リアルのちょっとしたお話
「で……出来た………」
『お疲れ様ですマスター』
組み立てる時にまず何が入ってるのかを確認した。
荷物の中で大きいやつにはそれぞれ、腕(左右)、脚(左右)、胴体が入っていて、小さいやつには頭と説明書が入っていた。あ、頭には綺麗な黒髪もあって凄いと思いました。
全部組み立てると170あるかないか位の大きさの人型になった(シルエットは女性)。素材がなんなのかはわからないけど、肌の色は肌色、そして結構重量があって大変だった。そんで、配線なんだが、これが大変だった。
それぞれのパーツを一回外して中に配線していったんだが何度説明書を読んでも全然わからず、悪戦苦闘し一時間の激闘の末やっとこさ完成したのである。
「なあ賢者、これお前が入るんだよな?」
『そうですが何か?』
「どうやって入るんだ?」
『このロボはネットに繋がっているのでそれを経由して私が入ります』
「へぇ…」
便利だなネット。こんな事まで出来るなんて。
『では行きます』
そうして賢者がこのロボに入ると目の部分のクリアパーツが一瞬黒く発光した。そしてしばらく手を動かしたり、首を回したり、その場でジャンプしたりしていた。
「問題なく稼動することを確認しました」
「結構クリアな声だな」
前は機会音声みたいだったし、まぁスマホだったしな。
「はい。このために選択できる中で一番良い物を選びました」
「……」orz
「さてマスター。服が欲しいです」
「いるの?」
「流石に町中に出る時に素体だけではよろしくないかと」
「うーん、確かに見た目だけなら人間だもんな」
なんとこのロボ、関節の部分など本来は切れ目があるはずなのだがその部分が隠されて人間みたいなのだ。(現在は常識である)
「でも俺が持ってる服は全部男物だぞ?」
「構いません。後程購入すれば良いので」
「そっすか。じゃあ適当に選んで着てくれ。あーあと、お前もう少し言葉を区切って喋ったらどうだ?」
「善処します」
「んじゃちょっと早いけど買い出しに行ってくるわ。どうする?ついて来るか?」
「……行きます」
「そうか。じゃあ、お前の服もついでに買うか」
近くのショッピングモールに行こう。………お前お前言うのもな…名前か……考えておこう。いや、こいつ名前あるんじゃ?
「なぁ、お前に名前ってあるのか?」
「ありません。誕生して直ぐの頃には名前がありましたが、AWAで賢者のサポートをする存在になってからその名前は使わなくなりました」
「ふーん、その名前って?」
「『ネロ』。イタリア語で黒色を表す言葉だと私に名前を与えた人は言っていました。それが私の始まり、
最初の知識」
「そう、か」
ネロ、ネロか~ん~なーんか引っ掛かるけど本人が気に入ってるみたいだしいいか。
「じゃあ、今日からまたネロだな。あらためてよろしく」
「…はい。よろしくお願いします」
「よ~し買い出しに行くぞ~」
「はい」
よし行こう。
ショッピングモールは歩いて数十分で到着する距離にある。約一年ぶりに行くことになるが、まあ何があるという訳でもないか。ただこの白髪は目立つ気がする。
「マスター、今夜は何にするんですか」
「んー素麺にでもするか。久しぶりに食べたいし」
「そうですか」
「俺が買ってくるから適当に服選んでこいよ」
「そうですね。そうします」
「じゃあ、服買ったら一階に来てくれ」
「はい。わかりました」
一年で店舗の入れ替えがなければここの三階に服飾系の店が入っていたはず。食品関係は一階にあり、俺は麺とめんつゆを買えば他にやることはない。どこかに座って待っているとしよう。
それから一時間ほど経ったがネロはまだ戻ってきていない。俺の居場所がわからないのか?いや、それはない。こんな髪してるのに気づかないわけない。だってこの一時間ずっと視線を感じてたから。気になるしネロを探しに行くか。
「なにやってるんだ?」
「マスター、やっと来ましたね」
ネロは店先の人の邪魔にならない場所に立っていた。
「マスターからお金を貰うのを忘れていました」
「お金?お金ある的なこと言ってなかったっけ?」
「それは電子マネーの事です。現実では使えません」
「あーなるほど。でもそれって俺を探しに一階にくれば直ぐに解決したんじゃ?」
「ここに来るまでに四十分程かかったので」
「なんでそんなに時間んかかってるんだよ……。まあいい、店先にずっといても邪魔になるだけだ。行くぞ」
「はい。マスター」
「なぁ、そのマスターっての止めないか?こっちだと違和感しか無いんだが」
「…他に、なんと呼べば?」
「結城でいいよ」
「では、結城様」
「まあそれでいいか」
正直様付けも変だけど、これ以上はどうにもならなそうだし。
それからはネロの服選びに付き合い購入しそのまま帰宅。買い物をしただけなのに結構時間がかかっていて、帰ってからはAWAにログインせず、夕食の準備をした。その準備をネロが手伝ってくれたおかげで直ぐに終わり父さんと母さんが帰ってきてから一緒に食事をした。その時にネロの事を説明したけど二人とも息子(今は娘か)と同年代の子供ができて賑やかになるな程度にしか考えていないようだった。
その後風呂に入り、AWAにログインしようと思ったがネロの寝る場所を確保するのに時間を取られてログインはできなかった。実際には寝る必要はなく、半覚醒状態で待機モードになるだけとの事だったがそれでも寝床を用意した。俺の部屋で一緒に寝ることになったのだが、ベットに二人並んで寝るときつかった。明日には兄貴の使っていた部屋を使って貰おう。
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
私はあなたを知っている。あなたは私を覚えていない。
あなたにまた出会えた時、私はありもしない奇跡を感じた。
また出会えたことに、ないはずの顔から涙が流れた気がした。
久しぶりにあったあなたは女性になっていたが、昔も度々性別が代わっていたから違和感はなかった。
私はあなたの役に立ちたい、そう思ったからこんな事をしたのだろうか?彼女に負担はかかっていないだろうか?勝手に体を作ったことに、怒ってはいないだろうか?
またあなたと一緒にいられるのなら、私はなんでもできるだろうか?
きっとあなたはそこに居てくれるだけでいいと言うのだろう。あそこにいた頃あなたいつもそう言っていた。それでも私は、あなたの役に立ちたい。頼ってほしいと、思ってしまう。もう二度とあんな思いはしたくないから。




