武具と早めの再会
「グレスは姉ちゃんじゃないぞ!」
「え、そうなの?ごめんなさい。よく見えてなくて…」
「いえ、大丈夫ですよ」
まだ寝ぼけてるのかな?
「今日は何しに来たの?」
「グレスが剣の鞘を買いたいっていうから、連れてきたんだ!」
「そっか。少し待っててね。もうすぐお父さん来ると思うから」
「がう」
「あ、はい」
なんだ?この感じ…。変な違和感が…。
「姉ちゃん。グレスはどんな風に見えるんだ?」
「そうだね…。陽の光でよく見えないけど、グリスちゃんと同じ白かな。声も高いし、身長も高いわけじゃない。似ているから姉妹だと思ったんだけど…」
見えて、る、のか?もしかしてもやっとしか写ってないんじゃ…。これか?さっきの違和感。見られてるようで見られてない感じ。
「姉妹じゃないぞ。えーと、親だ!」
「親…、親?…え?ほんと?」
「よく見ろ。そんな訳ないだろ」
「あ、お父さん」
奥からがっしりとした体格の男が出てくる。顔には無精髭がある強面だ。
「もういっぺん見てみろ。少なくとも俺には親には見えん」
「……そうだね。じゃあ、保護者、かな?どう?」
「あ、まあ、そんなところです」
別に間違っちゃいないからそれでいいや。
「で、グリス。今回はなんの用なんだ」
「今日用があるのは、オレじゃなくてグレスの方だ!」
「…あんたが?なんの用なんだ?」
「ああ、はい。こいつの鞘が欲しくてですね」
懐に入れておいた黒剣をカウンターまで進んでその上に置く。
「長剣か。少し待ってろ。取ってくる」
「あ、はい」
店主は奥へ行ってしまった。
「珍しいね。持ち手のところまで黒いなんて」
「やっぱりそうですよね。他にこういう剣ってあるんですか?」
「んー、どうだろう。私は知らないかな。お父さんは知ってるかも」
「見たことはない。が、そういう類いの物もあるらしい」
「へぇ、そうなんですね」
戻ってきた店主は三つの長さの違う鞘をもっていた。
「どれかが合うはずだ。入れてみてくれ」
「はい」
一本目、黒に白い線が入った鞘。短くて合わない。
二本目、茶色で先端が銀色の鞘。長すぎて合わない。
三本目、赤黒くて縁が青色の鞘。ピッタリはまる。
「それか。他に何かあるか?」
「あ、じゃあ適当に防具を…」
「必要なのか?」
「え?ああ、はい」
「……そうか。じゃあ持ってくる。待ってろ」
「あ、はい」
ん?店主、どこ見てたんだ?……まあいいか。
「すいません。この鞘ってどのくらいですかね?」
「そうだね…。鞘だけだと、二千くらいかな?」
「二千…」
鞘だけだとそれくらいなのか。
「そいつは千だ」
「そうなの?珍しいね」
「ああ、作ったやつの意向だ。おい、これをつけてみろ」
店主は胸当てと手甲、脛当てを渡してくる。
一通りつけてみると、どれもサイズが合っていた。初めて着けたけど、あんまり重さを感じないな。ああ、それは黒剣も同じだから気にしなくていいか。
「……、いるのか?」
「え、はい。いくらですか?」
「そうか。鞘と合わせて三千でいい」
「じゃあ、はい」
「はい。ピッタリ三千ね。グリスちゃんは何かないの?」
「ん?んー、ない!」
「そっか」
「……」
「っ、なんですか?」
店主がジーっとこっちを見てる。
「いや、なんでもない。………、気を付けろよ」
「え?」
「壊れたりしたら持ってこい。出来るだけ直してやる」
「あ、はい」
気を付けろ?何に?う~ん?
「ありがとうございました」
「またな!」
「またね」
「……」
さて、この後はどうしよう?
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
とりあえず組合に戻ってきた。
イベントまでにやりたいこととかも特にないからな。普通にお金稼ぎをしよう。黒剣を使えばモンスターを消し飛ばさなくても殺せるだろうから、素材を売ったお金も入って結構稼げると思うしな。
「あ、グレスさん、グリスちゃん。また来たんですね」
「がう!」
「うん。なんかいい感じの依頼ない?」
「はぁ…相変わらずですね。一日に何回も組合に来て依頼を受けてるの、二人位ですよ?」
「あはは…」
「まあいいですけど、そうですね……、この依頼とかどうですか?」
#先生を探しています
報酬三千G
「これは?」
「教会からの依頼です」
「教会…」
「はい。教会の子供たちに色々教えて欲しいそうです」
「え、でも、教会にはおっちゃ、んん!…オードがいますよね?」
「そうですけど、よく知ってますね。知り合いですか?」
「ああ、まあね」
「それはいいですね。実はこの依頼、オードさんからの依頼なんです。普段は自分が子供たちに色々教えているそうなんなんですが、たまには自分以外の人に教わった方が見聞が広まるだろうって」
「へぇ…」
色々教えてるのか。
「どうです?受けます?」
「うん。受けるよ」
「グレスちゃんはどうする?」
「一緒に行くぞ!」
「そう。じゃあパーティーで受注ってことにしておきますね」
「ありがとう。じゃあ行ってきます」
「行ってきます!」
「はい。頑張って来てくださいね」
おっちゃんとの再会、思ったよりも早くなったな。まあ、俺から何か用事があることなんてないだろうし、こういう機会がないと会えないよな。おっちゃん側から用事がなければだけど。
「こ、これでしばらくはグレスさんも他の依頼には手を出せないでしょう。なんせ継続型の依頼ですからね…。あの人のせいでどれだけ私の仕事が増えたことか!だけど、やっと解放される!久しぶりの休暇がすぐそこに!うふふ、うふふふふふ……」
聞こえてるよ受付嬢さん……。すまんかった。これからは気を付ける。マジでごめん。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
教会についた。これでここに来るのは三回目だな。そういえば一回目も二回目も再会だったな。どっちも変なやつがついてた気がするけど…。
んと、今回の依頼的には中に入ればいいかな?
「すいませーん。組合の依頼で来たんですけどー」
教会の中はよくある造りだ。扉を入って左右に椅子が並べられている。正面には基本六系統と派生六系統、特殊六系統のそれぞれの色が中心で混ざり合うように作られている大きなステンドグラスが嵌め込まれていた。
「……だれもいないぞ」
「……そうだな」
あれー?誰かしらはいると思ったんだけどな……。
「…ぃ」
「ん?」
右側奥にある扉からなんか声が聞こえる。
「はいよー、どなたさんかな?って、マジか」
「「あ」」
「おっちゃん!」
扉から出てきたのはおっちゃんだった。いるとは思ったけど、普通は先にシスターとかが出るんじゃないのか?
「嬢ちゃんに兄ちゃん、何しに来たんだ?」
「…聞こえてたんだろ、依頼だよ依頼」
「やっぱそうか~、はぁ~マジか…」
「なんだよ」
「いや、なんでもない。おい、依頼で来た人だよ」
「そ、そうなんですか?本当ですか?嘘じゃないですよね?」
「嘘つく必要ないだろ。あと、俺の知り合いだ」
「……怖い人じゃないですよね?」
「はぁ……」
「なんでため息つくんですか!普通初対面の人は警戒しますよね!?」
「すまん兄ちゃん嬢ちゃん。こういうやつなんだ」
「ど、どういうことですか!あ、あれ?開かない。あの、オードさん。開かないんですけど。ちょっと、あれ?オードさん。オードさん?」
おっちゃんが扉の前にいるから開かないんだな。
「開けてやったらどうなんだ?」
「ん?ああ、よっと」
「わわ!」
おっちゃんが扉から離れた途端勢いよく扉が開き、中から修道服を着た女性が転び出てきた。
「い、痛い…」
「おっちゃん…」
「はぁ……」
「な、なんだよ二人とも」
おっちゃんが何もしないみたいだし一応起きるの手伝ってあげよう。
「大丈夫ですか?」
「あ、はい…ありがとうございます。……え?」
「ん?」
俺の顔見て固まっちまった。なんで?
誤字脱字があった場合報告してくれると助かります。では。




