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第八話 懐かしき新たな出会い


 俺は今、屋上へと来ている。あの金髪美少年もとい、剱持怜について行ったらここへとやってきたわけだが、


「ここなら誰も来ないかな」


「いや~、久しぶりだね!」


 振り返って


「……えっと、どちらさんで?」


 今自分にできる最大限の朗らかな笑みを浮かべて、目の前の人物が誰か問うてみた。誰だこの金髪の美少年は?記憶がなくなる以前の俺の知り合いかな?というか、もう今日の日程は終わったのかな?あれ、そういえば起きたときに沙耶がいなかったような?友達でもできて何処かにいっているのか?


「あー、見た目が少し変わったからわからないか」


 恐らく俺が金髪の美少年のことを思い出すことが出来なくて、困ったように笑っているんだろう。以前俺に会っていたんだろうが、すまんな。俺は君のことを思い出すどころか記憶がなくなっているから覚えていないんだ。あのクソ女神が神の槍を誤って落としてしまったせいでな!


「うーんと、赤ちゃんプレイしなくてよかったね、って言えばわかるかな?」


 ……は?


「え、ちょっと待て。えっと、あれか?あの転生するときに一緒にいた金髪イケメンのあいつか?」


「うん、そうだよ。覚えていてくれてよかった!」


 屈託のない笑顔を浮かべて喜んでいるところ悪いんだが、俺はとても驚愕しているよ。なんなんだよ、その変わりようは!


「いやいやいや、ちょっとじゃねぇよ!全然見た目変わってんじゃねぇか!イケメンが美少年だぞ!?」


「あはは、美少年だなんて」


 頭を掻いて照れているのを誤魔化している。なんだろう、無性に殴りたくなった。


「いや、そこじゃねぇよ!なんでそんなに劇的ビフォーアフターしてんだよ!畜生!」


 こんな姿を見ると女にも見えるな!人に好かれそうで羨ましい限りだよ!くそ、なんか知らんが敗北感が俺を襲っている!


「そういえば、纐纈君は見た目全然変わってないね。少し幼くなったくらい?」


 俺のことを足のつま先から頭のてっぺんまでしっかり見て言ってきた。


「そうなんだよ!あのクソ女神が見た目を変え忘れたらしくてな!」


 俺はあのクソ女神への怒りが沸騰してきた。そうだ、本来なら俺も顔を変えてもらえるはずだったんだ!


「え、女神様に会ったの?というか、クソ女神は酷いんじゃないかな?」


「違う、手紙を貰ったんだ。そんで、これがそうだ!」


 俺はあのクソ女神に対しての憎しみを忘れないように、今までずっと肌身離さず持ち歩いていた手紙を懐から出した。


「うわ、すっごいグシャグシャだ」


 少々、というかかなりグシャグシャになってしまったが、一応読むことは出来る。破かなかっただけでも俺のことをほめてほしいもんだよ。


「これを読めば俺がクソ女神って言っている理由がわかるから、読め」


 ぶっきらぼうに手紙を渡した。それはもう雑に。手紙がどうなろうと知ったことではない。






「……なるほどね~。これなら纐纈君が怒っている理由が理解できるよ」


 手紙を俺に渡しながらよかった、この世界に来て初めてこんなに話せたよ!そして、初めての理解者が出来た!


「だろ!?だから俺は、あのクソ女神を殺すと決めた!」


 握りこぶしを作り、強くそう宣言した。あのクソ女神が存在していては俺やほかの人にも被害が及ぶ可能性もあるから、早急に殺さなくてはいけない!……はい、嘘です。普通にムカつくからです。


「いや、せめて殴るだけにしておこうよ~」


 あ、殴るのは良いのね。


「いや、神だし殺したぐらいじゃ死なないでしょ」


 俺の中の神という存在は、殺してもすぐに復活すると思っているからな。


「そういうもんかな~?」


 疑問に思っているようなんだが、そういうもんだと思ってくれ。


「そういえば、もう一人いた男の人知らない?」


 今思い出したかのように言ってきた。あの場にいたもう一人の被害者か。


「あーそういえばもう一人、黒髪のイケメンがいたな~」


 記憶には眠そうにしている顔がイケメンな青年がいた。


「その反応は、知らないんだね」


 ということは、こいつも知らないんだろうな。


「あぁ、この世界に来てずっと勉強尽くしだったからな」


 そうだよ、あのクソ女神が神の槍なんてものを落として記憶喪失になっちまったから、必死で以前の学力に戻そうとひたすら勉強したんだよ。


「あー、ここかなりの名門校だからね。それに、こっちには魔法学とかいろいろあるから大変だったでしょ?」


「大変なんてもんじゃねぇよ!マジで全然わかんねぇんだよ!また基礎的な勉強をしたくないから義務教育課程をすっ飛ばしてくれって頼んだのによ、くそったれ!俺は元々出来ないのに、なんでこんなエリート高校に来てんだよ!ちくしょー!」


 俺は入学するまでに勉強をしてきた日々を思い出して、懐かしく思った。あの勉強量は本当に大変だった。前世で高校受験をするときの勉強量より、大体十倍くらい大変だったよ!あー、前世で受験勉強したの一週間だけだった……。


「まぁまぁ、この高校を出ればかなりいい職に就けるから」


 落ち着けと言外に言っているようだ。


「まぁそうなんだけど……」


 確かにここを卒業すればいい職場に就職できるけど、そのためにつらい思いをするのは間違っているような……。


「それに魔法師は実力主義なところもあるから、僕らは神の使徒だしたぶん問題ないんじゃないかな~?」


 そんなこと初めて聞いたが、そんな考え方でいいのか?


「楽観的な考え方だな」


 いろいろと考えてないと人生どん底になっちゃうぞ?


「まぁね。だけど、二度目の人生だし、楽しまないと!」


 とてもいい笑顔で言うもんだな。まぁ確かに一理あるな。


「確かに、そうだな!」


 前世では楽しむというより、どうやってうまく生きていくかを考えていたからな~。


「なんか、お前と話せてかなりスッキリしたよ。サンキューな」


「こちらこそ、僕も纐纈君と話せてよかったよ」


 やっぱり前世のことを含めて色々話せる相手は良いもんだな。だが、その前に訂正してもらいたいことがある。


「……なぁ、その纐纈君ってのはやめてくれないか。なんか仰々しくて好かないし、それに同じ神の使徒なんだから、気軽に翔夜って呼んでくれ」


 今日初めて話した仲だが、これだけ仲良く話しているんだし、他人行儀な呼び方は俺は好きじゃない。


「わかったよ、翔夜。じゃあ僕のことも怜って下の名前で呼んでくれ」


 やっぱり俺だけ剱持のことを名字呼びじゃあ変だもんな。


「あいよ。ところで、怜はアメリカ人なのか?」


 ふと、疑問に思ったことを聞いた。


「うーんと、半分正解かな。僕の父親が日本人で、母親がアメリカ人なんだ。前世では両親がどちらもアメリカ人だったから、片親が日本人っていうのはなんか新鮮な感じがするよ」


「なるほど、今はハーフなのか…」


 少々気になったことを聞いて俺は唸る。


「何か気になることでもあるの?」


 俺がなぜ唸っているか気になったのか、不思議そうな顔をして聞いてきた。よく俺は悩んでいる顔が怖いと言われてきていたから、怖がらないやつは沙耶とか身の回りの人以外には、怜が初めてだ。あれ、なんかこいつ俺の初めてが多いな……。


「あぁいや、俺たちは言語翻訳能力があるから、普通に話せているのかと思っていたから」


 怜とは今まで普通に会話出来ていたのは、言語翻訳能力のおかげで話せていると思い、確認のために聞いた。神が初めにそんなことを言っていたのを思い出した。


「なるほどね。確かに知らない言語を見たり聞いたりすると、自分の母国語に翻訳されるね。あぁでも、神様に会ったときの母国語だったらしく、僕の場合は英語に翻訳されるよ」


「ほーん、そうなのかー。便利なのか不便なのかわからんな」


 今は日本人なのに英語に翻訳されるのは、俺からしたら微妙としか思えんな。


「まぁ知らない文字を読んだり、知らない言葉を聞いたり出来るんだから、便利なんじゃないかな?」


「それもそうだな」


 そう考えれば言語翻訳能力は便利なものになるか。クソ女神よ、これだけは一応感謝しておこう。


「……言語翻訳能力はこの世界にはあるのか?」


 神からもらった能力だからな、この世界にあると考えないほうがいいだろうし、確認のため聞いた。


「いや、僕の知る限りは聞いたことはないよ」


 だろうな、俺も聞いたことないもん。神様マジパネェっす。でも、俺はあなたのことを殺害します。絶対に!


「じゃあこの話も人前では出来ないな~」


「そうだね~」


 人前で話せないことが増えて少々残念に思う。それだけに、俺たちは仲良くやっていかないとな。


「いやー、今まで誰にもこんな気楽に話せていなかったから、なんか嬉しいなー!」


 マジでこういう話は今まで周りの人間にも話していなかったから、怜は結構ありがたい存在だな。


「え、でも隣の女子とは結構気さくに話していなかった?」


「あー、沙耶は俺の幼馴染なんだが、どうしても神の使徒とかそういうことは話したく無くてな…」


 最初は言おうかと思ったんだが、どうしても嫌われないかとか考えちゃって、ずっと言えないでいるんだよ。


「そっかー、それじゃあしょうがないか」


 何かを分かったかのように怜は納得している。おい、心を読んでいるんじゃないんだろうな?聞かれていたら結構恥ずかしいぞ?


「怜は誰かに自分が神の使徒だってこと言ったか?」


 俺はそういう理由で言ってないが、怜は信頼できる人が出来て神の使徒だということを言っている人がいるかもしれない。いや、俺が沙耶を信頼していないわけじゃないぞ?寧ろ結構信頼している!


「まさか、言うわけないじゃん。もし仮にその情報がどこからか漏れて、アポストロ教にバレたら不味いし。それに、そもそもそんなこと言ったとしても、誰も信じようとはしないよ」


 誰だって荒唐無稽な話は信じられないからな。俺だっていきなり言われたら信じられないもん。他人に言えるわけないよな~。


「確かにそうだな。子供の妄言だと言って無視されるのが落ちだもんな」


 現実的でない話はみんな否定しようとするし、前世でも今世でも…ん?


「あれ?普通にスルーしちゃったけど、アポストロ教ってなんだ?」


 いやまぁなんとなく話の流れで予想することは出来るけどさ、一応聞いておかないとな。


「う~ん、神様を信じている狂信者の集まりかな」


 うわ~、なんか前世でそういう宗教あった気がするな~。そういうのはどこの世界にもいるんだな。


「それは、前世にもいたんじゃないか?」


 何とは言わないけどさ、そういう集団は会ったことあるからな。


「いやいや、被害が結構ひどいんだよ。最近だと、神様を馬鹿にした人たちを、人目もはばからずに惨殺したっていうニュースがあったよ」


「なにそれ怖っ!。ただの犯罪者集団じゃん」


 思ったよりやばい集団だった!なんだよ薬でもやっているんじゃないかそいつら。いや、洗脳でもされているんじゃないか?こっちだったらそういう魔法もあるようだし、可能性としてはありそうだな。なんだよ神を信じている狂信者とか。


 俺は信じたくないけど、実際に会ったから信じざるをえないんだよな。あのクソ女神め、こういう集団にこそ神の槍を落とせよ!……あれ?


「……俺って結構悪口言ってるけど、ちょっと危なかったりする?」


「ちょっとっていうか、かなり危ないね。クソ女神だの殺すだの言ってるし。それに、神の使徒なんて、それこそ馬鹿にしていると思われちゃうから」


 お~い、そんないい笑顔でいうことじゃないぞ~?神の使徒はおまえも関係してくることだからな~?俺だけの問題じゃないぞ~?いや、俺しか神について悪口を言ってないけどさ。


「そのうちサリンとかばら撒きそうだな!」


 それはもういい笑顔で冗談を言ってみた。なんか、こういう話を織り交ぜて話せるくらい気を許せるな。


「いや、もうばら撒かれてる。しかも警察署に」


「どんなところにばら撒いてんだよ!警察に喧嘩吹っ掛けるとか、頭イカれてんな!」


 冗談が現実に起こっていたし、それに予想より上を行ったよ!俺は地下駅だと思ったよ!この世界の連中は少々ぶっ飛んでいるんじゃないか!?


「その事件はアポストロ教とは一切関係ないって教祖は言ってるけど、まぁ普通に関係者なんだよね~」


「そんな連中と関わりたくねぇ……。解散しちまえよ」


 そんな連中はトカゲの尻尾の如く切り離すんだろう。どこの世界も人という生き物は変わらないな。実際のところはわからないけど。


「まぁ、関わろうと思わなければ会わないでしょ。それに、普段から神について話さなければ大丈夫」


 なんで怜はそんな気が楽なんだろうか?


「これから神についての発言は気を付けないといけないな」


 ほんっとうに気を付けないとマジで狙われかねないな!


「僕と二人でいるときにしか神について話さないんだし、大丈夫だよ」


「まぁ、そうだな。一々気にしていてもしょうがないか。」


 確かに、何でもかんでも難しく考えているよりは、怜を見習って少し気楽に考えていこうか。


「あ!」


 やばい、俺はとんでもないことを思い出してしまった!


「ど、どうしたの?」


 俺がいきなり大きな声を上げたために、怜が驚いた様子で聞いてきた。いや、これは本当にやばい!なんで今まで思い出せなかったんだ!


「沙耶がどこに行ったか分かるか!?」


 沙耶の居場所を知っているか怜に詰め寄って聞いた。こんな場所に俺と沙耶が離れ離れとか本当にまずい状況だ!


「えっと、翔夜の幼馴染だよね。他の女子と話していて、翔夜を僕に託して帰っていった」


「なん、だと……!」


 この事実に俺は段々と顔から血の気が引いていくのがわかる。顔に出ているか自分ではわからないが、ひどい顔をしているんだろうな。


「そんなに沙耶っていう幼馴染が大切なの?」


 心配そうに怜は俺に聞いてきた。


「いや、それもあるんだけど……」


 俺にとって沙耶はとても大切な存在だ。こちらに来てからはほとんど毎日顔を合わせるくらいに一緒にいたんだから、それはもう心配だ。だが、今ここで本当に懸念しなければいけないことは———


「俺が家に帰れなくなる!」


「……は?」


 おーい、美少年なんだからそんなに口をだらしなく開けているんじゃない。せっかくのモテそうな顔が台無しだぞ?


 というか、『は?』はないだろう!


「俺な、今日眠くて沙耶について行っただけだから、通学路とか全然覚えていないんだよ!だから、沙耶がいないと俺、今日家に帰れないかもしれない……!」


「えぇ……」


 そんな複雑そうな顔をするんじゃないよ。俺にとっては重要なことなんだぞ?家に帰れないということは、宮本さんの料理が食べられなくなるんだからな!


 前に未桜と鈴で日本中を周ったことがあったんだけど、その時は未桜の背中に乗っていたから場所とか覚えていないんだよ!


「あーでも、僕たちなら大丈夫じゃん」


「え、なんでだ!?」


 なんでこいつは飄々としているんだ?俺の精神は全然大丈夫じゃないんだぞ!?もう今すぐにでも沙耶を探しに行こうかとしているくらい精神に余裕がないんだぞ!?


「だって、空間魔法の派生で転移魔法が使えるじゃん」


 ……は?


「え、マジで!?使えんの!?本日二度目の驚きだわ!」


 おいおいマジかよ。転移魔法が使えるとか、なんて人生イージーモードだよ。これなら日々の通学が結構楽になるし、道に迷ったとしてもすぐに家に帰ることが出来るな!…おいクソ女神よ、礼は絶対言わないからな。


「え、使おうと思えば使えるでしょ?」


「ほとんど出歩かなかったら、使おうとも思わなかったもんでね!」


 日々勉強しまくっていたから、外に出かけるということはしなかったんだよ。出かけたとしても、未桜と一緒に空を飛んだくらいだったからな。


 というか、空を飛んで家を探せばよかったんじゃね?あれ、全然問題なかったな!


「あー、使おうと思わないと使えるなんてわからないもんね」


「よし、使い方わかった。サンキューな!」


 いつも通りに使おうと思ったら、頭の中に使い方とかいろいろ現れてきた。これは超便利だな!行ったことのないところや、目視で確認できないところは転移できないけど、それ以外は行くことが出来る!


「いえいえ、どういたしまして。じゃあ、これからよろしくね」


「おう、これからよろしく!」


 嬉しそうに握手を求めてきたので、俺もその握手を握り返す。


 入学初日からいろいろ問題はあったけど、怜に巡り合えたし、転移魔法を教えてもらったし、結構いいことがあったな。


「そうだ、これもついでに聞いておこう」


「ん?なんだい?」


 俺は常識とか身に着けたつもりだけど、まだまだ分からないことはあるから、気になったことは逐一怜に聞いておこう。


「転移魔法って、みんな使うことって出来る?」


 転移魔法は世の中では名称くらいは知っているんだ。ただ、それは日常的に使われているということがわからないんだ。


「ん~、僕と翔夜以外には知らないかな~?」


 はいはいわかっていましたよ。転移魔法はそう易々と使っていいもんじゃないってことくらい。人前で使ったらとても目立っちゃうからな、これも人前で使うのを自粛しますよー。




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