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一年越しに叶える夢~AWAの世界にて~  作者: 高木橋ユウ
二章 旅の始まり《兄貴のいる国、中央国家パリドスでの騒動》
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竜の洞窟


「さ、着いたわよ」


 入ってもいないギャラルガの街から数分、森の中にある崖に竜の洞窟は口を開けていた。


「なぁ、一つ気になったんだが竜の洞窟って言うからには竜が出てくるんだよな?」

「ええ、そうよ。たまに上位龍も出てくる階層型の危険なダンジョン、それが竜の洞窟」


 「でも上位龍なんて滅多に出ないから大丈夫だよ」とカスミに続いてリンが言う。


「早速行ってみよう。準備は出来てるんだし」

「ギルマス、いつものでいいんだよな?」

「うん。グレスは最初見学ね」

「うぃ」


 まぁそうだよな。俺を入れた陣形なんて直ぐにできるわけないし。


◇◆◇◆◇◆◇◆◇


「これでっ、十匹目!」

「よし!」

「順調だね」


 現在アース一行は竜の洞窟三階層にいた。

 ここにくるまで約一時間。普通ならかなり早いペースで進んでいた。ゲーム発売から一年、内部では二年近く一緒にやっているだけあってメンバーの連係は凄まじく、グレスの入る余地はなかった。そのためグレスはたまによってくる亜竜(竜よりしたのトカゲ)を一撃で粉微塵にしながらアース達の戦いぶりを見ていた。


「なぁ!そろそろ雑魚ばっかり相手すんのいやなんだけど、どうにかならねえか?」

「あ、忘れてた」

「おい」

「じゃ、じゃあこの先にいる奴と戦ってもらおうかな。いいよな?な?」

「良いんじゃない?元々そのために来たんでしょ」

「そっスよギルマス」

「おおそうか。そうだよな。よし行こう」


 メンバー達が適当にアースを励まし、先に進んでいく。

 ちなみにモンスターの位置を特定しているのはレーンのスキルである。グレスもその情報を聞いてはいるが《魔力感知》やその魔力の流れでモンスターの位置を特定しながら進んでいた。


「そうだ、気になってた、つか思い出したんだけどさ」


 何か思いだしたのかグレスが話し始める。


「ん?どした?」

「俺が初めて皆に会った時にクロムが『レーンは相方だ。』って言ってたけどあれってどういう意味だったの?ギルドの一員ならあんな言い方するとは思えなくてさ」

「ああそれか。それはな…」

「それは簡単ッス!うちとクロが夫婦だからッスよ!」

「は、え?マジで?」

「マジッス」

「お前な…」

「それってこっちで?それともあっちで?」

「どっちもッス!」

「はぇ~」


 このゲームには結婚システムがあり、特に何かあるわけではないが、結婚したという事実が世界に登録され称号が獲得出来るようになっている。


「あ、あともう一つ。皆がモンスター倒すと光の粒子になって消えてるけどあれってどういうこと?」

「は?どうもこうもそのまんまだろ?」

「もしかして《解体》スキル取ってないんですか?」

「《解体》?」

「このスキルがないと、モンスター倒しても死体が残って自分で解体しないと素材が手にはいらない。っていう仕様になってるんだよ」

「マジか」

「そっ。つまりはあれだ、モンスターを細切れにしたりしても素材が手にはいるってことだ」

「後で取ろう……」


 そんな風にちょっとした雑談を挟みながら進んでいくと、


「あ、そろそろッス。そこの角曲がって少し先にいるッスよ」


 すぐそこにモンスターがいるという所まで来ていた。


「よし、じゃあグレス。行ってこい。俺らは少し離れたところにいるから」

「おっけー」


 そう言ってグレスは曲がり角を曲がって行った。

 アース達は少し遅れて角を曲がった。


「なぁ、あれって上位龍じゃね?」


 という声を聞いて少し慌てながら。


◆◇◆◇◆◇◆◇◆


 グレスが曲がった先にいたのは蒼く艶やかな鱗を全身に纏いエメラルドの瞳をこちらに向ける龍であった。


「鑑定っと」


 グレスが呟く。


蒼龍Lv84

ブルードラゴンの直系の進化体。

その蒼い鱗は水を弾き、火に強い耐性をもつ物理魔法を平均的にしよう出来る。

その目はこちらに畏敬の念を向けているように感じる。

所持スキル 牙撃Lv45 爪撃Lv40 龍魔法Lv79 水魔法Lv88 魔力感知Lv84 

      魔力操作Lv83 飛翔Lv43 炎熱耐性Lv72 龍眼 再生


 これがグレスに掲示された鑑定結果である。


「畏敬の念?」

「うおっ、マジで上位龍じゃん」

「あー、兄貴。手出さなくていいよ」

「え?いやいや流石に無理だろ」

「いいから下がってろ」

「……わかったよ。皆~下がるぞ~」


 慌ててやって来たアース一行は心配しながらも下がっていった。


「あー、蒼龍?でいいのかな?俺と戦う気はあるか?」

「……無い。龍神の巫女よ」


 蒼龍は流暢な人語、もとい日本語でグレスの質問に答える。


「そうか」

「出来るならば同族を殺すのは止めていただけないか?」

「?確かに同族だろうがダンジョンのモンスターは復活するだろ?」

「たまに生まれるのですよ。私のようなダンジョンモンスターではない個体が」

「そうか……ん~でも難しいぞ?」

「大丈夫です。ダンジョンモンスターに知性はほぼありませんが、私共には生まれつき多少の知性がありますのでそれを判断基準にしていただければ」

「わかった。できるだけやめる。でも攻撃してきたら容赦しないからな」

「ありがとうございます龍神の巫女」

「……」


 グレスは蒼龍の申し出をアース達に伝えどんどん先に進むことにした。


 途中に何体か知性をもつ龍がいたが蒼龍との約束を守り殺さずに一行は進んでいった。



 そして、十九階層最後の竜を倒し二十階層、ここまで合計で約六時間。ぶっ続けで潜り続けている。そして今フロアボスと言われる一体の上位龍と交戦中であった。

 交戦中であるのだが……、


「なぁ、ほんとに俺は何もしなくていいのかぁ?俺も戦いたいんだけどぉ」

「「「「「「「「「ダメだ(です)!!!!!」」」」」」」」」


 満場一致でグレスだけ戦えていなかった。

 実はここにくるまでの道中で何度かグレスが戦闘したのだが、相手のモンスターは軽く振っただけのパンチで吹き飛び、殺気を放っただけで動かなくなるなど、戦闘と呼べるモノはなかった。そのためアース達はグレスに攻撃させることなくここまで来たのだ。


「くっそ、暇過ぎる」


 実は『手加減』というスキルがあるのだが、グレスはこれのことを知らないし、ネロも教えていない。


「フロアボスはあの蒼龍よりちょっと強い程度の上位龍。あんまり出てこないって何だったんだ?」


 お前のせいである。おっと失礼。今のは忘れてください。


「鑑定」


 おや?


炎龍Lv90

レッドドラゴンの直系の進化体。

その赤い鱗は熱に強く例えマグマに触れたとしても溶けることはない。物理攻撃に秀でている。

その青い瞳に知性は感じられない。

所持スキル 牙撃Lv80 爪撃Lv85 龍魔法Lv80 炎熱魔法Lv43 魔力感知Lv85 

      魔力操作Lv60 飛翔Lv50 炎熱耐性Lv80 龍眼 再生

所持称号 フロアボス


「ふむ」


 そして何を思ったのかおもむろに手を前につきだす。


「エンチャント:ファイヤープロテクション、ストレングスアップ、ディフェンスアップ、スピードアップ、インテリジェンスアップ……こんなところか」


 はいた言葉は付与魔法の一部。炎熱耐性、筋力、防御力、俊敏、知力をそれぞれ上げるもの。ステータスオール一万のグレスが使うそれの効果は、絶大。

 アース達の動きが先程とは比べ物にならないくらいに良くなった。

 いままで鱗を浅く切り裂くだけだった斬撃は鱗を断ちその先にある肉にまでダメージを与え、ダメージを流されていた打撃はそのダメージと衝撃を浸透させ、いままで貫通しなかった弾丸が嘘のように貫通し、皆を癒す魔法は癒すだけに留まらず、その動きを更に良いものに昇華させる。


 そして瞬く間に炎龍の傷は増え十分もしないうちに光の粒子になって消えていった。


戦闘なんてなかったんや。

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