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第三十五話 使い魔の活躍


 いちごの本体が死んだことを確認して、俺は怜と共に子いちごの残党を倒しに向かった。


 といっても、俺たち神の使徒は積極的には参加せずに、主に沙耶とエリーの補助程度にしか倒さないようにしている。


「うーん、グループのためになって早く終わらせる方法とかないものかね?」


 二人の為とは言っても、流石に今ここにいる子いちごの数は計り知れない。もう見渡す限り子いちごばかりで嫌気がさしてくるよ。だから俺はもっと効率よくする方法を考える。


 そういえば、こいつらってこんなに多かったっけ?俺は本体ばかりを気にしていたし、なんだかもう後ろにいるみんなに任せていたから全くわからなかったよ……。


 いやね、生体感知魔法を使っていると言っていたけど、それは自分の周囲と本体にしか気を配って発動していなかったんだ。だから子いちごの数とか全く把握していません!


「さてさて、どうしたもんかね?」


 俺は本体の茎の上に登って周りを見渡しながらそう呟いた。足の踏み場がないというのは大げさかもしれないが、それでもかなりの数がいることが確認できる。


 生体感知魔法を使って探したほうが早いと思うかもしれない。だが、魔法を使うようになってから二か月くらいしかたっていないので、どうしても俺はこういう時は魔法を使わずに行動を起こしてしまうんだ。


「口ばかり動かしていないで手足も動かしてね?」


 どうやら俺がつぶやいた声が怜に聞こえてしまったようだ。流石神の使徒と感心してしまうな。


「そうは言うがな、こいつらの相手はほとんど沙耶とエリーがしてくれるから大丈夫だろう」


 俺らが話している間にも、沙耶とエリーは子いちごを狩っていた。


「そうだけど、せめて彼女らが戦いやすくこの場を整えてあげるとかしようよ」


「この場を整える、かぁ……」


 そう言い辺りを見渡すと、そこには主に俺が荒らしてしまった光景があった。いや、俺は悪くない!悪いのはこの本体のせいだ!


 そういうことにして、俺はこの地を沙耶とエリーが二人が戦いやすいように整えようかと考え始めた。


「そういや、この子いちごってガスが体内に含まれているから、絶対このドームに溜まっているよな?」


「そうだね。そのせいでこのドームは火気厳禁の状態になっているね」


 思い出したのだが、この子いちごは体の中にガスが含まれている。それがもう数えきれないほどの数を俺たちは倒したのだから、このドームはガスが充満していることだろう。


「静電気とか、ちょっとした火でも大爆発しそうだよな~」


 ガスで充満しているなら、ここで俺らは呼吸が困難なはずなのでは?と疑問に思う。だが、恐らく沙耶とエリーは何かしらの魔法を使っているのだろうな。だから平気なんだろう。


 それに俺たち神の使徒は言わずもがな、ガスで充満していようが普通に呼吸ができる。


「僕らが換気とかしてどうにかしてあげたいけど、臭いのないガスをどう判断すればいいかわからないからどうしようもないんだよね~」


 困ったように怜は言うが、確かにその通りだ。例え嗅覚が強化されていたとしても、ガスの匂いを判別することは出来ない。


「俺たちはなんにもできそうにないし、まぁ一応は子いちごの数でも減らすかね……」


 そういって俺は子いちごが今どれだけの数がいるか、辺りを見渡した。みんなが倒してくれたから、先程よりは数は減っているな。


「では、未桜に任せてみてはどうでしょう?」


「うぉぉぉぉぉぉぉ!あーなんだ鈴か!いきなり出てきたからびっくりした!」


 俺が今まさに子いちごを狩りに行こうかとした途端に、鈴が俺の後ろから声をかけてきた。急に声をかけてきたからかなりびっくりして、今までにないくらい驚いちゃったよ!


「驚かせてしまって申し訳ございません。主様が記憶をなくされる前の癖で出てきてしまいました」


「記憶をなくす前は普通に出てきていたのか……」


 記憶をなくす前は結構フレンドリーだったのかな?それはそれで羨ましいが、急に出て来られるとびっくりするな。


「不愉快でしたら、もう勝手に出てくるようなことのないように未桜にも言いつけておきますが、いかがいたしましょうか?」


「いや、不愉快なんて思っていないよ。ただびっくりしただけだからさ」


 ただ普通にびっくりしただけだから、不快なんてことは思わない。寧ろこんなかわいい狐っ娘が会いに来てくれているんだから、びっくりしても喜びが勝っちゃうよ!


「それで、未桜に任せるってどういうことだ?」


 そんな喜びをおくびにも出さずに、鈴が言ったことについて聞き返した。まさか未桜がこの子いちごを全部食べるとは思わないが、いったいどうするんだろうか?


「はい、未桜でしたらこの場にあるガスを消すことが出来ますし、主様の負担を減らすことも出来ます」


「いや、別に負担ではないんだが……。まぁそうだな、じゃあ未桜を呼んでこの場の空気を何とかしてもらうか」


 まさか未桜が、ここの空間に充満しているガスを消すことが出来るっていうのは驚きだな。


 いやな、あんなボーっとしているのにそんなことが出来るんだなって思ってな。だが、信頼関係を築くためにも、そんなことを口に出したりはしないがな!


「はい、それがよろしいかと。それと、私からお願いがあるのですが……」


 頼みづらいことなのか、少々もじもじしながら顔を赤めらせて上目遣いで懇願してきた。顔がにやけてしまいそうになるが、ここは主としての維持で無表情を貫いた。


 やっべぇ、くっそかわいいな!なんだよこの可愛い生き物は!?普通だったらみんなにやけてしまうだろうな!……俺顔に出ていないよな!?ホントに大丈夫だよな!?


「なんだ?」


 よし、平然と、何も動じていないように答えることが出来たぜ!これで鈴の主としての威厳は保てただろう!


「あの、私たちもいちごを食べたいなと思いまして、それで、あの……」


「……アッハッハッハ!そうかそうか!」


 いやはや、まさか鈴がそんなことを言うとは思わなんだ。意外過ぎて声を大にして笑ってしまったよ。


「あ、主様?」


「いや、なんだか鈴って表情が硬いからさ、何にも興味がないのかなって思っていたんだ」


 こういう風に俺に対して私情を挟んだお願いをしてくれるというのは嬉しいな。これからも俺は怒ったりしないからちゃんと言ってくれ!


 えっ、結奈とか神様に怒っているじゃないかって?それはあいつらが、温厚な俺を怒らせるようなことを言うのが悪い!


「だから、いちごが食べたいだなんて可愛いことを言ってくれて嬉しかったんだよ」


「か、可愛いだなんて……」


 嬉しさで鈴の頭を撫でてしまったが、何度も気を付けようと思っても撫でちゃうんだよなー。まぁ、肌触りがすんごくいいから仕方ないよね!


「よかったねー」


「うぉ、未桜もいつの間に!」


 俺の後ろからひょっこり顔を出して言ってきた。未桜もいつも魔法陣から出てくるから、普通に突然出てきたのがびっくりしてしまった。これからはこういうのに慣れないとな!


「わたしもいちごたべたいなーっておもって」


「あぁ、いいぞー。ちゃんと二人とも食べさせてやるからな!」


 元々俺は二人と一緒に食べるつもりでいたから、そんなこと全然気にしなくていいぞ!


「わーい、ありがとー」


「願いを聞き入れていただき、ありがとうございます」


「おう、これくらいのこと気にするな」


 可愛い子と食べるスイーツって絶対美味しいと思うんだ。しかも大人数ならなおさらだな!


「さて、未桜。ここの空気をどうにかしてくれるか?」


 使い魔である二人が出てきた目的であった、このドーム内の空気をどうにかしてくれるのか聞いた。


「おやすいごよーだよ」


 未桜はそう言って風を右手へと纏わせ、それを上へと掲げた。


 いったいこれから何が始まるのだろうかと身構えたが、時間が経つにつれてどんどん纏っていた風が霧散していき、ついには右手をゆっくりと下してしまった。


「……うーん、何か変わったのか?」


「もちろんだよ。ちゃんとくうきをきれいにしたよ」


 どうやら今のでこのドーム内のガスをどうにかできたようだ。いやでも、なんだろう。この、もう少し派手なことでもするんじゃないかという期待を裏切られた感じは……。


 いや、別に俺が勝手に期待しただけだから、未桜は全く悪くないんだがな。


「そうか、未桜がそういうならそうなんだろうな。ありがと」


「えへへー」


 俺には終ぞわからなかったが、それでもやってくれたのだろうから頭を撫でてあげた。なぜか未桜は俺に頭を撫でられるのが好きなようなので、褒めるときなどはそうするようにしている。


「では、私も参戦したいと思います」


「気を付けるんだぞー」


「はい」


 鈴もこの場に貢献したいのか、大太刀を出して足早に子いちごを狩りに行った。いつも思うんだが、なんであんなにデカい大太刀を軽々と振れるんだろうか?身体強化をしているんだろうが、それでも使いやすいのだろうか?


「ねぇ翔夜、この子たちは翔夜の使い魔?」


「ん?あぁ、こいつらは俺の使い魔たちだ。可愛いだろう!」


 後ろからやってきた結奈が俺に聞いてきた。前もって教えていたとはいえ、聞いただけじゃあ俺の使い魔の可愛さがわからなかっただろうから、俺は自慢してしまった。


 ……さっき未桜を撫でていたの、見られていないよな?見ていても警察に通報しないでね?結構マジで。


「……もう調教済み?」


「お前はなんてこと言うんだよ!?そんなことするわけないだろう!?」


 唐突に結奈からとんでもないことを言われてしまった。いやいや、なんでそういう発想に至るんだよ!馬鹿じゃねぇの!?


「あるじー、ちょうきょうって?」


「未桜は気にしなくてもいいことだからな!」


 ほら見てみろ、未桜が気にしだしちゃったじゃん!何歳かわからないが、そういうことを俺がしているなんて思われてしまったら泣くからな!?強面が泣くって傍から見たら驚くことだからな!?めっちゃキモイからな!?


「まったく、お前は俺のことをなんだと思っているんだよ!」


「女の敵」


「ごめんねぇ!それは本当にごめんねぇ!」


 なんてものを持ち出してくるんだよ!確かにそれは俺が悪いけど、でもそんなに引きずることなのか!?軽く流してくれないかね!?これから気を付けるから許してね!?


「沙耶とエリーは子いちごをかなりの数倒してくれるから、僕が何もしなくても大丈夫そうだよね~」


「話をすぐに変えるなよ……。あー、そういえばお前らは、自分に攻撃してくる奴以外は自ら攻撃はしてなかったな」


 先程から見ていたが、俺を含めて神の使徒である三人は、自分に攻撃してきている奴らにしか攻撃をしていなかった。逆に言えば、それ以外は放置していた。


 というか、先程のやり取りはなかったことになったって判断していいんだよな?すぐに切り替えられることだろうし、俺も気にしなくていいよな?


「あまりやりすぎるとすぐに終わっちゃって、二人のためにならないからね」


「だな」


 何度も言っていることだが、これは演習前の練習のようなものなのだ。だから、あの二人にはたくさん経験を積んでほしいのだ。


 神の使徒である俺たちが自ら狩りに行ってしまったら、二人の為にならない。俺たちはそう簡単にはやられないし、ぶっつけ本番でも意外と何とかなるから問題ない。……経験者は語るってな!


「そういえば、本当にとても今更なんだが、魔法師でもないのに魔物と戦っても良かったのか?」


 俺は以前に使い魔たちと狩りに出かけていたから何ら疑問に思っていなかったが、普通は魔法師でもない人間が魔物と戦うっていうのは法律で禁止されていたよな~。


「あー、こういう管理されているのは大丈夫なんだよ。野良にいるやつはダメなんだけどね」


「そうなのか……」


 何事にも例外ってのはあるが、こういうのは例外に入れていいものなのか?下手したら死人が出るかもしれないんだぞ?そこら辺は、後で落ち着いた状態で沙耶あたりに聞いてみるか。


「ねぇあるじー」


「なんだ?」


 俺の上着の裾を引っ張って未桜が呼んできた。こういう仕草を見ていると、なんだか父親になった気分になって、こんな状況でも頬が緩んできちゃうよ。


 だからさ、結奈はそんな人を性犯罪者を見るような目で俺を見ないでくれないかな?これは父性のようなものなんだよ。そんな目で見られすぎていると、俺の涙腺が崩壊するからやめてね?


「ちいさいのって、ぜんぶたおしていいの?」


「いや、出来れば少しは残しておいてほしいな」


 未桜も子いちごを倒したいのか、俺に聞いてきた。だが、沙耶とエリーのために少しは残しておいてほしいから、今回はお預けだな。


「りんがちいさいのきりそうだけど、いいの?」


「えっ?」


 未桜から発せられたとんでもない情報により、先程俺に向けられていた視線を忘れてしまうほどに驚愕してしまった。だってこのいちご狩りは言わば事前練習のようなものなのだ。鈴にすべて倒させてしまったら意味がない。


 急いで鈴を探すように辺りを見渡すと、一騎当千の如くとんでもない勢いで子いちごを倒していた。あれじゃあすぐにでも子いちごを倒し切ってしまうだろうな。


「りぃぃぃん!ちょっとこっちに来なさーい!」


「はい、なんでしょうか」


 正直もう手遅れではあるが、急いで俺は鈴を自分のもとまで呼び戻した。


「確かにこいつらを切ってくれたことには感謝するし、いちごだって食べさせてやる。だけどな、他のみんなは魔物との戦いを練習しているんだ。だから、今日はもう戦わなくていいぞ!」


「はい、申し訳ございません……」


 俺も焦りによって気持ちに余裕がなくなっていたから、少々力強くいってしまった。なので、鈴はわかりやすく悲しそうに萎れてしまった。


「あー、いや、こっちこそちゃんと言わなかったのが悪いんだし、謝らなくてもいいよ」


 言ってしまってから後悔しても遅いのだが、罪悪感が俺の心を蝕んでいる。あんなに強く言ってゴメンね!俺のいちごも少し分けてあげるから、許してね!


「ねぇねぇ、この子ってもしかして九尾?」


「そうだが?」


 俺の後ろにまで来た結奈が確かめるように聞いてきた。尻尾を見て判断は出来るが、九尾を見るのは初めてだろうから、確認のために俺に聞いたのだろうな。


 あと、この尻尾は俺のもんだからな?絶対に触らせてやらないからな?


「主様、このお方は?」


 先程の悲しそうな表情はなかったかのように切り替えて、隣にいる結奈のことを聞いてきた。こういう時の切り替えの早さを見習いたくなるよ。


 いや、ただ単に俺の近くに沙耶以外の女がいることが、とても珍しいと思ったんだろうけどな……。


「あぁ、まだ紹介してなかったな。こいつは———」


「———翔夜の彼女です」


「はっ?」


 俺のクラスメイトだと説明しようとしたのに、結奈は俺の言葉を遮ってとんでもないことを言ってきた。


「おい、何ふざけたこと言っているんだ!」


 なんてとんでもないことを言いやがったんだよ!俺は今まで彼女が出来たことなんてないんだぞ!?なのにそんなことを言いやがって、俺が女性の胸部についてのことで怒らせたことに対しての当てつけか!?俺の最初の彼女は沙耶がいいです!


「……主様、ようやく伴侶となる人が出来たのですね……」


「……あのー、鈴さーん?」


 結奈の発言を否定して、ちゃんとクラスメイトだということをしっかりと教えてあげようとしたら、なんだか鈴が嬉しそうに涙をぬぐっていた。そんなに彼女が出来たことが嬉しいのか、鈴よ……。


 あと、こいつは伴侶になるやつではないからな?俺の伴侶になってくれる人物が現れるか怪しいくらいなんだからな?……俺一生童貞かな?


「今まで主様を慕う年が近しい女性は沙耶様しかいなかったので、それがまさか友達を超えて彼女が出来たと聞いてとても嬉しく思います……!」


「いやいやいや、こいつ彼女じゃないからな?」


 確かに俺と親しくしているのは、家族を除いて沙耶以外にはいなかったな。学校で使い魔の二人と一緒に昼食を食べていた時には、結奈たちはいなかったから知らないのも当然だ。


 だからこそ言いたい、こいつを彼女にしたら俺はストレスで禿げてしまうだろうと!


「そんな……!僕の腕の中であんなに激しくしていたのに……」


「それはお前が首を絞めるから必死で抗ったんだからな!変な言い回しをするな!」


 これじゃあ、もう俺と結奈が一線を越えているような言い方じゃないか!童貞の俺に何を言っているんだよ!……あれ、なんだが涙が出そうだぞ?


「主様、伴侶となる女性は大切にすべきだと具申いたします」


「だからこいつは彼女じゃないって!」


 俺を少々叱るような口調で鈴は言ってきた。だが、なんで俺が怒られなければいけないのだろうか?結奈は彼女でも何でもないっての!


「今大事な話をしているんだから攻撃してくるんじゃねぇ!」


 子いちごの生き残りが近くに寄ってきて、俺に攻撃を仕掛けてきた。だが今大事な話をしているので、俺の拳により早々にこの世から退場してもらった。


「そんな、私が大事だなんて……ポッ」


「ポッ、じゃねぇよ!無表情で顔を赤らめていない状態でそんなこと言っても可愛くねぇんだよ!そんでお前を大事だとも言ってない!」


 なんでこいつはこんなに無表情でこんなことが言えるんだよ!?やるならもう少し恥じらいのようなものを身に着けてから出直してこい!


「ねぇ、翔夜たちは何やってるの?」


「魔物を前にしてとても余裕そうですね……」


「もう少し緊張感をもってやったほうがいいんじゃないかな?」


「緊張感を打ち消しているのは結奈だからな!?」


 こんな空気を作っているのは全部結奈のせいだからな?断じて俺のせいではない!


「あるじー、このひとたちはともだちー?」


「ん?あー、まぁそうだな」


 未桜から友達かと聞かれたのだが、先程のやり取りを思い出して、これは友達といっていいのか疑問に思ってしまった。


 でも、こんなに仲良く話しているんだし、友達だろうな。


「主様……高校生になって友達が出来たのですね……」


「なぁ、なんでみんなって俺に好印象を持ってくれないんだ?」


 俺って周りからそんなにひどい印象を持たれていたの?前世より悪化していると思うんだけど、気のせいだよね?


 というか、鈴は俺に友達がいたことを嬉しそうに言っているが、友達くらい普通にいるからな?……あれ、こいつら以外、俺って友達いなくね?


「今までの行いが悪いからじゃないの?」


「いつ俺が悪いことをしたよ!?」


「神の冒涜、女の侮辱、そして他者を怖がらせた」


「前半の二つは確かに俺が悪かったな!それは認めるよ!だけど、最後のやつは俺は悪くない!寧ろ俺が被害者!」


 淡々と、結奈は俺に言い聞かせるように言ってきた。思い返してみると、俺って結構やらかしていたな……。


 だがしかし、最後に言ったやつは俺は絶対に悪くない!


「まぁそんなことはどうでもいいんだ」


「どうでもよくねぇ……!」


 なんでそう簡単に流すことが出来るんだよ……。まぁ今に始まったことじゃないから気にしないけど。


「ねぇ、何か聞こえない?」


「確かに、さっきからなにか聞こえるね」


 先程から、近くでトラックなどの大型車が大量に通っているような音が聞こえるのだ。恐らく、この場の全員が疑問に思っていることだろう。


「私もさっきから聞こえていて、何かなって思っていたんだ」


「これって、いったい何なんでしょうか?」


 沙耶とエリーも、先程から疑問に思っていたらしく、この音の原因が何かと考えているようだった。


「なんだか、足音みたいだな」


 何も考えずに、ふと思ったことを口にした。だが、段々と音が大きくなってくるにつれて、俺の言葉が現実味を帯びてきた。


「まさか、な……」




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