戦いなんてものはなく……
前話、前々話のステータス表示にて、スキル欄に書くのを忘れていた《解体》を追加しました。
「うふふふ、どう?良い家でしょ?」
一戸建ての家とか…、こいつ、金持ちか?!
「お、おま、お前…」
「すごーい……!!」
「こりゃすごい…」
「驚いたみたいでなによりよ。さっ、上がって上がって」
玄関を通ってリビングに入るとテーブルに椅子、ソファが置いてあった。
二階もあるみたいだし、一階にも他の部屋がそこそこあるようだった。
「適当に座ってて、お茶出すから」
「あ!そこまでしなくていいよ!」
「良いの良いの、最近てに入れた茶葉を試したいだけだから」
ベルはゲームに何を求めてるんだろうか?
「さて、これからどうする?」
「とりあえずおじゃましたけど、ずっと居るのもねー」
「なんか面白いところとかないのか?」
「「「う~ん……」」」
「私は皆の戦ってる所が見たいかな~。あ、はい、淹れてきたよ」
「ありがと~」
「いただきます」
「いただきまーす」
あ~……、美味しい!良い匂いだし、味がしっかりしてる。
「美味しいねぇ」
「そうだなぁ」
「あ~……」
「よろこんで貰えてよかったわ。それでさっきの話なのだけど、やっぱりダンジョンに行かない?さっきも言ったけど、皆の戦ってる所が見たいのよ」
「それはどうして?」
「私、精霊魔法以外の戦闘系スキル持ってないのよ。だから皆の戦ってるいる所を見て何か取ろうかなって。それに…」
「「「それに?」」」
「グレスがどう戦うのか見てみたいじゃない?」
「「それはわかる」」
「えー」
なんだかんだダンジョンに行くことになった。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「さーやって参りましたダンジョン!その名も鬼の住処!」
「どうしたの急に?」
「えへへ。一度やってみたかったんだよね」
「そう」
鬼の住処とやらはコーネルから歩いて数分の所にある森にあった。森にあったと言うか、森自体がダンジョンらしい。どうやら響鬼がギルドの団員と一緒に攻略したもので、手頃なレベル帯なんだそう。響鬼のステータスにあった【迷宮攻略者】の称号はここで獲得した物なのだろうか?
「ここって何が出てくんの?」
「鬼」
「いや、鬼て…」
「鬼は鬼だよ。鬼系のモンスターがいっぱい出てくんの」
「鬼って言うとゴブリンとかもそうよね?確か、小鬼って言われることもあるとか」
「そうなるとホブゴブリンとか、オーガも出んのか?」
「出るよ~。ついでに言うけどボスはオーガキングね~」
「うげぇ、めんどくさ~」
「そんなに強いの?オーガキングって」
「俺もきになる」
ギルグとどっちが強いんだろ。
「強いっちゃ強いんだけど、それ以上に取り巻きにかけるバフが問題なんだよ」
「オーガキングがいる間はずーっとかかったままで、しかも倒した後も暫くはかかったまま。倒すのも一苦労なんだけどねー」
「だから面倒なのね」
「そういうこと」
「でもでも、今回はボスまでやらないよ?戦い方を見せるだけだし。そこら辺にいる雑魚で大丈夫だよ」
「それもそうだな」
「そうね」
「そうだなぁ」
今度一人で来て挑戦しよ。
「じゃあ早速いこうか!」
「「おー」」
「お、おー?」
ゴブリン、ホブゴブリンは簡単にやれるだろうからオーガと戦いたいな~。
「お、あそこにホブがいるぞ」
リゾットが発見して報告してくれる。
そこそこ離れた位地にいる人型の魔力がそれだな。
「え?もうわかるの?すごいね!」
「確かにすごいわねぇ…私もそういうスキル取ろうかしら?」
「まだ決めるは早いだろ?」
「それもそうね」
魔力感知でわかるのは形ぐらいしかないから俺もハッキリわかるのは取ろうかな。
「じゃあ最初っ!あたし行く!」
「わかったわかった。じゃ次は俺かな、グレスは最後でいいか?」
「いいぞ」
「よーし、ベル姉ちゃんと見ててね?」
「見てるわよ」
「うおー!」
抜刀して走っていく響鬼。木々が邪魔して走りにくいからか木の上に飛び乗り、木の上を走っていく。
「すごいわね響鬼……」
「「あれぐらいなら俺でもできる」」
はもって顔を見合わせる俺とリゾット。
「あなた達もすごいわね」
……。
響鬼はそのままホブゴブリンの頭上まで行くと、音をたてずに飛び降り背後から首に一閃。ホブゴブリンは響鬼に気づくことなく殺された。
「ベル姉ー!終わったよー!」
「お疲れさま。響鬼はいつもあんな感じにやってるの?」
「ううん、いつもは正面から突っ込んで切り刻んでる!今回は森だったからアサシンキルしたー」
「アサシンキルね~、被るなぁースタイル」
「お前アサシンキルすんの?」
「おう。いつもな。……まぁ、キルする対象が全然違うけど……」
おうお前、今不穏なこと言ったよな聞き逃さなかったぞおい!
「ん、また直ぐ近くにいるな。行ってくる」
「行ってら…て、あれ?どこ行った?」
「消えたわね」
え?気配薄くして普通に歩いて行っただけだよね?それで見えなくなるものなの?
でもまあ、言ってたことはわかった。こんな感じに気配消して後ろからスパッとやるってことだろ。現に今一つの反応が近くにきたやつに消されてたもん。
「終わったぞー」
「あ、どこ行ってたの?」
「ゴブリン倒してきたの、響鬼みたいに後ろからスパッとね」
「なるほど、リゾットは後ろからグサッとやるタイプってことね」
「うん、まあ、そうだね。俺はいつもこんな感じにやってるよ」
「最後はおれかー、リゾットー」
「なんだ」
「オーガいない?オーガ。俺オーガと戦いたい」
「オーガか?いるぞ。ほらそこ」
「ん?」「え?」「ほぇ?」
リゾットが指差した先には五メートルほどの巨体の鬼がいた。え?あれがオーガなの?魔力少なくてデカイゴブリンかと思った。
「あれがオーガなのか?」
「そうだ」
「やっぱりデカイなぁ」
「鬼ね。ほんとに鬼」
うん。確かに鬼だね。一本角で真っ赤な体筋骨粒々の体。手には一本のこん棒。
「じゃあ行きまーす」
「はーい」
「しっかり見てるからね」
普通に歩いて近づく。こちらに気づいたオーガがこん棒を振り回しこちらを攻撃してくる。それを避けて更に近づく。焦ったのかオーガが殴りかかってきたが、その拳を殴ってやった。そしたら、はぁ、上半身が消し飛んだ……。《解体》の効果で下半身が光になって消えたけど、むなしい……。
その場にがっくり膝を落とした……。
「すっごーい!ベル姉今の見た?!見たよね?!ワンパンだよ!ワンパン!」
「見てたわよ。だから耳元で大きな声出さないで、にしてもどうして膝ついてるのかしら。普通は喜ぶんじゃないの?」
「いや、あれは、たぶん毎回あんな感じなんじゃないかな?」
「そうなの?」
「何となくわかる」
せめて、せめて一発耐えれるくらい強いやつとやりたかった…。これじゃあ俺の戦いが全部一発で終わらせる一撃型だと思われる。いや、まあ、だいたい一発で終わるから変わらないんだろうけど、一発で終わらなかったらほぼ死ぬ一撃型とは違うんだよ……。
「ねえグレス」
「なんだ…?」
「いつもあんな感じなの?」
「………そうだよ」
組合の依頼でやったモンスター討伐も一発で終わってたし…。
「まあ、あんなステータスしてたらねぇー」
「響鬼はグレスのステ見たんだっけか」
「そう。見たことないスキルと種族があったの。レベルは百だったけど」
「百なのかー…、あれで?」
「リゾット今何レベ?」
「百五十二」
「うぇえ!あたしより上だったんだ!」
「そう言う響鬼は何レベ?」
「百二十」
「ふっ」
「あ!笑った!人のレベル聞いて笑った!このー!」
「あ、やめ、叩くな!防御力には振ってないからダメージがヤバイ!」
アサシンキルなんてしてるからたぶん俊敏と筋力ぐらいにしか振ってないんだろうけど、響鬼に追いかけられて追い付かれそうになってるってマジ?レベルはリゾットの方が上なんだろ?
あー………、レベルを下げたりステータス弱くするような物がないかネロに聞こう。
そういえば、
「ベル」
「何?」
「取るスキル決めた?」
「う~ん迷ってるのよね…、グレスのおすすめは?」
「魔法使うんだから《魔力操作》に《魔力感知》、モンスターに近づかれた時のために近接系スキル」
「《魔力感知》は持ってるけど《魔力操作》は持ってないわね。近接系スキル…」
「響鬼は《双剣術》、リゾットはたぶん《短剣術》、俺は《龍人格闘術》」
「う~ん…」
「ま、無理に決めなくてもいいと思うけどな。掲示板見るなりして自分で調べるのもいいと思うぞ」
「……それもそうね。じゃあ帰りましょうか」
「そうだな」
「おーい!二人ともー!そろそろかえりましょー!」
「おーう!」
「隙ありっ!」
「うごあっ!」
結局捕まってるし。




