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第百九十三話 共闘して即終了


 最初は嘘で俺をここから引き離そうと考えているのだと思った。


「だけど、千里眼でこれを見たらなぁ」


 敵の位置を把握すると同時に確かめる意味を込めて千里眼を使った。


 その光景を視て敵を両親に任せて駆けだしたわけだが、何故か先程より目の前にいる魔物の数が増えている。


「なんで増えてるんだよ……」


 不満を言っていても始まらないため、出来るだけ施設へとダメージを与えることなく魔物を始末していく。


「魔物っていうか、人工生命体?」


 魔物であっても、俺たち人間や動物のように一貫性のある見た目をしている。


 角や手足の数、肌の色や行動パターンだったり。


 だが目の前にいる魔物のような化け物は、上半身がゴリラのような獣であるにもかかわらず、下半身が昆虫のような六本の足が生えていた。


 まるでアラクネを模して造られたような生き物のようだ。


「でも、ゴリラと虫を合わせるって、どういうことだよ……」


 ぶっちゃけ気持ち悪い。そしてゴリラに合うサイズの虫ってなんだよ……。


 そして元は魔物だったのだろう。強靭な腕力と脚力を持ち合わせており、辺りにいる他の化け物どもを巻き込んでこちらに突進してくる。


「涎まき散らしながら突進してくるんじゃねぇよ!」


 俺はゴリラのような虫のような化け物の顔面に踵落としをお見舞いする。


 床がひび割れてしまったが、次から気を付ければいいだろう。


 そしてこいつらは気持ち悪いが、それでも動きが追えないことはなく、難なく対処できる。


 だがぶん殴ったり魔法で切り刻んだりすると体液をまき散らすもので。


「おいおい、銀色の液体が噴き出したぞ!? これ水銀か!?」


 それがいったい何なのかはわからない。


 どのような影響があるのかわからない上に汚いため、早々に終わらせたかった。


「さっさとこいつらをぶっ殺せばいいんだけど、手加減がなぁ」


 こいつらを倒すことは特段難しいことではない。


 体液も汚いが、離れて攻撃すればいいことだ。


 それでも、俺は魔法の手加減を普段からしていても破壊力がえげつないのだ。


「施設へのダメージだけならまだいい。ぶっちゃけ海水が流れ出てきても俺が死ぬことはないだろうからな」


 迫りくる化け物どもを殴って蹴って切り刻んで燃やし尽くして、だがそれでも減ることはなかった。


 一気に施設を破壊するくらいの攻撃をしてもいいのだが、それは俺が一人の時だけに限られる。


「掴まっている人に危害が及ぶ可能性があるからなぁ」


 両親のこともあるが、ここに来る途中にいた、老若男女様々な人たちが牢屋に閉じ込められている。そのため俺は大胆な行動を普段よりも控えているのだ。


 この化け物どもを対処する前に助けてもよかったのだが、この施設は海底にあり、また俺がこの施設について知らないため、不用意に何もしないほうがいいと考えた。


 まずは、化け物を片づけてから考えることにしたのだ。


「というか、全員こっちに来てるよな」


 親玉の、化け物に変貌したあいつのところに行こうとしているのか、または掴まっている人たちを襲おうとしているのかはわからない。


「どちらにしても、こいつらはここで足止めしないとな」


 一匹でも通したら母さんに怒られると考え、より一層気を引き締める。


「……なら、手伝う……」


「おっ、無事だったか」


 俺の後ろから声をかけてきたのは、先程俺と共闘を使用としていた女性だ。


 俺が掴まっていた牢屋の辺りにいたはずだろうから、態々化け物どもがいるここに駆けつけれくれたことになる。


「……逃がしてくれるって、約束した……」


「そりゃあしたけど……」


「……だから、戦う……」


「それは理由じゃあ……まぁいいか」


 契約魔法により、俺がこいつを逃がすことは必ず遂行しなければならない。


 だがこいつは俺のことを牢屋から逃がした時点で契約は遂行されているはずだ。


 何故戦うのか理由がわからないが、彼女にとっての義理を通そうとしてるのだろう。そう納得することとした。


「取り敢えず、後ろの奴らを守りながらぶっ殺すぞ!」


「……わかった……」


 俺一人でもどうにかなったが、力加減が難しい状況では正直なところありがたかった。


「……拘束、お願い……」


「拘束? よくわからんが、了解した!」


 彼女は敵を拘束してほしいとのことだった。


 一網打尽にするには確かに拘束したほうが効率がいいだろう。


「そうさな……とりあえず『シャドーバインド!』」


 名前のとおり、影を使って拘束する魔法である。


 俺の陰から伸びた幾多の手が、目の前の化け物どもに絡みついていく。


 化け物どもはどうにか引きはがそうとするも、影を触れることなどできるはずがない。


「誰も触れられないのに拘束できるって、おかしな魔法だよなぁ」


 しみじみ魔法とは何だろうと考えつつも、俺は自分の仕事をしたことに満足げだ。


 因みにこの魔法を使うと、自身の影を使っているため行動できなくなる。


 魔法は使うことはできるだろうが、手加減をしながら別々のことをするという高等テクニックは俺には出来ない!


「……ありがと……」


 後ろにいた彼女に感謝され、そして化け物どもの方へと歩みを進める。


「……生物の、命を刈り取る、『帰化』……」


 その言葉を発した瞬間、影で拘束していた化け物どもは、塵となって崩れていった。


 最後とのあがきとばかりにこちらに近づこうとするも、身体を動かすことで塵になる速度が増していくだけだった。


 そして徐々に化け物どもの方向など悲鳴が聞こえなくなり、最後には塵の山が出来上がっていた。


「……終わった……」


「えっ…………つっよ!」


 施設にダメージを与えることなく、化け物どもだけを消し飛ばした。


「……怖くない?……」


「ん? 別に怖くねぇよ」


 俺と友人の結奈と同じく、こいつは表情がかわらず何を考えているかわからないが、その力のせいで恐れられると思ったのだろうか。


 だが残念だったな。結奈に貧乳と行った時ほどの恐怖を俺は感じていないのだよ。


 あの時はマジで死ぬかと思った。本当に辞めようと思ったな。いい教訓だ。


「……変なの……」


 そういう彼女は、表情に変化はないもののどこか嬉しそうにしていた。


「とりあえずは、母さんたちのところに助っ人に行かないと。来てくれるか?」


「……ん、わかった……」



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