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一年越しに叶える夢~AWAの世界にて~  作者: 高木橋ユウ
二章 旅の始まり《兄貴のいる国、中央国家パリドスでの騒動》
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報告と成長と


「━━━ん」


 宿屋で目覚める。周りを見るとまた物が増えていた。

 この前見たときに着ていた服や防具が床に転がっている。どれも鋭利な刃物で斬られている。

 どこかに行く前に片付けておけよ。ったく、全部しまっておくか。組合に行けばいるだろ。ついでにこの前の依頼の報告もしよう。





 組合に着くとトルンと呼ばれていた受付嬢がいたのでそこに行く。


「あの」

「あ、グレス様。本日はどのようなご用件ですか?」

「この前の依頼の報告と、グリスについて聞きたいんですけど」

「依頼…、ああ!祠の依頼ですね?どうでしたか?中には入れましたか?」

「ああ、はい。入れました。で、特に異常はありませんでした」

「そうですか。では依頼達成ですね」

「え、確認とかしないんですか?」

「大丈夫です。実はこの建物には『真偽判定』の魔法結界が張られているんです。その結果がこの眼鏡に写されるので、そういう確認はしないんですよ」


 そう言って眼鏡をくいっとあげるトルン。て言うか真偽判定って何?


「あの、真偽判定ってなんですか?」

「知らないんですか?ではお教えしましょう。『真偽判定』とは、まあ簡単に言っちゃえば本当かどうかを判定する魔法です。色々抜け道はあったりするんですけど、かなりすごい魔法です」


 抜け道あるのかよ。本当に大丈夫なのか?……そういえば、ハチミツ屋のリリエラさんも似たような魔法使ってたな。あれとはどう違うんだ?


「真偽究明とは違うんですか?」

「………『真偽究明』は精霊魔法です。精霊は心が読めるのでそれでわかるんですよ」

「なるほど」

「双方の違いは『心を読んでいるか否か』、です」

「ん?」

「真偽判定はすごい魔法なんです…。精霊に頼らなくてもいいんですから……」


 なんかすごい落ち込んでる。俺まずいこと言ったのかな…。


「こちら報酬の方になります…。グリスちゃんならたぶん上にいると思いますよ……」

「お、おう…」


 遂にはうなだれてしまった。何が理由なんだよいったい…。それにしても、グリスは二階にいるのか。上ってたしか酒場だったはずだけど、何してるんだ?…とにかく行ってみるか。トルンはそっとしておこう。



 二階の酒場は奥にカウンターがあって、手前にテーブルがいくつか置いてあった。カウンター席以外に椅子はないようで、よくわからん感じになっている。

 グリスはカウンター席に座っていた。イータはカウンターに立て掛けられている。店員はいないようだ。


「よーグリス」

「ん?あ!グレス!来てたのか?」

「ああ、さっきな。ここで何してんだ?」

「組合支部長?とか言う人に呼ばれたんだ」

「組合支部長に?お前なんかやらかしたのか?」


 支部長に呼ばれるとかただ事じゃないだろ。


「んー?」

「イータ?」

「嬢ちゃんは変なことはしてない筈だぜ。それでも呼び出されたってことは昨日の奴のせいかも知れねえな」

「昨日の奴って?」

「でっかいカマキリ!」

「デスマンティスって言う奴らしい。薬草採集の依頼の途中で遭遇してな?防具とか色々ダメにしちまったんだけどなんとか討伐したんだよ」

「竜より強かった!」

「ほう」


 竜って言うと、ガハルに行く途中に出てきた奴だよな。それより強いのか、デスマンティスとやらは。それで防具類が宿屋に放置されてたんだな。


「で、死体をそのまんまにしておくのもなんだからって、どうにかここまで運んだのよ」

「そしたらトルンが驚いて支部ちょーに報告する!って言ってどっか行ったんだ」

「戻って来たと思ったら支部長と面会してくれって言われたんだけどもな」

「眠かったから帰ったんだー」


 まじか。


「……デスマンティスはどうしたんだよ?」

「トルンに預けた!」

「さっき換金された物貰っといたから安心しな」

「そうか…。それで、支部長とは会ったのか?」

「ここで待つように言われたんだけど全然来ないんだよ」

「なるほどなぁ…」

「いや、ずっとおるけどな?」

「は?」


 カウンターの下からひょっこり顔を出す誰か。恐らく女、の子。


「喋る武器とは珍しい物を持っとるな?ちと貸してわくれんかの?ん?」


 そのまま台に乗ったのか体もカウンターの下から出てくる。


「誰だよあんた」

「儂の問に先に答えんかい、ど阿呆」

「ああ?…ダメだ。で、あんた誰だよ」

「ふむ…そうか。儂はここの組合支部長じゃい」

「「支部長?」」

「見えない」

「はっきり言うのお小娘」

「小娘?違うぞ、オレはグリスだ!」

「知っとる知っとる。グリス・ハーフじゃろ~」


 あれ、なんで下の名前知ってんだ?俺はこっちに来てからは誰にも言ってないはずだし、グリスが言ったのかな?ん~でもグリスが下の名前も一緒に言うかな?……言わないな。うん。


「なんで下の名前知ってるんだ?」

「儂はな~んでも知っとるぞ~?そっちの魔抜けが下でトルンを泣かしたのもの~」

「え!?」


 バッっとこっちを見るグリス。


「いや、話してたら急に泣き出したんだよ」

「ほんとか?」

「おう」

「ん~ふふふ。本当じゃよ~」

「んん…ならいい」

「そうか…」


 ふぅ、誤解(?)が解けて良かったぜ。


「…ところで、なんでこいつは呼び出されたんだ?」

「おお!そうじゃったな~!本題を忘れとったわい」

「おいおい…」

「グリスよ。お主は昨日デスマンティスを討伐したそうじゃな?」

「ん?がう」

「どこで奴に遭遇したんじゃ?」

「んー…と、西の森だったと思う」

「西、西か。間違いないかの?」

「ん~」

「なんじゃそれは、西で合っとるのか?どうなんじゃ」

(…イータ、どっちだ?)

(喋っちまってもいいのか?)

(もうバレてるんだからどうしようもないだろ)

(…そうだな!)

「西で合ってるぜ」

「んむ?そうか。それならよかった。じゃ、次の話じゃな」

「「「次?」」」


 他に何か話があるのか、んー、あれか、クラスアップかな?


「グリスよお主は今日からDクラスじゃ」

「D?ってどれくらいだ?」

「中級者位じゃの」

「グレスは?」

「ん、俺?俺は…、上級者かな?」


 やってる日数的には全然だろうけど。


「主は上級者じゃのうて超越者じゃろ」

「ん?ちょっとなに言ってるかわかんないな~」


《称号【人を超越する者】が称号【超越者】に変化しました》《変化に伴い一部効果が変更されました》


 は?


「……、いや、この際もういいわ。で、なんでDなんだ?」

「なんでとは?」

「いや、デスマンティスって下位竜より強いんじゃないのか?」

「あ~なるほどのぉ…。そこは個体によるな。今回のデスマンティスはまだ若い個体じゃった。あと十年あれば違ったがの。それを入れてのDクラスじゃ。とは言ったものの、デスマンティスを一人で討伐できるのは相当じゃ。次のクラスアップは早いぞ?」

「なるほど」

「話は終わりじゃ。もう行ってよいぞ」

「いや、まだあんたの名前を聞いてないぞ」

「知りたいのかの?」

「え?まあ…」

「知りたいぞ!」

「儂はリツ・レイヴ・ラ・リンリルじゃ。まあ、皆からは族長や支部長などと呼ばれる事の方が多いがの」

「族長?」

「まあこれでもこの街じゃ一番の年寄りじゃからの」

「んー、見えない…」


 そういえばリリエラさんもおばあちゃんって呼ばれてる割に若く見えたな。エルフだからかなとは思ったけど、流石にこの人は見た目が若すぎる。


「じゃあリツ婆だ!」

「まあ、いいがの。そんな風に呼ばれるとは思わんかったわ…」

「じゃ、リツ婆さんまたな」

「主もその呼び方なんか…」


 いや、なんか語呂がいいから…。


「またな!」

「ああ、うん。またの」


 さて、この後はどうしようかな。適当に依頼でも受けるか?


「グレス!一緒に依頼に行こう!」

「お?おう。そのつもりだったけど、どうしたんだよ、そんなに張り切って」

「この前の依頼の時はなんにも出来なかったし、今日まででまた強くなったから見てもらいたいんだよ」

「あ~、確かにな。じゃ、丁度いい感じのを受けるか」


 ………、トルンは立ち直ったかな?




誤字脱字があった場合報告してくれると助かります。

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