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3 救いの無い忍ワールド 二の巻

「う...うう...ここ...は...?」


目を開き周りを確認する。

何処かの小屋の様だ。立ち上がろうとすると身体が動かない。

厳密に言えば動くのだが椅子に手足が縛りつけられて動けないのだ。


「...ちくしょう.......!?」


何とか脱出出来ないか無理やりガタガタ椅子を揺らしたが椅子の脚は釘か何かで打ち止められびくともしない。


ふと家屋の角にキラリと光るのを見つけ目を凝らしてみると驚愕し、背筋が凍る。


棚の上には目にしたくないナイフやハンマー、爪剥がしなど拷問に使えそうな物がずらっと陳列されていた。


これから自分の身に起こるであろう事を思うと血の気が引き声を出すことも出来ない。 


何とかして逃げ出そうと両腕を動かすがびくともしない。


「絶対にやばい...!このままじゃ確実に拷問コース...くそ...」


ぎいっと木製の壊れかけの扉が開いた。


そこを潜り仮面の忍が周りを囲む。


「...へへ...悪いんだけどこれほどいてくんね?キツくてさ...がっ!?...かはっ...」


ソージらしき忍が俺の腹部に拳をめり込ませた。


「軽口を叩いてんじゃねえよ。」


くそが...やっぱりどうしようもないか...


「それで君はあの里の忍だよね?」


「言うと思うのかよ...」


「まっ、そうだよねー。ならちょっと痛い目に遭って貰おうかな?」


瑞姫らしき人物が目配せすると一度も口を開かない部下らしき忍二人が棚を瑞姫の前に引きずってきた。

乗っている刃物等が鈍く光る。

その内の一つ、爪剥がしを瑞姫が手にしたのを見て一筋汗が頬を伝う。


「それじゃあ最初の質問。君の里の情報を話して貰うよ。まずは...そうだね...夜間の警備はどんな感じ?」


マジで知らないやつ何だけど。


「あー。さあ?知らないけど?それよりももし知ってること話したら解放とか...」


その言葉を聞いた瞬間右手親指の爪をべりっと剥がされた。


「がああああっ!!?...くそっ!!くそっ!!....ふう...ふう....っ...」


「話したら楽になるよー?死ねるからね。」


余りの痛みに心が折れそうになるが悠人の顔を思いだし耐える。

俺にとって自分の事よりも悠人が優先だ。

もう親友が...大切な人が死んでいく姿なんて見たくない...それなら...


「ふざけんな...誰が話すかよ...お前らみたいな奴らに話すことはねえよ...」


「ふーん、度胸あるね。ならどこまで耐えられるか見てみようか。」


そう告げるなり中指の爪を剥がされた。


ーー「う....あ...あ...」


「こいつおかしいんじゃないか?ここまでされて言わない所か舌を噛みきって死のうともしない。」


「だね。まあそれはそれで楽しみようがあるけどね。」


朦朧とする意識の中両手の爪を全部剥がされ肉が剥き出しになっているのが目に入る。

だが余りの痛みに脳が認識しきれないのか何も感じない。


「これなーんだ?」


「....は...んまー?」


「はんまーって何?これ木槌でしょ?もう頭回んないかな?ははははは!」


それなりに大きい木槌をソージが持ち上げている。

瑞姫が俺の顔がひきつるのを見てバカみたいに笑い始めた。

こいつやっぱり狂ってやがる...


パシッパシッと木槌を手で叩きながら俺の背後に回ると車にでも轢かれたかと思うほどの衝撃が右肩を襲う。


「っ!!うっああああっ!!」


余りの痛みに動けない身体を揺する。

何が起きたか分からず痛みのした右肩辺りを見ると右腕が木槌に打ち付けられへしゃげ潰れていた。

最初こそこの世の物とは思えない痛みだったが神経が死んだのか次第に何も感じなくなる。


「話せば楽になるぞ。おい、水を持ってこい。」


ソージが部下二人にそう告げると桶に水をなみなみ注いだそれを朦朧としている俺に頭から一気にかけた。


「おら、まだ寝るのは早えぞ?起きろ。」


「じゃあ次は右手やろっか。貸してー?私やりたい!!」


「ほらよ。」


よろけながら振りかぶったそれを拘束されている右手に振り下ろした。


ぐちゃっと音がなりバキバキと骨が砕かれた音がした。


「っ!?....ぎいっ!?....ううううっ!!」


ーーもうどのくらい経っただろうか。

いつ終わるとも知れない拷問を未だに受けていた。


「いい加減話しなよ。私も疲れたし。おーい、聞いてるー?」


パシパシと俺の頬を叩く。

だが俺自身もう意識を保てない状態になっており、身体もまともとは言えない状態になっていた。


「ったくしょーがないなあ。...ほらっ!起きて!!おーきーてー!!ふはっ!起きた起きた!」


「...っ!ぐがっ!?....っ....!?」


曖昧としてきた視界で自分の足を眺めていると槍のように長いキリが俺の右太ももを貫通させた。


痛みに身体を震えさせていると瑞姫が髪を掴み頭を無理矢理上に向かせる。


「さっさと話せっつってんの!!ほら何か言いなさいよ!!じゃないとこれかけるからね?何か分かる?」


鉄っぽい容器に液体が一杯に入っていた。

だが明らかに水のような透明感ではない妙な液体には見覚えがなく首を横に振る。


「硫酸って知ってる?」


「....!?...や、止めろ!やめてくれ!話すからっ!!話すからそれだけはっ!!」


「うーん、どうしようかなー。...ざんねーん。時間切れでーっす!はい、ドバドバー」


容器の中の液体が顔左半分にかかるとじゅうっと肉を焼くような音と共に激痛が襲った。


「あ...ああ...ああああっ!!」


「ひゃはははっ!!いいよ、その表情、叫び声!!ぞくぞくしちゃうよねっ!!」


「さっさと話しとけばこんな目に遭わずにすんだだろうに。バカなやつだ。」


瑞姫が狂人らしい笑い声を上げ、ソージとその他二人はその所業に怯えているように瑞姫から距離を取っていた。


もう無理だ...誰か...誰か俺を...殺してくれ...


殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ殺してくれ。


延々とその言葉が頭を巡る。

その時だった。何処からともなくクナイが2本飛んできて部下二人の喉元に深く突き刺さり絶命させた。


「なんだっ!?これは....なに!?煙だまだと!?」


「くそっ!!ここがバレたの!?どこから!」


「ぎゃあああっ!!」


白い煙が立ち込めたと思ったらソージの断末魔が木霊した。


「.....?...!?」


その直後ソージのつけていた仮面が外れたのか素顔を晒し俺の足元に横たわった。

ソージの背中は刀で切り裂かれたのかぱっくりと割れ骨が剥き出しになっており、どうやら死んだらしい。


「どこ!?何処にいるの!?ぐがっ!?」


「よくも僕の親友を...その罪、死で贖え。」


煙が晴れていく。目が慣れていきまだ辛うじて見える右目を開いていくと。

         ヒーロー

「ふはは....さすが...主人公...やっぱ脇役なんかとは違うよな...」


俺を庇うように瑞姫との間に入っていた悠人が彼女の首を斬り落とした。

その首を見下ろすが安堵や怒りは沸かない。

代わりにあるのは悲しさだ。

あれだけの目に遭わされても尚俺は他の世界の瑞姫を思いだし憎むことが出来なかった。


「一真...僕はどうしたらいい?」


こちらに振り向き刀に付着した血液を拭き取る。


「そうだな...こんな身体じゃな...」


ふとワールドタスクがクリア状態になっていないのに気付きあることが頭を過る。

死んでいないからか...なるほどな。そこがこのシーンでの最終目標点か...ならやることは決まっている。


「なあ頼みがあるんだ...この救いの無い世界から俺を救ってくれ...頼む...」


「.....分かった...」 


やはり忍...即決し俺の横に立ち、時代劇で見るように刀を構える。そして...


「すまない、一真。」


「気にすんなよ。俺が望んでんだから。お前は死ぬなよ?」


「ああ、君の分も必ず生き残る...さよなら。一真...」


その言葉を最後に俺の首を斬り落とした。

痛みはない。綺麗に斬ると痛みを伴わず絶命させられるとは聞いたことがあるが本当らしいな。

最後だと言うのにバカな考えが過った俺も相当イカれてるな...そこで意識が途絶えた。


「Re:Set」





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