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超技術で史実をぶん殴る  作者: ネムノキ
走り続けろ
66/70

艦の軽量化……専門外なんだけどなあ

《千九百三十年三月十六日 イギリス ロンドン》


 不機嫌だ。

 ジュネーブでフランスの陰謀を潰した後、『水評価計画』にお金と人員を出してくれる、と新たに表明してくれた国や組織の方々との調整を終え。やっとこさ日本に帰って研究に集中出来る、と思っていたら。軍縮会議に出席している、日本代表団に呼び出しを食らってジュネーブからロンドンに飛ぶこととなった。

(私は軍事は専門外だって、分かって無いのかなあ……)

 嗚呼早く研究したい。そのために、さっさと仕事を終わらせよう。


「艦は、あとどの位軽量化出来る?」

 ロンドン海軍軍縮条約の日本代表団の代表が、完全にお門違いな質問を投げ掛けてきた。この人、これで総理大臣経験者なんだよ? 信じられる?

「はあ……?」

 気の無い返事をすると、「いやな」と代表団代表は言い訳じみたことを言う。

「艦をあとどの位軽量化出来るか、考えて欲しいのだ」

 それ、私じゃなくても出来るよね? というよりも、私じゃないその道の専門家の方がいいよね? という愚痴は飲み込む。

「条件はありますか?」

「艦を最新技術で造った場合、だな。艦の装甲と強度は落とさないでくれ」

 なにその専門外な上に面倒臭いの。

 ……とりあえず、他の前提条件も確認しないと。

「今ある艦のほとんどはリベット打ちですが。軽量化というのはリベット打ちのまま軽量化させた場合ですか?」

 艦をリベット打ちで造るのか、溶接で造るのか。それだけで、かなり艦の排水量(重量)は変わってくる。なので、最低限そこは明らかにしておかないといけなかった。

 代表団代表は少しだけ首をかしげてから、質問で返してくる。

「君から見て、今の日本で艦を完全に溶接で造るのは可能か?」

「指導に当たった所員の話を信じるなら、超弩級戦艦だろうが完全に溶接で造れますね」

 第四研究室に出していた『宿題』は完遂されていて。溶接なら、その程度の技術はとうにものにしている、らしい。

「なるほど。となると、各造船会社の言うことは事実か……」

 流石にそこら辺は調べていたのね。

「なら、完全に溶接で造船した場合で考えてくれ」

「それでも、計算凄く面倒なのですが……」

 思わず言ってしまう。

 合金技術そのものの発展が著しいため、同じ強度の金属でも、重量は軽くなっているし。タービンやボイラーも改良されていて、これまた軽くなっている。主砲に給弾する装置も小型化されたと聞くし。その上リベット打ちを溶接に変えるとなると。

 ……まあ、頭がこんがらがりそうな勢いで面倒臭い話だ。船は復元性とかも考えて造るから、難易度高いし。

(私専門家じゃないからそんな計算無理なんですが……)

 げんなりしているも、そんなの関係無しに代表団代表は言う。

「概算で良いから、出してくれ」

 となると、うーん……。

「単純に、素材とリベット打ちを溶接に変えただけなら、六パーセントも軽く出来たら良い方だと思います。復元性とかの問題もありますし」

「六パーセントか……」

「高出力化、小型化の進む機関部とか、給弾装置の小型化とかの話も聞きますけれど、そこまで行くと専門外なので、他の人に聞いてくださいね?」

 もうこんな相談やめてくれ、という意思を込めて念押ししておく。

「なるほど……」

 代表団代表はなにやら考え込む。

「……何か不都合がありましたか?」

 一応尋ねてみると。

「いやな、軍縮会議が思うようにいかんのだ」

 と言われる。聞いたの、私のした計算について、のつもりだったんだけどなあ。

 そんな私の内心も知らず、代表団代表は事情を説明する。

「我らが日本はとにかく領海が広いからな。補助艦艇の削減なぞ、したくも無いのだが……。特型駆逐艦なぞ、造らせるのでは無かった……」

「自業自得じゃないですか」

 頭を抱える代表団代表に呆れる。

 現在、海軍のドクトリンは大きく変わっている最中らしい。

 『能力者』の登場により、アウトレンジ戦法が実用化したことと。駆逐艦程度なら航空機の雷撃と爆撃で沈められるという予測から、駆逐艦程度の火力しかない艦を幾ら重武装化したところで無意味と言われるようになり。

 最新型の駆逐艦である特型駆逐艦吹雪型は十番艦で建造終了。綾波型は設計から完全に見直し、全く運用思想の異なる艦となっているそうだ。軍艦オタクな所員達から聞いた。

 彼らによると、綾波型は防空と艦隊護衛に主軸を置いた艦で。ハリネズミみたいに設置した対空砲と対空機銃。爆雷投下軌条と爆雷投射機に短魚雷を装備している、らしい。

 対空砲と対空機銃は対空防御。爆雷投射機と爆雷投下軌条は、机上と実戦形式の演習で暴れ回った潜水艦対策。そして短魚雷は、かなり改良されている上に、経費削減のために少しの改造で航空魚雷に出来るものなんだとか。

 対艦戦闘は軽巡洋艦以上に任せて、自身は艦隊の盾となる。そんな艦が、綾波型駆逐艦なんだって。

 でも、今まで魚雷の攻撃を重視していたのが、急に変わった訳だから付いていけない人も大勢いて。そんな人は、災害救助隊から派生した『海上保安庁』に移るか、軍を辞めるかしているらしい。世界は不景気なのに、日本は人手不足の世の中で良かったよね。

「おまけに、アメリカが海上保安庁も槍玉に上げてきた」

 代表団代表は深いため息をつく。

リベット打ちを溶接にして、金属を軽くして……。

一割以上軽くなる気がするけど、実際どうなんだろう?


船の知識は皆無な上、資料が見つからなかったので、想像で書きました。

詳しい方、おられましたら助けてください。


3/30追記

とある読者様からの情報提供のお陰で、軽減される重量のデータが分かりました!

リベット打ちを溶接にすると、史実だと五パーセント程度軽くなったみたいです。

主人公のチート具合も加味して、装甲が少し軽くなると考えて、六パーセントにしておきます。

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