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超技術で史実をぶん殴る  作者: ネムノキ
最初から全力
58/70

その頃のソビエト

「なあ同志ベリヤ。私が下手なジョークを好まないのは、知っているだろう?」

 ヨシフ・スターリンはあり得ない情報を持ってきたラヴレンチー・ベリヤの報告に、こいつをどう粛清しようか考えだした。

「そ、それが事実なのです」

 ベリヤは震えながら、同志達のもたらした報告書と外交文書をスターリンの執務机に置く。スターリンはそれをペラペラと読み、そしてベリヤに尋ねた。

「なあ同志ベリヤ。日本は何がしたいんだ?」

 それらの文書には、日本がソビエトと共同研究をしたがっている旨が書かれている。

「わ、私にもさっぱり分かりません」

 ベリヤはそう答える。

 突然とも言える、日本からの要望。その内容も含めて、スターリンには理解出来ないものだった。

「『ヒマワリの品種改良』? 日本人がヒマワリの種を食うとは思えないが……」

 ロシアに蔓延っていた、ロシア正教の信徒の間では、ヒマワリの種や油が良く料理に使われていた。作物の育てにくいロシアの風土とも良く合った、合理的な判断だ。

 なおロシア正教会は粛清対象である。宗教等という嘘生産装置はソビエトには不要なのだ。

「南サハリンやクリル列島等、ヒマワリ栽培に向いた土地は日本にもありますからね」

「なるほどな」

 全く、我らのヒマワリで金儲けを企むとは。強欲なブルジョワジーめ。我らの支配下になったら拷問してやる。

「しかし、『低温地熱発電』? 何故これを我々とやろう等と考えた?」

 低温地熱発電。温泉の熱で発電する技術らしいが、どう考えても温泉大国な日本の方が向いた技術だ。わざわざロシアでする意味が分からない。

「どうも、この技術の開発者であるウメコ・ナガノは、この技術を用いた発電所を建てようとして、現地の人々に反対されたそうです」

 改めて報告書を読むと、そういった情報が書かれていた。

 ただ、その報告書のひとつの出所が気に入らない。

「……なあ同志ベリヤ」

「は、はい!」

「何故、あのにっくきトロツキー自筆の手紙があるんだ!?」

 スターリンは反射的に机の上の万年筆をベリヤに投げつけていた。

「そ、それがですね……」

「ほほうそれが?」

 ゴトン、と執務机の中に入れていた拳銃を、スターリンは机の上に置く。それを見てベリヤは冷や汗を流す。

「イタリアの外務省から、正式に送られてきまして……」

「イタリア?」

 確かイタリアでは、同志ムッソリーニが革命に向けて頑張っていた筈だ。

「……なるほど」

 スターリンは理解した。

「これは、イタリアの同志が、トロツキーめを監視している、というメッセージでもあるのだ。そうだろう同志ベリヤ?」

「そうだと思います!」

 絶叫じみたベリヤの返事に満足しつつ、スターリンはトロツキーの手紙を読む。

「……なるほど」

 どうやらトロツキーは、ナガノと直に接触し、スターリンとしても切り捨てても痛くない同志との連絡方法を伝えたようだ。

 そしてスターリンは、そのウメコ・ナガノという名に聞き覚えがあった。

「確か同志ベリヤ。ナガノは最近話題のブルジョワジーらしいな?」

「我々の調べでは、そうです」

 ナガノは、なんでも技術を使って稼ぎに稼いでいるブルジョワジーだと、スターリンはベリヤから聞いていた。

「彼女に対するテロルも、計画はしているのだよな?」

「まだ予備調査段階ですが」

「なら、今すぐ止めろ」

「はい!」

 ベリヤは理由も聞かずに即答する。

「あの、あのゴミクズトロツキーは今すぐにでも殺したいが、あいつの人物評は正しいことが多い。それによると、ナガノは我々の同志になる可能性がある、ということだ」

「ブルジョワジーが自らの権益を捨てるとは、考え難いですが……」

 ベリヤの疑問を、スターリンは頷いて肯定する。

「これらの報告書によれば、ナガノの研究はプロレタリアートの生活を改善するものが多いらしい。おまけに研究の切っ掛けもそうだと」

「つまりナガノは、『目覚める』可能性が高い、と」

「そうだ」

 スターリンは気分良く笑う。

「今こそ上手く行っているようだが、いつか彼女は失敗する。その時、少し囁いてやれば、新たな同志の誕生だ」

「人員を潜入させましょうか?」

 ベリヤはスターリンの気分を先読みする。

 だが、スターリンは遥かに上機嫌だった。

「いや、彼女の研究に全面的に協力しよう。そうすれば、大手を振って接触出来る」

「分かりました」


 スターリンはベリヤを下げさせ、ナガノとの研究に思いを馳せる。

「ナガノとの繋がりは、あえてトロツキーを使うか。そうすればあの屑を監視出来る。それに、ヒマワリの品種改良はやろうか考えていた。それに金を出してくれるなら、ありがたく出して貰おう。低温地熱発電は……、あまりロシアの内側に入れるのも不味いな。カムチャツカでやらせるか。となるとヒマワリはサハリンだな」

 どの国も、ソビエトを馬鹿にして金を出し渋る。そんな中、用途が限定されているとはいえ、金を喜んで出してくれる存在がいるのはありがたい。同志になりそうなのも最高だ!

「フハハハハハハハ!!」

 スターリンは独りの執務室で、機嫌良く笑った。

バリバリの社会主義者な方々の思考が分からないので、この話はしっかり書けた自信がありません。

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