路地裏にて謎の声と
「ベル姉なにみてんの?」
「掲示板よ」
「ふーん」
鬼の住処からコーネルに戻る道中のこと、ベルは早速掲示板を覗いているらしい。
「なあ、グレス」
「ん?なんだ?」
「時間大丈夫か?」
「ああ、大丈夫だ。気にしなくていいぞ」
「そうか」
ネロがいるから問題ない。…問題ないよな?
「ねえ、グレスちょっといいかしら?」
「なに?」
「今ちょっと掲示板で《魔力操作》を知ってますかって質問したのだけど、このスキルどうやって取ったのかって、質問返されちゃって。教えて欲しいんだけど」
「ん、いいぞ。簡単だ。体の中に流れてる血液じゃないものを自分で動かせれば取れる、はずだ。俺はそれで取った」
「ふーん?とりあえず書き込むわね。……で、そんなもの本当にあるの?」
「ある。魔法とか使う時にMP消費するとなんか抜ける感覚あるだろ。あれの大本がそれだ」
血管の近くにあるんだよな。血管と同じように体を巡ってるから、魔力の流れる形で人かどうかわかるし、結局は心臓に行き着くから心臓の位置もわかる。
「その感覚はわかるのだけど、あるなんてわからないわよ?」
「……《魔力感知》は持ってるんだろ?だったらそれで自分の体に流れてるそれを感じればいい」
見えれば楽なのに。てか、精霊見えるんなら魔力も見えるだろ。
「………、わからないわ」
「……。手出せ」
「ん?こう?」
差し出してきた手を握り、ベルの魔力を無理矢理動かす。
「今動かしてるけどわかるか?」
「…わかるわよ……」
「その感覚を覚えて自分で出来るようになれば取れるはずだ」
んー、まあ少しずつ出来るようになっていけばいいだろ。
「ねえねえリゾット、リゾットは魔法使えるの?」
「使えるぞ」
「へぇ……あたしは完璧に物理アタッカーになったから魔法を使うってよくわからないんだよねぇ」
「ん?お前魔剣も使えないのか?」
「え?なにそれ!」
「何でもねえ、今のは忘れろ」
「え!嘘でしょ?教えてよ~!!」
少し前を歩いている二人も面白い話をしているようだな。
っと、ついたなコーネル。相変わらず素通りでいいのな。
「ぶー……、あ、そうだ。この後はどうする?」
「切り替えハエーな……、まあ、たしかにこの後どうするよ?なんか依頼でも受けにいくか?」
「あ、今依頼は無いぞ」
「なんでそんなこと知ってんの?」
「俺が全部やったから」
「「はぁ?!」」
「いや~、今日まで暇だったんだよねぇ…だからやっちゃった」
「えぇぇ……」
「マジかこいつ」
まあでも、Sクラスの依頼はほとんどなかったからな。Aクラスは災害級だかのモンスター討伐依頼がいっぱいあったけど全部一発だったし、正直簡単だった。二日で全部終わるんじゃないかとわざと遅くしてよかったや。
「ん~そうなると本格的に何もする事ないよ?」
「確かにそうだな……。…なあ、三人共コーネルには長くいるんだろ?」
「ん、まあ、そこそこ?」
「俺もそこそこだな…」
「……、え、あ、うん。結構長いよ?」
ベルはさっきからずっと《魔力操作》の練習中である。修得まではまだ時間がかかるだろう。
「じゃあ、コーネル案内してくんない?俺この街を中心に活動してんのに街に何があるかわかってないんだよね」
最初にきた時は教会まで直行してその後は兄貴のギルド、次来たときは空からお城にダイブして組合に行っただけだし、後は宿屋にいるか組合にいるかだったからな。できれば知っておきたい。
「別にいいけ、あ、ちょっと待って、なんかメール来た。……………。か、隠しダンジョン、だって…?なんであたしがいないときにそういうの見つけちゃうんだよ~……、うぅぅ」
「……どう思う?」
「別にいいんじゃないか?行っても」
「え?」
「だって、行きたいんだろ?なら行ってこいよ」
「俺らとはまた遊べばいいだろ?」
「……うん、行ってもいいと思うよ…」
「み、皆~、ありがと~」
行きたいなら行けばいい。ゲームは自由だろ。
「じゃ、じゃあまたね。これの埋め合わせはそのうちするから~!」
そう言って走り出す響鬼。
「ごめん。私も抜けていい?《魔力操作》を修得したいから一人になりたいの」
「…いいんじゃないか?」
「おう。俺らは無理についてきてもらわなくても全然オッケーだ」
「ありがとう。何かあったら私の家にきて、普段はそこにいるから」
「わかった」
「頑張れよー」
家のある方向へ歩いて行くベル。たまに人にぶつかりそうになってその度に精霊に注意されている。
さて、取り残された俺たちはどうしようか。組合には依頼がないだろうし、う~ん………。レベル上げもしたいけど、百になってから結構な数のモンスター倒してんのに上がってないからな…、望み薄かな…。
「なあグレス」
「ん?」
「ちょっと冒険しないか?」
「冒険?」
「ついてこいよ。絶対面白いから」
「ちょ、待てお前!どこ行くんだよ!」
大通りをそれて路地裏に入っていくリゾット。あいつどこ行く気なんだよ!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「おーい、こっちだぞー」
「お前、どこ行く気なんだ?」
「ん?目的地なんて無いぞ?」
「は?」
「こういうところには隠れた名店とか隠し店舗があるんだよ」
「なんだ、そういうことか……、そういうのは先に言ってくれると嬉しいんだが?」
「いいじゃん別に」
「はぁ…」
こいつは……、まあ、言ってることはわかるから。うん。付き合ってやろう。
さてさてさーて?隠れた名店か、看板は無いにしろ何かないかな?
「ん~ないな~」
「そう簡単に見つからないだろ」
ん~…、ゴミとかはないけどなんか暗いな。魔力も薄いし。
(……ぃ)
ん?
「リゾットなんか言ったか?」
「いや、何も?」
……気のせいか?
(…ぉ……ぃ)
気のせいじゃないな。どこからだ?
(こ……ち……)
右の方か。
「おい、行くぞ」
「何か見つけたのか?」
「これから見つけるんだよ」
「?……まあいいか」
右の道は奥に続いているみたいだな。さて、さっきの声はどこからしたのかな?
(…み…け…ぇ……)
まだ奥か。これ以上先には店なんてなさそうだが……。
(…ぁ…ぁ…ぁ…た…ぃ……ぁ…)
これは……、
「ありゃ、通りに抜けちゃったな。戻るか?」
「いや、あそこ。あの先に行こう」
通りを挟んで向かい側にも路地裏に続く道がある。
「わかったよ」
「よし」
早速行ってみよう。少しずつ聞こえやすくなってきたんだからな。
(こ…ち……よ…ぃ……て…)
「こっちだな」
入ってすぐを左に進む。
…もう少しでつく気がする。
(や…と……み…ぅ…けて……ぅれ…た……)
「ここか」
「ここ?店には見えないけど?」
確かに、パッと見はただの家だけども……。
「たぶん、ここだ」
「まあ、入ってみればわかるだろ」
コンコン。
「すいませーん」
リゾットが声をあげると中から物音がしてきた。
「…なんじゃ?」
出てきたのは老人。少し白髪の混じった髮をしている。
「すいません突然。ここって何かのお店ですか?」
「……何故、気づいたのじゃ?」
「え、ああ。こいつがあるって突然行っちまったんでついてきただけなんですけど」
「ほぉ、主がか?」
「ぅえ、ええ、まあ」
なんだこの人は、人をじろじろと、ん?この人眼に魔力が……、
「鑑定ですか?」
「!」
「初対面でいきなりそういうのはちょっと……」
「ぬ、すまん。つい癖でな…」
「それで、ここって何かのお店なんですか?」
「ここは卵屋じゃよ」
「「卵屋?」」
「なんじゃ知らんのか」
知らないよ。聞いたことないもん。
「まあ、立ち話もなんじゃし、中に入れ」
「あ、じゃあ」
「お邪魔します…?」
謎の声のする方向に来たら変な店に行き着いてしまった。
誤字脱字があったら報告してくれると嬉しいです。




