第八十二話 新たな仲間
授業が終わり、昼休みとなった。
あるものは購買へとダッシュし、またあるものは仲間内でお弁当を食べる。
そんな中俺たち五人と二人は、この学校の屋上へと来ていた。
「いやぁ、ここに来るのも久しぶりだね~」
「といっても、一か月くらいだけどな」
約一か月ぶりとなる、屋上である。
大体昼飯は沙耶たちと一緒に食べるから、必然的に教室になることが多かった。
そのため屋上に来ることなんてほとんどないのだ。
誰かに告白されるなんてイベントもないしな……。
「ここは大丈夫……なのか?」
「大丈夫大丈夫」
転校生二人は訝しげに見つめてくるが、結奈は大丈夫だと断言した。
まぁここで神の使途について話したわけだから、恐らくは聞かれていないと思う。
人の影も全然ないしな。
「ここって、立ち入り禁止だから」
えっ?
「「初めて知った……」」
ここは俺と怜は知らなかったが、立ち入り禁止だったらしい。
道理で生徒が全然いないわけだ。
「知らないで使っていたんだ……」
「というか、ここに来てしまってもよかったんでしょうか……」
沙耶とエリーも関係がある話だろうと思ってついてきてもらっている。
もし怒られるときは一緒だな!
「それで、話ってなんだ?」
「まずは何から話したらいいか……」
話があるということで屋上へと連れてきたが、陸は何を話すか言い淀んでいた。
恐らく先日のことか自分たちのことか、なんにしろ言いにくいことは確かだろう。
「その……俺たちは、友達……か?」
「俺はそのつもりだけど……違うのか?」
「そっか……それはよかった……!」
何をいまさら。
そう言おうと思ったが、彼らは変な宗教団体にいたんだ。
そう……沙耶を誘拐した、クソ女神を信仰しているくそったれな宗教だ。
そんなところにいたんだから、不安になってしまうのも仕方がないのだろう。
偏見だがな。
「それで、話しておかなければいけないことがあるんだ」
「なんだ?」
決意した目で、俺たちへと兄の陸は話始める。
「僕たちの瞳って、異様に赤いだろう?」
「赤いな。充血がひどんじゃないかって思うくらいには」
「酷い例えだね……」
彼らと会った時から思っていた。
本来白くなければいけないところが真っ赤になっているということを。
……人とか食べないよね?
「それなんだけど……」
そこで一度切り、決意したようにその重い口を開いた。
「僕たち兄妹は、魔物と人間のハーフなんだ……」
「「えっ!?」」
沙耶とエリーが驚く中、俺たちはというと。
「「「へぇ~」」」
まるでどうでもいいかのような、あまり関心がわいているようには見えないような反応をしてしまった。
「えっと、それで?」
意を決して言ったようだが、だから何だという話だ。
「……なんとも、思わないのか?」
「いやまぁ、身体は大丈夫なのかとかは思ったけど……」
「別にそれを知ったから何かが変わるってわけじゃないし~」
「僕たちの前では、ねぇ?」
俺たち三人は女神と出会っているのだ。
そして転生者であり、神の使徒でもある。
そんなこの世界では余所者同然の俺たちがいるのだから、魔物と人間のハーフがいてもおかしくはないと思っている。
「そして翔夜がいるもんね~」
「なんで俺なの?」
普通神の使途がいるんだから、そこは俺たち三人じゃない?
もしかして結奈って俺を別の生き物か何かだと思っている?
「だって、もしかしたら私たちは……ここで暴れてしまうかもしれないんだよ?」
「そうか」
「そうかって……」
妹も妹で、自分たちがこれほどあっさり受け入れられるとは思っていなかったようだ。
まぁほかのやつらだったら、もしかしたら怯えていたのかもしれない。
だけど……。
「ここにはお前たちよりも強い奴はいるんだ。少なくとも、俺たち五人はな」
そしてその中には、神の使徒というチートを体現したやつが三人いる。
もし暴れてしまったとしても、抑えることが可能なのだ。
「それに、あの人たちがいるしね~。万が一も起こらないでしょ」
結奈が言っているあの人たちというのは、中舘さんたちの組織のことだろう。
生体感知魔法で探そうと思ったけど、ここは学校であるためわからないが、どこかにはいるんだろうな。
「というか、君らって意外と饒舌に話すんだね」
「確かに。初めて会ったときは片言だったしね~」
「そうなのか?」
怜と結奈は彼らと戦っているから、その時話したのだろう。
二人は強かったのかな?
「あーそういえば、まだそれで僕より優位に立とうとしてる~?」
「し、してないしてない! そんなこと、もうしないよ!」
結奈は奈那の胸を指さして、何やら怖い笑みで問いただしていた。
「何話してんだ?」
「翔夜が知らなくていいこと」
奈那も怯えているし、いったい何を話しているのか気になった。
だけど、怜は俺がかかわってほしくなさそうにしていたし、それに知らなくていいならこれ以上首を突っ込まなくてもいいか。
「なんというか、君らは変わっているな……」
「そうか?」
敵対していた二人の様子を見て、そして俺たちの反応を見て、陸はどうやら
「今まで会った人たちは、私たちのことを『六号』『七号』って呼んでたし、人として扱ってくれなかったから」
「……二人の名前を考えたのって誰なの?」
「陸に奈那だもんね……」
「あぁなるほど。安直極まりないな……」
六は大字にすれば陸で、七はそのまま奈那ってことだろう。
ほんと、考えた人は絶対面倒だから
「まぁともかく!」
俺はここで一旦区切り。
「俺たちはお前らを友達と呼ぶし、お前らが魔族とのハーフとかどうでもいい!」
双子が段々と自身の中にある黒いものが出てきてしまっているため、この話を終わらす。
「そんで、これからはお前らは自分勝手に生きればいい!」
彼らがどう生きようとも、俺らがどうこう言えるわけではない。
助言や相談には乗るが、自分の人生は自分で決めるものだ。
「俺たちは友達なんだから、そんな小さいことを気にするな!」
実際彼らにとっては深刻な問題なのだろうが、神の使徒にはどうだっていい。
それよりも。
「というわけで、飯食うぞ!」
「どういうわけ?」
俺はもう腹が減っているのだ!
早くしないと食べる時間が無くなってしまう!
「なんというか、変わっているな……」
驚いているというよりは呆れているようだった。
だがすまんな、そんなシリアスな空気は俺は好かないんだ。
慣れてくれ……。
「あ、僕たちは翔夜には賛同するけど、一緒にしないでね?」
「なんでだよ、同じ穴の狢だろ!? 同じ目標を掲げている仲間だろ!?」
結奈はどうしても俺と一緒にされたくないようだ。
だが残念ながら俺たちは『打倒:クソ女神』を掲げているのだ。
一緒にクソ女神を殺そうぜ!
「いや、別に犯罪に手を染めるのはちょっと……」
「誰がヤクザだ!」
反射的に答えてしまったが、ある意味やることは変わらないような……。
「誰かを東京湾へと鎮めるのかな?」
「んなことしねぇわ!」
怜も怜で何言っているのだろうか。
俺そんなこと今までしたことないよ!?
もちろん、これからもしないからね!?
「本当に、君らは変わっているね……」
「だからこそ、私たちを受け入れてくれたんだと思う……」
「おいそこ、嬉しそうにしているところ悪いんだけど、今のやり取りを見て判断をしないでくれよ?」
双子は俺たちがどんな人物であろうとも、受け入れてくれたことが嬉しかったのだろう。
こうして普通に接してくれることが嬉しかったのだろう。
友達と言ってくれることが嬉しかったのだろう。
「「ありがとう……!」」
だからか、彼らは今までで一番の笑顔で、俺たちに感謝を述べてきた。
「気にすんな」
「そうですね……。悪さをしないなら、私たちは友人ですしね」
警戒していたエリーも、もう彼らの笑顔を見て敵対しようなんて思わないだろう。
これからは、友人として接していけると思う。
「エリーは友達を欲しがっていたもんな」
「べ、別にそんなことありませんよ!」
「ほらほら、ご飯食べよっ」
エリーをからかってみたのだが、ちょっとムキになった沙耶が俺の手を引いて座れる場所へと連れていく。
こういうのを焼きもちを焼いているって思うんだけど、そう思っている間は絶対そんなことはないんだろうなって思う。
今までの経験則っていうやつだな。
まぁでも、沙耶と一緒に食事をとれるだけで俺は幸せだけどな!
「そういえば、気になっていたことがあるんだけど……聞いていいかな?」
「なんだ?」
みんな俺たちの周りへとやってきて、各々昼食を食べようとする。
そんな中、陸はおずおずといった様子で質問してきた。
「えっと……翔夜と沙耶、だよね?」
「俺らだな」
まだ俺たちの顔と名前が一致していないのだろう。
だがそれは、これから覚えていけばいいんだ。
「うん。その……」
いったい聞きたいこととは何なのだろうか。
「二人って、付き合っているの?」
「「ごほっ、けほっ……!?!?」」
俺たち二人は、食べている最中だったため思い切りむせてしまった。
「いやいや、あの、えっと、その……!」
「つ、つ、つつ、つつき、つつつつき……!」
「二人がショートした……」
一体なんて質問をしてくるんだ!?
そのせいで俺たちはなんて言っていいかわからなくてフリーズしちゃったじゃん!
というか、これなんて答えたらいいの!?
付き合っていないって否定はしたくないよ俺!?
「まだ二人は付き合っていないよ~」
「まだ、ですけどね……」
どうしようか焦っていたが、どうやら結奈が助け船を出してくれた。
自分が言うのと他人が言うのとでは全然違うからな!
というかエリーよ、まだってどういうこと?
「わかりやすい反応だな」
「でしょお?」
わかりやすいって、俺が沙耶のことを好きなことがか!?
いや、でもそのことを知っているのは俺の家族くらいだし、こいつらが知るわけがない!
ならそれはいったいどういうことなのだろうか……?
「だけど、まだなら問題ないだろう」
「そうだね」
そんな俺の気持ちを知ってか知らずか、彼らは自分たちだけで納得して話を進めていく。
「それってどういう———」
沙耶が聞こうとするが、その前に奈那は俺の前へと移動して……。
「あの……私と、付き合ってください」
「…………だぁ?」
「あ、壊れた」
今日この日、前世も含め俺は、この世に生を受けてから……初めて告白をされた。




