実力と逃走と
「う、う、うわぁぁぁぁぁ!!!??」
深い森の中を脱兎の如く逃げ回るリール。その後を、リールの三倍位の大きさがある猪がついている。この猪はこの森を雑に探ったところ一番強い気配を持っていたモンスターだ。
「ぶおぉぉぉぉお!!」
俊敏の数値は一応リールの方が高いし、なんならあの猪たぶんこの森で真ん中位の強さだから、倒せないことはないと思うんだけど、ゴブリンのせいでリールの強さの基準がおかしいことになってる気がする。ゴブリンをやらないとそれ以上は無理だってなってるのかな?
「ひぃぃぃ!!?」
剣術と飛剣を使えば簡単に殺せると思うんだけどなぁ。追い付かれそうだし、ここから洞窟まではそこそこの距離あるから助けとくか。
「よっと」
「ぶひぃぃぃ!!?」
「う、うぅぅ…」
うーん、まだ始まったばっかりなんだけど…。段階踏まないとダメかもな。とりあえずはモンスターと戦うんじゃなくて、飛剣と剣術の併用を練習していく方針で行こうかな?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「リール。まずは剣術と飛剣の併用から練習していきましょう」
「ああ、わかった…」
猪のモンスターを一撃で倒し、そんなことを言ってくるこの男はグレス。私が引き留め、折れてくれたからここにいる人。
にしても、いきなりあんなモンスターの所に連れていかれるとは思っていなかった。ゴブリンすらまともに倒せないのに、何故行けると思ったのだろうか…。
「…です。…リール聞いていましたか?」
「え?いや…」
「しっかり聞いてください。いいですか、飛剣はですね━━」
この人は、私のことをちゃんと考えてくれている。私が頼まなければ今頃帰れていたはずなのに。
「どうして…」
「魔力を、…なんですか?」
「どうして、そこまでしてくれるんだ?」
「どうしてって、あなたが手伝ってくれって言ったんじゃないですか。それで俺はやるって言ったんですよ。やると言った以上やるしかないでしょう。正直言ってあの覇王とかいう男を殴って物理的に説得してやりたいですけど、あなたがやるしかないんですから。しょうがないじゃないですか。と言うかちゃんと話を聞いてください。あなたがやらないと帰れないんですから」
私が…。この人は、帰ろうと思えば帰れるのに、やさしい人だな。
「…わかった。それで、どうすればいいんだ?」
「ああ、聞いていなかったんですね」
「あ」
「はぁ…もう面倒くさいなぁ…」
「う…」
「いいですか?次はありませんよ?」
「はい…」
「では。あなたが使う飛剣ですが、これは自身の魔力を使って飛ばす物です。そして分解でバラバラにした後の物は魔力で繋がっているんです。つまり、魔力が重要なんですよ」
「そう、なのか?」
「そうなんです。そこで、あなたには魔力を自在に操れるようになってほしいんですよ。そうすれば飛剣のコントロールもよくなりますし、慣れていれば剣を扱っていても問題がなくなると思いますから」
「なるほど」
分解や飛剣はとくになんで出来るのかとか考えずにここまで来たから、もっとしっかり扱えるようになる方法があるならやらない手はないな。
「それと、聞きたいことがあるんですけど」
「なんだ?」
「どうしてこんな戦い方を思い付いたんですか?」
「…少し恥ずかしいんだが、昔読んでいた漫画の登場人物が剣を花吹雪のようにして使っていたんだ。それが出来ないかと試していたら、だな」
「へぇ…主人公ですか?」
「いや、脇役だな。格好いいライバルや華々しいヒロインなんかより印象に残っているがな」
名前は…なんだったか?もう忘れてしまったな。今度探してみようかな?
「さてと、行きますか」
「?何処へ?」
「決まってるでしょう。覇王さんの所ですよ」
「お、おお」
ラルナは今洞窟で今夜の夕食を作っているはずだ。というかさっきも覇王さんて言っていたな。どうしてラルナとは言わないんだろうか。それに、ラルナの話をする時は、いつも無表情の顔が少し歪むのも気になる。…嫌いなんだろうか?まあ、その内わかるか。グレスとはしばらく一緒なんだし。
◆◇◆
どうやらグレスはラルナのことが嫌いなようだ。
グレスに手伝いを頼んで三日目に判明した事実である。そう、三日だ。あれから三日たっているのだ。
まあ、やったことは剣と飛剣の併用練習だけなんだが。でも、二日目からはグレスが相手をしてくれるようになり、格段に技術が向上した。それで《剣術》と《飛剣》のスキルが消えて《飛剣術》に変化したのには少し驚いた。
そしてモンスターを一体を討伐する、という目標はゴブリンを倒したから既に達成している。
飛剣術とグレスとの模擬戦のお陰で簡単に倒せた。……のだが、ラルナが、僕が見ていないからという理由で条件達成には至っていなかった。
そして今、こういう所が嫌いだとグレスの口からこぼれたのを聞いたのだ。
「はぁぁぁぁ……、ほんとにあいつ、マジで一回殺しといた方がいいんじゃねえかな……」
独り言のつもりなんだろうけど、声が大きくて聞こえている。これまでも何回か聞いていたが、ここまで殺気駄々漏れで言うことは初めてだった。ラルナが条件達成を認めなかったことに相当怒っているのだろう。
「……はぁ、リール。ラルナを拘束するのを手伝ってください」
…いまだに敬語は外れていない。三日も一緒にいるのに…。
「わかった。だが、どうやってやるつもりなんだ?」
「大丈夫です。あなたが気を引いてくれればそれで」
「?わかった…?」
ラルナは今私たちから逃げている最中だ。もう四時間近く追いかけっこが続いている。森の中は走りづらくて、そろそろ疲れてきたのだが…。いったいどうするつもりなんだろうか。
「あ、いたぞ」
「では、よろしく頼みますね」
そう言ってグレスは姿を消す。この三日間で何度か見たが、結局やり方はわからなかった。グレスに聞くと気配を周囲に溶け込ませているだけだ、としか言わないし。私にはたぶん無理なんだろうな。
まあ、それは置いといて、と。木陰に隠れているラルナに話しかけるか。
「おい、ラルナ!そろそろ止めにしないか?!」
「リール……僕は、あなた達との関係を終わりにしたくないです」
「関係?」
「話し相手がいない時間はとても苦しくてですね…。あなたが来てくれて嬉しかったんですよ。何だかんだ言って、君たちを外に出そうとは思っていません」
「そうか…」
「ええ。ここには死がないですから。ここで永遠を過ごしましょうか」
「『バインド』」
「っ!?…グレス、何を?」
突然ラルナの動きが止まり、ラルナの背後からグレスが姿を表す。
「あ?…一辺死んどけ。話はそれからだ」
そう言ってグレスはラルナの胸に腕を突き刺した。
「…がふっ……」
「…やっぱ人間だな。いくら強くても心臓がなくなったら死ぬか…」
…何を、当たり前のことを言ってるんだ?
「リール。洞窟に戻りますよ」
「あ、ああ」
まさか、本当にラルナを殺すとは…。いや、動けないなら、いくら強くても関係ないのか?というか、人を殺したのになんとも思わないのか?ここでは死なないといっても多少気にするものなんじゃ…。
「…何を呆けているのですか。早く行きますよ」
「あ、すまない…」
…考え事は後だ。全力で走らないと、グレスには追い付けないからな。
◆◇◆
洞窟についた。のだが、洞窟の入口に大きい岩が置いてあった。どういうことだろう?ここを出た時にはこんな物はなかった。グレスが置いたのか?
「グレス、これは…?」
「ラルナを簡単に外に出さない為の物ですよ。まあ、意味はなかったと思いますけど」
確かに、ラルナにはこんな物関係ないだろう。そして岩が壊れていないということはラルナはまだ中にいるということだろう。
「入りますよ」
「…ああ」
岩を壊し、無言のまま洞窟の奥へ進む。…ラルナは私たちを外に出したくないと言っていた。グレスは、そのことについてどう思っているのだろうか。
…もう少しでリスポーン地点につく。ラルナはどんな気持ちなんだろうか。
……私は、外に出たいんだろうか…。
ああ、別視点書くの楽しいなぁ…。
練習場面書こうかと思ったけど、絶対おもろくないしなぁ。はぁ…。
あ、誤字、脱字があった場合、報告してくれると助かります。では…。




