イベント三日目 朝
「ごちそうさまでした」
「美味かったぞ」
「グル…(ごち…)」
ごち…?
「じゃあ、見張りお願いしますね?」
「ああ、ゆっくり休め」
「主、暫し休むが何かあれば起こしてくれ」
「自分で起きろ」
「ぬ…」
「グル(お先に失礼します)」
「ああ、ゆっくりな」
「なぜ我だけ……」
主に起こしてもらう従者がいるかっ…たく。
「おやすみ」
「あ…、おやすみなさい」
「…すみ?」
「グル(おやすみなさい主)」
「ぬぅ…」
うむ、じゃあ鎧を全身鎧モードに切り替えて、と。これで下手な輩はよってこないだろ。
「グレス、見張りって何するの?」
『んーと、モンスターとか人がよってきた時に対処したり、そもそもよってこないようにする。まあボマーゼは眠くなるまでここにいればいいよ』
「わかった」
さて、少し試してみるか。今まで片方づつだったけど、気配と魔力を一緒に……、探る!
お、お、おおお!おおおおお!スゲーなこれ、気配と魔力の両方で場所が、気配で何かが、魔力で形がわかる。……ん?なんか、近づいて来てる?
『ボマーゼ、何か来るぞ』
「わかった」
崖の向こうから来てるな。俺達が元々いた付近だ。俺達を探してる?…昨日の襲撃者か?でも一人だし、別のやつか?
ん、来るか、猛スピードで崖を登ってやがる。黒剣を抜いておこう。
「………ッシ!」
『おっと』
落下と同時に剣を振り下ろしてくるが、それを黒剣で防ぐ。
上から落ちてきてすぐに攻撃とは…物騒だな。
『何か用でも?』
「君、昨日襲撃してきた人を撃退してた白髪の人だよね?」
『そうだとして、何の用なんだ?』
「僕は君と殺し合いがしたくて来たんだ!相手になってよ!」
『……』
はぁ?何言ってんだこいつ…。…………ん?こいつ、どっかで見たな…。どこだっけ?………………あ、対人戦最強の人か。うわっ、めんどくさぁ…。
『こんな夜中にお前を相手取る気にはなれない。後ろじゃ寝てるやつもいるんだ』
「僕は気にしないよ!さあ!」
『ぉ…私が気にする。出直せ』
退くかな?退かないだろうなぁ…。
「…じゃあ、場所を変えよう!ここじゃないところならいいんでしょ!?」
『はぁ……わかった。ボマーゼ』
「!何?」
『しばらく任せる。一人で大丈夫か?』
「!うん!大丈夫、早く帰って来てね!」
『了解』
ちょっと不安だけど、さっさと終わらせれば問題ないだろう。
「早く早く!」
『……』
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ねえねえ!さっきの子って君のなんなの?」
『お前に教える必要があるのか?』
「ないけど、気になったから。一緒にプレイしてる妹かな?それとも子供?」
『……』
なんなんだこいつマジで…。テンションおかしくないか?疲れる…。いい感じに広いしもうこの辺りでいいかな。さっさと終わらせたくなってきたし。
『ここらでいいだろう。さっさと済ませるぞ』
「えー…。まあいっか。じゃあ、殺ろうか」
雰囲気変わったな。
「はぁぁぁあっ!せい!」
『…』
走り込んで来ての横凪ぎの一撃を黒剣で受け、そのまま回り込んで後ろからくる追撃を体を反らして避ける。避けられて硬直してるところに黒剣の一撃をプレゼント。ギリギリで避けられたから追撃のパンチ一発。
「ぐえっ、なかなかやるね…」
『…』
「無視しないで、よっ!」
黒剣を持った右手を狙った一撃を避け、蹴りを入れる。
「がはッ…」
……なんか、思ったより強くないな。いくらこの装備を壊したくなくて《手加減》使ってるといえ、拍子抜けだな…。
「余裕…そうだね」
『ああ余裕だ。お前はもう少し強いと思っていた』
「そうなの?」
『これなら私が参加プレイヤーでナンバーワンと言われたのが納得できる』
「へぇ…。じゃあ、本気でやるよ。最初は小手調べのつもりだったんだけど、そこまで言われちゃあね」
『お前が本気になっても私には勝てんだろう』
「やってみなきゃ、わかんないでしょ!!」
ん、早くなったな。剣の振りも次に繋げる動きも、隙がなくなった。剣の重さも増してるし、本気なんだろう。でも、
『やはりお前では勝てない』
「そんなこと言わないで、本気で来てよ!手加減してること位わかるよ!」
『……』
死にたいのか?あ、殺し合いしたいって言ってたな。じゃあ、まあ…。
『ここからは手加減なしで行ってやる』
「やった!言ってみるもんだね!」
さっきまでは向こうから仕掛けて来てたけど、今度はこっちから行く。一歩で間合いを詰めて横凪ぎの一発を入れる。同時に足と腕の鎧に罅が入るけど、まあ、自動修復機能があったはずだし、気にせんとこ。
そんで、吹っ飛んだあいつに追い討ちの一閃を加え、一度離れる。死んだかな?
「……ゴフっ、ハァ…ハァ…」
胸から大量の血を流し、口からも血が溢れている。瀕死だ。
『終わったな』
「まだ…だよ……」
『何を言っている。お前はもう死に体だ。私に防がせることもままならん状態で、何ができる』
「……死ななければ、まだ…やれる…。もっと、楽しめる……!」
『ああ。死ななければな』
「僕の装備って、特別なんだぁ……。殺し…合いをする……時には、ステータスが上がる…。それに…、僕が死んでも……、僕が、殺した数……だけ…、死なずに、済む…んだ」
『ほう。そうなると、お前は何度殺せば死ぬのだ?』
「……しっかり、数えている、けど……。教えない…よ……」
『そうか。ならば死ぬまで殺し続けるだけだ』
「それまでに…君を、殺せば…僕の勝ち、だよね…」
『そうかもな』
長丁場になりそうだな。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
『おい、あと何回だ』
「言う……訳、ないでしょ…」
『そうか』
もう千回近く殺してんだけど…、まだなのか?少しだけど対応され始めてて殺すの遅くなってきてるし…。
『面倒になってきたな』
「それ……どういう、こと?」
『夜明け前には終わらせたいということだ』
「じゃあ、大丈夫だね…。まだまだ…、時間はあるよ!はっ!」
『……』
また対応された。こいつ、俺の剣を受けるんじゃなくて流し初めてんだよな…。同じ軌道で出すと必ず対応される。完全に対応されるのも時間の問題か…。
『……』
「……?どう、したの…?剣、仕舞っちゃって…」
『ハンデ無しで行く』
「!!!」
今までよりも深く、早く踏み込み、拳を振るう。反動で足と腕の鎧が砕け散るが、気にしない。修復されるのはもう何度も見た。
殴られた相手は、一瞬粉微塵になるがすぐ元に戻り、驚いた顔をする。が、それを気にせず殴り続ける。相手が対応出来ないスピードで何度も、何度も、反撃の余地を無くすように。
一秒で二~三人分殺しているが、まだ尽きない。そろそろ相手の後ろにある森が無くなりそうだから、一旦止める。
『ふぅ~…』
腕部分の鎧が無くなってる…。やっぱり脆いな。壊れない初期装備・改って本当にスゴかったんだなぁ…。
「………バタン」
『ん?』
あれ、動かなくなったな。んまあ、痛覚がある程度低くなってるとはいえ、何度も粉々にされたら気絶ぐらいするか。こいつも人間だなぁ…。
『さて…』
こいつどうすっかな…。元々こいつが突っかかって来たからこんなことやってた訳だし、別に殺さなくてもいいんだよな。んーーー…………、久々に割りとまともな戦いできたし、殺さないでおくか。こいつならそこら辺に放置しても死なんやろ。さ、帰ろ。
《レベルアップしました》《スキルレベルがアップしました》
《称号【強者の風格】を獲得しました》
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ってなことがあったんだよ」
「っそ、そうですか…。ところで、そのぉ……下の人は?」
「グルゥ(強い人)」
「主よりかは弱いが、強者であるな」
「戻ってきてからずっとこう」
「え……」
「……!」
「いや、しょうがないんだよ。こいつすぐ目え覚めたと思ったら速攻で攻撃してくんだからさ。殺しても死なんし、面倒だから連れてきちゃった」
一回気絶させて喋れないようにして座るしかなかったんや。
「モンスターでは…」
「勝てないな。こいつ弱い訳じゃないし」
「我でも勝てるかどうかわからんな」
「…そうですか……。と、とりあえず朝食にしませんか?お腹空きました」
「あー、そうだな。こいつと戦ってる間に巻き添えで死んだモンスターの肉あるから、朝はこれな」
「一日ぶりであるな」
「グル!(肉!)」
「朝からお肉ですか…?」
「文句あるなら食べんでよし」
「食べないなんて言ってないじゃないですか!いただきますよ」
「………、…………あ、取れた。僕も食べたい!」
「………生でいいか」
「えー、焼いてよぉー」
「……」
こいつ、マジでどうしようかな?
誤字脱字があった場合報告してくれると助かります。では。




