世界は変わる。取り返しのつかない方に
二話投稿しましたので、前の話を読んでくたさい。
一九二九年十月四日十時二十五分、アメリカ経済を握るニューヨークはウォール街で、ゼネラルモーターズの株価が八十セント下落。下落直後こそ、市場の様子は普段通りだったものの、すぐさま売りが膨らみ、それは市場全体に波及。十一時頃には売り一色となった。
市場関係者はすぐに落ち着くと思っていたものの、アメリカのメディアが盛んにこのことを報道したこともあり、暴落は進んだ。
この時期アメリカ企業は、ユナイテッド・フルーツ社の暴挙とも言える、バナナ紙を使った製紙事業への参入という裏切り行為から、自分の『縄張り』を犯されることへの警戒心を高めていた。
だというのに、イタリアとスペイン、日本がオレンジジュースの美味しい長期保存方法を開発し。またオレンジの皮から航空燃料を作り出す技術を信州研究所が産み出したことから、サンキスト・グローワーズ協同組合を始めとするオレンジ生産者が石油業界に殴り込みをかける可能性が高いと見られた。
実際、このまま何の手も打たなければ、アメリカのオレンジがイタリアやスペイン産のものに押される可能性は高く。オレンジ生産者が特許料を払ってでも、航空燃料の生産を始める可能性は高かった。
嫌らしいことに、オレンジジュースの長期保存方法の特許はイタリア、スペイン、日本以外には非公開にされていたが、オレンジ航空燃料の方は有料で公開されていたのだ。
本当のところは、オレンジジュースの長期保存方法程度は人々が想像出来る範囲だが、オレンジ航空燃料の方は理解がおよばないだろう。だから、理解しやすいようにしよう、と長野梅子ら信州研究所が心配りをした結果なのだが。アメリカ人はそう受け取らなかった。
そのため、アメリカ企業は自分の『縄張り』を守るべく、他の企業へ敵対的な行動を見せるようになっていた。その最中の、株価暴落だった。
そのため、アメリカは、政府も企業もこの大暴落に何ら有用な手を打てなかった。
この、史実と異なる形の大恐慌により、世界は大きく変わることになる。
当然、その元凶の信州研究所所長、長野梅子も、そのままではいられなかった。
超技術で史実をぶん殴る 第一部『最初から全力』 おわり
第二部『走り続けろ』に続く
ということで、『超技術で史実をぶん殴る』折り返しに来ました。
まだ続きますので、最後まで楽しんで頂ければ幸いです。
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