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超技術で史実をぶん殴る  作者: ネムノキ
最初から全力
32/70

女性の社会進出を阻むもの

「で、省庁や企業が女性を雇おうとしてる訳だけれど。何で女性側の反応が悪いのか、良く分からないのよね。で、秘書には、企業側の情報を内務省まで貰いに行って貰ってるの。私は、省庁の取り組みとか手引書を洗い出しているとこ」

「なるほどねえ。省庁側の手引書はある?」

「これ」

 第四研究室室長に、私が気になるところに書き込みを入れた手引書を渡す。

 彼女は手引書をペラペラとめくっていく。

「……何というか。先進的なんだろうけれど、無難に感じる内容ね」

「そう? 育児休業を男の人も取れるようにしてるのとか。保育所の整備とか。冒険的じゃない?」

「でも、信州研究所(ここ)じゃあやっていることよね? ってあー」

 第四研究室室長は唸って額に右手を当てた。

「確かに、これは冒険的過ぎるわ」

 信州研究所は私が好き勝手しているので、日本的にも、世界的にも革新的で冒険的な取り組みが多い、と色々な大臣から言われた。食堂のおばちゃん方のために、ちょっとお勉強を教えて貰える保育所を近所に作ったり、とか。

「こんなに冒険的だと、警戒もされるわよねえ……」

 第四研究室室長ははあと息を吐いた。

「やっぱり?」

 私は苦笑する。

 保育所、なんて言われても。この時代は『家』や『村』、『地域』で子育てをするのが当然なので、親が働いている間に子供を預かるための施設、なんて言われても、必要性をいまいち理解出来ない人が多い。理解出来たとしても、既にあるそういった施設はお値段が高いので、預けたがらない親が多い。

 そして、国が新たに作ろうとしている保育所に子供を預けるには、中々お金がかかる。

「問題はそこじゃないと思うけれどね。保育所の方は、値段据え置きで幼児教育をするようにしたら、評判は良くなると思うわ」

「今ある保育所と差別化するのね」

「そういうこと」

 第四研究室室長は頷く。

「で、生理休暇は有給休暇に変えて、男性も取れるようにしたら? っていうか、ここだとそうでしょ?」

「そこは、お役人方を説得出来なかったらしいよ」

 超男社会な今の省庁の方々は頭が固くて良くない。

「なら、議員の方々に頑張って貰うしか無いのね。給料が少し男性より安いのは……、生理休暇の分を削っているのね」

 それでも、勤務時間当たりの給料は男性と同じ、というのは、世界的に見ても未だ無いことだ。

「育児休業は申請次第で男の人も取れるのね。これ、その期間は男性も残業禁止に出来ない?」

「男性の反発が凄くなりそうだけど、申請次第でそう出来るようにはしておきたいよね」

 信州研究所の雇用契約書や女性が働く際のマニュアルを劣化して適用しようとした結果、女性側の反応が悪かったのかな?

 そう自分の中で結論が出そうになった時、第四研究室室長は衝撃的なことを言った。

「でもま、ここら辺を直しても、女性の反応は変わらないでしょうね」

「……え?」

 思わず呆けると、彼女は手引書を置いて、そう判断した最大の根拠を言った。

「だって、働いて納税しても、参政権は無いのでしょう?」

「……あー」

 納得、した。納得、出来てしまった。

 まだ日本では、女性に参政権が無い。というか、世界的にも無い国が圧倒的に多い。一九二五年にやっと男性の普通選挙権が認められたばかりの日本では、まだ女性の参政権を認められないだろう。

 というか、認められない理由がある。

「まだまだ投票所の運営も、開票作業もグダグダだから、ここに女性も加わるのは厳しい、って、分かってはいるけどねえ」

 第四研究室室長の言うとおりで、投票を行う際の裏方が、選挙を管理する側も、立候補する側も、ついでに投票する側もしっかりしておらず、マニュアルもまだ作られている最中なのだ。ここで、女性も投票出来るようになれば、まして議員に立候補出来るようになってしまえば。

 ……恐ろしいことが多発しそうだ。開票作業がデスマーチ化するとか。

「……いきなり国政選挙は無理だろうから、区町村レベルから女性の参政権も認めていって、国民も行政も経験を積んでいかないとまず無理よね」

「それを分かっていない、焦っている女性も多いわ」

 二人でため息。

「……とりあえず、内務省には、女性を雇うのとセットで、女性参政権を地方から段階的に認めるよう助言しておくよ」

「分かったわ。私は、もうちょっとこの手引書を読み込んで、意見を纏めるわ。所長に渡したら良い?」

「それでお願い。この件で『女子会』に協力をお願いするのは確実だから、そっちにも情報流しといてくれる?」

「任せて」

 第四研究室室長は強く頷いた。

注意!

主人公と第四の室長は、この時代の日本では例外的な程バリバリ働いていますし、信州研究所の女性達もそうです。そして、仕事柄、彼女達の個人的な付き合いの幅は狭いです。


そもそもこの時代の女性は働くより家にいたいと思っている人が多いことに、気付けるのでしょうか?



…気付いたとしても、かなり後になるので、ここにひと言書いておきます。

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