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第二十話 後始末


「まったく、翔夜があんなことを言わなければこんなことにはならなかったのに」


「悪かったよ!結構マジで!」


 結奈が俺に悪態をついてきたが、流石に今回のことは俺が悪かったので謝った。


「これからは気を付けてね」


 怜は俺をからかうことなく普通に注意してきた。なんか女子みたいだなと思ってしまったのは秘密だ。


「それにしても、こんな危ない集団なのになんで魔法を無力化できる魔法具を用意できたんだろうね?」


 怜が犯罪者どもの近くに行き、拳銃を回収しながらそう聞いてきた。


「どういうことだ?」


 俺は怜が何を言いたいのかわからなかった。魔法具というものはたいていの人が持っているものじゃないのか?俺は何一つ持ってないけど。


「魔法を無力化できる魔法具っていうのは、あまり生産性がなくてそもそもの絶対数がそんなにないんだよ。だから、普通は国が管理していてそんな簡単に使用される代物じゃないんだ」


「ほー、なるほどな」


 怜が何を言いたいのかわかった。つまり、なんでそんな希少なものをこのような集団がなぜ持っているかということだな。


「でも、実際に結界が張られているから、どこからか盗んだか、若しくは独自に入手できるルートがあるかだね」


「自分らで作ったっていう可能性は?」


 ああいうイカれた奴らのところにはマッドサイエンティストがいるってお約束だもんな。そういう奴が作ったのなら納得する!


「確かにその可能性も考えられるね。人体実験をしているっていう噂もあるし」


「何それ怖っ!」


 おいおい、このご時世に人体実験とかふざけてるだろ。たぶんそんなことをやっているわけないとは思うが、火のない所に煙は立たぬというし、実際はわからないんだが……。


「そんなことより、はやく犯罪者どもを片付けに行こうよ」


 無駄話ではないだろうが、あまり考えても意味のないことを話していた俺たちを急かして、結奈が歩み寄ってきた。


「確かにこいつら、俺らの高校を爆破するとか言っていたし、危ないからさっさと他の教室に行って眠らせてこよう」


「それもそうだね」


 俺たちはこの集団を学校に呼んでしまったからな。といっても、主に俺のせいなわけなんだがな……。


「それじゃあ面倒だけど、一応こいつらを拘束しようか。それから向かおう」


 結奈はそう言って、目の前に右手を掲げた。


 すると何もないところに魔法陣が浮かび上がり、そこから虎柄のロープが現れた。それを使って俺たちはこいつらを拘束していく。


「ロープを当たり前に出す高校生ってなんだろうな……」


「生成魔法が使えるんだし、僕たちにとっては何らおかしいことじゃないでしょ」


 俺が呆れたようにつぶやくと、結奈が何でもないかのように言ってきた。魔法を使える世の中ではこれが普通なのだろうか?


「空間魔法じゃなかったんだな……」


 俺はてっきり空間魔法のインベントリかと思ったぞ。確かにインベントリはあんな魔法陣を展開させることはないけどさ。


「確かに俺もこっちの世界に来てから生成魔法は使ってたけどさ、これってやっぱ人前じゃあ使えないよな」


 わかってはいるが、これは普通に使ってはいいものじゃないだろうな。周りがぶっ飛んでいると、世の中の普通がわからなくなる……。


「そりゃあね。魔力があればダイヤモンドでも作り出せちゃうから、転移魔法よりバレちゃあいけない魔法だね」


「確かにそれは危険だな。人前で使ってバレでもしたら何されるかわかったもんじゃない」


 内緒だが、少し前に宝石やお金も作り出せるじゃん!と思って作ったことがあったんだよ。だけど、これって全体マズいことだよなって自分の中の良心が訴えかけてきたから、今は作っていません。


 でも、俺のインベントリの中には結構眠っています。もしかしたら、何かの役に立つと思ってずっと保存しています。


 悪用はしないよ?


「翔夜は本当に気を付けてよ?」


「前科持ち」


「俺を犯罪者のような目で見るな。今回で懲りたから、ホントに気を付けるよ……」


 今回の原因は確かに俺だけど、本当に懲りたからもう人がいる前では神を罵倒しないよ。人がいないところでは思いっきり罵倒するけどな!


 因みに、回収した銃やその他の危険なものは俺のインベントリにひとまず入れておきました。どうするかは後で考えるから、今は気にしないでおこう。


 ……マジで悪用とかしないからね?






「よし、出来たな!」


 俺たちは犯罪者たちを縛り上げ、他の教室へと向かおうとする。急がないと被害者が出てしまうかもしれないからな。


「……ねぇ、翔夜。それは、なに?」


「なにって、拘束した犯罪者だが?」


 早急に向かおうとしたのだが、怜が俺の縛った犯罪者を見て軽蔑の目を向けてくる。なんだなんだ、そんな目を向けてくるんじゃないよ。俺メンタル弱いんだから泣くぞ?


「いやそうじゃなくて、なんで亀甲縛りなの?」


「こいつ沙耶をいやらしい目で見ていたから、その仕返しだな!」


 俺の縛りつけた犯罪者はあの太っている奴だったため、恥ずかしい格好の亀甲縛りになっているのだ!こういう縛り方は前世で調べたから、使える機会があってよかったよ。


 前世ではそんなことできる機会もなかったけど、今縛りつける相手は犯罪者だし、別に問題ないと思ってやってみたのだよ。なので記憶を頼りにやってみたら意外とうまく出来て満足している!


 いや、なんで調べたかは気にするな。調べた当時の俺がドSだっただけだから……。


「……そう」


 なんでそんな諦めたような顔をしているんだ?これは俺の趣味じゃないからな?する相手もいなかったわけなのだが……。


 だからそんな引かないでくれないかな?


「じゃあ改めて、行こうか!」


 こういうのは気にしたらだめだ!だから気にしないで犯罪者たちを制圧、もとい眠らせに行こう。


 そうだ、その前に……。


「どうしたの?」


「いや、もしも何かあったら心配だからさ」


 そういって俺は沙耶のもとまで行き、周りに結界を張った。これで核兵器が落ちてきても安心だな!


「過保護だね~」


「否定はしない」


 結奈がからかってくるが、これはもう俺の性と言っても差し支えないほどに自覚している。どうしても心配になってしまうんだよ。


「じゃあ、ホントに行こうか」


 怜が俺たちに声をかけ、他の教室へと向かった。何もなく制圧できるといいんだが、どうせそううまくはいかないんだろうな~。







 ===============







 俺たちは今、犯罪者がいる教室に行き、眠らせて周っている。


 とはいっても、この魔法が使えない空間で魔法を使えるというのはおかしいことなので、教室の前まで行ってから千里眼で中を覗いて、犯罪者だけを眠らせているのだ。


 まぁそれでも十分怪しいのだが、見られなければどうとでもなる。


「そういえばさ、どうやって他の教室にもあいつらの仲間がいるって知ったんだ?俺は千里眼で知ったけど」


 教室を出るときにも気になっていたことだ。ふと思い出したので聞いてみることにした。


「僕は千里眼と生体感知を使ったんだよ」


「生体感知だと!?そんなのが使えるのか……」


 聞いてみると、思っていた以上の答えが返ってきた。生体感知魔法とか、仙術の類じゃないのか?俺も後で使ってみよう!


「……前から思っていたんだけどさ、翔夜はあまり魔法について知らないよね」


「あー僕もそれは思った。結構思いつきそうなのに、どうしてそんなことを知らないのかなって」


 怜と結奈が俺に憐みの目を向けてきた。そんな目で見るんじゃねぇよ!こんな状況だけど、俺悲しくて泣いちまうかもしれないだろうが!ガラスのハートなめんなよ!?


「し、仕方ないだろう!これまでの記憶がないし、魔法以外にもたくさん勉強していたんだからさ!」


「しーっ、大きい声を出しちゃうと誰か来ちゃうでしょ」


 結構大きな声で反論してしまったため、怜に怒られてしまった。もとはといえばお前らが悪いんだからな!?


「わ、悪い……」


 それでも声を出したことは悪いと思っているので、謝っておく。反省はしてないがな!


「さて、もう粗方眠らせて周ったけど、もう教室には犯罪者はいないかな?」


 千里眼ですべての教室を見たが、もう犯罪者のいる教室はすべて周ったので、もう残っているのは首謀者らしき人物とその周りにいた数人だけだ。


「いないね。あと、さっき職員室を見たけどいなかったしね~」


「あー、みんな眠ってたね」


 先程職員室もついでに見てきたのだが、みんなが仲良く眠っていたんだ。


 言っておくが俺たちが眠らせたんじゃないからな?見たときにはもうすでに眠っていたから、恐らく侵入してきた奴らが眠らせたんだろう。


 一応エリート高校だけど、魔法が使えなければ先生もただの人だもんな~。


「催眠ガスでも使われたのかね?」


「どうせ考えても無意味だし、さっさと首謀者のいるところに行こう」


「やっぱ気づいていたんだ」


 結奈が何でもないかのように言うが、しっかりと首謀者がいる場所を突き止めていたんだな。


「当然。何年神の使徒やっていると思っているの?」


「自覚して一ヶ月ちょっとだろうが……」


 そんな胸を張って言うことでもないだろう。張れる胸もないけど……。


 あれ、なんでこっちを睨んでいるんだ?俺の心でも読んでいるのか?ただの気のせいだよな?……気のせいだよな!?







 ===============







「やってきたんだけど、なんか膜みたいなのがあるんだけど?」


 ここは入学式の最初にやってきた講堂だ。その重厚な扉の前に来ているのだが、どうやらその周りに薄い半透明の膜のようなものが張ってあるのが見える。


「これは結界だね。この程度なら簡単に壊すことできるよ」


「よし、じゃあ壊すか」


 怜はそう判断したので、俺はためらわずにその重厚な扉の前まで行き、右手を引き絞った。


「え?」


「よっ!」


 その掛け声と同時に、俺は右手を軽く振りかぶった。全力でやるとこの講堂が消し飛んでしまうので、本当に手加減をしなければならない。


「あー、……壊れたな!」


 結界だけではく、そこにあった重厚なごと吹っ飛ばしてしまった。そんなにあの結界はもろかったのか!?加減を間違えちゃったじゃないか!


「いやいやいや、扉ごと壊しちゃったらダメでしょう!」


「うっ、……いや、どうせ見ている人いないんだし、あの宗教団体のせいにすればいい!」


 怜に注意されてしまったが、俺は責任を押し付けることにした。神の使徒以外に目撃者はいないだろうし、問題ない!


「それに、たまにこう、物を破壊したいときあるよね!」


「いや、ないよ……」


 誰だってたまに物を壊したくなる時だってあると思うのだが、怜はないのか……。


「さて、首謀者は何処かな?」


 扉は吹っ飛ばしてしまったが、これで中に入れるので首謀者を探した。すると、扉の下敷きになってピクリとも動かない人を見つけた。









「やべぇぇぇぇぇぇ!!おいおいおいおい、死んでねぇよなぁ!?死なないでくれぇぇぇ!!」









 扉の下敷きになっている人物に駆け寄って、肩をゆすりまくった。三人いたのだが、運悪く全員下敷きになってしまっていて、全然動かなかった。おいおい、まさか本当に死んでいるんじゃないだろうな!?


「あーあ、ついにやらかしたか……」


「ついにってなんだよ!俺は元は人を助ける職種に就こうと思っていたんだぞ!?」


 結奈が嬉しそうに言ってきやがった。絶対楽しんでいるだろう!


 そうだ、俺は前世では人を助ける職種に着こうとしていたのだ。なのにその正反対の行為をしてしまっては、元も子もない。


「でも、今は殺人鬼」


「いや、まだだ!まだ死んでないはずだ!」


 そういって俺は、倒れている人全員の脈があるかとか、今測れるバイタルサインをチェックした。


「あぁぁぁよかったぁぁぁぁぁ生きてたぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 しっかりと脈も呼吸もあったので、ただこの人たちは気絶しているだけだった。心の底からホッとしているよ!マジでよかった!


「よかったねー」


 怜もこいつらが死んでいなくてホッとしているようだった。


「まぁそんなことよりも、だよ」


「そんなことで片付けるなよ……」


「これだよ、これ」


 結奈がどうでもいいかのように、こいつらがいる後ろにあるものを指さした。そこには今も稼働しているであろう一メートル四方の黒い箱が置いてあった。なんかさっきからずっと駆動音が聞こえるから、恐らく機械だろうな。


「あーうん、ちょっと知らないふりをしたかったんだけど、やっぱ何とかしたほうがいいよね……」


 怜も一応気にはしていたらしく、どうしたものかと決めあぐねている。


「これってさ、爆弾かな?」


「いや、魔法を無力化する装置の可能性も……」


「これってどっちだよ……」


 俺たちはこれが何なのか全く分からなかった。こいつらが首謀者で間違いはないと思うのだが、それでも気絶してしまっていてこれが何なのか聞くことが出来なかった。


「……ぶっ壊したらマズいかな?」


「それで爆発したらシャレにならないよ?」


 冗談のつもりで行ってみたのだが、やっぱり爆発するのは怖いもので、本当に処置に困る。


「くそっ、犯罪者の誰かを洗脳して聞いておけばよかった!」


 今さら言っても仕方がないことなのだが、口にしたくなってしまうのが人間というものだ。


「ホントにこれどうしようか?」


「うーん……どっちでもいいように跡形もなく消滅させちゃおうか」


「それもそうだね」


 結構物騒なことを言っているのだが、言っている当人たちはいたって平静だった。


「何でもないように言ってるけど、かなりとんでもないことだからな?」


「僕たちからしたらそうでもないことでしょ?人前で使わなければ大丈夫」


 そういうものなのだろうか?まぁ確かにこの状況では消滅させるのが一番いいのかもしれないが……。


「それじゃあ消すよ~」


 この機械じみた爆弾か魔法を無力化する装置かわからない代物を消滅させようと、結奈がそう口にした。


 だがその瞬間に、俺が壊した扉から何者かが侵入してくる足音が聞こえてきた。


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