到着と兄
「あ~あ、こんなふうに人と会うとは思ってなかったから髮見られちまったな~」
アイテムボックスから隠密の外套を取りだし、着ながらそんなことをぼやく。
「これから行く国の姫サンだったからな~。どうなるかわかんねえな~」
はあ、そんなこと言っててもなんにもならないしさっさと行くか。幸いと言っていいのかわからないけどさっきの龍化と龍の気でモンスターが逃げたみたいだから走って行こう。
ステータスって凄いな。数時間全力疾走してるのに全然疲れない。というかこの森広すぎる。数時間全力で走って出れないって相当だぞ。……ん?うーん?遠くに光がみえる?走っているうちに深い所なで来ていたみたいだから久しぶりに見たぞ。光の方へ行ってみよう。たぶん出口だし。
光の先にあったのは広い草原と舗装されていない道、そして遠くにみえる街だった。
「おおー。あれが目的の国であるパリドスの首都コーネルか。もうすぐだな」
そう目的地は以外と近かった。
気づいたのは森に入る前、キャストの手帳を読んでいる時だった。手帳には簡単な地図とスキルについての捕捉説明が書いてあった。スキルはあとにするとして、地図には俺がもともといた街(英雄の街とかいうカッコいい名前)の周辺が書いてあって北の森を行くとコーネル、西の森に行くとパリドスの街のベル、東の森に行くとスレンゲルという山に行けることが書いてあった。キャストからも北の森から行けと言われたし目的地もパリドスだったから北に進んだ。
あ、入る前に兄貴に連絡入れとこ。
「ログアウト」
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頭に被っていたヘルメット型の本体を外す、そして机に置いておいたスマホを確認する。
「はあ、また来てるし……」
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結城へ、
まだこっちにこれないのか?早く来いよ。いろいろ教えてやるぞ?
返信待ってる。
兄より
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メール面倒だからLINEで返すか。
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〈おい兄貴そろそろそっちに着くぞ。パリドスの首都で合ってるよな?
〈お、マジで?首都で合ってるぞ。コーネルって名前だったはずだ。あ、教会の前で待ち合わせな。
〈okすぐ行くわ。
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返信早いな。
よし。教会前だな。早速行こう。
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街までの道でモンスターには遭遇せず、門も冒険者カードを出すだけで入ることが出来た。ランクを確認すると思ってたのに確認せず見るだけだった。
街の中はもといた街とあまり変わっておらず、人族以外の種族も多い。犬耳や猫耳が生えてる獣人や頭から触覚が生えてる蟲人、額から角が生えてる鬼人など当然あの街にもいたが人数が違いすぎる。そこに驚いた。
「っと」
なんかメール来てる?誰から?
《登録名兄貴からのメールです》
あ、そう。って違う!今の誰!
《……》
まただんまりかい!!
はあ、なんか無駄に疲れた。これも兄貴のせいだな。とにかく歩きながらメールを確認するか。
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こっちで連絡できるの忘れてた。
どうやってお互い確認するか話し合ってなくね?どうする?
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……。『俺白髪、教会の扉の近くにいる』送信。
確認して、返信を考えながらもマップを見て歩き続け教会に到着する。教会は白を基調とした外壁でリアルで見る教会と然程違いはなかった。ただ、屋根の高い所にある十字架がなくなっている。
「おおー、凄いな。流石教会」
教会を自分の目で見るのは初めてだったからつい声に出してしまった。さて、兄貴が来るまで何をしていようか……。
そこら辺のベンチに腰掛けながら考える。
「ふぁ~」
~~~~~~
『ほう。彼女が』
『ええ、そうよ。あの龍神が認めた子』
『かかか!あのトカゲだった奴か!』
『そうそう。まさか神にまで上り詰めるとはね~』
『ふふふ。今は彼女達の道行を見守りましょう』
~~~~~~
「…………ぃ」
ん?
「……ぉ…ぃ。……ぉ…い」
ん~?
「お~い!」
「ん~?…ふぁ~」
「あ、やっと起きた」
「なんだ?俺寝てたのか?」
「そうそう、ぐっすりと」
「ほーん、で?あんた誰?どっかで見たことある気がするけど」
「あら、わかんない?俺だよ俺、お兄ちゃんだよ」
「兄貴~?……確かに兄貴だな。リアルと変わらない顔してる。気がする」
「そうそう。キャラメイクの時にいじらなかったから変わってない。ってそれはおいといて、久しぶり、えーっと」
「久しぶり、こっちではグレス・ハーフだ」
「そっか。俺はアースだ」
「ふっ」
「今笑っただろ」
「だってリアルの名前英語にしただけじゃん」
「いいだろ別に!」
「はいはい」
「それよりお前は?結構変わってると思うんだけど?」
「ああ、これ?父さん達から聞いてないの?」
「何を」
「あ、聞いてないんだ」
事故で意識が戻らなかったこと性別が変わったことを説明する。
「事故に遭ったってのは聞いてたけど、性別が変わってるとは…」
「まあ、体の変化に伴って色々変わったからね。この顔リアルと変わらないよ?」
「え、マジで?」
「まじまじ」
「じゃあ、その目は?」
「目?」
「爬虫類みたいに縦になってる」
「マジで?」
「まじまじ」
「あー、たぶん種族のせいだな後で説明するわ」
面倒だし。
「そんな種族いたかな?」
「まあいいだろ?」
「うーん…。ま、いっか。そんじゃグレスちょっとついてきて」
兄貴が歩き出す。
「どこ行くんだ?」
「ふっふっふ、それはついてからのお楽しみだよ」
なんかテンションおかしくね?
「なあ」
兄貴について行きながら話をする。
「なんだ?」
「兄貴の種族ってなんだ?パット見人族だけど」
「人族で合ってるぞ。お前はどうなんだ?その目で人族ってわけないだろ?」
「うっ」
痛い所突いてくるな。どうしよう。兄貴ならいいかな?でもな~。
俺がうんうん唸っていると…。
「おい。着いたぞ」
その声で顔をあげると目の前には他の建物から浮いた木造三階建ての建物があった。
「ここは?」
「ここは冒険者組合だ!」
……なんで?




