして部屋を出ていった。


マンションのエレベーターに乗り

自分の部屋を探す

鍵の部屋番号は105

105号室を見つけ、鍵を差し込み回す


家は懐かしい感覚がした。

たった3日離れただけなのに不思議だった

そしてリビングへの扉を開けたとき

僕は自分の眼を疑った

「あのぅ、、誰ですか、、?」

そこにはポニーテールの女性がエプロン姿で立っていた


その女性は驚いた顔をしたあと、

こっちへ歩いてきた。

「何言ってるの?葵くん」

そう言ってキョトンとした顔をしたあと

パッと笑顔になる。

「もぉ〜!いくら久しぶりだからってやめてよ〜」

僕は混乱した頭で考えをまとめようとするが上手くまとまらない

そんな僕の姿を見て、女性は不思議そうな顔をする

「どうしたの?」

そんな心配そうな顔で見つめてくる女性に

僕は

「本当に、、覚えていないんだ、、」

正直に打ち明けることしか出来なかった


女性は初めは驚いたような青ざめたような顔をしていたが、事の顛末を話すと

「そっか〜、葵くん背高いもんね〜

お医者さんもそう言ってたなら大丈夫じゃない〜?」

と笑っていた。

「なんか初めてあったときを思い出すなぁ〜」と笑顔で笑う女性を見て、僕も思わず笑顔になっていた。


「じゃあ自己紹介しよっかな」

そう言って話し始めた女性は僕の彼女という。僕は驚くことしかできなかったが

そんな僕を見て

「昔告白した時と同じ反応してる〜

ホントに記憶喪失〜?」と彼女は笑っていた


自己紹介を終えた彼女は手料理を振舞ってくれた。どれも一つ一つ好みの味で、本当に彼女という事を自覚できた瞬間でもあった。

「それにしても記憶喪失かぁ〜心配だね〜」

先程からずっと笑顔でいる彼女だったが

時折心配そうな顔を見せる。いくら笑顔を取り繕っても、僕の事が心配なのだろう。


その夜、僕は友達に連絡をすることにした。高校の友達で最近は行ってなかったが2人で呑みに行くこともあったはずだ。

「お、お前から掛けてくるなんて珍しいな。久々に呑みに行くか?」

「すまない。実は頭をぶつけて、、」

僕は事故の事を説明する

「お前身長高いからなぁ〜

最近は無かったのになぁ」

そういえばそうだ

最近は仕事が忙しかったし、残業も毎日のようにあったから、疲れてるのかもしれない。

「まあそっちも忙しいよなぁ〜

ホント、学生時代に戻りたいよ」

そう愚痴を零す友人の声を聞きながら布団へ潜り込む


「ああ、そうだ。あれ、届いたか?」

「あれ?」

「美穂の結婚式の招待状だよ。あいつ、お前の元カノだろ?」

美穂は僕の元カノだ。高校の頃僕が告白して付き合ったものの、なし崩し的に別れてしまった。

「元カノって、たった1ヶ月だけだよ」

「あいつ、引っ越しちまったからなぁ」

「それにしても結婚したのか。知らなかった」

「お前、招待状届いてないのか?」

「ああ」

最近は忙しくて投函物をあまり見ていないが、怪しい宗教の勧誘や、水道点検のお知らせ程度しか届いてなかったはずだ

「手違いかなぁ、、とりあえず美穂に連絡しておくよ」

「ああ、助かる」

そんなこんなですでに夜も更けていた

僕は電話を切って、眠りについた


その後、彼女は毎日家に来て、僕の好きな料理を作ってくれるようになった。カキフライ、うなぎの蒲焼、レバ刺し。彼女は僕の好きなものを本当によく知っている。レバ刺しや牡蠣は苦手だったが、彼女の料理は美味しくて、たくさん食べてしまう。


家事もあらかたやってくれて、休める時間も増えた。1度、彼女の家事を手伝おうとした時があったが

「大丈夫だよ。葵くんはゆっくりしてて!」と追い返されてしまった。


そんなことをしているうちに

前は思い出せなかったことを思い出せるようになった。

医者の言う通り、記憶が戻ってきたのだろう。

それを彼女に伝えると

「そっか、、良かったね!」

と言ってくれた。


その後、僕は彼女から告白した時の話を聞いていた。

彼女は髪を撫でながら

「あの時はドキドキしたなぁ。上手くいくか心配だったから」

と笑って話してくれた。


そんな彼女と話したあと、彼女は

「明日はカレーにするね」

と言って帰って行った。

そんな彼女を見送ったあと、僕は部屋へ戻り、布団へ潜り込んだ。

カサッ

足元のぬいぐるみの下に何かを見つけた。

このクマのぬいぐるみは昔、抽選で当てたものだ。

その足元に、小さなノートが隠れていた。

そのノートには小さな文字で日記のようなものが書かれていた。僕の字だった。

書いた記憶はあるが、何を書いたか思い出せない。

僕は電気を付け、椅子に座った。

僕は、無題の日記帳を開いた。


5月10日

最近、誰かにつけられている気がする。

ストーカーか、強盗犯か、

どっちにしても記録を残しておくのは大切だと思うので、書いていこうと思う


5月13日

今日、窓の外に長髪の女性がいるのを見た。

もしかしたらストーカーの正体かもしれない。


5月18日

鍵を落としてしまった。

もしかしたらあの女に拾われているかもしれない。近いうちに鍵を変えなければ。


5月19日

帰ったらリビングに長髪が落ちていた。

どうも悪い想像ばかりしてしまう。明日からはしばらくの間、夕食はデリバリーすることにしよう。


6月14日

最近は女の姿を見ない。僕の気の所為だったのかもしれない。最近はアイツと飲みに行く暇も無かったし、今度連絡してみよう。


6月22日

やっぱりあの女はストーカーだ。

うちのポストを覗いていた。

早く警察に連絡しなければ。


6月23日

警察は動いてくれない。

証拠がないと動けないそうだ。

自分でどうにかしないといけないのか、、


6月30日

最近食器の位置が変わっている気がする。

冗談だろ?あの女が家に入ってきているのか?


7月8日

あの女と話をすることにした。

これ以上は犯罪だ。止めなければいけない。あの女性も、僕の話なら聞いてくれるはずだ。これで解決してくれると願う







これ以降のページは真っ白だった。

僕は理解が追いつかなかった。

ストーカー?僕が?

そんな時、パッと理解が追いついた。

その瞬間

「あ〜、、そんな所にあったのね、、」

彼女の声だった。

「あ、、ああっ、、」

その刹那

「ごめんなさい」

後頭部に衝撃が走った。



倒れた視界の端に長髪の女が写っていた。



「後1週間後には退院して大丈夫ですよ」

僕は目が覚めて、医者らしき人物にそう言われた。

何故入院しているのか、僕は覚えていなかった。頭に包帯を巻いていることから、きっと頭でもぶつけたのだろう。

そう思いながら僕は後頭部の包帯を外す。

血が滲んでいるが、そこまで痛みはない。

おそらく、痛み止めのおかげだろう。


ボーッとした頭でテレビを見ていると、医者が部屋に入ってきた

「痛み止めを処方しておきますね」

そう言って封筒をテーブルに置き

「ああ、もしかしたら記憶が曖昧になってるかもしれません。しばらくしたら戻ると思いますが、戻らないようならばまた来てください」

そして部屋を出ていく最中

「ああ、外で彼女さんがお待ちですよ」

そう、医者は言った。

お読みくださり、ありがとうございます。

久々の投稿ですが、良いものが作れたと思います。次回をご期待ください

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― 新着の感想 ―
[良い点] 全て [気になる点] なし [一言] まずは、実に半年ぶりとなる新作の方の描き下ろし、お疲れさまです。 私個人と致しましても、巫様の新作はまだかなあと常に心待ちにしておりましたゆえ、突然…
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