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超技術で史実をぶん殴る  作者: ネムノキ
走り続けろ
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リベリアにて 簡単なお仕事2

 こうして目出度く、イギリス、フランス、アメリカ、イタリア、日本を背負って、リベリアと交渉する羽目になったのだけれど。


 正直、楽な仕事だ。


 だって、ドイツやスウェーデンみたいに産業に裏付けされた自信はリベリアには無いし。ポーランドやスイスみたいに、軍事力がある訳でも無い。イギリスやフランスと違って策謀を巡らせもしない。

 こんな楽なお仕事は無いだろう。

(いや、思い返す相手が悪すぎるかな?)

 内心で苦笑する。

 果たして、リベリア大統領の答えは?

「……それで、先住諸民族の扱いを、アメリコ・ライベリアンと同じものにした場合、どのような支援をして貰えますか?」

 おっと、思ったより冷静だ。顔は色々な感情に歪んでいるけれど。

「まず、イギリスとフランスに協力して貰って、ゴム園を拡大します」

「ゴム園? 拡大してもゴムの売り先は無いですよ?」

「それが、膨大な量のゴムが必要でして……」

 私は、右手で頭をかいてから、その理由を言う。

「私の研究所の開発した、最新型の『コンドーム』が凄いらしくてですね……」

「コンドーム?」

 リベリア大統領は聞き返してくる。

「ええ、コンドームです」

「あの、ものすごく分厚い、まるで帽子みたいなやつのことですか……?」

 この時代のコンドームは、分厚く、固いものだった、らしい。あまりの固さに、痛くて付けられない男性もいた、とか。女性も男性も、使うと違和感がものすごいものだった、らしい。

 そんな最中、私の研究所の第四研究室の男性陣が、我らが大日本帝国の陸海両軍の懇願に折れて、ついででコンドームの改良を行っていたんだけれど。なんかすごいのが出来た、らしい。

「この薄さが凄いんです!」

 私には技術的な凄さしか分からない。そのせいか、そう力説した試作品を使ってみた、信州研究所で雇っている護衛の方々と、凄いと思っているポイントが違う気がした。

 ともかく。そんな凄いコンドームは、日本で大流行しているらしく。その情報を掴んだイギリスとフランスが、その特許を言い値で借りていったのがつい最近のこと。なのにもうゴム相場が値上がりしてきているのだ。この不景気なのに、性欲って凄い。

 そういう訳で、世界的にゴムの需要が大幅に増えると予想されているのだ。

「試供品は後で渡しますので、奥様と試してください」

「はあ……」

 リベリア大統領は気の抜けた返事をする。

「まあ、なんというか。そういう訳で、世界的なゴム不足が予測されるので、貴国には何としてでも、ゴム園を拡大して貰います」

「理由は良く分かりませんが、分かりました。他にはありますか?」

「もちろんです」

 というよりも、私としてはここからが本題だ。

「寿命の来たゴムノキを利用した炭焼施設の整備と、それで得られる炭を利用した『木炭火力発電所』。そして『木酢液薬品』。これらの特許を、格安で貴国に公開する用意があります。代償は、木炭火力発電所のデータの提供ですね」

「シャムで稼働を始めたものですね」

 リベリア大統領の顔がほころぶ。

「出来れば、培養ディーゼル関係の技術も、欲しいのですが……」

「残念ですが、予約が一杯なので、五年は待ってください」

「分かりました」

 頷いて、リベリア大統領は引き下がる。

 培養ディーゼルに使うユーグレナ・オイリーの分裂速度は、やっぱり普及の障害になるなあ。生き物相手だから仕方のないことなんだけれど。

 私の悩みを置いて、リベリア大統領は自分達の問題を口にする。

「それだけ支援があるのは嬉しいのですが。やはり、急に先住諸民族に権利を与えると混乱しますし。我が国の軍隊でそれを抑えるのは無理かと……」

「それは、何とかなるかもしません」

 困り顔のリベリア大統領に朗報を伝える。

「内々に、ですが。我々が貴国で仕事をする際、イタリアが警備を請け負ってくれる話になっています。その話し合いの過程で頼まれたことですが。要望があれば、イタリアは貴国に警察、憲兵、軍隊を派遣することが出来るそうです。詳しくは、相談してみてください」

「それは助かります」

 頬をひきつらせつつ、リベリア大統領は頭を軽く下げる。逃げ道を塞がれた訳だからね。こうなったら、嫌でもリベリアは先住諸民族への虐殺を止めないといけなくなる。

 まあ、他にも支援はあるし。その方が利口なんだけれど。

「また、日本の三菱財閥、イタリアのCANT(カント)社が共同で、貴国へ漁船の造船所を造る計画もあります。そこで造られる船には、我々が開発した技術が使われる予定です」

「漁船は嬉しいですが、買う資金が民間には……」

「大丈夫ですよ」

 言いよどむリベリア大統領の言葉を遮る。

「漁船のデータの提出に協力して貰えるなら、無利子の融資をします」

 これだけの好条件だ。いくら自分達の権益が大切だからといって、飲まない奴は馬鹿を極めている。

「……分かりました。先住諸民族の扱いを、アメリコ・ライベリアンと同じものにしましょう」

 リベリア大統領は、晴れ晴れとした表情だ。

「ただ、暫く我々リベリア政府はそれに掛かりきりになるので、各国との調整は貴女にお願いしたいです」

「それは勿論。責任を持ってやらせてもらいます」

 私達は、握手を交わして、書面を作るべく話し合いを続けた。

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