ネロと英雄とダンジョンと
『ピピッピピッ』
「ぬ、お……重い……し暑…い……」
なん、で、だ。
「ん…」
そうだった。こいつと一緒に寝てたんだった。……だからってなんで俺にしがみついてるんだ?
「おい、ネロ起きろ。重いし暑い」
「……」
「なんで重さや体温まで人間並なんだよ…、ぬ、う、おぉぉ、っしょ。ふぅ」
こいつ……、なんか気持ち良さそうに寝てるし、このままにしておくか。
……、朝食を作ろう。
「おはよ~」
「お早う母さん。朝食はできてるよ」
「いつもありがとう~」
「いいよいいよ。父さんは?」
「もう少しで来ると思うよ」
似たような会話を昨日もしたような…。
「ネロちゃんは?」
「まだ寝てると思う。まぁロボだから飯は食べないだろうしいいかなって」
「そう」
そんな風に話をしていると父さんも起きてきた。
「お早う父さん」
「お早うお父さん」
「おはよ~」
「早くご飯食べちゃってね、お父さん」
「ああ」
そういや母さん達の会社ってネロ…の素体になってるロボットを作ってるんじゃなかったっけ?
「ねえ」
「ん~?どしたの?」
「母さん達の会社ってさ、ロボットを作ってるんだよね?」
「ロボットって言うよりはアンドロイドなんだけど、そこってあんまり変わりが無いのよね」
「どっちも人造人間って意味があるからな」
「へぇ…」
「でさっきの質問だけど、作ってるわよ。でもそれだけじゃなくて、AIの方にも手を出してるのよね」
「AIの部分で言えば結城の治療のおかげで進んだ所もあるんだ」
「え」
マジか。
「いや~昔よりも進歩したよね、技術」
「そうね~」
昔って二人ともそんなに年取って無いじゃん。とは言わない。
二人はそのまましばらく昔話に花を咲かせていた。
「む、そろそろ時間か」
「あらそうね。じゃあ行ってくるわ」
「ああ、うん。行ってらっしゃい」
そっかー、俺が寝てる間に結構、進んだんだな~。
「ま、いいんだけどね」
午前中の間にネロに家の事を教えておかないといけないし。
「おーいネロ~起きてるか~」
「はい。結城様起きています」
「んじゃあ、ちょっときて。明日から家任せることになるから色々教えるから」
「はい」
「あーあと今日から部屋、別な」
「え?」
「流石に狭いし、毎日しがみつかれるのも暑くて重い」
「しがっ、す、すみません」
「いや、別に、いいけど」
何だかんだ言っても女の子にくっつかれてるんだし。
「で、ですが部屋別というのは……」
「ん?駄目か?」
「駄目…という訳ではなく、その……」
ネロのこんな反応は初めてだな。ふむ。
「じゃあ、せめてベットは別にしよう。それでいいか?」
暑いのは嫌だ。
「は、はい。それなら」
「よし決まり。ベットは後でやるとして先に家事とかだな」
「すみません。我儘を言って」
「いいよ」
その後家事について一から教えて、実践した。後は自分で検索するだろうネットに繋がってるんだし。
そんで、元兄貴の部屋に置いてあったベットを分解して俺の部屋に持ってきて、少しだけ模様替えをした。これでネロの要求も終わり、ちょうど昼頃になっていたので昨日の残った素麺を食べた。
その間ネロはずっと俺の動きを見たり、一緒にやったりしていた。素麺は食べなかった。
そんなこんなで、午後。やっと落ち着いたのでAWAをすることにした。
「そうだ、ネロ」
「なんですか?」
「お前があっちにいった時にその体ってどうなるんだ?」
「スリープモード、人間で言うところの寝ている状態になります」
「ん?それってネロが入ってる時に寝るのと何が違うんだ?」
「電力を消費がありましたがあるかないかの違いです」
「なるほど」
まあいいか?
「とりあえずやるか。ログイン」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「よし。ちゃんとこれてるな」
昨日ログアウトした宿屋のままだ。
《当然です。私は昨日こちらにはいませんでしたから》
まあそうだな。うん。さて今日はどうするか。
《マスター、メールが届いています。確認しますか?》
こっちではマスター呼びなのね。…でメールの差出人は?
《お兄様であるアース様です》
兄貴から?ってかお兄様て……。
《確認しますか?》
する。見せてくれ。
《こちらです》
『結城へ
この前は急に追い出したりして悪かった。
ギルドのメンバーにはステータスやらもろもろは口外しないように言っておいたから安心してくれ。
それで本題だ。まだ紹介してないやつもいるし一度一緒に戦ってみたいから、一度集まらないか?
連絡待ってるぞ。兄より』
確かに一回位は一緒に戦いたいって言ってたしな。今暇だしOKしよう。
《ではそのように伝えますね》
うん、よろしく。
《メールが届きました。確認しますか?》
早っ!っと確認確認。
『じゃあギルドハウスに集合な!』
じゃあ行くか。
宿を出て兄貴達のギルドハウスに行く途中、思い出した事があった。それはあの組合支部長が言っていたこと。
なあ、ネロ。お前は伝説の英雄って言われたら誰の事かわかるか?
《わかります。この世界では世界の危機を救ったとされある程度の文明をもつ種族は皆知っています》
その英雄の名前ってわかるか?
《カルロ・みんにゃ・XXX・グランです》
それって…。
《はい。お察しの通りプレイヤーです》
そのプレイヤーってこのゲームのベータテスターとかか?
《違います。この世界を創りゲームとして販売している会社が昔に発売したゲームのプレイヤーです》
つまりは、同じ世界を使ってるって事か?
《そうです》
…………俺が昔やってたゲームか?
《……そうです》
おおうマジか。んーでも今と昔じゃプレイスタイルも、そもそもの性別も違うし気にしなくていっか。
ちゃっちゃと兄貴達のところに行こう。
《………》
「あ、きたきた!おーいグレスー!こっちッスー!」
ギルドハウスの前には皆が揃っていた。見たこと無い人も二人いるけど。
「久しぶりッスー!」
「おー久しぶりー」
と言ってもこっちで三日ぶり位だけど。
「よおグレス。元気してたか?」
「ああ、まあ、色々あったけど…元気だったよクロム」
「そうか」
「何があったか気になるわね」
「そこは今はいいだろ。そんで我が弟よ、まだ紹介していなかったやつらだ。お前から見て右のやつがシルク」
「……よろしく」
シルクと呼ばれた女性が挨拶してくる。
「こちらこそ、よろしく」
「んで左のやつがピッツだ」
「ふん。おいギルマス、面白いやつがいると聞いて来たんだぞ。なんだこいつは」
ピッツと呼ばれた男がこっちを睨みながら話す。
「俺の弟だが?」
「何が面白いんだ」
「それはこれから分かる」
「おい」
「HAHAHA」
「ちっ、まあいい」
この二人仲良さそうだな。
「よろしく?」
「お前になどよろしくするか」
えぇ……。
「そ、それで?ダンジョンに行くとか言ってたよな?」
「そうだ!行くのは竜の洞窟!」
「竜の洞窟……?」
「高難易度ダンジョンさ!」
何故にそんなところに……?




