第二十四話 演習メンバー
あの日使い魔たちと魔獣を狩ってから、二週間が過ぎた。俺はそれからはおかしな事件に巻き込まれることもなく、普通に学校生活を謳歌していた。
本当に何事もなく過ごしていった。クラスのほとんどの奴らに声をかけてもらえなくなるくらい何もなかったよ……。
あの事件以来、俺はみんなからトラブルメーカーだと思われているのか、なぜか話しかけられなくなった。
というか、俺が勇気をもって話しかけようとしても、今忙しいとか言っていそいそと離れていくんだ……。
そういうことなら、俺の周りにいる三人も例外ではないんじゃないだろうかと思ったのだが、なぜか普通にクラスの奴らと話に花を咲かせていた。しかも、沙耶に至っては初日から友達が出来ていたので、今ではクラスの人気者になりつつある。
なので、俺は一人でいることが初日よりも増えていってしまった。
ボッチ飯は当たり前になってきてしまって、最近では誰もいない絶好の場所を見つけてしまう始末である……。
まぁでも、最近は誰もいない場所を見つけたので、鈴と未桜を内緒で呼んでお昼を一緒に過ごしている。
いや、二人とも宮本さんの食事が美味しいというもんだから、たまには食べさせてあげたいなと思っただけだからね?決して俺が寂しいからとか、そういう理由じゃないからね?
といっても、たまには沙耶たちとも食べるからそんなに寂し……一人でいることもそんなにないんだけどな!
放課後は、今までは沙耶が俺と一緒に帰るのは当たり前で、今までずっとそうしてきたのだが、俺から他の友達と帰るように言った。
本人は残念そうにしてくれていたが、俺ばっかりにかまっていたら他の友達とも良好な関係を作れないだろう?
だから、俺は涙を呑んで一人で帰ることが増えてきているんだ。
いやまぁ、沙耶だけじゃなくて、怜や結奈とも帰ったりしているし、前世でも一人で帰るのは普通だったから別段寂しいことはないんだけどな。
そして休みの日は、俺の家で勉強会などをして親睦を深めたりしている。
俺はもう記憶魔法を使えるようになっているから、勉強会をする必要はないんじゃないかと思っているだろう?それはそうなのだが、俺には睡魔という強敵がいて、そいつが授業中に襲ってくるのだ。それに抗うことが出来ずにいるせいで、クラスから取り残されているのだ。
だから定期的に、俺の家で勉強会をするのはもう当たり前になっている。四人で勉強をすると結構捗るし意外と楽しいから、これからも毎週続けていきたいな。
それはそれとして、俺は入学して友達が全然出来ずにいて結構焦っている。『はい、仲のいい人で班を作って~』なんて言われてしまった日には、もう膝から崩れ落ちて絶望してしまうだろうな……。
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そんなことを思っていたら、その日は結構早くやってきてしまったようだ。
「はい、ではみんなも学校に馴染んできた頃でもあるでしょう。なので、演習をするにあたって、みんなにグループを作ってもらいたいと思います」
「……先生は俺に死ねと仰るのか?」
「もう、翔夜は大げさだよー」
隣にいた沙耶は冗談だと思って笑っているが、俺は結構マジでどうしようかと焦っている。
なぜこんな話になったのかは今日の朝にさかのぼるのだが、俺は授業が始まるまで寝ていたので聞いていなかった。
いやなんで聞いていないんだよ!大事なことだろうが!しっかりしろ、朝の俺!
「はぁ……」
今の時間は放課後なのだが、先生が今朝話していたらしい演習のグループを作るということでみんな残っているそうだ。
この演習の班決めが始まるまでに、一応沙耶にどういうものなのか聞いておいた。
話によると、この学校は定期的に魔物を狩るらしいのだ。今のうちに魔物との戦い方などを慣れさせておくことを目的としていて、それが演習と呼ばれるものであるんだと。
その中で狩った魔物や戦い方をもとに、先生がいろいろと評価をしているそうなのだ。授業にそんな項目はなかったはずだが、いったい何に反映されるんだろうか?……まぁどうでもいいけど。
そしてその演習は五月のゴールデンウィーク明けに行われるそうで、どのように魔物と戦うかなどの作戦を話し合いを前もってするために、今のうちのグループを決めておこうということらしい。
噂によると、演習で狩った魔物は先生が後で回収するのだが、それを売りさばいて学校の資金に充てているらしい。
実際にそういう話を聞いたわけではないので本当のところはどうなのかわからない。だから、今回はインベントリを使って魔物の死体を回収するのはやめておこうと思う。
話が逸れてしまったが、つまり、その魔物を狩る上で単独行動は危険で窮地に立たされやすいから、集団で行動しましょうということなのだ。
だが、俺は今まさに窮地に立たされている。
「マジで何でそんな酷いことするかね?そっちで勝手に決めてくれた方が俺としてはありがたいよ……」
沙耶と組めたらとっても嬉しいのだが、恐らく仲良くなった女子たちと組むんだろうな……。怜と結奈も他の人たちに頼りにされているっぽいし、マジで俺どうしよう……。
「翔夜、一緒に組もうっ」
「……え、他の子と組むんじゃなかったのか?」
沙耶が笑顔で声をかけてきたので、かなり驚いている。先程もクラスメイト達と結構話していたので、てっきり俺とは組まないと思っていたからだ。
「いやいや、翔夜と一緒のほうが楽しそうだし、それにまた危ないことをするかもしれないから見張っておかないと!」
「お、おう、そうか。……じゃあ、よろしくな!」
これは喜んでいいのか微妙な答えだったが、まぁ一緒のグループになって魔物を狩れるのだから感謝しなければな!
「ねね、僕も翔夜と一緒でいいかな?」
「怜もか。俺は別に構わないけど、他の人たちから誘われてたりしないのか?」
前の席にいる怜が、笑顔で振り返って聞いてきたが、昼休みにこいつがいろんな連中に囲まれて誘われているのを目撃している。だから怜も他の連中と組むものとばかり思っていたのだが、どうしたのだろうか?
「いやー、翔夜が何をしでかすかわからないから心配で断ったよ」
「お前もかっ!」
どうやら俺が被害を出さないか心配だったようだ。俺ってそんなに物を壊しているかな?思い当たるところは講堂の扉くらいしか壊してないし、そんなに心配されるいわれはないと思うんだけどなー?
「あ、僕も翔夜と一緒のグループに入るね」
「もう決めているのかい!」
左隣から結奈がいつも通りの無表情で言ってきた。いやでも、こいつは学年主席だしクラスメイト達から引く手数多だったんじゃないか?
「だって、ほかの人たちは僕頼りで話を進めてくるし、どうせ危なくなっても僕がどうにかしてくれるとか思っているんだもん、そんな連中とは組みたくない。そうなるくらいなら翔夜たちと組んでやった方が絶対いい」
「おおぅ、結構辛辣だな……」
嫌気がさしているようにうんざりしているのだろうが、俺は今までほとんど頼られたことがないのでそういう気持ちがあまりわからない。
俺は寧ろ嫌気がさすより頼られていることを喜んじゃうだろうな。面倒なことでない限りだが……。
「それに翔夜と一緒なら楽が出来そうだし」
「その一言がなければよかったのに」
なんだよ、結奈も結局は楽がしたかっただけかよ。というか、俺と一緒ならなんで楽が出来るんだよ。楽をさせるつもりはないからな?まったく……。
「まぁ、グループが出来たし、良しとするかね」
一番危惧していたグループを作るということは、意外にも難なくできた。
いやはや、こんなに俺のところに集まってくれるとは思っていなかったから、正直驚いている。だって他の人と一緒にいたほうが人の輪を作りやすいだろうと思っていたからさ。
「それじゃあ四人になったわけだが、グループって何人構成なんだ?」
何人のグループにするかということを聞いていなかったので、改めて沙耶に聞いた。俺はまず作ることが大切だと思ったから、そんな人数のことなんてものはスルーしていたんだ。
「確か、五人だったよ」
「それじゃあ、あと一人連れてくればいいわけだね」
怜は軽い調子で言っているが、俺らのところに入りたいと思う奇特な奴なんているのか?俺を抜きにした人気者の三人がいると言っても、この俺がいるんだぜ?このクラスから孤立しそうな、あまり近づきたくない相手であろう俺が。
わざわざ来たいと思う奴は果たして現れるのやら。
あと、このグループって神の使徒が三人もいるし、俺らを抜きにしても学年でトップの魔力量を持っている沙耶もいるしで、これはもう一人はいらないだろうな。
「ぶっちゃけ俺らだけで過剰戦力だろ」
「確かにそうだね」
このクラスは四十人丁度いるから、誰かが余るなんてことはないだろう。だが、自ら俺らのグループに入りたいと思う奴はいるのだろうかね?
「では、決まったグループから私に報告してください」
先生がみんなに呼び掛けると、報告して言っている人もいれば、まだ決まっていなくて話し合っているところもいた。
「もう一人はどうしようかね?」
模擬戦のときの眼鏡君が、沙耶を目当てに俺たちに近づいてくるかと思ったのだが、もうグループは決まっているようだった。まぁ間接的にとはいえ停学にさせちゃったし、来るわけもないか。
「う~ん、なら、余った人と一緒になればいいんじゃない?」
「出来れば自分から来てくれる人のほうがいいんだけどね」
嫌々俺たちのところに来ても、チームワークなどが整うはずもないから、出来るなら自ら来てほしいよ。
「でも、もう周りは周りで出来ていっているし、それは難しいかなー」
周りはもう大体固まってきたようで、俺たちの方へとやってきそうな人は見当たらなかった。こっちをチラチラ見ている人は少なからずいるんだけどなー。
「だよなー。はぁ、誰か来てくれないかなー?」
俺は少々諦めたようにつぶやいていると、俺たちに近づいてくる人物がいた。
「あの~、もしかして一人だけ枠余っていますか?」




