龍鬼一戦
「待たせたな」
「いや?準備は出来てるか?」
「無論」
家から大剣を持って出てきたギルグと相対する。
場所はゴブリンの集落の中心、広場になっているところ。遠巻きに見守るゴブリンが複数いる。
ギルグが無造作に大剣を構える。俺もスッと直ぐに攻撃できるように拳をあげる。
戦いを始める前にこいつは視ておくか。鑑定。
ステータス
名前 ギルグ
種族:亜人族(ルート・鬼)Lv138
HP16341 MP9673
筋力12091 防御力10329
俊敏10671 知力9407
運261
スキル
《大剣術Lv89》《魔力感知Lv72》《身体強化Lv100》《指揮Lv65》《鑑定眼》《威圧》《咆哮》
種族スキル
《剛力Lv100》《再生》
特殊スキル
《悪食》
称号
【名持ち】【悪食】【ゴブリンの王】【進化者】【到達者】【鬼神の加護】【人神の加護】
……、俺よりもステータスの数値は上、か。
「「相手にとって不足なしだな」」
「「……」」
静かに、戦いが始まった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
先に動いたのは、ギルグの方だった。
グレスより僅かに速いその脚で一気に近づき、その体と同じかそれ以上に大きな剣を片手で、まるで棒切れの様に横凪ぎに振るう。
それをグレスはバックステップで避け、そのまま後ろに下がった。そして次の瞬間、一回転したギルグが再度同じ軌道で剣を振るった。
振り切ると同時に走り出したグレスはスピードの乗った一撃をギルグに叩き込むが、全く効いていないのか余裕の表情をみせ、グレスに殴りかかった。
それを簡単に避け、更にもう一撃加えるが、今度はひらりとかわされてしまう。
殴り、避け、斬って、叩く。
そんな攻防が何度か続き、だんだんと傷が増えていく二人。それらの傷は両者が所有しているスキルで徐々にふさがってはいるが、治るスピードよりも傷を負うスピードの方が速い。そして傷の量は素のステータスが負けているグレスの方が多い。
そして、グレスがギルグから一旦距離を取り、話始める。
「お前、身体強化使ってねえだろ」
「…どうだろうな?」
「いや、俺も使ってねえから何か言える訳じゃねえけど、第二ラウンドと行こうか?」
「ふっ、挑むところだ!」
ギルグの身体から魔力が溢れだす。替わってグレスは微量だが体外に出ていた魔力が無くなり、体内の魔力が膨れ上がる。
龍と鬼の攻防が、苛烈さを増す。
速度は音速を越え、剣と拳がぶつかり、周囲に衝撃が走る。
かわされ地面に落ちた斬撃で、地面が砕け土が飛び散り、穴が開く。
周囲で見物していたゴブリンは吹き飛ばされ、森で鳴いていた鳥が飛び立つ。グリスはなんとか持ちこたえているが、戦闘を見る余裕はなくなった。
周囲に被害を出しながら両者一歩も引かず攻防を繰り返す。
いつの間にか、グレスの腕には鱗が生え、鎧の様に覆っていた。その腕の攻撃は剣とぶつかれば火花を散らし、金属特有の音をだす。身体に当たれば皮が裂け肉が抉れる。
そんな傷も一瞬で跡形もなく無くなり、また傷が出来る。
やがて、ギルグの剣は軋み、歪んで、ギリギリ形を残すまで酷使される。壊れるのを見越して潔く手放し、殴りかかる。
素のステータスが高い上に『身体強化』により強化された力で地を抉りながら走りだしストレートを放つも、あっさりかわされ、カウンターをもろにくらう。
その殴り合いも拳を交わす度にキレが増し、ギルグに至っては素人のそれから長年格闘技をやってきた者のそれに、劇的に変わっていく。
拮抗した殴り合いを繰り広げるも、僅かに上のグレスの攻撃が、的確にギルグの体力を奪っていった。
そして、
「ふんっ!!!」
「はぁっ!!!」
両者同時に放った、それまでで一番早く、鋭い一撃が、共に決まる。
倒れる二人。
静まる森。
決着は━━。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
割れた地面に大の字で横になる。
身体中に痛みがあってしばらく動けそうにない。
《レベルアップしました》《スキルレベルがアップしました》
《龍鱗武装のスキルを獲得しました》
……。
「……、負けた、か……」
「……ん?いやーどうかな~、お前動ける?」
「……いや」
「引き分けじゃね?」
「野生に引き分けはない。必ず勝者がいて敗者がいる。あって相討ちだ」
「じゃあ相討ちってことで」
「いや、お前の勝利だ」
「なんで?」
「お前が動けないのは魔力が暴走気味だからだろう?」
「んー?」
魔力暴走?なんだそれ。そんな感じじゃないと思うんだけど。それに動けないのは普通に体力がないからだよ?
「我の場合全く動けん。そういうことだ」
「どういうことだ?」
「そういえば、お前が勝った場合の話をしていなかったな」
「話を続けるな」
「我が死ぬか」
「おいおい死ぬなよ…。じゃあ、そうだな…この森でおとなしく暮らせ。それでいいや」
「なに?」
「だーかーらー、この森でおとなしく暮らせって」
「無理だ」
「なんで」
「元々ここには一時的に留まろうと思っていたから後数日で食糧が尽きる」
「なるほど…畑とか作ったりしたら?」
「種がない」
「う~ん」
リツ婆さんに言ったらなんとかなんないかな?
あ、
「この森で暮らせとか言ったけど、元の森に帰ればよくない?」
「それは……」
「訳ありかー、じゃあ、エルフに相談してみるよ。『亜人族の部族が南の森で暮らせないか』って」
「いいのか?」
「ダメだった時はあの森に帰ってくれよ?」
「ああ」
よし。体力も戻って来たし、行くか。
「よっと、グリス。帰るぞ」
「ん、がう!!」
「帰りに依頼だけは達成させていこうな」
「がう。でも大丈夫なのか?」
「大丈夫だろ。なあ?」
「む。ああ、他の群ならな」
同じ群なら仲間意識すごいんだけどな…。
「わかった!じゃあ殺る!」
「ああ。また、いつかな」
「んー」
《称号【鬼の戦友】を獲得しました》
きりがいいので今回はここまで。戦闘描写をもっとどうにかしたいと思いました。
誤字脱字があった場合は報告してくれると助かります。では。




