雑貨屋
一日経ってもネロが光について教えてくれることはなかった。仕方なくそのままログインする。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ん?」
宿屋で目覚める。そして違和感。
なんか物が増えてる。見覚えのない鉄剣、見覚えのない鎧、見覚えのないポーションらしき薬。それが床に散らばっている。グリスもイータもいない。………とりあえず組合に行ってみるか。
組合に行くとこの前グリスの登録をした時の受付嬢がいた。この人に聞こう。
「すいません」
「はい、あ、この前の…」
「先日はどうも。ところであいつって来てますか?」
「あいつ……?あ、グリスちゃんですね。グリスちゃんならそろそろ戻って来ると思いますよ」
依頼を受けてたのか。
「がー!トルン!戻ったー!」
「来ましたよ」
「あ!グレス!」
「……」
こっちを指差して喜んでいるグリスの装備がすごいことに……。長袖の服とズボンを着て急所だけを守る防具を装備、背中にはイータ、腰には短剣をさして革袋を括り、ブーツを履いている。俺がいない間に何があったし。
「グリスちゃん依頼の物は採ってこれた?」
「おう!これと、これと、これ!」
「はい、確かに。ではこっちが報酬よ」
「へへへ。どうだグレス!ちゃんとやれてるだろ?」
「ああ、うん。まあ…出来てるんじゃないか?」
「やったぁ!」
なんでこんなに喜んでんだ?
(ちょっと)
(え?あ、はい、なんですか?)
(グリスちゃんはですね、あなたがお金に困ってるからって、毎日依頼を受けてたんですよ?)
(え?そうなんですか?)
(あなたも冒険者ならちゃんとしないとダメですよ?こんな小さい子供に稼がせるなんて)
(あー、その、すみません……)
まさかグリスがそんなことのために頑張っていたとは、自分の食費位稼げればいいなーって思ってただけなのに。
(ちなみにですけど、グリスどれくらい稼いだんです?)
(えーっと、五千G位ですね)
(そうですか。ありがとうございます)
まあこんなものか。低クラスの時は報酬も安いからな。それで五千なら相当だ。
「グリス、行くぞ」
「ん、がう!トルンまたな!」
「はい。またお越しください」
さて、ハチミツはいったいいくらするだろうか?できればグリスが自分で稼いだ分は使いたくない、が、万が一俺の所持金で足りなかったら使わせてもらおう。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「ここか?」
「おう。グリス嬢が見つけたんだ」
「がう。トルンに聞いてもわからないって言ったから自分で探した」
「ありがとな」
ハチミツを売っているであろう店はパット見ただのツリーハウスで看板も何も出ていない。ただ、他の建物と違って少し地面に近い位地に建っていた。
「とりあえず入ろう」
「おう」
「がう!」
ドアを開けると鈴の音が響いた。
「いらっしゃ……い…」
店の中にいた人は俺を見るなり言葉が詰まった。なに?なんなの?初見の人は皆こんな感じなの?
「……あの、ここってお店、ですよね?」
「え、ええ。そうよ、でも、ちょっと待っててくれる?」
「いいですけど、なんでですか?」
「おばあちゃん呼んでくるっ!」
「えぇ……」
俺達を店に残し、店員の女の人は奥に行ってしまった。どうしよう。
「と、とりあえず中を見て回るか。ハチミツ以外にも何か売ってるみたいだし」
「そうだな」
「がう」
店内は外見によらず様々な物が揃っていた。冒険者の必需品であるポーション類(持ってない)や日常雑貨など、なんで看板出してないのか不思議な位だ。ハチミツもあったが、二万だ。足りん。
「グレスグレス!これ見てくれ!面白いぞ!」
「ん?なんだ?」
グリスが持ってきたのはデフォルメされた骸骨だ。その骸骨が変な躍りを踊っている。……間接に魔力がくっついているってことは魔法で動いてんのかな?ってかなんでこんな物置いてんだよ。
「へへへ、面白いだろ?」
「そうだな」
「他にも色々あったぞ?」
「…そんなにあるのか?」
「うん!」
えぇ、ここ色々ありすぎだろ。
「…………!」
「…………」
「ん?」
奥から声が聞こえてきたな。戻ってきたかな?
「早く早く!」
「そんなに急がなくてもいいだろ?逃げやしないよ」
「逃げる云々じゃなくて怖いのよ!」
店員が連れてきたのはおばあちゃんと言うには若い顔の似た人物だった。
にしても、
「……あの、怖いですかね、俺」
「はっ!すすす、すみません!」
「いや、いいですけど……」
びっくりされることはあっても怖がられたことはなかったな。結構くるものがある。
「で、この人がそうなのかい?」
「う、うん」
「へぇ……」
俺をじっと見つめてくる。これは、あれだ。
「初対面の人にすることじゃないと思いますよ。それ」
「ぬ。気づいてたか、すまんな」
「いや、うん、まぁ、もういいですよ………」
鑑定されるのなんか慣れてきちゃったな。
「パット見ただの魔抜けなんだけどのぉ。ちょいちょい、こっち来なされ」
なんか指をちょいちょいと動かすと、回りの光がおばあちゃんに集まっていった。
「ぬ?見えとるなぁ、あー、君、名前は」
「グレスです」
「じゃあグレス、こいつらなんだかわかってるのか?」
ん?どう言うこと?
「魔力じゃないんですか?」
「あーなるほど、色々見えるタイプか。いいか?こいつらは精霊だ」
「え?精霊って人型じゃないんですか?」
「精霊は基本こんな感じじゃい。形があるのは強いやつだけ」
「へぇ…」
「で、グレスよ。お主何者だ?これだけの精霊が集まるなんてよっぽどだぞ?」
「え、それは俺が聞きたい」
好かれるような事はしてないはずだし、逆に龍なんだから嫌われててもおかしくないもん。
「精霊は、心が綺麗な者、魔力が強い者、あるいは精霊魔法を扱える者によく集まる。お主は、どれが当てはまる?」
魔力はたぶん強い方だと思うし、精霊魔法も使える。でもこれ、正直に言っていいのかな?うーん、でも、ハチミツ欲しいしなぁ。
「魔力は強い方だと思います、よ?」
「ふむ、『真偽究明』……嘘は言ってないか。ま、いいか。この街を壊すつもりでも無さそうだし」
「……」
「これでこの話は終りにしよう。ようこそ客人。私は当店の店主であるリリエラだ。本日はどのようなご用件で?」
この人俺が龍だって気づいてんじゃん。なのに話題変えてくるし、わかんねぇ…。
「……はぁ、えっと、ハチミツが欲しくて来ました」
「ふむ、この店は誰から教えて貰った?」
「友人から、買ってこいと頼まれて」
「なるほど、友人の名前は?」
「……」
「なるほどなるほど。気にしなくていい、この店に来る人は全員覚えている。一応ここは私の家でもあるからね」
何が気にしなくていいのかわからんのだが。
「えっとぉ……」
「ベルから教えて貰ったんだ!」
「おい!グリス!」
(いいじゃねえかこれくらい)
(……)
「ああ、あの子か。じゃ、お金、貰ってきてるだろ?」
「あ、えっと、足りない気がするんですけど……」
ベルから貰った金は五千、ハチミツは一瓶二万。圧倒的に足りていない。
「かまわない。出してくれ」
「じゃあ、これ……」
「…はぁ、全く、なんで満額預けるんだよ……。これじゃ意味ないだろ……」
リリエラが何か言った。
「あの、どうかしましたか?」
「いや、なんでもない。これで五瓶分だ。持ってってくれ」
「え、五、瓶…?」
「そ。聞いてないのか?はぁ…甘いなぁ。とりあえずいいから持ってっちゃって。あーそだ。こいつの詫びとしてもう一瓶あげるよ」
「え、え、え?」
「いいからいいから。また遊びに来な。じゃ」
瓶を六つ押し付けられ、店を出された。えーっと、とりあえずはオッケー、なのかな?でも、ベルはこっちに来てない訳だし、しばらくはここにいるのも良いかもな。
ハッキリ言って金がないから。ここで稼ごう。よし!そうと決まれば、早速いきますか。
「組合に行くぞ~」
「がう!」
「おし!依頼だな!三日間の成長っプリを見せてやるぜ!」
それは確かに気なるな。少し難しい依頼にしよう。
誤字脱字があった場合は報告してくれるとうれしいです。




