イベント三日目 夜
短めです。
「ねえ!どうするの!?」
「………やる、か…?」
「オッケーね?じゃあ、少し離れたところで始めよう!」
「おう…」
どうしよう…。一瞬で終わらせればいい?それとも手加減した上で全力でやればいい?剣使えば多少手加減になるだろうけど…。殺さない程度に…。
「主。我も見ていいか?」
「…ん、ああ。いいんじゃないか?いいよな?」
「別にいいけど…負けて恥かいても知らないよ?」
「…」
手加減しなくてもいいか?竜殺しの剣持ってるしな?これから簡単に竜を殺せるとか言ってたし、本物を見せてやろうか?ああ?
「よーし、やってやろうじゃねえか。早く行こうぜ」
「え、うん。(ねえ、ライちゃん。急に雰囲気変わってない?)」
(煽るようなこと言うからでしょ?)
(怒ったの?)
(どうだろうね)
(そっかぁ…)
怒ってないぞ。俺は…。
「ん~ここら辺でいいんじゃない?なんか開けてるし」
「お、おう」
ここ昨日あいつとやったところじゃねえか。……あれ、そういえばあいつどこ行った?
「よーし、準備はいい?」
グラムを肩に余裕の表情でこちらを見ている。
「ちょっと待て」
「お?」
お面を消して、出来るだけ腕と足腰の強度を上げる。黒剣を抜いて鞘を放り、一応構える。
「よし」
「おお、聞いてた通りだね」
「ん?」
「いや、気にしないで。…さあ、始めよう!ライちゃん!」
「え、あ…どうぞ!」
ミリーが駆け出すと同時に俺も一歩踏み出し黒剣を振るう。振った黒剣から出る飛ぶ斬撃を横に跳び回避して加速するミリーにもう一発斬撃をだし、前に出る。今度は上に跳んで回避したミリーの下から突きを放つ。
「ほっ!」
黒剣にグラムを当て、当てた衝撃で回避される。着地するところに黒剣を投げて動きを一瞬止め、一気に距離をつめてグラムを持つ右腕を取り締め上げようとする。グラムを振って抵抗して来るが、右腕を犠牲にして、グラムを落とさせる。
「ッぐ…!」
蹴りを入れられるが右脇で挟んで捕まえ、掴んでいた左手でも足を持つ。そしてぐるッと一回転してミリーを放り投げる。
「うわぁっ!?」
落ちたグラムを手にミリーを飛ばした方向へ先回りし、飛んできたミリーにグラムの一撃を浴びせる。逆の方向へ飛ぶミリーに迫り、着地した時点で首にグラムを突きつける。
「俺の勝ちだ」
「……!……っ…!」
力を抜き地面に寝転ぶミリー。俺に握られた右腕は腫れているし、グラムの一撃を受けた肩から背中にかけて傷があるが、生きている。
案外固かったな。最初の一撃、それか次の突きで終わると思ったんだけど…。
「ほらよ」
グラムを放って返し、離れる。次いで戦闘前に投げた鞘と戦闘中に投げた黒剣を回収し黒剣を収め腰に差す。
「ミリーちゃん!大丈夫…?」
「うん…まあね。はぁ……完敗だよ」
「そっか…」
まあ、剣使った勝負ならこんなもんなのかな~。
「いや、流石であったな。主よ」
「ん、まあ…。…ところでサルマン」
「ぬ?なんであるか?」
「あいつはどこ行ったんだ?」
「…ああ、あやつか。あやつなら森のモンスター共に任せたぞ」
「……は?大丈夫なのか?」
「無論である。主の魔法がよく効いていたのでな。モンスターに括り付けて放したのだ」
「あー…なるほどね…」
あいつ魔法の耐性高いと思ってたんだけど違ったんかな?それとも単純に俺の魔法が強かっただけ?あー俺、魔法職だもんな、一応。それか。
「っと、ミリー」
「ん、なに?」
「『ヒール』…どうだ?」
「おお…治った。流石魔法」
腫れていた右腕、斬られた背中の傷が跡形もなく消える。
「え、えぇ…?効果強くないですか?」
「いいじゃん治ったんだからさ!ありがと、グレス」
「おう」
「戦ってくれたこともさ!強いね!グレスは!」
「…はは。ミリーも強かったんじゃないか?ほら」
グラムで鎧越しにざっくり斬られた右腕を見せる。《再生》がうまく働いていないせいで、右腕は前腕の半ば辺りから薄皮一枚で繋がっているだけだ。割りと痛い…。
「え、あ…で、でも、それは…。………それ、今みたいに治した方がいいんじゃ?」
「ちょっと厳しいかもな」
「どうしてですか?」
「ライラにはちょっと話したっけ、一応人間って話」
「え、はい。確かに聞きましたけど…」
「俺さ、龍人族ってやつなんだよね。だから、グラムで斬られたところが治りそうにないんだよ」
「でも、回復魔法には部位欠損を治せるものもあるって…」
「グラムの攻撃でダメージを受けた竜種は、最大HP量が減少して欠損した部位が出た場合再生しないって、効果があるけど…」
「あー、それか。前に受けたドラゴンスレイヤーとは違う感じがしたの」
「ど、どうするんですか?その腕…」
「んー……」
「と、とりあえずくっ付けて置いて、治るか試したらいいんじゃないですか?」
「それもそうか…」
「でもどうやってくっ付けるの?」
鎧を薄くして腕と千切れそうな腕をくっ付けて固定するようにする。グラムで斬られたところに再生が働かず、断面そのままになっているから簡単に合わせて固定できた。痛いけど。
「え、えぇ……」
「それでいいんですか…」
「グレス、大丈夫?なの?」
「ん、ああ。大丈夫だよ」
「そっか」
「先のを聞いた手前、余り大丈夫なようには思えないのだが…。主?」
「大丈夫だって。最悪、腕千切って無いような風にすればいいし」
「「えぇ……」」
……。まあ、腕なくなるのはダメか。
「ん。さて、そろそろ暗くなるだろうし、飯にしようぜ」
「…そうであるな」
「切り替えはっや…!まあ、そっか…。気にしてても仕方ないか。グレス!次は勝つよ!」
「えぇ…またやんのか?」
「当然!勝つまでやるわ!」
「えぇ……」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
昨日の肉の余りと今日の探索で手に入れた肉を食べて皆が寝静まった後。ボマーゼも今日は寝てしまい、一人で見張りをしながら右腕を眺める。
「う~ん……」
動かない、感覚がない、妙に重い、邪魔だ。………『ヒール』…ダメか。くっついた感じがない。んー、イメージが足りないのか?くっつくイメージ………、『ヒール』!……ダメかぁ。もうあれか。単純に全部治るで、『パーフェクトヒール』……んん?微妙にくっついた…か?
「はぁ…」
地道にチマチマやっていくか…。夜は長いからな。
誤字脱字があった場合報告してくれると助かります。では。




