組合支部長とちょっとのロボ
令和初の投稿です。新しい年号でも頑張ります。
「おいおいなんだよ!どういうことだよ!」
「おとなしく捕まれよ!」
「なんで?!」
なんなんだよこの状況は!今日はよく捕まりそうになるなぁ?!
「くそっちょこまかと!」
でも冷静になって考えるとこいつら全然弱い。遅いし、隙がでかいし、こいつら捕まえる気あんのか?
「ちょっと支部長!この人めっちゃ早いんだけど!」「そうよ!」「低クラスの人じゃなかったのかよ!」
ん?なんだ?動きが止まったな。それで支部長って?
「う~んさすがじゃの~。やっぱり格が違ったか~」
「誰だよあのじいさん……」
白髪で背筋が真っ直ぐしている老人が、いつの間にか受付近くに立っていた。
「パリドス首都コーネル支部支部長、ローガンじゃ。以後お見知りおきを、Sクラス冒険者グレス・ハーフ殿?」
「……はぁ。なんでばれてんだよ。お面買った意味がねえじゃねえか」
意味ないし外すか。
「そんで?何?周りのやつらは全然わかって無いみたいだけど?」
さっきこの人が言ったSクラスって発言にびっくりしてるみたいだな。「騙されたー!」「どうりで報酬がいいわけだ」「このくそじじい!」だのいってる。…最後のただの悪口じゃね?
「あー騙して悪かったの。そこのウルルから報酬貰っとけ。後くそじじいって言ったやつは顔覚えたからの報酬は無しじゃ」
「何でだよぉ!」
「当たり前じゃボケぇ。どさくさに紛れて悪口言いよってからに。すまんなグレス殿」
「いや別に良いんだけどさ」
やっぱ悪口か。
「そうか、そんじゃちと奥に来てくれんか?色々聞きたいことがあるんじゃ」
「こっちにも聞きたいことがあるからいいぞ」
……依頼を受けに来ただけなんだけど、昨日のやつのせいか?
俺はいったいいつになったらゲームができるんだろうか。
通された部屋は支部長室だった。部屋の中は左右の壁に本棚があり、全て埋まっている。奥の窓際には大きめの机と椅子がありその手前には来客用と思われるソファと机があった。
「ささそこの椅子に座ってくだされ」
促されるままにソファに座る。支部長はその対面に腰を下ろしていた。
「それで?聞きたいことって?」
「まず、あなたは本当にSクラスの冒険者ですか?」
「当然だろ。Sクラスじゃなかったらそんなこと言わない」
「では冒険者カードを見せてください」
「はいよ」
アイテムボックスから冒険者カードを取りだし支部長に見せる。
「ぬ、本当のようですな。失礼した。してSクラスになったのはいつ頃ですかな?」
「えーと一週間位前だったかな?」
「一週間…だったら情報が来ているはず。グレス殿はどの街でSクラスに?」
「えっと、確か英雄の街?だったけか?」
「なんと!グレス殿は迷いの森を抜けられるのですな!いや~どうりでSクラスな訳じゃ」
「?その迷いの森ってなんだ?」
「おや、知らないのですかな?迷いの森は英雄の街を囲んでいる森のことですじゃ」
「ほー」
囲んでるか?
「うむ。その街でSクラスになったのなら納得ですじゃ」
「どうして?」
「あの街は存在が一部の人に知られているだけで、一般的に迷いの森の先に何があるのかはわかってないことになってるんですじゃ」
「えぇ……」
「わしも元はSクラスの冒険者ですからな。それくらいは知っとります」
この人元Sクラスだったのか。ということはけっこう強いのか?
「Sクラスということはわかりましたし納得もしました」
「おお、そっか。ならこっちも聞きたいことがあんだけど……」
「ですが、まだ聞きたいことがあるんですじゃ」
まだあるのかよ。早く聞きたいこと聞いて依頼受けて金を稼ぎたいんだけど。
あそこのモンスター強いのに依頼の報酬は全然高くなかったからな。多分他の冒険者が狩って来るからなんだろうな~。
「グレス殿、あなた何故、龍の気配がするんですかな?」
「……」
気付いてんのかよ。これでも押さえてる方なんだけどな。
「……はぁ、なんでわかった?」
「ほほほ、これでも若い頃は下位竜や上位龍と戦ったことが何度もあるんですよ。だからか、龍の気配にはちと敏感でして。それで?どういうことなんですかな?」
「ステータス見る方が早いか」
名前、種族以外を消して見せる。
「なっ…なんと!絶滅したと言われる龍人じゃと!?」
「納得したか?したなら教えてくれ。どうして俺が来るとわかった?」
「うっうむ…それなら簡単じゃ。この街にいる冒険者全てに指名手配したんじゃ」
「なに?」
「見つけるのは簡単じゃったな。そこから気配遮断スキルをもつ者に尾行してもらい、お主がお面を買っている間にここに戻り捕らえる準備をした。という訳じゃ」
「そこまでやるか?」
「貴重なSクラスじゃ。国に囲まれる前に取り込んでおく位するわい」
「そういうもんか?」
「そういうもんじゃ」
「わかった。用事もすんだし俺は行くは。じゃあな」
「お待ちを。最後に一つだけ、あなたは伝説の英雄と何か関係があるのですか?」
伝説の英雄?
「そんなものは知らん」
「そうですか……」
「……」
どうしようか、今依頼受けるのもなんかな。
ふむ。少し気になるし伝説の英雄とやらを調べてみるか。……賢者がいればすぐにわかるんだがな。なにやってるんだ?
調べるなら図書館だろうか。マップには……載ってるな。早速行ってみよう。
図書館はけっこう近い所にあった。あったんだが…
「現在王立図書館への入館はできません」
「えぇ……何でですか?」
「実は蔵書の一部が盗まれていまして、現在その調査中なんです」
盗みがあって特定の人物しか入れないらしい。
どうしようか、本格的にやることがないぞ?……時間はまだまだあるんだがな、一旦ログアウトするか。
ログアウトするにも場所考えないとな……さっきログインした宿屋でいいか。あそこは組合にも図書館にも近いし。
よし。
「ログアウト」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
「ふぁ~……」
あっちで半日近く動いてたからか眠いな。
「スマホどこだ…」
『マスター戻っていたのですね』
「んぁ?あー賢者か…お前こっちにいたんだな」
『はい。こちらで作業していました』
「何を?ってか俺のスマホから話してるんだよな?今何時?」
『現在時刻は十三時半を回ったところです』
「やっぱ時間あるな…何しようか」
正直言うとそろそろ他の街に行ってみたいんだよな。ダンジョンとかにも潜りたいし、強いモンスターと戦いたい。でも、兄貴たちと一緒に依頼を受けてやるみたいな約束した気がするしな…。
『マスター暇でしたら頼みたいことがあるのですが』
「なんだ?」
『玄関に置いてある荷物をここに運んでくれませんか?』
「荷物?そんなの頼んだ覚えもないし何か届くなんて聞いてないぞ?」
『私が発注したものです』
「は?お金は?」
『ゲーム内通貨を少々電子マネーに変換しました』
「はぁ!?お前っ何やって!」
『問題はありません。マスターのお金ですので実質私のでもあります』
「どこがだよ……」
数少ない俺のお金が……orz
「…とりあえず運んで来るか」
『よろしくお願いします』
玄関にあった(というか家の前にあった)荷物は合計で三箱あった。内訳は、同じ大きさで大きいのが三つ、俺の頭ぐらいのが一つだ。
同じ大きさの方は結構重くて大変だったが、小さい方は水の入った壺位の重さで楽だった。
「おい賢者、これ何が入ってるんだ?」
『素体です』
「素体?って何のだ?」
『AI搭載人型お手伝いロボ。助けるんですOver』
「なんだ…それ……」
『AI搭載が「違う、そうじゃない。何のために買ったのかってことだ」……』
『スマホでは不便です。私はそもそも人を助けるために設計されたAIです。なのでマスターの行っている家事をできるだけサポートするため購入しました』
「なる、ほど?まーとりあえず組み立てるか」
『よろしくお願いします』
「うぃ」
ちなみに助けるんですには、
・お掃除用
・風呂掃除用
・洗濯用
・洗い物用
など様々なシリーズがある。結城が寝てる間に世間に普及した物の一つ。
賢者さんが購入したのはオリジナルバージョン。つまり自分で何用に使うかなどカスタムできるもの。高い。本来発注して直ぐ届く訳じゃないが、賢者さんはAIなので工場に侵入して直ぐに作らせるようにハッキングしたり、優先して配達するように配達業者のシステムにハッキングしたりしてた。




