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超技術で史実をぶん殴る  作者: ネムノキ
走り続けろ
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ペルー まだ注目されてないもの1

《千九百二十九年十二月十二日 ペルー リマ》


 『外務省からのお願い』最終段階の中南米への営業回りも、残すところ、ここペルーとエクアドルだけになった。

 そんな中南米だけれど、一目で分かる位治安が悪い。

 というのも。中米諸国はアメリカが経済植民地化を狙っていたせいでまともな産業が無い。なので、先進国のスラム暮らしが大金持ちになれるレベルの貧困で。

 南米はアマゾン熱帯雨林やアンデス山脈といった大自然のせいで未だ国境を確定出来ていない。なのに地下資源があるものだから国境を巡って紛争が起こるけれど、経済レベルが同じ位なので、紛争は長期化するか決着が着かないか。

 そんな環境に、今回の大恐慌が来た。そりゃあ治安も悪くなる、って話だ。

 なので、私達の提案はどの国でも大歓迎されている。単純に、仕事が増えたり、効率化されて利益が増えたりするからね。


「こんな感じでどうでしょうか?」

「問題ありません」

 そんな、『技術・資源貿易協定』の話し合いを終え。ペルーの大統領はほっとした様子だ。

 リベリアみたいな弱小国家でもないのに、私との会談に大統領が出てくることからも、中南米諸国の期待の大きさが垣間見える。

 そんな、嬉しそうなペルー大統領に、私は別件の相談を始める。

「これは、信州研究所からの要請なんですが」

「はい、何でしょう?」

 前のめりになるペルー大統領に内心で苦笑しつつ、重要な用件を告げる。

「アンデス山脈とその周辺の高原の、考古学的な調査を行いたいのですが、許可を貰えますか?」

「考古学……? はて……」

 思い当たるものが無いらしく、ペルー大統領は顎を右手で撫でて考え込む。

「……あの辺りには、インカ帝国時代の遺跡位しかありませんが。それに、信州研究所は、技術と科学の研究所でしょう? 考古学は扱っていないと、記憶しておりますが」

「ええ、その通りです」

 私は頷く。

「その、インカ帝国時代の遺跡を、科学の面から調べる必要があるのです」

「はぁ……」

 ペルー大統領は訳が分からない、といった様子だ。

 まあ、それも当然だろう。インカ帝国は南米人の誇りではあるものの、その技術については、植民地時代に破壊され尽くしたせいで何も分かっていないのだ。私も、前世の記憶とスペインで交渉に当たった時見せて貰ったデータが無ければ、分からなかっただろう。

「というのも、アンデス山脈を源流とする河川の水量が、どうもおかしいのです」

「おかしい、とは?」

「乾期の流量が、多すぎます」

「多すぎる?」

「はい、多すぎます」

 前世の知識によると、その原因は『アムナス』という水路にある。

 これは石造りの浅い水路で。雨季に降った雨を砂と岩の多い地域まで運ぶ装置だ。普通そんなことしたら塩害の原因になりそうなものだけれど、帯水層までの深さの関係とかで塩害にはならないらしい。

 そして、砂や岩の地域に運ばれた水は地下にゆっくりと染み込み、乾期に河川へと流出することで、乾期の水量を確保する。そんな巨大な装置が、アムナスだ。

 私は、アムナスについての概要は知っている。だけれど、この時代アムナスは存在を知られていない。論文も無かった。だから細かく説明出来ない。

(もどかしいなあ)

 でも、アムナスを、イランやスーダン、エジプト等の乾燥帯に造れば、水資源の大規模な確保を見込める。ついでにアムナスの建設と維持管理のための大規模な雇用も確保出来る。そして、それを手っ取り早く造るには大量のコンクリートが必要で。信州研究所は最先端のコンクリート技術を持っている。

 私達は儲けられ。乾燥帯の人々は『血の一滴』な水を確保出来。そしてアンデス山脈周辺の人々は、故郷の『誇り』を知るついでに老朽化してきている筈のアムナスを修復出来る。そんな策が、このアムナス調査隊、『アンデス水量問題調査隊』なのだ。

「多すぎる、と言われましても……」

 ペルー大統領は困惑している。ここは、畳み掛けるべきだ。

「あくまで、他の乾燥地の河川のデータとの比較から、ですが、間違いなく多いです。これは、スペインとイギリスの考古学会と我が国の水文学者と共に考察した結果でもあります」

 スペイン、の部分でペルー大統領は渋い顔をする。やっぱり、植民地の文化を破壊し尽くしただけあって、スペインは嫌われているなあ。これは、世界に進出している私達も気にしないといけないことだなあ。

 私達信州研究所は、多くの新技術を世に送り出している。だけれど、その技術が、現地の文化を破壊するようであれば、受け入れられないし、受け入れられたとしても不要な恨みを買う。だから、そんなに現地の文化を破壊しないよう、出来れば融和出来る技術にしないと

 そんな関係の無いことを考えつつ、私はお願いを続ける。

「我々信州研究所は、その原因がインカ帝国時代の遺跡にあるのでは、と予想しました。そこで、『ナイル流域水行政改革』との関わりもありまして、現地での調査をお願いしたく……」

「はあ……」

 ペルー大統領は気のない返事をする。

 そりゃあ、自国のことで手一杯なのに、他の国の問題を出されても困るよね。

『アムナス』。

黄土高原にも、小規模な似たものがありますね。

ただそこは紛争中なので研究対象として選ばれなかった、と。

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