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第九十三話 メンバー紹介

えっと、予約投稿をする前に寝落ちしてしまい、こんな時間に投稿することになってしまいました。

楽しみにしてくださっていた方、本当に申し訳ございません。

以後遅れるようなことはないようにしますが、もし遅れる時や投稿できないときは事前に知らせるようにします。

これからも読んでくださるのであれば、よろしくお願いします。


 俺の知らない二人を無視して、校長は続けて話を進める。


「これから行うのは、監視対象である東雲沙耶を誘拐した『アポストロ教』の本部がある場所を制圧することだ」


 そう言うと、観月先生は机いっぱいに広げるほど大きな地図を持ってきた。


「まずアタシたちがいるのがここ」


 地図の一点を指し、そしてその指を滑らせてある場所をさす。


「そんで、ここが本部がある場所だ」


 その指をさしている場所は、俺たちが沙耶を救出した場所より遠く、ずっと山奥に位置していた。


「全員揃い次第、翔夜の転移魔法にてこの場所に移動する」


「あぁ、そのために連れてこられたのか」


 普通に戦力を当てにしていたのかと内心思っていたが、どうやら俺は移動手段として連れてこられたようだった。


「そうだ。お前の魔力量なら、ここにいる全員を一度に転移させられるだろ?」


「やったことないけど、まぁ問題ないだろ」


 転移魔法を連続で何度もできるし、それに俺は神の使徒であるため問題ないだろうな。


 そう思って普通に答えたのだが、どうやらそれは普通ではなかったようで、周りから感嘆の声が上がる。


「相変わらず翔夜君はすごいねぇ」


「そうですかね?」


 全員驚嘆と納得といった様子で、俺を見つめる。


 やっぱり転移魔法ってそんなに難しいものなのかな?


「しょ、纐纈君の魔力量はすごいですからね……」


「ねぇ耀さん、俺ホントに気にしていないから普通に接してほしいんですけど?」


「善処します……」


 俺ホントに気にしていないんだから、前までの口調に戻ってほしいな。


 なんか申し訳なくなる……。


「そいつを連れてきたことは理解したけどよぉ、監視対象を連れてきてもいいのか、隊長さんよ」


 地図がある机に足をのせて、校長を睨むヤクザ顔の男。


 そんな凄むような顔で対応したら相手に嫌われちまうぞ? 経験者はそういうことを気にしているんだから……。


 というか……。


「え、隊長?」


「ふふん」


 これほど自信に満ちたどや顔を俺はいまだに見たことはない。


 それほどの顔をして胸を張っている姿を見ると、俺はどうしても聞かなければいけないことがある。


「観月先生、大丈夫なんですか?」


「おいコラちょっと待て、それはどういう意味だ?」


「まぁ、なんとか……」


「おいりほ、お前もお前で師匠を立てろ」


 性格をある程度知っているから、この人が隊長でも大丈夫なのかと心配になってしまう。


 まぁ、ペストさんとか観月先生もいるし、大丈夫だろう。


「やっぱりぃ、私みたいな師匠じゃないとぉ、りほも可哀そうだよぉ」


「おいおい、人の弟子を勝手に取んじゃねぇよ……」


「そっちこそぉ、人の弟子をとらないでほしいなぁ」


「あぁ、やんのか?」


 ソファで寝転がっている人が、校長へと突っかかる。


 そして大人げなく校長も口喧嘩を始めてしまう。


「観月先生、質問なのですが」


「なにかな?」


 そんな二人を放っておいて、俺は観月先生に問いかける。


「観月先生は、どっちの弟子なんですか?」


 なぜ、観月先生に師匠が二人もいるのだろうか。


 喧嘩している二人の間に入りたくない俺は、そのことをその当事者である観月先生に聞くことにしたのだ。


「えっと、どちらもだね」


「……つまり、どちらも師として尊敬していると?」


「尊敬しているかは別として、魔法の技術などは教えてもらってるよ」


 恐らくだけど、今言い争っている二人がただ観月先生にどれほどうまく魔法を教えられるかって喧嘩したんじゃないかな?


 それで結果的に指定の関係になったと思う。


 事実は知らないけどね。


 というか、やっぱり尊敬はしていないんですね……。理解できます。


「……あぁ、だから観月先生は学校内で師匠と呼んでいたんですね。外だと紛らわしいから」


「その通りです。それを師匠は……柊師匠は、理解しているからこそ学校で先生と呼べとおっしゃるんだよね」


「めんどくさい人だな……」


 師匠は自分一人だけだと、そういう意図があって学校で師匠呼びを止めさせようとしているんだな。


 校外で師匠と自分だけが呼ばれるように。


「ん? 観月先生って新任ですか?」


 そういえばと、観月先生と、喧嘩している二人を見て思った。


「初めてあいさつしたときに言っていた気がするんだけど……」


「すみません……」


 ずっと寝ていました。


「やはり、たった三歳しか変わらない相手から師事されるというのはおかしいかな」


「そういうことではなく、あの……引きこもりみたいな人は何歳なのかなぁと……」


 師事している人が俺の恩師だったから、まぁあの人なら別におかしなことがあっても不思議じゃないよなって思っていた。


 だから年齢は別に気にしていなかったが、それならばあの言い争っている人の年齢はどうなのだと。


 女性に年齢を聞くのはご法度だけど、気になってしまったものは仕方がない。


「引きこもりじゃあぁ、ないよぉ?」


 間延びした声がこちらの会話に参加してきた。


 会話に参加してきても、そのだらしない体制は崩さないんですね。


「私はぁ、この女と同い年のぉ、シスト隊員だよぉ?」


「そ、そうなんですか……」


 校長を指さして答えるが、しかしそのだらしない姿勢が気になって威厳も何もない。


 まだ校長の方が年上として敬うことができるくらいだぞ?


「つまりな、シストは公には言えない職業だから、事実上無職兼引きこもりだな」


「私もぉ、堪忍袋の緒が切れるよぉ?」


「おーおー切れてみろ、アタシより弱いんだから怖くも何ともねぇな?」


 本当のことを言われて図星なのだろう。二人は口喧嘩を再開した。


「同じ弟子を持つということは、これほど仲が悪くなるんですね……」


「ホント、弟子のことも考えてほしい……」


 嘆いている観月先生を横目に、二人は周りを気にした様子などなく喧嘩を始めてようとする。


 そんな二人をどうしたものかと悩んでいると、俺のそばにペストさんが近寄ってきた。


「そうそう、翔夜君はまだ二人のことを知らないよね」


「そうですね、できれば教えていただきたいです」


 ここへ来てからずっと気になっていた。


 俺の知らない人が二人ほどいるのに、今まで誰も紹介してくれなかった。


 みんなは監視対象である俺を知っているだろうけど、俺は知らないんだよ。


 そんな中、ペストさんだけは俺に気遣ってちゃんと教えてくれるっていうのは、やっぱまともなのは彼だけだろうか……。


「う~んと、こっちのヤクザみたいな人が———」


「誰がヤクザだ! 俺はちゃんと日の下でしっかり働いとるわ!」


 最初にヤクザみたいな人を紹介しようとしたが、やはりというべきか。


 ヤクザ呼ばわりされるのは嫌なようで、思い切り叫んで否定していた。


 ……なんだろう、この親近感。


「大丈夫だよ、顔が怖いけどちゃんと『保育士』として働いていることは知っているから」


「えっ、保育士!?」


 滅茶苦茶大変なんじゃないのか? 


 絶対いろいろな弊害とかあっただろうに、よくやっていけているな。


「わりぃかよ、纐纈君よ」


「……いえ、確かに見た目で判断するのは俺が一番してはいけないことですよね」


「わかればいいんだ」


 思い切り驚いちゃったけど、俺もよくそういう勘違いされたっけなぁ……。


 見た目で判断された俺がそんなことを言うのは間違いだよな。


 俺だって警察に学生って言ったら信じてもらえなかったからなぁ。


 あれ、どうしてだろう、前がよく見えなくなってきているぞ?


「お互い頑張りましょう……!」


「そうだな……!」


 お互いに熱い握手を交わす。


「なんかヤクザ同士仲良くなってくれてよかったよ」


「「誰がヤクザだ!」」


 人を見た目で判断するのはいけないことだぞ!


 そして、この人とは仲良くなれそう!


「あぁそうだ、名前だったな。俺は『栂野圭市(とがのけいいち)』だ。よろしくな」


「どうも。一応知っているとは思いますが、俺は纐纈翔夜です。よろしくお願いします」


 ヤクザ顔で保育士っていったい何の冗談かと思ったけど、結構いい人そうだな。


「あー、ずるいぃ。私も自己紹介するぅ」


「まずは姿勢を直せよ……」


 こちらの会話に参加してきたが、それでもだらしない姿勢のまま、そしてこちらに顔を見ない状態でいた。


 栂野さんも呆れてるじゃん、直そうよ……。


「私はぁ、神長原千尋(かなばらちひろ)だよぉ。よろしくねぇ」


「……あの、えっと、よろしくお願いします」


「その周りからの目を気にしない精神力は尊敬に値するよ……」


 手を伸ばしてきたので、一応握手を交わす。


 それでもそのだらしない姿勢を崩さないのは、ある意味すごいと思う。


「普通相手の目を見て自己紹介するだろうに、そこが人としてダメなところだな」


「翔夜君はぁ、優しいからいいのぉ」


「え、あ、ちょ、あの……!」


 校長に言われて直そうとしたのかと思ったが、どうしてか俺に抱き着いてきた。


 マジで、なんで抱き着いているの?


「おう、死ぬ覚悟があるんだな?」


「わぁ、こわい~助けて~」


「あの、あの、あのぉ!」


 なんか校長が怒っているし、それにあの、抱き着いているのが腰なんですね。


 それでね、神長原さんの頭部がね、俺の息子の位置にあるんですよ!


 ちゃんと見ていなかったからわからなかったけど、神長原さん意外と着やせするタイプらしくね、そのね……。



 やめろぉぉぉぉぉぉ!!!



「こいつはそういう女だから、ガンバ」


「助けてはくれないんですねぇ!? というかこの人力強いな! 全然引きはがせねぇんだけど!? これ本気でやっていいの!? やっちゃうよ!?」


 俺を憐れむように眺めていないで、助けてくれませんかね栂野さん!


 というかですね、そろそろ離れてくれないと俺の俺が危険なことになりそうだよ!


 俺だって男の子なんだからね!?



「あの、何しているんですか?」


「陸! ……と奈那も!」


 俺たちが、というか俺がどうにか引きはがそうとしていると、見知った顔の二人がやってきた。 


「あー翔夜君は知らなかったね。彼らもシスト隊員だから、今回の作戦に参加するんだよ」


「なるほど、二人が残りのメンバーだったのか……。まぁそれはそれとして……」


 残り二人は誰だったのか気にはなっていたが、しかし今はそれは置いておいて……。



「この状況どうにかしてくれない!?」


「魔力が多い人に抱き着くのはぁ、気分がいいのぉ……」


 やっばいよ!? ちょっと離れてほしいんだけど!? 俺本当に獣になっちゃうんだけど!


 そうだ、こういう時こそ沙耶を数えるんだ!


 えっと、沙耶が一人……。一人いれば俺幸せだな。


 あれ、なんか心が落ち着いてきたぞ?


 なんか、この人に興奮している自分が不思議に思えてきたわ。


「おい、ここら一帯が更地になる前に、離れろ」


「ねぇ、あんたはなんでキレてんの!?」


 なんとか心を落ち着かせてきたというのに、こいつがとんでもないことを言うもんだからまた更に慌てるじゃん!


 ここら辺を更地って、俺でもそんなことしないと思ったけどごめん俺山を更地にしていたわ……。


「うるせぇ、殺すぞ」


「理不尽!」


 もうホントにどうして怒っているのだろうか。さっぱりわからん!



最後まで読んでいただきありがとうございます。

次回も頑張って投稿しますので、改めてよろしくお願いします。

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