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一年越しに叶える夢~AWAの世界にて~  作者: 高木橋ユウ
二章 旅の始まり《兄貴のいる国、中央国家パリドスでの騒動》
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卵屋

詰め込み過ぎた……。


 店の中に入ると棚がいくつか置いてあり、そこに鞍や首輪、何かの食べ物が置いてあった。そして卵屋の老人(ローレンと名乗った)から卵屋についてとついでに話に出てきた《召喚術》についても教えてもらった。おおざっぱに言うとこんな感じらしい。



 卵屋。

 モンスターの卵を売っているお店。卵はフィールドにいるモンスターから冒険者がかっさらってきたものや、ダンジョンで見つかったもの。生まれるモンスターは孵した者を親とする。《召喚術》で呼び出したモンスターとは違い主従の関係ではない。


 《召喚術》。

 モンスターを呼び出し使役する魔法の一種。



「テイムとは違うんですか?」

「あれも《召喚術》と同じじゃ、そこらにいるモンスターを手懐けとるだけでの」


 リゾットが質問するとちゃんと答えてくれる。


「…で?お主らはどうしてこの場所がわかったんじゃ?」


 ローレンはここで、誰にも気づかれずひっそりとやっていくために看板を出していないそうな。それで偶然ここを見つけた人には卵を売っているらしい。

 卵は昔冒険者をやっていた時に集めていたものだと言っていた。ただ、たまにここにくる冒険者から買い取ることもあるらしい。


「こいつに聞いてください。俺はついてきただけなんで」

「それはさっきも聞いたわい」

「う……」


 ダメージを受けるなダメージを。


「声が聞こえたんでそれが聞こえてくる方に来たらここに行き着いただけです」

「声じゃと?……ちょいと失礼するぞ」

「なんですか?」


 また鑑定か?


「やっぱり見えん。お主何者なんじゃ……。まあ、いいかの。ちょっとこっちにこい。そっちの仮面もこい」

「?なんだ?」

「とりあえず行こうぜ」


 お店の奥に行くようだ。そこに卵が置いてあるのかな?ここにはないみたいだし。 




「…ここじゃ。お主、この中で気になるもんはあるか?」


 ローレンについて奥に行くとそこには大小様々な卵が藁の上に置いてあった。まあ、小さいって言ってもダチョウの卵位の大きさなんだけど…。そして大きいのは手で抱えられない位でかい。

 この中で気になるものか……、ないな。どれもただの卵に見える。一つだけ異様に魔力を放ってるやつもあるけど、それでも気にならない。まだ孵ってないのに凄いな、位だ。


「…ないです」

「ぬ、そうか…ここじゃないか、とすると下かの」


 地下があるのか。


「じいさん!俺この黒いの気になるんだけど、なんなんだ?」


 黒い卵。パッと見ここにある中で一番小さい卵だな。


「主、急にフランクになったの…、まあええが。そいつは…あれじゃ、ヴォーパルラビットの卵じゃな」

「え」


 兎なのに卵なの?


「なんじゃ、普通の兎じゃないんじゃぞ。モンスターなんじゃから」

「はぁ…」

「で、仮面の。そいつが気になるなら連れてけ。代金はいらん。代わりに表に置いてあるのを何個か買ってけ」

「え?!いいんすか?!やったぜ!!」


 え、いいな…俺も欲しい。ただで貰えるなんて…。


「下に行くぞ。仮面のもついてくるといい」

「うす!」

「あ、はい」


 お前、卵抱えたまま行くのか……。


「えーと、確かこの辺に…、お、あった」


 ローレンが壁を押すと、ガコン、と音がして床が開いた。開いた先には地下に続く階段がある。どうやらここから地下に入るようだ。


「おおぉぉ……」

「いや、確かにすごいけど…」


 こいつなんか子供っぽくなってる気がする。


「さ、すぐそこじゃ。行くぞ」


 地下には何がいるかな。声の正体でもいるのかな? 


 地下への階段を進むとローレンが言った通りすぐに部屋についた。ここにも卵が置いてある。でも、上より数が少ない。


「気になるのはあるかの?白髪の」

「ええと……」


 ない、かな?卵側からの謎の圧はあるけど。


「……ないか、ううむ…」


 何事か考え込むローレン。


「これだけなんですか?」

「……なんじゃって?」

「卵はこれだけなんですか?」

「いや、まだあるがの…」

「ここの子達じゃないと思うんです。俺に声をかけてきたのは」

「………そうか。ふむ。上に戻っとれ」

「え?」

「仮面のと一緒に上に戻ってワシが戻ってくるのを待っとれ、といっとるんじゃ。卵は後一つある、それを持ってくるからの」

「は、はぁ。わかりました。おい、行くぞリゾット」

「ん、おう」

「ああ、そうじゃ。忘れとった」


 戻ろうとする俺達に声をかけてくるローレン。


「仮面の、その卵に自分の魔力を与えるんじゃ。そうすりゃ孵るからの」

「え、はい」


 自分の魔力を与える。それで孵るのか?凄いなモンスター。


「楽しみだな…、どんなやつが出てくんだろ…へへへ」


 え、めっちゃデレデレになってる。なんか気持ち悪い。


「おい、おいグレス。その『え、キモッ』みたいな顔やめろ」

「……」

「急に真顔になるのもやめろお前」

「……」

「無視すんなって」


 卵割ってやろうかこの野郎……ったく。


「早く行くぞ」

「おーう」


 まあ、どんなやつが出てくるかは俺も気になるんだけどね。






「さて、と」

「孵化させんのか?」

「もちろん」


 上に戻ってすぐ、リゾットは卵に魔力を流し始めた。


「へへへ。オスかな、メスかな」

「……」


 卵全体に魔力が染み渡ると、卵にヒビが入り、中から黒い塊が出てきた。


「プープー」

「ほあー……」


 出てきたのは恐らく兎だろう。何故か後ろ足で立ってるけど…。


「プー?」

「おぉおぉ、俺がお父さんだぞー…」

「プゥ…!………キュー」

「お?どうした?」

「キューキュー」


 何故か俺をみて怯えている。俺が何をしたと言うんだ。あれか?卵割ろうとしたのがわかってるのか?こいつ凄いな。


「おいウサギ、別に取って食おうって訳じゃないんだからそんなにビビるんじゃねえよ」

「キュー……」

「おいグレス……、はぁ、ちょっと離れててくれないか?」

「別にいいけど…」


 納得いかん。割ろうとしたことじゃないのか?んー…………あ。あれか?赤ん坊は感情やなんやらに敏感だって話だから、龍だって気づかれてる?…もう少しだけ離れておこう。

 このままだとあの黒いウサギに嫌われたままなのでは?……それは嫌だな。触ってみたいし……。これから会うかもしれない声の子にも嫌がられるかも……。


「うーん……」


 もっと気配を薄くできれば良いのに…、《気配操作》じゃ薄くしかできないからなぁ。消す、消せればなぁ。もっと気配を殺すような感じに、息を潜めるように、空気に溶け込むように……。


《気配隠蔽のスキルを獲得しました》


 お。久しぶりに聞いたなこれ。ていうか取れたし、案外簡単にスキルって手に入る?でもこれで大丈夫だろ!やったぜ。


「グレ、あれ?どこ行った?」

「どうした?」

「うぉ、お前どうやって…。いや、いいか」

「それで?なに?ウサギにビビられてちょっと傷ついてるんだけど」

「ウサギじゃなくてコクトな」

「それ名前か?由来は?」

「黒いウサギの女の子だから娘黒兎だ。どうだ?」

「メスにつける名前じゃないだろ」

「プゥ」

「コクトは喜んでるけどな。へへへ」


 う~んこの、親バカ感。こいつも変わったんだな。


「おい」

「キュッ」

「ダメか……」

「たはは、そんな怖い顔してたらダメだろ。まだ赤ちゃんなんだぞ」


 怖い顔ってなんだよ。これが普通なのに……。


「お主ら…なにやっとるんじゃ?」

「あ!じいさん!見てくれよこの子!可愛いだろ!?」

「おお、そうじゃな。して、白髪の」

「ん」

「持ってきたぞ。こいつがお前さんが言っとった卵じゃろ?」

「おぉ……」


 差し出された卵はコクトの卵より一回り大きい白い卵。そして、こいつには引き込まれるような感覚がする。


「これですよ」

「おおそうか。それは良かった。それじゃあ早速孵すといいのじゃ」

「そう、ですね」


 いったいどんなやつが生まれるんだろうか。俺の子供というか相棒にでもなってくれるといいな。


誤字脱字があったら報告してくれると嬉しいです。

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