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一年越しに叶える夢~AWAの世界にて~  作者: 高木橋ユウ
二章 旅の始まり《兄貴のいる国、中央国家パリドスでの騒動》
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船上にて


 あー……、雨が降ってくれて良かったぁ~………。


「グリス!火魔法の扱いには注意しろと言ったじゃろう!火魔法は威力が高い分取り扱いが難しいとあれほど…!」

「リツ婆、それくらいにしといてやってくれ」

「じゃがな…」

「グリスもよくわかっただろ?」

「がう……」

「ほら。な?これからは気をつけろよ?」

「がう…」

「んじゃ、この話は終わり。依頼の報酬を貰ったら、コーネルに戻るぞ」

「え?!帰っちゃうのか?」

「ああ。そろそろ別の街にも行きたいからな」

「そうか。行くのか。短い間だったが面白かったぞ。機会があればまた会おうの」

「ああ。じゃあな」

「ん~、がう!また!」


 …トルンにもちゃんと挨拶しとかないとな。




◆◇◆◇◆◇◆◇◆




 飛空船乗り場に来た。受付で仕事をしていた女の人は、俺を見つけると急に顔が青くなった。


「……、え、えと、よ、ようこそ!飛空船乗り場へ!み、身分証の掲示をお願いします!」

「あ、はい。グリスも冒険者カード出してな」

「ん、がう!」

「えと、Dクラスと、え、Sクラス!?ひぇぇ…」


 やべ、思ったよりビビってる。どうしようか。ん~、周りに他の職員は…いないな。って、あれは…。


「ウィルどうかしたのか?」

「あ"!オ"ードざ~ん"!!」

「おいおい泣くなよ」

「だ、だってごの人怖いんでずも"ん"!」


 えぇ……。


「し、しかもSクラス冒険者なんですよ?!」

「Sクラスって、そいつはすげぇな。…ん?」

「よ、よお。おっちゃん…」

「あれ?!お前さんは、あの船酔いの兄ちゃん?!」

「…ああ」

「どうしたこんなところで。って、まさか…兄ちゃんがSクラス冒険者なのか?!」

「…そうだよ。その子に思ったよりも怖がられてて、どうしようかと思ってた所だったから助かったよ」

「怖がられたって、お前さん何かしたのか?」

「いや、何も」


 してないよな?…うん。してない。


「何かされたのか?」

「何もされてないです…」

「じゃあなんで?」

「Sクラス冒険者って怖い人が多いって言うじゃないですか?!しかもこの人あり得ないぐらいナニかが立ち上ってるじゃないですか!」

「「ナニか?」」


 え?なにそれ?魔力か?あ、いや精霊達かな?それともどっちも?


「あ!まさか!?ウィル!“これ”が見えるか?!」


 おっちゃんが指をたて周りに漂っていた精霊を集め始めた。おっちゃん精霊見えるんだな。すごい。


「見えますが?なんですか?それ…」

「そうか見えるか!良かったなウィル!こいつらは精霊だ!」

「え?!それが精霊なんですか?!」


 んー?なんの話をしてるんだ?精霊が“見えるようになった”?エルフって皆見えるんじゃないのか…?そういや誰もそんなことは言ってないよな。じゃあきっかけがあると見えるようになるのか。すごいな開眼だ。


「嬉しいです!でも、どうして急に…」

「そいつはたぶんこの兄ちゃんの周りにあり得ないぐらいの精霊が集まってるからだと思うぜ?」

「…なあ、そろそろいいか?」

「ああ、すみません!どちら行きの船に致しますか?」

「コーネル行きで」

「お、兄ちゃんもコーネルに行くのか」

「オードさんもコーネルですか?」

「ああ。ウィルは皆に報告しに行けよ?」

「はい!もちろんです!では、料金の二千Gを」

「はいよ」

「ん?一万じゃないのか?」

「ああ、いいんだよ。ここじゃ金なんて使わないやつの方が多いからな」

「だから料金は最低限なんですよ」

「へー」


 使わないのか。ん?でも普通に店あったよな?あれは…そうか。俺みたいな他のところから来たやつ用か。


「じゃあ、はい。二人分で四千G」

「がっ!自分で出すぞ!」

「いい」

「なんで?」

「親だからな」

「…」


 せめて細かい所ぐらいはな。それに自分で稼いだ金は自分が欲しい物に使って欲しい。どうせ食べたい物がいっぱいあるんだろうし。


「…では、三番港になります」

「ありがとう」

「またな、ウィル」

「はい」


 三番港は…、あそこか。


「兄ちゃん、酔い止め薬、飲んどくか?」

「…、ああ」


 三番港で船に乗り込むと、直ぐに出発した。


「兄ちゃん、リンリルはどうだった?」

「いい所だと思ったよ」

「そうか!そいつは良かったぜ!」

「ああ…」


 薬飲んだとはいえ、すぐ酔いそうで怖いな…。


「なあおっちゃん」

「ん?なんだ?」

「おっちゃんって何者なんだ?前会ったときはリンリルでは有名人だって言ってたし、さっきのあれ、普通の人は精霊なんて見えないはずだろ?」

「あー、じゃあ教えてやるから、兄ちゃんの事も教えてくれよ。聞きたいことはこっちにもあるんだ」

「いいぞ」

「じゃ、自己紹介といくか。俺はオード・リスタリオンってんだ。生まれは北の帝国で今はこの国で兄ちゃんと同じ冒険者をやってる。一応Aクラスだ」

「おぉ…」

「精霊については物心ついた時にはもう見えてたな。そのせいで色々あったが、今はいい思い出って所かな。リンリルで有名人なのは、まあ、頻繁に行ってるからだな。そのおかげで、リンリルで俺を知らないやつはいないくらいさ」


 それはすごいな。


「こんくらいかな。次は兄ちゃんだぜ」

「おう。俺はグレス・ハーフ。Sクラス冒険者だ。一応来訪者でもある。あと女だ」

「…Sクラス冒険者なのは確かなのか。それで来訪者?すごいな。で、最後なんて言った?」

「俺は女だ」

「な、なにーー?!聞き間違いじゃないのか?!」

「そんなに驚くようなことか?」

「だ、おま…、顔!胸!」


 そう言って自分の顔を指差した後、腕で胸がないというジェスチャーをするおっちゃん。


「はぁ、あのなおっちゃん。いくら俺が気にしてないとしても、仮にも女性に対してその反応はよくないと思うぞ?俺が普通の女だったら間違いなくぶっ叩くよ?」

「はっ!いや、スマン!本当に驚いてさ!でも、確かに、言われて見ると、女に見えなくもないな。え?でも兄ちゃん、歩き方完全に男だったじゃねえか」

「…歩き方で見分けられるとか怖いんだけど、そこは触れないでおいてやるよ。俺は来訪者だって言ったろ?そういうことだ」

「向こうの世界じゃ男ってことか!」

「いや女だ」

「っもうどういうことなんだ!?…はぁ、はぁ…」

「まあ、次会うことがあったら教えてやるよ。これ以外で、なにか聞きたいことってあるか?おっちゃん」

「……、…、じゃあ、兄ちゃんは魔法使えるか?」


 女って言っても兄ちゃん呼びは変わらないのか。いや、俺もおっちゃん呼びで固まってるからな。仕方ないか。


「使える」

「精霊魔法は?」

「使えるらしい」

「らしい…?」

「使ったことはない」

「そういうことか。じゃあ、次なこれは別に答えてくれなくてもいいんだが、兄ちゃん、種族は?」


 どうしようか?リツ婆さんにはあんまり言いふらすなって言われたけど…。まあ、いいか。別に。


「…龍人族だ」

「龍人、なるほど。だからあの反応だったのか」

「あの反応?」

「リンリルに入る時、結界が発動してただろ?その説明をしたときの反応さ」

「あぁ…」


 あれか。


「これで納得いったわ。じゃあ最後に。兄ちゃんから見て、俺は強いか?」

「う~ん?」

「率直な意見を聞きたいんだ。Sクラスの冒険者から見て、俺はどうなのかってな」


 おっちゃんかー、う~ん、パッと見の魔力放出量はそう多くないし、内側の魔力もそんなにない。俺の周りには未だにいる精霊がおっちゃんにはいないし、やっぱり魔力は多くないだろう。

 筋肉は偏りなく、満遍なく鍛えてあるように見える。よく見れば身体中薄く傷跡があるし、戦闘経験も豊富だろう。重心は揺れる船上でもほぼずれていない。


「俺は、正直言って対人戦なんかはほとんどやったことがないから、あんまり宛にしないで欲しいし、誰かの戦いを多く知ってる訳でもないけど、強いんじゃないか?おっちゃんは」

「そ、そうか?」

「ああ。まあ、俺よりは弱いかな」

「えぇ…上げて落とすのかよ」

「あはは。ごめんごめん。でも、おっちゃんのステータス見せてくれるんだったら、もっとハッキリわかるよ?」

「んー、そいつは止めとくよ。もっと落とされるのは流石にちょっとな」

「いや、悪かったって。すねんなよ」

「すねてねえよ!」

「ハハハ」

「いや笑ってんじゃねえよ?!」


 まあ、おっちゃんおっちゃん言ってるけど、若そうだし、まだまだ強くなるでしょ。大丈夫大丈夫。




グレスの(というか結城の)顔って中性的で、見る人によって印象変わるらしいです。女の子になる前は普通に男の顔(と言ってもやっぱり若干女の子っぽい顔)してたんですけどね。胸は、まあ、ね?本人気にしてないし…。

あ、誤字脱字があった場合報告してくれると助かります。では。……ん?評価画面………ん……???

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