指名依頼その2
「聞き間違いかな?今、負けたって聞こえた気がするんだけど……」
「いえ聞き間違いではありません。私は、完全に貴殿に負けた……!」
「いやいや!まだ、勝負すら始まってないよね?!」
「……貴殿は今、こうして話している今でさえ、全くと言っていいほど気配を感じません」
「え?でもさっき…」
「あれはそこにいる子供の気配に反応して、しかも、子供に刃を向けるなど、言語道断!」
確かに、さっきの振り向きながらの攻撃は胴や首じゃなくて顔近くだったけども……。
「この場にて今すぐにでも切腹を……!」
「待て待て待て!」
「待てえ騎士団長!貴様に死なれては困るぞ!?」
王様も困ってんじゃん!
「がう?よくわかんねぇけど、やめとけよおっちゃん!」
「ぬぅ、しかし……」
「しょ、勝負!勝負をしよう!ちゃんと戦わないと、依頼達成にならないから!な?」
「だが……」
「さっきのはなし!な?!」
「…………わかった」
「ふぅ……」
めんどくせぇぞこの騎士団長!
「なんだ?戦うのか?俺も戦いたいぞ!」
「お前はダメだ。俺と騎士団長が戦ってるのを見とけ」
「むぅぅ……!」
「頭を叩くな」
「グレス殿…」
王様がこちらを心配そうに見ている……。
「ああ、ここでは流石にやりませんよ?」
ここでは、ね?前の事もあるし…。
「それでは、城の中庭をお使いなされ。あそこなら十分な広さがあるゆえ」
「はっ!ではグレス殿、参りましょう!」
「おう」
「がう!」
…ん?王様は見ないのか?自国の騎士団長とどこぞの冒険者だよ?どっちが強いか気にならないのかな?
「……?ああ、王でしたら後程来ると思いますよ。王妃様や姫様をつれて」
「なるほど」
そういえば、姫さんや王様の名前しらないような……。
「なあ、王様達の名前教えてくれない?」
「ぬ!?知らないのですか!?」
「え、うん。まあ……」
「な、なんと……!この国に住むものに名を知らぬ者がいるとは……」
住んでるのかなぁ?
「んん、まあ知らぬのなら知っておいた方が良いでしょう。王の名はエルロイド・ジャロ・パリドス。王妃の名はシェリル・パリドス。姫の名はアスリライド・オロ・パリドス。です」
「ふ~ん」
色……の名前が入ってる、のかな?ジャロはたぶん黄色、オロはもたぶん金色…で、あってるかな?確信持てないなぁ…。
「もうそろそろでつきますよ」
「そうか」
「貴殿の武器は何なのですかな?」
「拳」
「は?」
「ああ、すまん。基本的に徒手空拳だ」
まあ、そんな風に戦ったことなんてほぼ無いんだけど。
「む、そうでしたか……。では、剣は使えますかな?」
「んー、やってみないとわからないな」
「なるほど、では、剣対拳!ですな」
「いいのか?」
「使えない物で勝負しても意味がないですからな」
「そうか」
やったぜ。正直長物って上手く扱えないんだよね。良かった良かった。
「おっと、着きましたよ。ここが、この城の中庭です」
「おお…」
学校の体育館より少し広い位かな?その位の場所一面に綺麗な花が咲いている。
え?ここでやるの?大丈夫?
「ここの中央は円形状に石畳になっているのでそこでやりましょうか。本来はそこで茶会等を開くのですが、まあ、今回は王から使ってよいと言われているので遠慮なく使いましょう!」
「お、おう」
なんか妙に張り切ってない?
「おっと、そうだ」
「ん?どうかしたのか?早く行こうぜ」
「そうですな。そこで準備しますか」
「準備?」
なんの?って戦う準備か。あ、そうだ。
「グリス。おいグリス」
「んが…?んん、なんだ?」
「……中庭に着いたから一回降りろ」
「がう……」
途中から動かなくなったと思ったらまた寝てやがった。しかも俺の頭が定位置になってきてるきがする…。
「よし、降りたな。しばらく待ってろよ?」
「がう!見てるぞ!」
「そうか。それならそれで」
見て得られるものがあるなら得てほしい。
「お父様、お母様早く!」
「余り急がんでも…」
「ふふふ」
お?王様達も到着したな。
「グレス様!お久しぶりです!」
「ああ、どうも姫さん。王妃様は始めましてですね。グレスです」
「ええ。始めまして」
「まあ!この可愛い子はどなたですかグレス様?」
「そいつはグリスで一応俺の親戚みたいなもんだ、です」
「そうでしたか。グリス様、始めまして」
「がう?はじめまして?」
「んんん!可愛いですね!」
「がう!」
あらら、抱きしめられちゃったよ。グリスめっちゃびっくりしてるし。
「グレス殿、こちらは準備できましたが、そちらはどうですか?」
「おう!もうだいじょう、ぶ。って、その剣は何?」
騎士団長はさっきまで持っていなかった長剣を持っていた。しかもなんだか嫌な感じがするし…。
「これですかな?こちらは私の愛剣でして、龍を討伐したりもした剣なのですよ。そのおかげかドラゴンスレイヤーの特殊効果も付いた逸品です!貴殿には、全力を出しても勝てるきが全くしないので、全力でぶつかりたいと思いまして」
「お、おう」
マジ?ドラゴンスレイヤーってマジで言ってる?天敵じゃねえか!
「さあ!始めましょうか?」
「や、やるか」
「スゥ……我が名はウル!中央国家パリドス近衛騎士団団長である!」
え?そういうのやるの?えぇ……。
「んん、我が名はグレス!Sクラス冒険者である!」
「いざ!」
「尋常に!」
「「勝負!!」」
開戦だ。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「はぁぁ!」
短い気合いの一撃。
あの剣に当たったらヤバイ感じがするから少し大げさ気味に避ける。
「そいっ」
俺もとりあえず殴ってみる。
「ぬっ?!ぐぅぅ!」
ウルはよくわからんが俺の拳に驚き、咄嗟に腕をクロスしてガードした。
おお!一撃で消し飛ばない…!!!これは……!
「ははっ」
殴って斬られての攻防が続く。ウルには傷が増えるが俺にはかすり傷一つつかない。
そして、ウルが仕掛けてきた。
「ぬうん!」
大振りの一撃が来た。これをかわしてカウンターを入れようとした。が、剣の軌道が突然変わり腕が斬られた。
一旦距離を取る。あの、斬られたところの傷がふさがらないんですが?俺の《再生》が息してないよ?どうなってんの?これがドラゴンスレイヤーの力?やばくない?
……早めに終わらせるか。
「はぁはぁ」
「いくぞ」
「はっ!?」
連続で攻撃を叩き込む。ウルは幾つかの攻撃を防ぎきれず吹っ飛ぶ。
しばらく待ってみたが起き上がってこない。あれ?殺っちゃった?
「あ、あれ?おーい、大丈夫か?」
「す、すまないが手を貸してくれないか?力を使い果たしてしまって、動けないんだ」
「おう」
全力、か。すごいな。全力を出せるなんて。まあ、それは置いといて。
「依頼達成でいいのか?」
「ああ。もちろんだとも。私の完敗だがね?」
「ははっ、完敗ね。最後の切り返しは見事だったけど?」
「あれで決められなかった時点で私の敗北は決していたよ」
「そうか」
じゃあこれで一件落着だな。あ、そうだ。
「王様!」
「んむ?な、なんじゃ?」
「この前の褒賞の件なんだけど」
「おお、欲しい物が決まったかね?」
「おう。この前壊したお城の屋根。あれの修理費をそれでやってくんない?」
「……は?そ、そんなことでよいのか?この前も言った通り魔剣なんかもあるんじゃぞ?」
「おう!特に欲しい物とか無いしな!」
「まあ。謙虚な方なんですね」
「この前からこんな感じじゃよ」
謙虚ではないだろ。
「娘の命とはどうやっても釣り合いがつかないんだじゃが……」
「そんなのどんな物でも釣り合わないだろ。命と同価値の物なんてないと思うし」
「そんなこと言われるともっと困るんじゃが……」
「あはは。そんじゃ。帰るぞ、グリス」
「がう!じゃあな、姉ちゃん!」
「ええ。また会いましょうね!」
この二人いつの間に仲良く……?
「では、報酬の方は組合に送っておきますね」
「あ、おう」
そうだった、報酬で武器が貰えるって話だったな。どんななんだろ?気になるな。
「がう。すごい戦いだったな」
「そうか?」
「おう!俺ももっと強くなりたいって思った!」
「そうかそうか」
じゃあ修行の方もっと厳しくするか。
誤字脱字があった場合は報告してくれるとうれしいです。




