教会にて
「……」
修道服を着た女性は俺の顔を見続け、ついには泣き出してしまった。
「え、ええ…。ど、どうしよう。おっちゃんどうすればいい?」
「いやぁ、わかんね!兄ちゃんが泣かしたんだから兄ちゃんがなんとかしないとな」
「おい!元はと言えばおっちゃんのせいだろうが!」
「……あ、す、すいませんすいません!急に泣き出したりなんかしちゃって」
「あ、あの、大丈夫ですか?」
「いえ、私のことは気にしないでください。それよりも、貴方です」
「え、俺?」
なんだ?何か心配されるようなことあったか?…………、いや、ないな。え、ないよな?
「今まで辛かったでしょう苦しかったでしょう。大丈夫です。我らが神々は決して貴方を見捨てている訳ではありません。次の命が幸福に過ごせる為の試練なのです。諦めないでください。いいですか?」
「え、えーと……。おっちゃん、どういうこと?」
「ぷ、くふふふ…、ひ、ひぃーひははは…!」
「笑ってんじゃねえよ!」
「い、いや、すまんすまん。あまりにも兄ちゃんの困惑してる顔が面白くてな…ひひ、ひぃー、あー……キリル、その辺にしとけ」
「ですがオードさん。この方は…」
「大丈夫大丈夫。こいつはそんなこと気にするやつじゃないって」
「……あの、えと、先程はありがとうございました。それと、突然すみませんでした。私は、キリル・ストローンです。貴方は?」
「…あ、はい。冒険者のグレス・ハーフです…」
「グレス様ですね」
様…。
「先程も言った通り、決して生きることを諦めないでくださいね」
「だから、なんで?」
「それは、貴方が魔抜けだからです」
「魔抜け…。おーいグリス、お前もこい!」
入口から一歩もこちらに近づいていないグリスに呼び掛ける。一応こいつも聞いておいた方がいいだろ。髪がそのままになる可能性もあるわけだし。てか、なんであいつ入って来ないんだ?
「…がう」
「な、なんと…もう一人!貴方、貴方もですよ!」
「が、がう?」
「こいつも冒険者で、グリスって言うんだ」
「グリスちゃん。頑張ってくださいね」
「がう?う、うん?」
グリスも状況を理解できていない。まあ俺もだが。
「白髪は神が試練を与えている者の証。それがこいつのところの教えなんだよ」
「あー、なるほど?」
「…?」
「白髪は魔法が使えない。これが常識。魔法は神々の作り出した物。これも常識。一部では白髪は神様から嫌われてる、なーんて思われてんだよ」
「え、マジで?」
そんな風に思われてる感じなんて微塵もなかったけど?
「一部だよ一部。冒険者は実力が全てだからそういう考えのやつはほとんどいないんだよ」
まあ確かに。強ければ関係ないよな。
「……ん?白髪なら年取った人達もそうなるのか?」
「いや?」
「???」
「年を取って魔力保有量が低くなる人は、完全に髪が白くなるわけではありません。元の色が薄く残ったり、一部だけ元の色のままだったりするのです。ですが元より、生来白髪の方はそういうことはなく、真っ白なんです。何の混ざり毛もないんですよ」
「へー…」
まあ、最初っから白かった訳じゃ無いんだけどな。てか俺らの話はいいんだよ。
「……そろそろ依頼について話しませんか?」
「あ、そ、そうですね…。すみません……」
「いえ。ありがとうございました。それで依頼なんですが、具体的に何を教えればいいんでしょうか」
「えっと…」
「教えてやってほしいのは、簡単な戦い方と魔法についてだ」
「いいけど、必要なのか?それ」
「おっちゃんが教えればいいだろ」
「まあ、確かにそうなんだけどな?戦い方は教えられるけど、俺、魔法については全然なのよ。リンリルに通ってるっつっても精霊魔法もいっこうに上手くならんし、簡単に使える基本の魔法も制御できん。ならいっそ他の誰かに教えて貰えばいいだろう。ってなったんだよ」
「あー……」
受付嬢さんが言ってたこととだいたい一緒か。いや当然だけど。
「でもオードさん。お二人とも魔抜けですよ?魔法については他の方にした方がいいんじゃないですか?」
「いやそんな金ないし……」
おっちゃん……。
「え?なんですか?声が小さくて聞こえませんでしたよ?」
「…大丈夫だ。って言ったんだよ。とりあえず裏庭に行こう。子供たちもそこにいる」
「お、おう」
「…」
「本当に大丈夫なんですか?」
大丈夫です。魔法は一応使えるんで。……って言いたいけど、宗教だもんなぁ。白髪で魔法が使えるようなイレギュラーはいない方が良さそう。魔法の使い方だけ教えて後は沈黙を貫こう。あと、グリスにも人前で魔法使うなって後で言っとかないとな。
もうあれだな。魔法教わったけど使わん方がいいんだな。うん。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「きゃはは!」
「まてー!」
「あはは!こっちだよー!」
裏庭にはグリスよりも小さい子供が四人いた。赤髪の子、青髪の子、黒髪の子、灰色の髪の子だな。その内赤黒灰はかけっこしてる。青髪の子は壁にもたれ掛かって寝てる。
「あ!オードがきた!」
「シスター!」
「お兄ちゃん!」
お兄ちゃん…?
「俺は今年で二十だからな?」
「え、そっちの方が驚きなんだけど」
「そっちの人は誰?」
「髪真っ白ー!」
「剣だ!剣持ってる!」
「もう一人いるぞ?」
「こっちの子はー?」
三人なのに圧がすごい…。
「はいっ!皆さん落ち着いてください。こちらのお二人はオードさんのお知り合いの冒険者で、グレス様とグリスちゃんです。これから皆さんの先生になります」
「おお!すげー!本物の冒険者か!」
「すごーい!」
「起きろよネオン。冒険者だぞ!」
「ん……」
「で、グレス様、グリスちゃん。この子たちは、…赤髪の子がトリオン、灰髪の子がシース、黒髪の子がジン、青髪の子がネオンです」
「あー、よろしく?」
「……がう」
この子らすんげーキラキラした目で見てくるんだけど。なんで?
「ん。皆冒険者の話が聞きたい。オードの話には華がない」
「なーるほど」
「おいおいネオンよ……酷くないか?」
「事実。あと教え方が下手」
「ぐふっ…」
「教師には向いてない」
「ははは。子供に言われるなんてよっぽどだな。まあ、俺も教えるのは上手い方じゃないと思うけど」
「大丈夫ですよ。オードさんの教え方は大雑把で感覚的、魔法についてある程度の知識がある私でも理解不能なので」
「えぇ…」
どんだけだよ。
「なあなあ!どんな話を聞かせてくれるんだ?」
「色んなお話し聞きたい!」
「それもいいけど、オレは戦い方が知りたい!」
「魔法」
「えーと…」
「…」
どうしよう…。
「お前ら落ち着け。これから何回か来てくれるから、その度に話を聞くようにしろ。んで、今回は戦い方についてだ」
「「えぇー…」」
「戦い方…!」
「ん…」
「じゃあ、後はよろしくな。先生」
「先生…」
「あはは…」
やるかー…。
「えーと、じゃあ、そうだな…おっちゃ、…オードは皆にどんなことを教えた?」
「ん?剣術と、体術だな」
「じゃあ、魔法を教えよう」
「え?!」
「知ってることを教えてあげるだけですよ」
「そ、そうですよね…」
ふむ。
(グリス。人前で魔法は使わないようにしろよ)
(え、なんでだ?)
(白髪で魔法使えるのはここらじゃあり得ないことなんだよ。だからさ)
(ん、でも……がう。わかった……)
(ごめんな)
「どうかしたのですか?」
「いえ。じゃあ、早速始めようか」
「「はーい」」
「わかりました」
「ん」
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
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