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第九十五話 勝手な思い


 シスト隊員たちと別れて、俺は使い魔の二人を召喚した。


 最近関われていなかったということを申し訳なく思い、そしてとても心強い二人を呼ぶことで、二重の意味で俺に降りかかる被害が少なくなることだろう。


「バレちゃあいけないから、認識阻害とかもしておくかな?」


 一応校長は認知しているといっても、本来俺たちは敵地に行ってはいけないのだ。


 彼らが進んでいった方向へと歩んで向かっている俺は、バレてはいけないということを思い出しどうするか悩む。


「そうですね、では私が……」


 悩んでいる俺に、鈴が三人に向けて何やら魔法をかけた。


 かけられたことはわかったが、見た目は何も変わっていないから、いったいそれがどういうものなのかわからなかった。


「これで私たちの姿は他人からは見えません」


「おぉ、すごいな」


「お褒めに預かり光栄です」


 今鈴によってかけられた魔法は、認識阻害系統の魔法である。


 俺に礼を言って頭を下げている鈴には悪いが、実は俺も使えるんだな、これが。


 だって、神の使徒だもの。


「わたしもできるよー」


「あとで機会があったらその時頼むな」


「わかったー」


 鈴に張り合ってアピールしてきたが、なんだかその反応が可愛いな。


 今は心の中では和んでいるが、実は現在俺の目には鈴と未桜が見えているため、魔法がかかっているのか不安であった。


 だが鈴がそのようなことをするとは思っていないし、それにばれてもいいかななんて思っていたりもする。


 どうせ、最終的には暴れるだろうしな。



「これが、本拠地か……」


 歩いて少しして、目の前にフェンスに囲まれている様々な建物が存在しているのが見えた。


 フェンスはまるで基地を囲むかのように張られており、バレずに上からの侵入はできそうになかった。


「まるで軍事基地のようですね」


 千里眼で見た通りの基地のようなこの場所は、実験をするには打ってつけといったところであろうか。


 初めて見る二人も驚きを露わにして……いや、未桜は特に驚いた様子はなかったな。


「山奥であるにしても、こんなでかい基地があってバレないのか?」


「恐らくですが、私が発動した認識阻害の魔法と同程度のものを張っているのかと」


「なるほどなぁ、鈴と同じくらいならバレないな」


 フェンスの周りを少し歩き、この基地の入り口らしき場所へとやってきたにもかかわらず、俺たちは未だに誰にも認識されていない。


 それほど強力なものを発動した鈴と同程度となれば、衛星にバレていないというのも必然ではあるな。


「んじゃあ、堂々と入りますか」


 守衛のような人物へと、見えないことをいいことに手を振り、中へと入ろうとする。


 バレていないという事実に安心して堂々と入ろうとするが、それを鈴は手を引いて止めた。


「お待ちください。あそこに魔力検知カメラと温度検知カメラがあります」


 鈴が指さすは、入り口の左右に設置されている、丸い監視カメラと同じようなものだった。


 半円ではなく球状であるあのカメラは、認識阻害をしている俺たちでもさすがにばれてしまうだろう。


 生物を誤魔化せても、機械までは誤魔化せまい。


「マジか……。それじゃあ———」


「そこれでは、ここでも私がどうにかしようと思います」


 それじゃあ千里眼で中を見て転移魔法で侵入をしよう。そう言おうとしたのだが、何やら鈴がどうにかしてくれるそうだ。


 というか、ただ俺に対して役に立とうとしてくれているのだから、それを奪うのはダメだよな。


「どうするんだ?」


「この敷地内に入ろうとしたら、様々なところにある数種のカメラに捕捉されてしまいます」


「そうだな」


 入り口にある左右のカメラ以外にも、見渡せばいたるところに監視カメラがあるのが目に入る。


「つまりは、魔力を検知されずに、そして温度も検知されずに入らなければいけません」


「そんなほうほうがあるのー?」


 鈴は方法がわかっているようだが、未桜にはどうにも方法が思いつかないようだ。


 かく言う俺も全く見当もついていないのだがな。


「ふっふっふ……。これです!」


「それは、なんだ?」


 得意げになって異空間より取り出したそれは、金色のマントのようなものだった。


「これはですね、私の魔力を込めて作られたマントです!」


 あぁなるほど、だからそんなに派手な色をしているんだな。


 センスとしては結構ひどいと思ってしまったが、そういうことがあるならば仕方があるまい。


「これの性能は、なんと魔力感知に引っかからず、熱源感知にも引っ掛かりません!」


「おぉ」


 思っていたよりも高性能で、俺は素直に驚いた。


「もっと言うなら、魔法攻撃を半減させることができます!」


「おぉ!」


 先程言われたことにも素直に驚いたというのに、まさか魔法攻撃を半減させる効果があったとは……。


「私の魔力を帯びて色が金色ですがね」


「いやいや、それを差し引いてもかなりの代物じゃないか!?」


 魔力や熱を感知されず、魔法攻撃を食らっても半減させる。


 そんな代物を作ることができる鈴は、やはり高スペックな俺の使い魔である。


「ありがとう、鈴!」


「お褒めに預かり、うれしく思います」


 心より素直に褒めると、何やら頭を差し出し尻尾を振っている。


 これはつまり、頭をなでてということだろうか?


「……ふふっ」


 躊躇いながらも俺は鈴の頭をなでたが、その結果尻尾を思い切り振っている。


 よかった、多分間違ってはいなかったようだ。


 使い魔の主ってだけで頭をなでて喜ばれる。俺はなんて幸せな男なのだろうか。


 俺の寿命が明日とかではなければいいが……。


「むー……」


「未桜も撫でてほしければ、何か手柄を立てるのですっ」


 なでられながら、とても誇らしい笑顔で自慢している鈴は、だが未桜はそれを歯牙にもかけず。


「あるじー、なでてー」


「はいはい……」


「あっ、ずるいです!」


 鈴の発言を無視して、自ら頭を差し出してきた。


 そして俺にそれを拒む理由もないため、二人同時になでることにした。


「二人とも、仲良くなー」


 俺は今、両手に花な状況であるため、世界で一番幸せ者なのだろうな。


 生きているって、幸せなんだな。


「鈴、俺は手柄とかなくてもお前たちの願いはできる限り叶えるぞ?」


 こんなことを前世ではできなかったから、これはもう二人の願いを全力でかなえなければならないだろう。


 なでさせてくれたためということではないのだが、普段のお礼も兼ねて二人には何かちゃんと労わなければなるまい。


「そうなのですか……。なら、あのことも……」


「なんだ?」


「い、いえ! いずれお話します……」


「ふむ、そうか」


 鈴は何かを言いたそうにしていたが、とてもいいにくそうにしていた。ならば今すぐに聞かなくてもいいだろう。


 それにいずれ話すというし、深く詮索する必要もないな。


「それじゃあ、行くか」


「はい」


「おー」


 そう言って俺たちは金色のマントを羽織って、正面より堂々と敵地に侵入した。







===============







「知ってはいたが、広すぎだろ……」


 フェンスに囲まれている敷地内に入ったはいいものの、建物も複数あるためとても広く、どこから破壊していったほうがいいのか悩んでいる。


「とりあえず、先に侵入した方々にもバレないように、主要と思われる場所を破壊しましょう」


「……しいて言えば、あれかな」


 鈴が提案してくれたそれは、だが現在俺の目に映る施設は、すべてが主要な場所と見て取れる。


 なので、その中で一番大きな建物を指さし、そこを最初に向かうこととした。


「ひとはころさないのー?」


「そんなことをしてはいけません。主様に迷惑が掛かってしまうでしょう」


 流石は竜である未桜だな。邪魔者は文字通り排除する思考なのだろう。


 魔物との戦いであれば、それでも別にいい。


 しかし今回に限って言えばダメである。


「そうだぞ、殺した相手がシストが探している奴だったらヤバいからな」


「はーい」


「殺人については特に何もないんですね……。いえ主様がいいなら別にいいんですけど」


 別に俺は人を殺すことに抵抗がいないというわけではない。寧ろあまりそういうことはしたくないと考えている。


 だが、相手は沙耶を誘拐した犯罪者集団の親元。


 ならば、多少やりすぎてしまっても別にいいと思うんですよ。それに校長も生死は問わないって言っていたし、いいんじゃないっすかね?


「なぁ鈴、ここで魔法を使っても感知されないのか?」


 一番大きな建物へと近づき、その入り口にはカギがかけられていた。


 そのため、ここを突破するうえで鈴へと聞いておかなければいけないことがある。


「そうですね……。転移魔法やカタストロフィのように膨大な魔力を用いてでも行わなければ問題はないと思います」


「そうか、わかった」


 そういうや否や、俺は風魔法で音を立てずに扉を円形にくりぬき、そして三人ともその中へと入っていく。


 入り終わって、再び円形にくりぬいた扉の一部をもとの位置に戻して適当に溶接をする。


「これ、よく見ればバレますよ?」


「どうせ一時間くらいでシスト隊員が制圧するんだから、大丈夫だろ」


 一時しのぎ程度で溶接したのは、バレてしまっても問題がないと思ったため。


 ぶっちゃけ俺たちは少しくらい復讐ができればそれでいいからな。危なくなったら逃げればいい。


「あ、そうだ。わたしもきいていい?」


「なんだ?」


 マントを引っ張り、俺に問いかけてくる未桜は、何やら不安そうな雰囲気を醸し出していた。


 普段から無表情というのも慣れてきたから、無表情でもある程度どんな感情でいるかは理解できるようになってきたぞ!


 鈴は言わずもがな。


 しかし、いったい何を不安に思っているんだ?


「さいきんあるじ、げんきないよね。なにがあったの?」


「おっと……」


 あの校長にも隠し通していたのに、まさか使い魔である未桜にバレたか。


 ということは、もしかして鈴にもバレているのか?


「鈴もわかる?」


「なんとなくは……」


「マジかぁ……」


 周りのみんなには、特に敵地へと一緒に乗り込んだ二人にはバレないように配慮していたつもりだったが、俺が不安に思っていることが露呈していたとはな。


「二人はさ、俺の動向とかってわかったりする?」


「そうですね……。使い魔であるからでしょうか、思念のようなものが送られてきますので、感じ取ることができる程度ですが……」


「わたしもー」


「そうか……」


 つまり、俺がどういうことをしていたとか、どんなことがあったとかは詳しくは知らないんだな。


 これほど心配されていることだし、話さないわけにはいかないか。




「実はな、最近沙耶があまり口をきいてくれなくてな……」




「あぁ……えっと……その……」


 聞いてしまったことに対して思い切り後悔している鈴とは対照的に、未桜は特に変わった様子はなかった。


 まぁね、こうなった原因は理解しているよ。あれだよな、好きな人をずっと教えないでテストの結果で決めるっていう。


 だから最近沙耶は必死になって勉強をしているんですよ。俺と同じくね。


 そんで普段よりも接する時間が減ったということに繋がり、今では話す時間が普段の半分以下になってしまった。


 そのため、ちょっとではあるが、心に余裕がなくなっていたのかもしれないな。


 ちょっとというか、かなりというか、過去一番というか……。


 俺は世界で一番不幸かもしれない……。


「大丈夫だ、俺はこれが終わった後に何とかする」


「だいじょうぶなの?」


「……ははっ」


 これってマジでどうしたらいいんでしょうね。


 あとで校長に……人生の師匠に聞いたほうがいいことなのでしょうかねぇ。


 ホント、泣いちゃいそうだぜ!


「未桜、ダメですよ! 主様は虚勢を張っているのですから!」


「鈴もわかっているなら言わないでほしい……」


 あれ、なんだかこの天井綺麗だな。


 まるで、水の中から見ているみたいだよ。


「も、申し訳ございません!」


「うぅ、ごめんあるじ……」


「あ、いや……こちらこそごめん。主がこんなのじゃあいけないよな」


 二人に謝罪をさせてしまったことで我に返り、目からこぼれそうになるなみ……汗を拭い、俺は一旦沙耶のことを頭の片隅へと追いやる。


「よし、切り替えていこう!」


「わかりました」


「おー」


 俺たちは元気よく、敵地だということも忘れて大きな声を出してしまった。


 そのため誰かが来る可能性を考えて、俺たちは近くの部屋へと急いで入る。


「急いで入ったはいいが、ここは何の部屋だ?」


「ここは……資料室ですね」


 近くにあるスイッチを押して電気をつけると、夥しい量の資料が乱雑に置かれていた。


 

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